『 -- リハビリ制限に不安 必要な治療受けられない --

 4月からの診療報酬改定で、公的医療保険で受けられるリハビリテーションに上限日数が新設されたことに伴い、医師や患者、家族の中には「必要なリハビリが受けられない」との不安が広がっている。日本リハビリテーション医学会などは、改定の見直しを求める要望書を今月中にまとめ、厚生労働省に申し入れる方針だ。

 従来のリハビリに上限日数はなかったが、4月以降は(1)脳卒中など脳血管疾患(上限180日)(2)骨や関節など運動器(同150日)(3)呼吸器(同90日)(4)循環器や心臓血管(同150日)-とされた。厚労省研究班の「長期にわたり、効果が明らかでないリハビリが行われている」との指摘を受けた措置だ。

 ただ、失語症や高次脳機能障害、難病などは除外する規定がある。当初は、長期にリハビリを続ける患者が多い脳血管疾患にも上限日数が決められたことについて医療現場が混乱。このため、厚労省は4月末、脳血管疾患が除外規定の一部に該当し「状態の改善が期待できると医師が判断した場合」にはリハビリ継続が認められるとの通知を出した。

 しかし「どこまで医師の判断が認められるのか」「県によっては、保険の審査支払機関の解釈に違いが出る可能もある」などの不安がなくなったわけではない。

 一方、関節の変形や骨粗しょう症など高齢者に多い運動器のリハビリは除外対象でない。上限日数の後は介護保険のリハビリで対応するというのが厚労省の考えだ。

 例えば、ひざの軟骨がすり減って痛む「変形性ひざ関節症」で、昨年から診療所で週1回のリハビリを受けている人は、診療報酬改定の4月1日から150日が経過した後、医療保険でのリハビリは認められない。介護保険でリハビリを続けようとしても、リハビリに対応した訪問サービスや通所施設は少ないことから、継続には不安が残ることになる。

 東京都台東区の「たいとう診療所」の今井稔也(いまい・としや)院長は「たとえ週1回、月1回でもリハビリをすることで、寝たきりにならずに日々の生活を維持できている患者がいる。一律に上限日数を決めるのではなく、せめて週何回、月何回までといった制限にとどめるように配慮してほしい」と話す。

 慶応大月が瀬リハビリセンターの木村彰男所長は「急性期のリハビリに重点を置く改定の方向は間違っていない」とする一方で「健康体操やレクリエーションが多い介護保険のリハビリで、ようやく回復した機能を維持できるのか。必要な患者はリハビリを続けられるようにするべきだ」と、改定を批判している。』

 他の科のことはわからないが,脳血管疾患等リハビリテーション料については高次機能障害や言語障害そして神経疾患の例外がみとめられており,脳梗塞についても神経障害による麻痺であるという解釈で算定上限日数を超えて算定できるようである.だが,現実的には入院日数のほうでリハビリテーションの患者さんたちが入院を続けるのは困難になるのではないかと思う.

 医療型療養病床の診療報酬の改定に伴い療養病床が減少していることと療養病棟入院基本料の見直しにより脳血管障害で麻痺があっても医療区分は1で入院基本料は低く抑えられているために療養病床にリハビリテーションだけの患者さんを入院させることは難しい状況になってきているからである.平均在院日数の問題があるからもとより急性期病棟でリハビリテーションを続けることなどできないのにである.

 そうなればリハビリテーションの患者さんたちは通院していただくしかなくなるわけだが,入院中なら毎日できたリハビリテーションも通院となると家族の協力などで恵まれた条件の患者さんしか通院できなくなるのではないだろうか.脳梗塞で一側の手足が麻痺して寝たきりや車イスが必要な患者さんにとって病院はかなり敷居が高い所となってしまうほうが私には心配である.

 こういったことを厚生労働省はちゃんと計算しているということなのだろうか.医療費削減とは結局こういうことなのだろうか.

知らぬが仏

2006年6月11日 その他
『  -- NHK 民放からも受信料 食堂用テレビなど対象に --

 NHKが50年以上にわたり、民放各局から受信料を徴収していなかったことが10日、分かった。局内のテレビ受像機は放送の監視を目的としているとして、受信契約の対象外としてきたためだが、減収対策などで、一部は契約対象とするよう方針を転換、在京5キー局は4月から支払いを始めた。NHKは今後、全国の地方局にも受信料を請求する方針。
 放送法では、テレビの設置者にNHKとの受信契約を義務付けているが、「放送の受信を目的としない」場合は対象外と定めている。NHKによると、テレビを販売する電器店などとともに、自ら行う放送の監視が必要な民放も昭和26年の開局以来、この例外規定にあたると判断してきた。
 だが、放送の監視と関係ないロビーや食堂などにもテレビを置いているのが現状で、NHKは「テレビ運用の実態が変化したため、受信規約の取り扱いを変え、民放各社の理解も得た」としている。
 一連の不祥事で受信料の不払いが増え、財政に深刻な影響を与えていることなどから、NHKは昨年、制作や報道、技術など現業部門を除く職場のテレビについて、受信料の請求を決定。NHKとの二元体制維持を掲げるキー局もこれに応じた。支払額はテレビの設置台数によって異なり、NHKは「個別の契約については明らかにできない」としているが、ある局の支払額は年50万円程度という。』

 テレビを買った時からまじめに受信料を払い続けてきた人たちは即刻自動振込を停止するにちがいない.
もう週末です
月曜日の手術で始まった一週間でしたが,気がつくともう週末です.
すでに病棟は満床.でも,そういう時に限って救急車が続いて来たりします.
おかげで来週以降も手術が続きそうです.

忙しいから患者を呼ばないでと看護師さんに文句を言われても,ブログが書けないなあと思っても,やっぱり手術室で顕微鏡を覗いているほうが楽しかったりするのは隠れオタクなんでしょうか.

ともあれ今週も無事に終われそうでほっとしています.ここ2日ばかり天気が悪く散歩写真も撮れていませんがリスの写真でちょっと変わった感じのを一枚.

では,皆さま今週もご苦労様でした.お天気の悪い週末にはプールでストレス解消なんていうのはどうでしょうか.
『 -- 不眠は約3兆5000億円の損失 日本大教授が試算 --

 不眠の問題で生じている日本の経済損失は年間約3兆4700億円-。日本大学医学部の内山真(うちやま・まこと)教授(精神神経医学)が7日までに、こんな試算をした。睡眠に問題を抱える人は、勤務中の眠気で作業の効率が約4割ダウンし、交通事故に遭う割合も高いという。内山教授は「仕事のミスや事故を防ぐには、十分な睡眠時間と質の改善が必要だ」と話している。

 大阪の化学企業に勤める20-60代の男女5312人を対象にアンケート。このうち有効な回答があった3075人のデータや、国などの統計資料を基に試算した。

 それによると、男性で34・7%、女性で42・6%が寝付けなかったり、夜間や早朝に目が覚めるなど「睡眠に問題あり」とされた。問題がある人は欠勤・遅刻が多く、勤務中に眠くなり、眠気がある場合の作業の効率は約60%。

 内山教授は、これらのデータに労働人口や平均的な給与額などを加味して全国規模の損失額を算出。眠気による作業効率の低下、欠勤や遅刻などによる損失は約3兆2300億円で、交通事故に伴う損失も約2400億円とした。』

 このニュースを読んだ医師はそれなら勤務時間を守らせろとか当直を減らしてくれとか思ったに違いない.以前に電車の運転士や旅客機のパイロットの睡眠時無呼吸が問題になっていたが,医師の場合は必要な休息が十分に取れないというのが一番問題だろう.

 さすがに研修医の頃ほど睡眠不足になることはないが,それでも救急車が夜中から明け方に続けて来ると私でも翌朝は疲労感が残って頭はボーッとしている.予定手術なら前日の当直を避けることは可能だが,臨時手術ではそうもいかないし人手が足りないから臨時手術のあとに予定手術をやらなければならないこともある.そもそも医師が当直明けに代休をもらえる病院なんて聞いたこともない.

 看護師さんには夜勤明けには休みがあるが医師にはないのである.医師には労働基準法は関係ないとでもいうのだろうか.そもそも当直業務は勤務時間に入っていないようだし時給で計算して通常勤務と比べると報酬も低いのが現実である.しかし,医師からみれば,他に医師がいない病院に残される精神的な負担は大きいし労働量は少なくとも休息がきちんと取れないという点で肉体的な負担も大きく,はっきり言って割に合わない仕事である.

 病院経営側からみれば当直業務だけでは収益にならないから当直料を低く抑えて,それで救急車が来てくれれば収益性は上がり好都合だろうが,そのしわ寄せはすべて医師に来るわけである.そして,もし睡眠不足で疲れた体で手術となり普段ならしないようなミスをすればそれも医師の責任となるのだ.こんな状態でずっと働き続けられる医師はそうはいないだろう.

 残念ながら労働者を守るはずの厚生労働省も看護師の夜勤回数の制限はしても医師の当直回数の制限はしていない.安全な医療を国民に提供するようなことを言いながらすべては現場まかせにしているのが現状である.医師数が足りているというならなぜ勤務時間や当直回数を制限して医師の過労を防ごうとしないのだろうか.こういった問題を真剣に議論しないかぎり地域や診療科による医師の偏在という問題は解決することはないと私は思うのだがどうだろうか.
『 -- 産科医師を書類送検 奈良、出産の女性死亡 --

 奈良県大和高田市の市立病院で出産時の処置にミスがあり女性を死なせたとして、高田署が業務上過失致死の疑いで30代の男性医師を今年3月に書類送検していたことが6日、分かった。

 同署などによると、2004年10月、30代の女性が出産中、心拍数が上昇するなど容体が急変。医師は心拍数を安定させる投薬をした。子どもは無事に生まれたが、女性は多量に出血して死亡した。

 同署は、医師が容体悪化の原因を特定せず心拍数などを下げる投薬だけを行い、適切に処置する注意義務を怠った疑いがあると判断した。

 同病院の内海敏行(うつみ・としゆき)事務局長は「出血や死亡の原因が解明されておらず、ミスとは考えていない」と話している。

 同病院は、周辺市の病院で産科の休診が相次いで今年4月ごろから患者が急増。医師3人に対し5月は105件の分娩(ぶんべん)があるなど負担が大きくなったため、今月7日から、分娩予約を同市と周辺3市1町の住民に限定する異例の措置を始める。』

 もう産科では死亡すればミスを疑われ業務上過失致死で起訴されることが確実になったような気がするのは私だけだろうか.それにしても出産というのは大変なことだ.妊婦さんは命がけ,産科医は人生がかかっている.産科は生命の誕生の瞬間が感動的で学生時代はけっこういいなあと思っていたものだが,今になって産科医にならなくて良かったと思ってしまう.こうも訴えられるんではやっぱり恐くてやってられないだろう.と脳外科医の私が言うのも変な話かもしれないが.

 聞くところによると原因は羊水塞栓症という治療困難な合併症の発生らしい.こういった救命さえも困難である合併症の場合は担当医の過失はどのくらいあるのだろうか.また,過失の程度によらず刑事訴訟に加え民事訴訟にもなるらしいから担当医はもう診療を続けることはできなくなるのではないだろうか.産科をセンター化したところで妊婦死亡率をゼロにすることは不可能だろうから今後も同様の訴訟が相次ぐことになるのだろう.

 招待講演のため来日した米国の脳外科医が日本の脳外科医の報酬が他の科と同じであると聞いてそれでは脳外科医になるやつはいないだろうと真顔で言ったそうである.脳外科の診療報酬を米国並にとは言わないが,医療事故の場合に担当医だけが割を食うような現在の解決法は改善しないと脳外科のように報酬の割にリスクの高い科の医師はいずれまともな診療をしなくなるだろう.特に産科はまだ産科を目指してくれる医師が残っているうちになんとかしないと少子化対策どころではなくなると思うのだがどうだろうか.
 
働きバチ
早朝から一生懸命に蜜を集める働き蜂.
蜂には感情はないのだろう.
本能に従って死ぬまで働き続ける.
いつも思うのだが,昆虫はまるで精密機械のようだ.

組織の一員として働いているうちに働きバチになってしまっている人はいないだろうか.せっかく早朝に夫婦で散歩をしているのにまわりの自然や人にまったく注意を払わない人を見かける.妻は数m離れて後方から追いかけるようについてゆく.なにをそんなに急いでいるのだろうか.

地球上に遠い未来に繁栄する生き物はやはり昆虫と予想されているらしい.
人間社会の未来に待っているものはやはり滅亡なのだろうか.
『 -- 薬剤投与ミスで患者死亡 群馬県の伊勢崎市民病院  --

 群馬県伊勢崎市の伊勢崎市民病院で、脳腫瘍(しゅよう)の摘出手術のため腫瘍を固める薬剤の投与を受けた男性患者が、投与ミスによる脳梗塞(こうそく)で死亡していたことが3日、分かった。病院側はミスを認め、遺族に約6000万円を支払うという。

 病院によると、男性は昨年7月、頭痛を訴えて来院。直径6センチの髄膜腫による圧迫症状と分かり、摘出手術をすることになった。

 8月の手術の際、出血を防ぐため、脳外科医と指導医がカテーテルを使い薬剤を入れて腫瘍を固めようとしたが、薬剤が腫瘍以外の部分にも流出。男性は重度の脳梗塞状態になり、意識が戻らないまま9月に死亡した。

 病院側は、担当医らがミスを家族に説明して謝罪。8月に伊勢崎署に事故を届けたという。

 同病院の神坂幸次(かみさか・こうじ)副院長は「誠に申し訳なく深く陳謝申し上げる。事故防止に向け、職員一丸となって対応していきたい」としている。』

 このニュースは私が読んでもわからない点が多すぎるのだが一般の方はどのように理解するのだろうか.

 私の推測では『髄膜腫の腫瘍塞栓術を脳血管内手術の指導医と非専門医の脳外科医が行って,誤って脳の血管を塞栓してしまい脳梗塞となった患者さんが,それが原因で死亡した.』ということだろう.そして,おそらくこれは業務上過失致死ということになるのだろう.だが,これは推測にすぎない.そもそも事故原因の解析や死亡との因果関係さえも明らかにされていない.

 正確な医学用語での解説がされていないニュースに何の価値があるのだろうか.そして,「事故防止に向け、職員一丸となって対応していきたい」というコメントもニュースと同じくらい意味不明だ.高度に専門的な医療技術をマスターしている指導医がついていても事故を防止できなかったのに職員が一丸となってどう防止するというのだろうか.できるものなら具体的な方法を教えていただきたいものだ.
『 -- シンドラー社は説明拒否、住民怒り エレベーター事故 --

 都立高校2年の男子生徒(16)が東京都港区の公共住宅のエレベーターに挟まれて死亡した事故で、事故機を製造したシンドラーエレベータ(東京都江東区)が住民説明会への出席を拒否し続けている。区長からの要請にも応えず、6日夜の説明会にも姿を現さなかった。

 「なぜ、呼べないのか」「製造会社がいないのでは、説明を聞いても仕方がない」。集まった住民約100人から怒りの声があがり続けた。

 5日夜、午後7時から3時間半に及んだ住民説明会。住宅を管理する区住宅公社や区の幹部、保守・点検を委託された会社の担当者が並んだが、シンドラーの関係者の姿はなかった。

 開始から1時間半。「職員でだめなら、区長が直接電話してほしい」「どうしても説明を聞きたい」という住民からの再三の要望で、武井雅昭区長が途中退席。同社の担当者を相手に携帯電話で出席を求めたが、答えは「現在進んでいる捜査に支障をきたす理由がある」だった。住民や報道各社にも同じ言葉を繰り返している。

 港区の山田憲司・街づくり支援部長は「住民からも怒りの声があがっている。非常に残念」。区は要請を続けているが、6日夜の説明会にも出席はなかった。

 3日の発生の当夜、土曜ということもあり、区は同社と連絡が取れなかった。4日になって連絡が取れたが、面会要請は断られた。区幹部は「諭しても、反応をいただけない」という。

 シンドラーは現場検証には立ち会っている。6日の生徒の告別式には、ケン・スミス社長が姿を見せた。

 この住宅では、事故機を含めた2基の双方がシンドラー製。事故機でない方は、委託業者が点検した上で5日に運転を再開したが、住民からは「製造元から説明を受けるまでは、怖くて乗れない」という声もあがる。90世帯のうち約半数の住民は階段で昇降しているという。』

『 -- 救出直後に急上昇、最上階を超え激突 エレベーター事故 --

 東京都港区の公共住宅「シティハイツ竹芝」(23階建て)で、都立高校2年の市川大輔(ひろすけ)さん(16)がエレベーターに挟まれ死亡した事故で、市川さんが救出された直後、エレベーターが急上昇し、本来の停止位置から最上階を超えて天井寸前の衝突止めに激しくぶつかって止まっていたことが、警視庁の調べで分かった。同住宅のエレベーター2基では、約3年間で41件ものトラブルが起きていた。

 同庁はブレーキを制御する装置の不具合が事故につながった可能性があるとみて、6日も専門家の立ち会いのもとで現場検証を続けている。

 捜査1課の調べでは、エレベーターは滑車に通したロープで箱部分をつるし、もう一方の端のおもりとでバランスをとる構造。安全を確保するために、各階にあるブレーキパッドと、ドアが閉じないと稼働しないための安全装置が連動しており、乗降中に動き出さないよう屋上にある機械室で制御している。

 ところが、12階の天井部分に挟まれていた市川さんが救出された際、作業員が電源を切ったにもかかわらずエレベーターは急上昇し、最上階の停止位置を超えて天井寸前に達していた。衝撃で8本あるワイヤのうち3本が滑車から外れたという。エレベーター管理会社によるとこうした急上昇は「突き上げ」と呼ばれ、発生はきわめて少ないという。

 事故当時、同じエレベーターには女性(57)が同乗していたが、急上昇する前に13階から救助されていたため無事だった。

 同住宅を管理する港区住宅公社が過去のトラブルについて調べたところ、03年4月以降、エレベーター2基で計41件に上ることが分かった。公社は4日の会見で「不具合は19件」としていたが、その後の調査で新たに報告が寄せられたという。公社はエレベーターが稼働し始めた98年までさかのぼって調査を進めており、トラブル件数はさらに増える可能性もある。

 警視庁は制御装置の不具合が事故につながった可能性があるとみて、過去のトラブルを詳細に分析し、事故原因の特定を進めている。 』

 以前からエレベーターに一人で乗る時に時々思っていたことがある.それは映画のようにケーブルが切れて落下することと乗り降りする時にそれが起こったらどうなるかということである.だが,エレベーターは落下を感知すると自動的にブレーキがかかるという話は聞いたことがあったのでなんとかなるだろうくらいに思っていた.

 だが,今回は落下ではなく上昇だったのでブレーキは働かなかったのだろうか.私は医療事故事故防止委員会で「考えられる事故は起こる」とよく言っているのだけれども,まさかエレベーターでこんな事故が本当に起きるとは思わなかった.こんな事故が起きることを予想できた人はまずいないだろうが,考えてみれば起こる可能性はある事故なわけだから製造者側の責任は逃れられないだろう.

 シンドラー社は外資系の会社で競争落札で業者を決定する官公庁に納入されていることが多いようだから自分が毎日使っているエレベーターが同社のものだったらさぞかし気持ちが悪いことだろう.実は私も今朝確認したら国産有名ブランドだったので少し安心している.

 事故の犠牲となった高校生も同乗していた女性も突然のことで何がなんだかわからなかっただろうが,考えてみれば予期せぬ事故というのは誰にでも起こり得るわけである.生と死はいつも紙一重で存在しているが,いつ自分が死ぬかはわからないということにまた気づかされた.『人間には未来を知る力は与えられていない』ということである.
『 -- やはり「死亡率高い」 北海道の医師分析 --

 高血圧、高血糖、高コレステロールより、死につながりやすいのはたばこで、受動喫煙でもアスベストやディーゼル排ガスを上回る被害が出ている――。北海道・深川市立病院の松崎道幸医師(呼吸器内科)が、6日までの世界禁煙週間に東京都内で開かれている日本呼吸器学会で、こう訴える。国内外の各種調査を分析した結果で「禁煙こそが最も重要な病気予防策だ」という。
 松崎医師は、茨城県などが実施した調査に着目した。40歳から79歳までの健診受診者約9万8000人を、93年から03年まで追跡し、検査値や生活習慣と死因を調べた結果、喫煙者の死亡率は、吸わない人に比べて男性で1.6倍、女性で1.9倍だった。これに対し、高血圧や高血糖患者の死亡率は、正常な人と比べてそれぞれ、1.3倍から1.5倍だった。肥満や高コレステロールでは、死亡率は正常な人と変わらなかった。
 特に「現役世代」ともいえる64歳以下の男性では、喫煙者の死亡率は吸わない人の2.1倍に達した。松崎医師は「男性全体の死亡の24%は禁煙していれば防げたと考えられる。たばこが男性の早死にの最大の原因だ」と指摘する。
 一方、喫煙者と同居し受動喫煙を受ける人の年間死亡率は、受けない人に比べ、1.15から1.34倍に高まるとの調査結果が、ニュージーランドと香港で出ている。松崎医師によると、日本に当てはめると、10万人あたり170人から300人程度が、毎年、受動喫煙の影響で死亡することになるという。
 これに比べ、アスベスト(石綿)にさらされる職場で働いた人では、死亡増は年間10万人あたり約100人、東京都心でディーゼル排ガスを吸って暮らす人は同約6人と推定されるという。
 松崎医師は「血圧や血糖が高いと健診で“要治療”とされるが、もっと死亡率が高い喫煙は放置されている。健診で喫煙の有無を調べて、禁煙を強く勧めるシステムが必要だ」と話している。』

 喫煙が悪いことはわかっていてもやめる事ができない人が多い.だから,このニュースを目にしてもやっぱり予防にはならないかもしれない.だが,専門家が悪いものは悪いと言い続けることは大切だろう.

 話として面白い点がこのニュースにはいくつもある.まず,喫煙>高血糖>高血圧の順で死亡率が高いのに,肥満と高コレステロールは死亡率が正常な人と変わらないということ.これは肥満と高コレステロールがあっても他に危険因子が無ければ治療の必要がないということになるのだろうか.

 次に女性の平均寿命が男性より長いのも喫煙の影響かもしれないということ.先進国では男女の喫煙率は共に低下して差がなくなってきているからいずれ男性の寿命も延びるのだろうか.

 それと驚いたのは受動喫煙の害はアスベストをも上回りディーゼル排ガスを吸って暮らす害などそれに比べれば取るに足らないということ.いまだに全面禁煙でない飲食店などいくらでもあるが,食事中に目の前でアスベストをまき散らすのをイメージしたらそれと同等以上の害を他人に与える喫煙はどういう扱いを受けるべきなのかは明らかだろう.

 禁煙パッチで誤魔化していていいのだろうか.本当に国民の健康を考えるなら煙草は発売禁止にするのが理性のある人間のすることだろう.悪いことだとわかっていても止められないのが人間であるが,やったことの始末は自分でするしかないのである.煙草を流通させ税収をあげ,非喫煙者にも同額の健康保険料を負担させ,さらに禁煙パッチも保険適応とする.こんな非合理的な社会でいいのだろうか.
DiaryNoteは復旧したみたいだが...
本日はなぜかあちこちでサイトの障害があったみたいだ.
単なる偶然か,某国からのサイト攻撃だったのか.

真相はどうでもよくなった.
もう,疲れたので寝ます.では,おやすみなさい.
『 -- コーヒーが女性の心血管疾患のリスクを低下させる可能性あり  --

41,000例以上の閉経後女性を15年間観察した研究は、コーヒーを飲むことによって心血管疾患のリスクが低下することを示唆
Laurie Barclay, MD
Medscape Medical News

Reviewed by Gary D. Vogin, MD

 コーヒーを飲むことによって心血管疾患のリスクが低下するという、41,000例以上の女性を15年間追跡調査した研究の結果が、『American Journal of Clinical Nutrition』5月号で報告された。

「コーヒーは、食事に含まれる抗酸化物質の主要供給源である」と、オスロ大学(ノルウェー)のLene Frost Andersen, MDらは述べている。「コーヒーの摂取と、炎症性または酸化ストレスに関連する疾患による死亡のリスクとの関連について、研究が行われたことはなかった」。

Iowa Women’s Health Studyでは、ベースラインにおいて55-69歳であった41,836例の閉経後女性を、最長15年間追跡調査した。今回の解析には、ベースラインの時点で心臓血管疾患、癌、糖尿病、大腸炎、および肝硬変を有した女性を除外した、残りの27,312例の被験者が含まれており、410,235例・年の追跡調査を行い、4,265例が死亡した。主要エンドポイントは、疾患を特定した死亡率であった。

完全に調整したモデルから、コーヒー摂取量と総死亡率との関連と同様に、心血管死のハザード比が、摂取量が1-3杯/日では0.76(95%信頼区間[CI] 0.64-0.91)、4-5杯/日では0.81(95% CI 0.66-0.99)、6杯/日以上では0.87(95% CI 0.69-1.09)であることが明らかになった。他の炎症性疾患による死亡のハザード比は、摂取量が1-3杯/日では0.72(95% CI 0.55-0.93)、4-5杯/日では0.67(95% CI 0.50-0.90)、6杯/日以上では0.68(95% CI 0.49-0.94)であった。

「食事性抗酸化物質の主要供給源であるコーヒーの摂取が、炎症を抑える可能性があり、それによって閉経後女性における心臓血管疾患および他の炎症性疾患のリスクを低下させる可能性がある」と、著者らは述べている。

研究の限界には、逆の因果関係の可能性および残差交絡が含まれる。

「われわれの結果は、1日1-3杯のコーヒーの摂取が、閉経後女性の群におけるすべての死亡ならびに心臓血管疾患および他の炎症性疾患による死亡に対する防御効果を有することと一致する」と著者らは結論づけている。「もしわれわれの観察結果が他の研究で再現され、因果関係が判明すれば、コーヒーは全世界で2番目に広く消費されている飲料であるので、相当大きな意味がある」。

著者らは、関連する財務関係がないことを報告している。
Am J Clin Nutr. 2006;83:1039-1046 』

 ビールとコーヒーと女性をこよなく愛する脳外科医としてはいい話である.心臓血管疾患および他の炎症性疾患のリスクを低下させるということは脳血管疾患やアレルギー性疾患にも効果がある可能性があるのではないだろうか.以前にも酸化ストレスによる動脈硬化には効果があるような話があったから男性にも効果はあるのだろう.

 ところでコーヒーの銘柄で効果は違うのだろうか.どの成分が有効で,どの銘柄にその成分が多いのだろうか.だれか研究しているだろうか.ちなみに私はモカやコナが好きである.
しゃぼん玉
忙しく変わりゆく都会の空を
風に吹かれてしゃぼん玉はとぶ

ただそれだけじゃつまらないなら
スウィングでもしてとんでいけ

公共放送の使命

2006年5月31日
『 --「NHK3波削減を」 総務相の懇談会方針 --

 竹中総務相の私的懇談会「通信・放送懇談会」は、NHKの8チャンネルのうち、BS(衛星放送)2波、ラジオ1波を削減する経営合理化策を近くまとめる最終報告書に盛り込む方針を固めた。懇談会はチャンネルを減らして受信料を値下げする案を検討してきたが、削減チャンネル数を示しNHKに組織のスリム化を迫る考えだ。

 NHKは現在、地上波で2波(総合、教育)、BSで3波(第1、第2、ハイビジョン)、ラジオで3波(第1、第2、FM)の計8波を持ち、どのチャンネルを削減するかが検討課題となっている。最終報告書では、BSのうちハイビジョンを含む2波を削減するよう明記。ラジオではAM第2かFMのどちらかを減らす考えだ。報告を受け、総務省は削減に向けた検討作業に入るとみられる。

 一方、政府の規制改革・民間開放推進会議は30日、7月までにまとめる答申の論点整理を公表。NHKについては「チャンネル数は大幅に削減すべきだ」と明記。報道などは受信料収入でまかなう一方、娯楽番組部分のスクランブル化(有料放送化)を求めている。』

『 -- NHKのネット収益事業解禁を提言 自民党議連 --

 NHKの業務縮小に反対の立場の自民党有志議員でつくる議員連盟「放送産業を考える議員の会」(会長・河村建夫元文科相)は30日、NHKの過去の番組アーカイブ(保存映像)をインターネットを使って視聴者に有料で提供できるようにするため、放送法を改正してNHKの業務に対する規制を緩和すべきだとする提言をまとめた。』

 NHK自身が賛成なわけはないだろうが,受信料が義務化や未払いの罰則までもが議論されているのだからチャンネル数削減は避けられないだろう.受信料を義務化するのであればNHKに求められるのは報道や政府の広報そして一部の教育や海外向け放送など公共放送として最低限にするべきだ.そうして受信料を格安にするならば罰則を伴う義務化もやむを得ないだろう.

 娯楽番組の有料化に伴うスクランブル化も当然であるが,今後はネット配信も考慮に入れてより低コストな番組提供も考慮して欲しい.NHKアーカイブスなどで昔の映像が見られるが,これらはネット配信することにより見たい時に見たいものが探して見られるという利点が非常に大きいものだろうから是非検討してもらいたいものだ.
 
 どのチャンネルを削減するかは私ならBS1とハイビジョンとAM第2という組み合わせがいいのだがどうだろうか.だが,民放にも削減してもいいようなチャンネルというか番組があるような気がするのだが...

 
そして誰もいなくなる
『自民党の片山虎之助参院幹事長(自治体病院議員連盟会長)は25日、東京都内で開かれた全国自治体病院協議会の定時総会で、へき地の自治体病院の医師不足について「実質は年間何千人も(医師は)増えているのに、すべての地域に行き渡らない。離島や山村に行ってくれる医師を増やさないといけない」と述べ、医師増員の必要性を強調した。』

 正確には年々医師になる人は減っているのにこういう考え方はどこから出てくるのだろうか.こんなこと言ってるようじゃ何故へき地の自治体病院の医師が辞めて誰も行かなくなったのか,本当の理由なんてきっとわからないだろうなあ.一生懸命働いても報われなければ誰だってやる気も失せて燃えかすになってしまうだろうに.

 気のせいか,雨も冷たく感じられる.

やさしさに包まれたなら
今日の午後は局所麻酔のちょっとした手術があった.
痛くないようにするのと出血に注意するだけ.

こんな簡単な手術でも死亡事故が起こる事もある.
安全な手術は患者さんのため,そして自分のため.

昔,小樽のオルゴール堂で買ったCD『アンティークオルゴールで聞くユーミン』のこの曲をMacのiTuneでかけながらちょっとコーヒータイム.

皆さま今週もご苦労様でした.お休みには散歩でストレス解消しましょう.


 研修医に最も不人気な診療科となった脳神経外科の医師に愛の手を!
『 -- 念じた通りにジャンケンロボ 脳の情報を信号化 --

 人間がチョキを出したら、ロボットもチョキ――。脳の情報を読み取り、ロボットハンドに人と同じ動きをさせるシステムの開発に、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)とホンダの共同研究チームが成功し、24日発表した。脳に電極を埋め込む方法などが欧米で研究されているが、今回の方法は人間側の負担が格段に少ない。

 川人光男・ATR脳情報研究所長らの説明によると、人が「グー」「チョキ」「パー」の手の動きをするときの脳活動を、機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)で検出。コンピューターで解読してロボットに伝えたところ、9割近い精度で同じ動きを再現できた。この技術を応用すれば、重度の身体障害者向けに、脳からの信号だけで思い通りに作動する電動車いすや人工発話装置などがつくれるという。

 1年以内をめどに、手を動かさなくても念じただけでロボットハンドを操れる技術に発展させ、脳情報の読み取り装置を帽子サイズに小型化した上で、8〜10年後の実用化を目指す。 』

 コンピュータというのは人間の脳の機能を拡張するものであるからこういった脳内の活動パターンを認識させ機械の制御を行うという発想は新しいものではないが,認識させる信号パターンとしてfMRIを使った点と脳情報の読み取り装置の改良がポイントなのだろう.

 こういう装置というとすぐに身体障害者用と考えるのは早計で,もちろん失われた身体機能を取り戻すということにも有用だが,人間の身体機能を拡張する上で非常に有用だろう.たとえば老人が老人を介護する際などに介護者がこの装置でロボットスーツを制御できれば一人で体位交換や入浴介助などが行えるようになったり,危険な作業を遠隔操作で行う際もマニピュレータの繰作の精度が上げられるのではないだろうか.

 外科手術なども最近ではネットワーク回線を使って遠隔手術をしたりする実験が行われているが,この場合は触った物の感覚が術者側にフィードバックされる必要があり,ロボットハンドの感覚センサーと人間の脳とのインターフェースが問題になるだろう.脳外科の手術がそう簡単にロボットハンドにとって代わられるとは思えないが,ロボットスーツを着て散歩したりする老人なんかは近い将来に現れるかもしれない.もっともその頃には私も老人なんだろうが.

 
 病院近くの交差点で交通事故発生.8歳位の男の子が40歳位の女性の乗用車にはねられ右下腿に開放骨折を受傷.他に外傷なし.現場にかけつけると同時に救急車到着.加害者に状況を説明してもらい受傷機転と外傷の状態を確認し,整形外科で緊急手術に対応できる病院へ搬送してもらうことにした.

 頭部外傷はなく意識はしっかりしていた少年は,「おかあさんに言わないで.病院に入院させないで.」と興奮気味だった.私は,「救急車で病院に行くだけだから.お母さんはきっと怒らないから大丈夫だよ.」と励ましたつもりだったのだが,続きを聞くと「お母さんお金ないから入院なんかできないから.」と言うのです.

 こんな子供が自分の怪我よりも医療費を心配する世の中.なんか寂しい気持ちがしないでしょうか.そして,加害者の女性は子供を気づかうでもなく自分に非がないことばかり強調するのです.

 子供は大人を見て育つといいます.子供たちに学校で愛国心を教える前に大人たちにはやることがあるのではないでしょうか.
『 -- 警察官、容疑者の同僚にも話聞かず 佐賀の男児ひき逃げ --

 佐賀県唐津市厳木(きゅうらぎ)町で小学5年の家原毅(つよし)君(11)が車にひき逃げされ別の場所に放置された事件で、佐賀県警の警察官が前部の壊れたダンプカーを見つけたのに現場を離れて容疑者を取り逃がした際、近くには容疑者の同僚男性もいたことがわかった。警察官はこの同僚から話を聞かないまま応援を求めに行き、再び現場に戻ると、同僚から容疑者が逃走したことを知らされたという。

 調べでは、業務上過失傷害などの疑いで指名手配された土木作業員坂口三之治(さのじ)容疑者(53)と同僚は事件翌日の21日午後3時半ごろ、同市浜玉町でビニールハウスの撤去作業をしていた。巡回中の白バイの警察官がダンプカーに気づき、約20メートル離れたところにいた坂口容疑者に運転手を尋ねたが、「知らない」との答えが返ってきた。

 そこから約50メートルのところに同僚もいたが、警察官は声をかけないまま応援要請のために現場を離れた。約10分後、他の警察官2人とともに戻ってくると坂口容疑者の姿が見えず、同僚に尋ねたところ、「山の方に歩いて行った。この車は坂口が乗っている」と話したという。

 坂口容疑者の行方はわからず、県警は現場から福岡方面に向かう山林などで捜索を続けている。

 山口俊夫・唐津署副署長は「当時は容疑者として確定していなかった。結果論で批判はできるだろうが、当時の判断として最善だったという考えは変わらない」と説明している。 』

 この警察官はあこがれの白バイに乗れて楽しく仕事してたのだろうか.でも,こんな情けないことをやっていたのでは,警察官としてのプロ意識が高いとは誰も思ってくれないだろう.自慢の白バイが今どこにいるのかを,無線を持っていたのに連絡できなかったなんて.そして,容疑者の同僚に確認をとらずに現場を離れて容疑者を取り逃がしてしまうなんて.

 山口俊夫・唐津署副署長が「当時は容疑者として確定していなかった。結果論で批判はできるだろうが、当時の判断として最善だったという考えは変わらない」と言うなら,私は『じゃあ,福島の産婦人科医はどうなんだ!』と言いたくもなる.身内に甘いにもほどがあるんじゃないでしょうか.

 この白バイの警官に必要なのは警察用の高価なデジタル無線機じゃなくて,イマドコサーチのできるGPS付きのキッズケータイだろう.取り逃がした容疑者がさらに別の犯罪を起すことだって十分考えられるのに,一体どういうつもりなんでしょうか.事件が非常に悪質で残虐なだけにまぬけぶりが目立ってしまいました.とにかくこの警官は内勤でもして反省してもらったほうがいいんじゃないでしょうか.
お天気はいいが...
北の街に最もさわやかな初夏の空気が感じられるようになってきた,

天気はとっても良いのだが,また小学生が狙われたかのような厭なニュースが配信されている.子供に新聞を取ってきてもらうのも危険な社会ってなんなんだろう.

すでに米国なんかは異常者を恐れて学校から帰っても外では遊べないらしいが,日本も子供から決して目を離せない状況になったということだ.

考えると怒りが込み上げてくるような感じとともに人間が信じられなくなりそうで気分が悪い.

『 -- 猪口少子化相、専門委との対立について釈明 --

 猪口少子化担当相は23日の閣議後会見で、自らがトップを務める少子化社会対策推進専門委員会の委員らと優先課題を巡り意見が対立していることについて、「(仕事と育児の)両立支援はもともと重視している」などと釈明した。また導入を主張してきた0〜3歳児対象の「乳幼児手当」創設に小泉首相が否定的であることなどを受け、「(現行の)児童手当の拡充も含めて政府内で調整したい」とこれまでの考えを修正する姿勢を示した。

 経済的支援を重視する同氏と、「働き方の見直し」や「地域・家族の多様な子育て支援」を優先するべきだとする委員らの間で意見が食い違い、委員7人が反論の文書を公開したことについて、同氏は「両立支援は男女共同参画担当として非常に重視している。地域の子育て支援サービスの充実も一貫して主張している」などと発言。一方で「経済的支援は国民の要望では常に第1位。二つと合わせ経済支援の充実に関する施策も総合的に展開する必要があり、全体での予算をのばすのが私の仕事」と改めて経済的支援の重要性も強調した。 』

 子供を育てるにはお金がかかる.それはそうだろうが,0〜3歳児対象の「乳幼児手当」で解決するほど簡単な問題だろうか.それは子育ての支援というより低所得者の支援とすべきなのではないだろうか.わずかばかりのお金をあげて「これで子供に何か買ってあげてください.」というのは発想が貧困だろうし,働きながら子育てしているお母さん達を馬鹿にしているような感じがするのは私だけだろうか.

 小児科医や麻酔医が不足しているために家庭に入っている女性医師に現場に復帰してもらおうという動きがある.女性医師が家庭に入ってしまった背景にこの子育てに関する仕事と家庭の両立の問題が私は深く関わっていると思っている.そもそも経済的に自立している女性医師でさえ仕事と子育てを両立させることは難しいということだ.それには病院という職場の環境と保育所などの子供の養育環境の問題がある.

 女性医師が最近非常に増えているにもかかわらず,医師の世界はいまだに女性医師用ロッカーが無い病院がほとんどというくらい男性社会なのである.それなのに仕事は男性医師と差はない.当直回数だって女性だから減らしてもらえるわけでもない.おまけに人手不足で休みも取れない.厚労相は医師の過労は好ましくないと言ったそうだが,財政困難を理由に健康保険で病院経営を圧迫しておいて,医師の労働時間を守らせたら病院が潰れることくらいは知っているのだろう.看護師の夜勤時間は規制が入って減少したが,医師の方はおかまいなしである.

 病院がそんな状況だから女性医師は妊娠出産となるとどうやって休みを取るかが大問題である.仮に産休がうまく取れたとしても今度は育児と仕事のバランスが取れない女性医師は多いのではないだろうか.医師とは言っても子育てに関してはまったくの素人なのである.勤務地が僻地だったりするとさらに問題がある.まず,子育ての最大の援助者であるおばあちゃんが近くにいない.保育園などが夜おそくまで子供を預かってくれない.病院保育室がない.必要なものを買う店が夜遅くまでやっていない.とにかくできないことだらけになってしまうのである.

 児童手当をもらっても問題が解決しないことがわかってもらえただろうか.実は子育てに必要なインフラの整備ということは女性医師に限らず医師が地方に根付かない最大の理由なのではないだろうか.お父さん医師が地方の病院で単身赴任で働き,家族は都市部に住んで子供の教育をするのが当たり前な訳はないだろう.誰だって家族と暮らして安心して仕事と子育てを両立させたいのではないだろうか.問題はそのように作られていない日本の社会にあるのだろう.

 「働き方の見直し」や「地域・家族の多様な子育て支援」を優先するべきだとして反論の文書を公開した7人の委員に私は拍手を送りたい.

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