臨床医学は科学かギャンブルか?
2006年7月5日 医療の問題 コメント (1)『 -- 山形大で論文データ捏造 「教授の指示」と執筆者 --
山形大医学部(山形市)麻酔科の研究チームが学会誌に発表した論文で、使われたデータの一部に捏造(ねつぞう)の疑いがあることが分かり、山形大は3日、調査委員会を設置した。論文の筆頭執筆者の20代の女性医師は調査委に対し捏造を認め「教授の指示でやった」と話しているという。
論文は、がんがリンパ節に転移する恐れのある患者に大動脈周辺のリンパ節を切除する手術をすると、膵臓(すいぞう)の機能に障害が出る可能性が高いとする内容。麻酔科教授(49)ら医局員5人との共同執筆で、2005年4月に日本麻酔科学会の準機関誌「麻酔」に掲載された。
論文では、手術を受けた患者82人について、手術前後の「血清アミラーゼ」という血液中の酵素の平均値を調べ、手術後に膵臓の異常を示す値が出たことを示したとしているが、手術前の血清アミラーゼ値を調べていない患者がおり、正常の値を代用したという。
調査委員会は今後、教授や執筆にかかわった医局員らから事情を聴き、データの基となった82人分のカルテも調べる方針。
日本麻酔科学会事務局は「執筆者から論文を撤回したいとの申し出があれば、学会誌の編集委員会で検討することになる」としている。』
この記事を読んで自分もやったような気がするが,それほどいけないことかという医師は結構いるだろう.論文のデータの捏造などとんでもないと真面目に怒る医師もきっと同じくらいいると思う.だが,自分の研究のデータのとり方や統計処理が科学的に妥当であることをきちんと説明できる医師はきっとかなり少ないのではないだろうか.
学会に出席すると,教授あるいは指導医に言われたとおりにデータを集めて,言われたとおりに統計処理し,言われたとおりに発表する若い医師がいることがすぐにわかる.この20代の女性医師は手術前の血清アミラーゼ値を正常値で代用するように教授に言われた時にいったいどの程度のことを考えたのか興味深い.何も考えずそういうものだと思ったのか,それとも悪いとは知りながらも論文を早く完成させたかったのか.後者であるとすればそれはギャンブルである.
どちらにしてもこれで研究者としての道は閉ざされるだろうから,今後は臨床で頑張ってもらうことを期待したい.昔なら教授を守るために自分の責任でやったことになっていたような気がするが,「教授の指示でやった」と言えるだけ医学部も透明性を増したことは評価してもいいかもしれない.あるいは教授の権威が凋落しただけなのかもしれないが.
ところで,大動脈周辺のリンパ節を切除する手術をすると、膵臓の機能に障害が出る可能性が高いという仮説は正しいのだろうか.医学が科学であるならばデータの捏造に関係なく誰がやっても正しいものは正しい結果になるはずである.しかし,たとえ仮説が正しくとも全体としてそういう傾向にあるということと,その患者個人に発症するということは意味が違うのが臨床医学である.
手術の合併症の説明と同意ではこの違いを理解してもらえるかどうかが大変重要ではないだろうか.最近はたとえ確率が数千分の1の避けられない合併症であっても,悪い結果に対しては手術ミスだと考える家族に当たってしまう確率が年々高くなっているようだから.このままではいずれ手術は医師にとってギャンブルになってしまうのではないかと心配である.そういう意味では医師はもっと確率に強くなる必要があるかもしれない.
山形大医学部(山形市)麻酔科の研究チームが学会誌に発表した論文で、使われたデータの一部に捏造(ねつぞう)の疑いがあることが分かり、山形大は3日、調査委員会を設置した。論文の筆頭執筆者の20代の女性医師は調査委に対し捏造を認め「教授の指示でやった」と話しているという。
論文は、がんがリンパ節に転移する恐れのある患者に大動脈周辺のリンパ節を切除する手術をすると、膵臓(すいぞう)の機能に障害が出る可能性が高いとする内容。麻酔科教授(49)ら医局員5人との共同執筆で、2005年4月に日本麻酔科学会の準機関誌「麻酔」に掲載された。
論文では、手術を受けた患者82人について、手術前後の「血清アミラーゼ」という血液中の酵素の平均値を調べ、手術後に膵臓の異常を示す値が出たことを示したとしているが、手術前の血清アミラーゼ値を調べていない患者がおり、正常の値を代用したという。
調査委員会は今後、教授や執筆にかかわった医局員らから事情を聴き、データの基となった82人分のカルテも調べる方針。
日本麻酔科学会事務局は「執筆者から論文を撤回したいとの申し出があれば、学会誌の編集委員会で検討することになる」としている。』
この記事を読んで自分もやったような気がするが,それほどいけないことかという医師は結構いるだろう.論文のデータの捏造などとんでもないと真面目に怒る医師もきっと同じくらいいると思う.だが,自分の研究のデータのとり方や統計処理が科学的に妥当であることをきちんと説明できる医師はきっとかなり少ないのではないだろうか.
学会に出席すると,教授あるいは指導医に言われたとおりにデータを集めて,言われたとおりに統計処理し,言われたとおりに発表する若い医師がいることがすぐにわかる.この20代の女性医師は手術前の血清アミラーゼ値を正常値で代用するように教授に言われた時にいったいどの程度のことを考えたのか興味深い.何も考えずそういうものだと思ったのか,それとも悪いとは知りながらも論文を早く完成させたかったのか.後者であるとすればそれはギャンブルである.
どちらにしてもこれで研究者としての道は閉ざされるだろうから,今後は臨床で頑張ってもらうことを期待したい.昔なら教授を守るために自分の責任でやったことになっていたような気がするが,「教授の指示でやった」と言えるだけ医学部も透明性を増したことは評価してもいいかもしれない.あるいは教授の権威が凋落しただけなのかもしれないが.
ところで,大動脈周辺のリンパ節を切除する手術をすると、膵臓の機能に障害が出る可能性が高いという仮説は正しいのだろうか.医学が科学であるならばデータの捏造に関係なく誰がやっても正しいものは正しい結果になるはずである.しかし,たとえ仮説が正しくとも全体としてそういう傾向にあるということと,その患者個人に発症するということは意味が違うのが臨床医学である.
手術の合併症の説明と同意ではこの違いを理解してもらえるかどうかが大変重要ではないだろうか.最近はたとえ確率が数千分の1の避けられない合併症であっても,悪い結果に対しては手術ミスだと考える家族に当たってしまう確率が年々高くなっているようだから.このままではいずれ手術は医師にとってギャンブルになってしまうのではないかと心配である.そういう意味では医師はもっと確率に強くなる必要があるかもしれない.
『 -- お産ができない! 激減する産婦人科医 柳田邦男(やなぎだ・くにお) 「現論」 --
昨年春、島根県沖に浮かぶ隠岐の島を訪ねた。町民対象の隠岐学セミナーの講師を引き受けたのだが、島の人々の悩みごとを聞いて驚いた。
「来年(つまり今年)3月でこの島には産婦人科医が1人もいなくなるので、その先は島でお産ができなくなるのです」というのだ。
私は事態を想像し絶句した。自分がこの島の若者で伴侶が妊娠中だったら、と。出産の日を待つとは、みずみずしい期待感に胸がふくらむ思いの日々のはずだ。誰でも胎児の定期健診や出産を支えてくれる医療機関が身近にあるのをあたり前だと思っている。
島の若い世代は今後、どうするのか。隠岐の島々には約2万3000人が住んでいる。隠岐病院の産婦人科医は1人だけだった。年間に約130件の出産がある。つまり医師1人が毎月10件余りの出産を担当してきたのだが、高齢出産の増加により、難しい出産に直面することもある。
陣痛はいつ始まるかわからないから、医師は年間を通じて24時間態勢でいなければならない。難産後のケア、未熟児のケアもあれば、外来もある。息抜きもできない過労を強いられていた。最後まで頑張った医師が事情があって退職するというのだ。
▽米紙も報道
私はそのことが気になっていたので、最近になって、隠岐病院の運営に携わる人に聞いた。やはりこの4月から産婦人科は閉じられていた。
出産は松江や出雲などの総合病院に行かなければならない。本土まではフェリーで約2時間半、悪天候で欠航することが多い。出雲までの航空便は1日1便で満席が多い。妊婦は1カ月位前から、本土に渡り、宿泊先で待機しなければならない。もう1人子がいると大変だ。経済的にも精神的にも負担が大きい。
町では急ぎ予算を組んで、本土での出産者に宿代・交通費として1人17万円を補助している。今年4月から11月までの出産者と出産予定者は70人に達している。この日本の異常さは、最近アメリカのワシントン・ポスト紙にルポ記事として大きく報道された。
この国は壊れつつある。続発する高級官僚、銀行、新興投資企業、一流企業などの不正事件や、若者や少年少女の凶悪事件。その報道に接する度に、そう感じる。そこに、「安心して子どもを産み育てられる」ための基盤さえが壊れ始めたのだ。
▽逮捕の衝撃
産婦人科医の減少が加速している。高齢出産などによる異常分娩(ぶんべん)や障害児出産の増加の中で、産婦人科医が医療ミスを提訴される例が全診療科の中で一番多いため、若い医師が産婦人科医になりたがらないのだ。とくに昨年福島県で帝王切開のミスを問われた医師が逮捕、起訴された事件は、研修医や医学生に衝撃を与えた。悪意でないのに凶悪事件と同じに扱われるのはいやだと。
毎年4月に全国の大学病院産婦人科に入局する新人医師数は、3年前までは300人前後だったが、今年は100人近くも激減し213人だった。大学病院の産婦人科は自らの診療態勢の維持が精いっぱいで、地域への医師派遣に苦労している。
産婦人科医が過労に陥らずに安定した診療を行うには、1病院に常勤医が2人以上必要だ。だが、大学病院以外の病院・診療所の産婦人科医数は昨年7月現在で、1施設当たり平均1.74人。1人きりの施設が多い。しかも、全国の産婦人科医の4分の1は60歳以上。10年後を考えると、慄然(りつぜん)とする。
隠岐の島では町長らが医師探しに奔走した結果、県立病院が産婦人科医を増やして、今年11月から隠岐病院に2人常勤態勢で派遣することになった。1人は海外で勤務中の島根出身の女医で、ネットで事情を知り、帰国を決意したという。
隠岐の島の事態は全国に共通する。安心して子を産めない地域は若者に見捨てられ、荒廃する。それは国土と精神の荒廃につながる。この国は言葉では郷土愛を謳(うた)うけれど、未来を担ういのちの誕生を、本気で大事に考えているのか。国の少子化対策は、この問題を視野に入れていない。出生率低下は進むばかりだろう。国、自治体、医療界、医学教育界が挙げて取り組まなければ、手遅れになる。』
原文がどのような物なのかはこの記事からはわからないが,少なくとも少子化問題と診療科による医師減少問題と僻地からの医師引き上げ問題が隠岐病院の産婦人科医を典型例として解説されているように読める.だが,本来これらは別々の問題である.
少子化は根本的に医療の問題ではないと考えるので今回はコメントしないが,診療科による不人気度では脳外科>外科>(小児科)>整形外科>産婦人科の順であり産婦人科はまだましな方である.それに産婦人科が不人気な最大の理由は今回の逮捕ではなく,もともと医療訴訟が最も多い診療科であることであろう.その次が人手不足による過重労働ではないだろうか.
僻地からの医師引き上げも産婦人科に限ったことではないし,離島どころか地方都市でさえも大学による医師引き上げが起きているのが現実である.この最大の理由は新しい臨床研修制度であることは明らかである.それでも派遣医師たちは少ない人数で過重労働に耐えながら地域の医療レベルを下げないように努力してきたことをまず最初に評価するべきである.そうでなければ現在も地方病院で頑張っている派遣医師たちはさらにやる気を失っていくことだろう.
今回の産婦人科医逮捕は晴天の霹靂だったろうが,これに端を発した医師の集約化というのは上記の慢性的な医師不足で疲弊していた産婦人科医にとってはまさに渡りに船だったのではないだろうか.医療の安全確保を合言葉に今後は上記の不人気診療科で同様の医師集約化が公然と進むにちがいない.これが現状で医療界,医学教育界がとり得る最善策であるからである.
この国は未来を担ういのちどころか,過去を担ってきたいのちも現在を担っているいのちさえも医療費抑制という一言で切り捨てようとしている国なのです.財務省,厚生労働省は医療だけでなく地方財政そのものを切り捨てようとしているのではないでしょうか.医療機関は度重なる診療報酬の減額で自分自身の生き残りに必死ですし,医学教育界も問題になっている診療科は臨床研修制度のおかげで大学で教育にあたる医師の確保さえも困難になりつつあるのにこれ以上なにができるというのでしょうか.
自分が病気になるまで,そして後遺障害で寝たきりの家族でもいないことには病院や医師の役割を真剣に考える人はいないでしょうが,柳田邦男様のような見識のある方に医療問題の実態を現場でより多角的に取材していただき,マスコミのような偏った論調ではなく,医療問題の真実を国民に伝えていただきたいものです.国も自治体も医療界も医学教育界もあてにならない現在,国民自らが危機意識を持って声を上げてもらわないことにはどうにもならないのではないかと思いますが,いかがでしょうか.
昨年春、島根県沖に浮かぶ隠岐の島を訪ねた。町民対象の隠岐学セミナーの講師を引き受けたのだが、島の人々の悩みごとを聞いて驚いた。
「来年(つまり今年)3月でこの島には産婦人科医が1人もいなくなるので、その先は島でお産ができなくなるのです」というのだ。
私は事態を想像し絶句した。自分がこの島の若者で伴侶が妊娠中だったら、と。出産の日を待つとは、みずみずしい期待感に胸がふくらむ思いの日々のはずだ。誰でも胎児の定期健診や出産を支えてくれる医療機関が身近にあるのをあたり前だと思っている。
島の若い世代は今後、どうするのか。隠岐の島々には約2万3000人が住んでいる。隠岐病院の産婦人科医は1人だけだった。年間に約130件の出産がある。つまり医師1人が毎月10件余りの出産を担当してきたのだが、高齢出産の増加により、難しい出産に直面することもある。
陣痛はいつ始まるかわからないから、医師は年間を通じて24時間態勢でいなければならない。難産後のケア、未熟児のケアもあれば、外来もある。息抜きもできない過労を強いられていた。最後まで頑張った医師が事情があって退職するというのだ。
▽米紙も報道
私はそのことが気になっていたので、最近になって、隠岐病院の運営に携わる人に聞いた。やはりこの4月から産婦人科は閉じられていた。
出産は松江や出雲などの総合病院に行かなければならない。本土まではフェリーで約2時間半、悪天候で欠航することが多い。出雲までの航空便は1日1便で満席が多い。妊婦は1カ月位前から、本土に渡り、宿泊先で待機しなければならない。もう1人子がいると大変だ。経済的にも精神的にも負担が大きい。
町では急ぎ予算を組んで、本土での出産者に宿代・交通費として1人17万円を補助している。今年4月から11月までの出産者と出産予定者は70人に達している。この日本の異常さは、最近アメリカのワシントン・ポスト紙にルポ記事として大きく報道された。
この国は壊れつつある。続発する高級官僚、銀行、新興投資企業、一流企業などの不正事件や、若者や少年少女の凶悪事件。その報道に接する度に、そう感じる。そこに、「安心して子どもを産み育てられる」ための基盤さえが壊れ始めたのだ。
▽逮捕の衝撃
産婦人科医の減少が加速している。高齢出産などによる異常分娩(ぶんべん)や障害児出産の増加の中で、産婦人科医が医療ミスを提訴される例が全診療科の中で一番多いため、若い医師が産婦人科医になりたがらないのだ。とくに昨年福島県で帝王切開のミスを問われた医師が逮捕、起訴された事件は、研修医や医学生に衝撃を与えた。悪意でないのに凶悪事件と同じに扱われるのはいやだと。
毎年4月に全国の大学病院産婦人科に入局する新人医師数は、3年前までは300人前後だったが、今年は100人近くも激減し213人だった。大学病院の産婦人科は自らの診療態勢の維持が精いっぱいで、地域への医師派遣に苦労している。
産婦人科医が過労に陥らずに安定した診療を行うには、1病院に常勤医が2人以上必要だ。だが、大学病院以外の病院・診療所の産婦人科医数は昨年7月現在で、1施設当たり平均1.74人。1人きりの施設が多い。しかも、全国の産婦人科医の4分の1は60歳以上。10年後を考えると、慄然(りつぜん)とする。
隠岐の島では町長らが医師探しに奔走した結果、県立病院が産婦人科医を増やして、今年11月から隠岐病院に2人常勤態勢で派遣することになった。1人は海外で勤務中の島根出身の女医で、ネットで事情を知り、帰国を決意したという。
隠岐の島の事態は全国に共通する。安心して子を産めない地域は若者に見捨てられ、荒廃する。それは国土と精神の荒廃につながる。この国は言葉では郷土愛を謳(うた)うけれど、未来を担ういのちの誕生を、本気で大事に考えているのか。国の少子化対策は、この問題を視野に入れていない。出生率低下は進むばかりだろう。国、自治体、医療界、医学教育界が挙げて取り組まなければ、手遅れになる。』
原文がどのような物なのかはこの記事からはわからないが,少なくとも少子化問題と診療科による医師減少問題と僻地からの医師引き上げ問題が隠岐病院の産婦人科医を典型例として解説されているように読める.だが,本来これらは別々の問題である.
少子化は根本的に医療の問題ではないと考えるので今回はコメントしないが,診療科による不人気度では脳外科>外科>(小児科)>整形外科>産婦人科の順であり産婦人科はまだましな方である.それに産婦人科が不人気な最大の理由は今回の逮捕ではなく,もともと医療訴訟が最も多い診療科であることであろう.その次が人手不足による過重労働ではないだろうか.
僻地からの医師引き上げも産婦人科に限ったことではないし,離島どころか地方都市でさえも大学による医師引き上げが起きているのが現実である.この最大の理由は新しい臨床研修制度であることは明らかである.それでも派遣医師たちは少ない人数で過重労働に耐えながら地域の医療レベルを下げないように努力してきたことをまず最初に評価するべきである.そうでなければ現在も地方病院で頑張っている派遣医師たちはさらにやる気を失っていくことだろう.
今回の産婦人科医逮捕は晴天の霹靂だったろうが,これに端を発した医師の集約化というのは上記の慢性的な医師不足で疲弊していた産婦人科医にとってはまさに渡りに船だったのではないだろうか.医療の安全確保を合言葉に今後は上記の不人気診療科で同様の医師集約化が公然と進むにちがいない.これが現状で医療界,医学教育界がとり得る最善策であるからである.
この国は未来を担ういのちどころか,過去を担ってきたいのちも現在を担っているいのちさえも医療費抑制という一言で切り捨てようとしている国なのです.財務省,厚生労働省は医療だけでなく地方財政そのものを切り捨てようとしているのではないでしょうか.医療機関は度重なる診療報酬の減額で自分自身の生き残りに必死ですし,医学教育界も問題になっている診療科は臨床研修制度のおかげで大学で教育にあたる医師の確保さえも困難になりつつあるのにこれ以上なにができるというのでしょうか.
自分が病気になるまで,そして後遺障害で寝たきりの家族でもいないことには病院や医師の役割を真剣に考える人はいないでしょうが,柳田邦男様のような見識のある方に医療問題の実態を現場でより多角的に取材していただき,マスコミのような偏った論調ではなく,医療問題の真実を国民に伝えていただきたいものです.国も自治体も医療界も医学教育界もあてにならない現在,国民自らが危機意識を持って声を上げてもらわないことにはどうにもならないのではないかと思いますが,いかがでしょうか.
最新のCG技術に感動?
2006年7月2日 その他
封切り当日の映画を見に行くなんていうことは今までの人生ではなかったことだが,観てきた.Disney&PIXARの最新作『カーズ』.Disneyの最近のアニメは『ライオンキング』が手塚治虫の『ジャングル大帝』のパクリみたいで気に入らなかったことと,CGのアニメもいまいちな感じで映画館までわざわざ観に行く気がしなかったのでレンタルDVDでざっと観る程度だった.
だから,今回の『カーズ』もミキハウスの『GO!GO!カートくん』のパクリみたいな『トイストーリー』風CGアニメだろう程度にしか思っていなかった.土曜日だったが,天気が良かったのと6商店街大バーゲンセールの影響か映画館は空いていて難なく「日本語吹き替え版」の良い席を確保して,つまらなかったら昼寝するつもりで観はじめたのだが...
オープニングで主人公の車体にカタカナで『ライトニング』という字が見えてその3Dレンダリングの素晴らしさで眠気は吹き飛びました.ストーリー以前に3DCG技術の最近の進歩に正直言って驚きました.この映像ならトップを解任してもDisneyがPIXARと再び手を組んだのは正解だったのでしょう.車体に映り込む光の感じも素晴らしいのですが,風景の生成がものすごく自然になっているのには本当に驚きました.CGの風景を観てきれいだなと思えるとは本当にすごいものです.
ストーリーはまあDisneyらしいハッピーエンドです.子供向けで安心して観ていられるのですが,レースシーンのスピード感はけっこうすごいので幼児には少し怖いかもしれません.反対に大人は十分楽しめます.私もワンパターンなストーリーに感動しながら楽しんできました.エンディングにPIXAR作品のパロディがあってけっこう受けてました,
『カーズ』の前に『ワンマンバンド』というタイトル(だったと思います)の小作品があったのですが,これがまたすごいCGでそれとオチが面白くて私としてはこれは是非観た方がいいと思います.今回の映画鑑賞は上映時間いっぱいを余さず楽しめて大満足でした.
参考記事 2006/1/25
『 -- ディズニーがピクサーを買収、ジョブズCEOはディズニー取締役に --
Walt Disney Companyは1月24日(現地時間)、3DCGアニメーションのPixarを買収することで合意に達したと発表した。PixarのEd Catmull社長が、PixarとDisneyアニメーションスタジオが合併して誕生する新アニメーションスタジオの社長に就任するほか、Pixarでクリエイターのまとめ役となっているJohn Lasseter氏がChief Creative Officer(CCO)に就く。また、Pixarの会長兼CEOであり、Apple ComputerのCEOとしても知られるSteve Jobs氏がDisneyの取締役会に加入する。合併後もPixarおよびDisneyアニメーション部門の現在の拠点は維持されるそうだ。
買収はPixar株1に対してDisney株2.3の比率での株式交換で行われる。買収総額は74億ドル相当になる。成立にはPixar株主の承認が必要になるが、Pixarの発行済み株式の約50.6%を所有するSteve Jobs氏がすでに買収案に合意している。規制当局の承認を得た後、今年の夏には買収が完了する見通しだという。
Disney は1991年にPixarと提携し、「トイ・ストーリー」を配給した。同作品のヒットを受け、97年に5作品に対する共同出資を含む内容に提携を拡大し、 Disneyは「ファインディング・ニモ」「ミスター・インクレディブル」などのPixar作品を配給してきた。だが、2004年1月にPixarは、次回作「Cars」でDisneyとの提携契約を満了した後、新しい配給パートナーを探すと宣言。決裂の背景には、当時DisneyのCEOだった Michael Eisner氏とSteve Jobs氏の意見の食い違いがあると見られた。ところが2004年9月に、業績不振の責任が問われたEisner氏がCEO辞任の意志を表明。2005年 10月にRobert Igner氏がCEOに就任すると、すぐにPixarとの関係修復に乗り出した。昨年10月、Appleがビデオ再生対応iPodと共に動画配信サービスを発表した際、Igner氏が発表会に登場し、Jobs氏とがっちりと握手を交わして良好な関係をアピールした。』
だから,今回の『カーズ』もミキハウスの『GO!GO!カートくん』のパクリみたいな『トイストーリー』風CGアニメだろう程度にしか思っていなかった.土曜日だったが,天気が良かったのと6商店街大バーゲンセールの影響か映画館は空いていて難なく「日本語吹き替え版」の良い席を確保して,つまらなかったら昼寝するつもりで観はじめたのだが...
オープニングで主人公の車体にカタカナで『ライトニング』という字が見えてその3Dレンダリングの素晴らしさで眠気は吹き飛びました.ストーリー以前に3DCG技術の最近の進歩に正直言って驚きました.この映像ならトップを解任してもDisneyがPIXARと再び手を組んだのは正解だったのでしょう.車体に映り込む光の感じも素晴らしいのですが,風景の生成がものすごく自然になっているのには本当に驚きました.CGの風景を観てきれいだなと思えるとは本当にすごいものです.
ストーリーはまあDisneyらしいハッピーエンドです.子供向けで安心して観ていられるのですが,レースシーンのスピード感はけっこうすごいので幼児には少し怖いかもしれません.反対に大人は十分楽しめます.私もワンパターンなストーリーに感動しながら楽しんできました.エンディングにPIXAR作品のパロディがあってけっこう受けてました,
『カーズ』の前に『ワンマンバンド』というタイトル(だったと思います)の小作品があったのですが,これがまたすごいCGでそれとオチが面白くて私としてはこれは是非観た方がいいと思います.今回の映画鑑賞は上映時間いっぱいを余さず楽しめて大満足でした.
参考記事 2006/1/25
『 -- ディズニーがピクサーを買収、ジョブズCEOはディズニー取締役に --
Walt Disney Companyは1月24日(現地時間)、3DCGアニメーションのPixarを買収することで合意に達したと発表した。PixarのEd Catmull社長が、PixarとDisneyアニメーションスタジオが合併して誕生する新アニメーションスタジオの社長に就任するほか、Pixarでクリエイターのまとめ役となっているJohn Lasseter氏がChief Creative Officer(CCO)に就く。また、Pixarの会長兼CEOであり、Apple ComputerのCEOとしても知られるSteve Jobs氏がDisneyの取締役会に加入する。合併後もPixarおよびDisneyアニメーション部門の現在の拠点は維持されるそうだ。
買収はPixar株1に対してDisney株2.3の比率での株式交換で行われる。買収総額は74億ドル相当になる。成立にはPixar株主の承認が必要になるが、Pixarの発行済み株式の約50.6%を所有するSteve Jobs氏がすでに買収案に合意している。規制当局の承認を得た後、今年の夏には買収が完了する見通しだという。
Disney は1991年にPixarと提携し、「トイ・ストーリー」を配給した。同作品のヒットを受け、97年に5作品に対する共同出資を含む内容に提携を拡大し、 Disneyは「ファインディング・ニモ」「ミスター・インクレディブル」などのPixar作品を配給してきた。だが、2004年1月にPixarは、次回作「Cars」でDisneyとの提携契約を満了した後、新しい配給パートナーを探すと宣言。決裂の背景には、当時DisneyのCEOだった Michael Eisner氏とSteve Jobs氏の意見の食い違いがあると見られた。ところが2004年9月に、業績不振の責任が問われたEisner氏がCEO辞任の意志を表明。2005年 10月にRobert Igner氏がCEOに就任すると、すぐにPixarとの関係修復に乗り出した。昨年10月、Appleがビデオ再生対応iPodと共に動画配信サービスを発表した際、Igner氏が発表会に登場し、Jobs氏とがっちりと握手を交わして良好な関係をアピールした。』
今朝は天気がいいので山に登った.最近の目的になっている野鳥の写真は撮れなかったけれども,本当に気持ちのいい楽しい登山だった.ちょっと疲れがたまり気味ではあるけれども今週も無事に終わってほっと一息ついている土曜の昼である.
では,皆さま今週もご苦労様でした.天気がよければ週末は気の合う仲間や家族でハイキングなんてどうでしょうか.生活習慣病の予防にはいいと思いますよ.
では,皆さま今週もご苦労様でした.天気がよければ週末は気の合う仲間や家族でハイキングなんてどうでしょうか.生活習慣病の予防にはいいと思いますよ.
病院にいる時間ー私の場合
2006年6月30日 医療の問題 コメント (1)
『 -- 医師の超過勤務、「是正に5.6万人必要」 厚労省推計 --
医師の不足や偏在の解消に向けて、厚生労働省は28日、「医師の需給に関する検討会」(座長=矢崎義雄・国立病院機構理事長)に報告書案を示した。病院などに勤務する医師の超過勤務を是正するには、最大で約5万6000人の医師が必要になると推計。ゆとりを持って働ける環境作りの必要性などを提言した。今後、専門家の議論を踏まえ、8月までに最終報告をまとめる。
同省の04年調査によると、病院や診療所で働く医師の数は約26万8000人。医師の全体数は毎年約4000人ずつ増えているが、医療現場での医師不足は深刻化しており、同省研究班の05年調査でも勤務医の勤務時間は週平均63.3時間に達する。
報告書案では、すべての勤務医の勤務時間を仮に週48時間まで減らすためには、どれだけの医師数が必要かを推計。病院にいる時間を「勤務時間」とみた場合、必要となる医師数は約32万4000人で、04年調査時と比べ約5万6000人不足。勤務時間を診療や会議などの時間に限定したとしても、約27万7000人の医師が必要となり、約9000人足りないとした。
その上で、地域や特定の診療科での医師不足を解消するためには、地域の医療ニーズを把握し医師を配置するシステム作りや、産婦人科医などを地域の拠点病院に集めて医師一人ひとりの負担を軽くする「集約化」などの必要性を指摘した。
ただ、将来推計では、病院や診療所で働く医師数は、2015年に約28万5000人、25年に約31万人、35年に約32万1000人と順調に増加すると推定され、同省は「全体では必要な医師数は供給される」と結論づけた。』
2035年になればゆとりを持って働ける環境になるんですね.あと28年ですか.団塊の世代もそのころには大分減っているのでしょうか.私もそれまでには引退して毎日昼間から散歩でもしていたいものです.
でも,この推計で勤務医の勤務時間を仮に週48時間としているのは何故なんでしょうか.厚生労働省のHPでは現在、1週間の法定労働時間は、事業場の規模と業種に応じて左上の表のようになっているはずじゃないのでしょうか.他の業種は週40時間なのに,なぜ勤務医は週48時間労働になるんでしょうか.24時間救急指定病院以外では週休2日の40時間労働でいいと思うのです.24時間救急指定病院だって8時間ずつの3交代制にするべきじゃないでしょうか.そもそもの仮定がこれでは同省の医療の安全確保と医師の不足や偏在の解消案など怪しい物だと思うのは私だけでしょうか.
ところで私の場合を考えてみると病院にいる時間は会議などの時間を除くと78時間くらいで平日の昼休み1時間を除いても73時間です.同省研究班の05年調査の勤務医の勤務時間が週平均63.3時間だというのだから10時間ほど超えています.これでも専門医になる前に比べたら少なくなったと思うのですが,それでも同期の他業種のサラリーマンに比べたら確実に多いのではないでしょうか.
「医師は知性と忍耐力にすぐれた人間がなる神聖な職業である」などと言ったらきっと世間の人は笑うでしょう.それなのに他の労働者と同じく労働条件の改善を要求してはいけないのでしょうか.
医師の不足や偏在の解消に向けて、厚生労働省は28日、「医師の需給に関する検討会」(座長=矢崎義雄・国立病院機構理事長)に報告書案を示した。病院などに勤務する医師の超過勤務を是正するには、最大で約5万6000人の医師が必要になると推計。ゆとりを持って働ける環境作りの必要性などを提言した。今後、専門家の議論を踏まえ、8月までに最終報告をまとめる。
同省の04年調査によると、病院や診療所で働く医師の数は約26万8000人。医師の全体数は毎年約4000人ずつ増えているが、医療現場での医師不足は深刻化しており、同省研究班の05年調査でも勤務医の勤務時間は週平均63.3時間に達する。
報告書案では、すべての勤務医の勤務時間を仮に週48時間まで減らすためには、どれだけの医師数が必要かを推計。病院にいる時間を「勤務時間」とみた場合、必要となる医師数は約32万4000人で、04年調査時と比べ約5万6000人不足。勤務時間を診療や会議などの時間に限定したとしても、約27万7000人の医師が必要となり、約9000人足りないとした。
その上で、地域や特定の診療科での医師不足を解消するためには、地域の医療ニーズを把握し医師を配置するシステム作りや、産婦人科医などを地域の拠点病院に集めて医師一人ひとりの負担を軽くする「集約化」などの必要性を指摘した。
ただ、将来推計では、病院や診療所で働く医師数は、2015年に約28万5000人、25年に約31万人、35年に約32万1000人と順調に増加すると推定され、同省は「全体では必要な医師数は供給される」と結論づけた。』
2035年になればゆとりを持って働ける環境になるんですね.あと28年ですか.団塊の世代もそのころには大分減っているのでしょうか.私もそれまでには引退して毎日昼間から散歩でもしていたいものです.
でも,この推計で勤務医の勤務時間を仮に週48時間としているのは何故なんでしょうか.厚生労働省のHPでは現在、1週間の法定労働時間は、事業場の規模と業種に応じて左上の表のようになっているはずじゃないのでしょうか.他の業種は週40時間なのに,なぜ勤務医は週48時間労働になるんでしょうか.24時間救急指定病院以外では週休2日の40時間労働でいいと思うのです.24時間救急指定病院だって8時間ずつの3交代制にするべきじゃないでしょうか.そもそもの仮定がこれでは同省の医療の安全確保と医師の不足や偏在の解消案など怪しい物だと思うのは私だけでしょうか.
ところで私の場合を考えてみると病院にいる時間は会議などの時間を除くと78時間くらいで平日の昼休み1時間を除いても73時間です.同省研究班の05年調査の勤務医の勤務時間が週平均63.3時間だというのだから10時間ほど超えています.これでも専門医になる前に比べたら少なくなったと思うのですが,それでも同期の他業種のサラリーマンに比べたら確実に多いのではないでしょうか.
「医師は知性と忍耐力にすぐれた人間がなる神聖な職業である」などと言ったらきっと世間の人は笑うでしょう.それなのに他の労働者と同じく労働条件の改善を要求してはいけないのでしょうか.
今朝は久しぶりに青空が見えたが,病院の中では何かと忙しくてゆっくり空を眺める余裕もない.昼休みに少しだけ気分転換にリハビリテーション室にダンベルをやりに行ったら通院中の患者さんたちに健康のことでいろいろ質問され途中で退散してきた.午後は外来がせっかく少ないのに脳ドックと書類書きと遠隔地へ転院する患者さんの家族との打ち合わせとどんどん時間が経っていく.気がついたらもう4時をまわっている.いつのまにか日差しも傾いてきている.天気がいいと散歩に行きたくなる.明日予定の手術は機材の手配がつかず来週へと延期になった.明朝もし晴れていたら散歩に行こうなどと考えながらまた病棟へ戻る.そういえば先日木の上にいたリスはまるで「いってらっしゃい.」と地面の私に手を振っているように見えたっけ.今週もあと少しだ.頑張ろう.
記者はわかってるのだろうか?
2006年6月28日 医療の問題 コメント (3)『 -- 動脈と静脈間違えて処置 患者死亡で県警捜査 --
千葉県市原市の県循環器病センター(龍野勝彦(たつの・かつひこ)センター長)は27日、約2年前にカテーテルを静脈に挿入する際、誤って動脈に刺す医療事故があり、脳に障害が残った70代の男性入院患者が25日に死亡したと発表した。
同センターから26日に連絡を受けた市原署は、死亡した男性のカルテ類の任意提出を受け、センター長らから事情を聴くなどして、業務上過失致死容疑を視野に捜査を始めた。
同センターによると、男性は2004年4月、腹部大動脈瘤(りゅう)破裂と診断され入院、手術を受けた。大腸菌による血液の凝固を防ぐため04年5月中旬、30代の担当医が薬剤を投与するため、鎖骨下の静脈にカテーテルを挿入しようとしたところ誤って動脈を刺し、出血多量で心肺停止状態になった。
男性は蘇生(そせい)術で一命を取りとめたが、重い脳障害が残り、今年2月には多剤耐性緑膿(りょくのう)菌を検出。今月25日に細菌性肺炎で死亡した。
担当医は当時、カテーテル挿入の経験があり、センター側に「やり方は熟知していた」と説明していたという。
龍野センター長は「2年前は家族の要望があり、警察に届けなかった」としている。』
たとえ事実であっても解説が不十分なためにマスコミが社会に害を及ぼした例として「白インゲン豆ダイエット法」で視聴者が下痢などを訴えた問題がある.総務省は「番組を見た1000人以上が体調不良を訴えるなど重大な被害を引き起こした」と行政指導では最も重い総務相名の警告を出し,TBS側は取締役2人を減俸20%、制作局長ら4人を2〜3日の出勤停止とするなどの処分を発表し,井上弘社長は給与の30%を自主返上することにしたそうである.
マスコミの言うことを鵜呑みにする国民にも問題がないとは言わないが,これだけ影響力があるのだから情報の発信には十分注意する社会的責任がマスコミにはあるのではないだろうか.いままでにも医療事故の不適切な報道は多々あったのだが,今回のニュースはあまりにもずさんな文章なので少しコメントさせてもらうことにした.
記事の内容としては「約2年前に大腸菌による敗血症からDICとなった男性に鎖骨下静脈穿刺による中心静脈ルートを確保しようとしたところ動脈を穿刺してしまい心肺停止となり,蘇生はしたものの脳障害が残った.今年2月に多剤耐性緑膿菌を検出し今月25日に細菌性肺炎で死亡した.」ということだろう.
だがこの記事には疑問な点がたくさんある.
1.細菌性肺炎で死亡したのなら死因は肺炎であるはず.
2.細菌性肺炎の起因菌は2月に検出された多剤耐性緑膿菌緑膿菌だったのか.
3.もしそうなら死因は院内感染による疑いがあるのではないだろうか.
4.脳障害と感染症で死亡する可能性の因果関係を合理的に証明できるか.
5.鎖骨下動脈穿刺が原因の出血多量で心肺停止することがあるのだろうか.
6.DICかつ出血多量の心肺停止がなぜ蘇生できたのか.
7.「2年前は家族の要望があり、警察に届けなかった」とはどういうことか.
それが,何故,「動脈と静脈間違えて処置 患者死亡で県警捜査」というタイトルになるのだろうか.これがもっとも疑問である.どうも不幸にして起きてしまった医療事故と患者の死亡を強引に結びつけているような印象がするのは私だけだろうか.
鎖骨下静脈穿刺という手技は皮膚の上から見えない静脈を穿刺するものであり,動脈を穿刺しての出血や肺を穿刺しての気胸などの合併症は誰がやっても起きる可能性があることもこの記事からはわからないであろう.中心静脈ルートは手足の末梢静脈から投与できない薬を使う上で必須である.頚静脈,鎖骨下静脈,大腿静脈などを穿刺するが,状況によりどこを穿刺するかは主治医の判断や経験によるものである.
外科的手技の起きうる合併症で,死亡したら訴えられるというのでは治療法として選択しにくくなるのは明らかである.患者が自分の病気を治療する際のリスクを負わないというのであれば,医師もリスクを負いたくなくなるのは当然ではないだろうか.救命救急の現場では説明と同意に時間をかけることができない場合も多い.中心静脈ルートをとるために説明に時間をかけていたら患者が蘇生もできずに死亡してしまうことだってあり得るのである.
医療現場の実態もわかってないようなマスコミが医療事故を十分な解説もせずにセンセーショナルなタイトルで報道することはいたずらに医療不信を流布し国民にとって不利益をもたらすだけだと思うのだが,こういったマスコミの行為はだれが監視し規制すべきなのだろうか.繰作された情報に流され医療者を敵にまわして高くて質の悪い医療になっては国民の利益になることは一つもないだろう.医療事故の監視と同様にマスコミの医療事故の報道を監視する第3者機関もつくったほうがいいのではないだろうか.
千葉県市原市の県循環器病センター(龍野勝彦(たつの・かつひこ)センター長)は27日、約2年前にカテーテルを静脈に挿入する際、誤って動脈に刺す医療事故があり、脳に障害が残った70代の男性入院患者が25日に死亡したと発表した。
同センターから26日に連絡を受けた市原署は、死亡した男性のカルテ類の任意提出を受け、センター長らから事情を聴くなどして、業務上過失致死容疑を視野に捜査を始めた。
同センターによると、男性は2004年4月、腹部大動脈瘤(りゅう)破裂と診断され入院、手術を受けた。大腸菌による血液の凝固を防ぐため04年5月中旬、30代の担当医が薬剤を投与するため、鎖骨下の静脈にカテーテルを挿入しようとしたところ誤って動脈を刺し、出血多量で心肺停止状態になった。
男性は蘇生(そせい)術で一命を取りとめたが、重い脳障害が残り、今年2月には多剤耐性緑膿(りょくのう)菌を検出。今月25日に細菌性肺炎で死亡した。
担当医は当時、カテーテル挿入の経験があり、センター側に「やり方は熟知していた」と説明していたという。
龍野センター長は「2年前は家族の要望があり、警察に届けなかった」としている。』
たとえ事実であっても解説が不十分なためにマスコミが社会に害を及ぼした例として「白インゲン豆ダイエット法」で視聴者が下痢などを訴えた問題がある.総務省は「番組を見た1000人以上が体調不良を訴えるなど重大な被害を引き起こした」と行政指導では最も重い総務相名の警告を出し,TBS側は取締役2人を減俸20%、制作局長ら4人を2〜3日の出勤停止とするなどの処分を発表し,井上弘社長は給与の30%を自主返上することにしたそうである.
マスコミの言うことを鵜呑みにする国民にも問題がないとは言わないが,これだけ影響力があるのだから情報の発信には十分注意する社会的責任がマスコミにはあるのではないだろうか.いままでにも医療事故の不適切な報道は多々あったのだが,今回のニュースはあまりにもずさんな文章なので少しコメントさせてもらうことにした.
記事の内容としては「約2年前に大腸菌による敗血症からDICとなった男性に鎖骨下静脈穿刺による中心静脈ルートを確保しようとしたところ動脈を穿刺してしまい心肺停止となり,蘇生はしたものの脳障害が残った.今年2月に多剤耐性緑膿菌を検出し今月25日に細菌性肺炎で死亡した.」ということだろう.
だがこの記事には疑問な点がたくさんある.
1.細菌性肺炎で死亡したのなら死因は肺炎であるはず.
2.細菌性肺炎の起因菌は2月に検出された多剤耐性緑膿菌緑膿菌だったのか.
3.もしそうなら死因は院内感染による疑いがあるのではないだろうか.
4.脳障害と感染症で死亡する可能性の因果関係を合理的に証明できるか.
5.鎖骨下動脈穿刺が原因の出血多量で心肺停止することがあるのだろうか.
6.DICかつ出血多量の心肺停止がなぜ蘇生できたのか.
7.「2年前は家族の要望があり、警察に届けなかった」とはどういうことか.
それが,何故,「動脈と静脈間違えて処置 患者死亡で県警捜査」というタイトルになるのだろうか.これがもっとも疑問である.どうも不幸にして起きてしまった医療事故と患者の死亡を強引に結びつけているような印象がするのは私だけだろうか.
鎖骨下静脈穿刺という手技は皮膚の上から見えない静脈を穿刺するものであり,動脈を穿刺しての出血や肺を穿刺しての気胸などの合併症は誰がやっても起きる可能性があることもこの記事からはわからないであろう.中心静脈ルートは手足の末梢静脈から投与できない薬を使う上で必須である.頚静脈,鎖骨下静脈,大腿静脈などを穿刺するが,状況によりどこを穿刺するかは主治医の判断や経験によるものである.
外科的手技の起きうる合併症で,死亡したら訴えられるというのでは治療法として選択しにくくなるのは明らかである.患者が自分の病気を治療する際のリスクを負わないというのであれば,医師もリスクを負いたくなくなるのは当然ではないだろうか.救命救急の現場では説明と同意に時間をかけることができない場合も多い.中心静脈ルートをとるために説明に時間をかけていたら患者が蘇生もできずに死亡してしまうことだってあり得るのである.
医療現場の実態もわかってないようなマスコミが医療事故を十分な解説もせずにセンセーショナルなタイトルで報道することはいたずらに医療不信を流布し国民にとって不利益をもたらすだけだと思うのだが,こういったマスコミの行為はだれが監視し規制すべきなのだろうか.繰作された情報に流され医療者を敵にまわして高くて質の悪い医療になっては国民の利益になることは一つもないだろう.医療事故の監視と同様にマスコミの医療事故の報道を監視する第3者機関もつくったほうがいいのではないだろうか.
手術するにも見た目は大事
2006年6月26日 その他 以前に私の外来を受診した70歳くらいの男性患者さんとリハビリ室で話をしていたら,私が30代前半だと思っていたそうです.若くみられるのはまあいいのですが,若い医者だと思って私の言うことをあまり信用していなかったみたいです.例によって「テレビでこう言っていたのだが,わしは大丈夫かね.」みたいな話だったから害はないんだけれども,医者っていうのは若く見えるとそれだけ信用されないみたいで損しているような気分です.
ところで,外来の診察室で患者さんが私を見て経験豊富な医者かどうかみきわめる間に私も患者さんがどんな人か観察します.現病歴はもちろん既往歴を問診することは基本ですが,実は診察は診察室に患者さんが入ってくる時にすでに始まっているのです.脳神経外科専門医必読の教科書を書いた太田富雄先生の著書である『脳神経外科患者の診かた』という本の外来診察の手順の項にも,冒頭に「部屋に入り診察の椅子に座るまでの動作に,まず注意を払う.歩き方,表情,礼儀作法など重要な情報源である.」と書かれています.
できるだけ丁寧な言葉で時間をかけながら患者の人となりを念入りに観察するわけです.その際,カルテにある性別,住所,年齢,本人や家族の職業などが大変参考になることは言うまでもありません.喫煙や飲酒などは体臭でわかる場合もあります.性格や物の考え方もわかれば病状説明の時に役に立ちます.化粧や香水や華美な服装は感心しませんが性格を表しているのかもしれません.
とはいえ時間もないですから一回の診察でこれらがすべてわかるはずもありません.多くの場合,医師も患者もお互いを良く知らないまま画像診断に頼るということになります.しかし,コミュニケーションがうまくいかず,なんとなくぎくしゃくすることもあります.そして,その説明で満足できないと患者は不満をかかえ,医師もその不満顔に気づけばよいのでしょうが,気がつかなければなにか釈然としないまま診察を終えることになるのです.
上手な受診の仕方があるとすれば,まずは見た目をよくすることではないでしょうか.別にきれいな服装とか若くみえるということではなく,医師を信用して自分の困っていることを正直に伝える気持ちをもつことではないでしょうか.その際に自分の体におきた異変を時間にしたがって順番に話してもらえれば医師が病状を理解するうえで非常に有用で,医師もよく理解してくれることになると思います.最初からMRIを撮って欲しいなどという患者さんもいますが,これでは患者さん自ら医師とのコミュニケーションを放棄しているようなものではないでしょうか.
さて,話がちょっと表題から脱線してしまいましたが,手術をする時の見た目で私が一番大事ではないかと思っているのは実は見かけの年齢だったりします.先日も破裂脳動脈瘤の患者さんの手術をしました.実際の年齢は70歳なのに見かけは80歳くらいでした.手術の体位をとるにも背骨が曲がっていて横に転がりそうになるほどです.脳は萎縮していて動脈硬化で血管も黄色く硬くなっています.外気にさらしただけで脳が重力でつぶれて血管が閉塞して脳梗塞になるのではないかと心配になります.
どうにか手術が終わっても今度はなかなか麻酔から醒めません.呼吸も浅いので全身麻酔のために入れた挿管チューブを抜くことができません.脳幹梗塞にでもなったんじゃないかと明け方まで心配しました.心臓も弱っているので点滴の量にも細心の注意が必要です.熱がでると肺炎になったんじゃないかと心配になります.やっと挿管チューブを抜いても長時間の手術がこたえたのか元気がありません.
週が変わって今朝,回診したらとっても元気になっていました.熱も下がったようです.私も手術にはそれなりに自信があったとはいえ何が起こるかわからないのが術後ですから今回もずいぶん心配しました.やっぱり病気とはいえ患者さんは見た目だけでも若くて元気そうなほうが少しは安心できるというのが執刀医の本音ではないでしょうか.
ところで,外来の診察室で患者さんが私を見て経験豊富な医者かどうかみきわめる間に私も患者さんがどんな人か観察します.現病歴はもちろん既往歴を問診することは基本ですが,実は診察は診察室に患者さんが入ってくる時にすでに始まっているのです.脳神経外科専門医必読の教科書を書いた太田富雄先生の著書である『脳神経外科患者の診かた』という本の外来診察の手順の項にも,冒頭に「部屋に入り診察の椅子に座るまでの動作に,まず注意を払う.歩き方,表情,礼儀作法など重要な情報源である.」と書かれています.
できるだけ丁寧な言葉で時間をかけながら患者の人となりを念入りに観察するわけです.その際,カルテにある性別,住所,年齢,本人や家族の職業などが大変参考になることは言うまでもありません.喫煙や飲酒などは体臭でわかる場合もあります.性格や物の考え方もわかれば病状説明の時に役に立ちます.化粧や香水や華美な服装は感心しませんが性格を表しているのかもしれません.
とはいえ時間もないですから一回の診察でこれらがすべてわかるはずもありません.多くの場合,医師も患者もお互いを良く知らないまま画像診断に頼るということになります.しかし,コミュニケーションがうまくいかず,なんとなくぎくしゃくすることもあります.そして,その説明で満足できないと患者は不満をかかえ,医師もその不満顔に気づけばよいのでしょうが,気がつかなければなにか釈然としないまま診察を終えることになるのです.
上手な受診の仕方があるとすれば,まずは見た目をよくすることではないでしょうか.別にきれいな服装とか若くみえるということではなく,医師を信用して自分の困っていることを正直に伝える気持ちをもつことではないでしょうか.その際に自分の体におきた異変を時間にしたがって順番に話してもらえれば医師が病状を理解するうえで非常に有用で,医師もよく理解してくれることになると思います.最初からMRIを撮って欲しいなどという患者さんもいますが,これでは患者さん自ら医師とのコミュニケーションを放棄しているようなものではないでしょうか.
さて,話がちょっと表題から脱線してしまいましたが,手術をする時の見た目で私が一番大事ではないかと思っているのは実は見かけの年齢だったりします.先日も破裂脳動脈瘤の患者さんの手術をしました.実際の年齢は70歳なのに見かけは80歳くらいでした.手術の体位をとるにも背骨が曲がっていて横に転がりそうになるほどです.脳は萎縮していて動脈硬化で血管も黄色く硬くなっています.外気にさらしただけで脳が重力でつぶれて血管が閉塞して脳梗塞になるのではないかと心配になります.
どうにか手術が終わっても今度はなかなか麻酔から醒めません.呼吸も浅いので全身麻酔のために入れた挿管チューブを抜くことができません.脳幹梗塞にでもなったんじゃないかと明け方まで心配しました.心臓も弱っているので点滴の量にも細心の注意が必要です.熱がでると肺炎になったんじゃないかと心配になります.やっと挿管チューブを抜いても長時間の手術がこたえたのか元気がありません.
週が変わって今朝,回診したらとっても元気になっていました.熱も下がったようです.私も手術にはそれなりに自信があったとはいえ何が起こるかわからないのが術後ですから今回もずいぶん心配しました.やっぱり病気とはいえ患者さんは見た目だけでも若くて元気そうなほうが少しは安心できるというのが執刀医の本音ではないでしょうか.
よく見ればかわいいカモ
2006年6月23日 私の写真集 コメント (2)
カモじゃなくてカラスの話.先日の下山中の転倒事故の少し前にこのカラスの写真を撮っていたのだが,転倒のショックのせいかすっかり忘れていた.
ところでこのカラス,私が近づいてもまったく逃げるそぶりがないのである.そして,とまっている木の枝をつついてギャーと鳴いたので「もう一度.」と声をかけて写真を撮ろうとすると本当にもう一度枝をつついてギャーと鳴いてくれた.面白いので何度も「もう一度.」と言いながら写真を撮ったら怒ったのかギャギャギャと鳴いて枝についていた葉をくちばしで噛み切ってばらばらにしてしまった.なにかちょっと恐くなって私が後ずさりしたら,今度は私の後ろの木の枝に飛び移ってきた.こちらを見てニヤッと笑ったような気がしたのでもう一枚撮ったのがこの写真.
こんなに近くでカラスを見たことはなかったが,よく見ればなかなか愛嬌のある顔つきをしているような気がする.
皆さま今週もご苦労さまでした.週末も天気は悪そうですが,風邪などひかないようお体ご慈愛くださいませ.では,ブログランキングのため[HOME]↑のクリックをよろしくお願いします.
ところでこのカラス,私が近づいてもまったく逃げるそぶりがないのである.そして,とまっている木の枝をつついてギャーと鳴いたので「もう一度.」と声をかけて写真を撮ろうとすると本当にもう一度枝をつついてギャーと鳴いてくれた.面白いので何度も「もう一度.」と言いながら写真を撮ったら怒ったのかギャギャギャと鳴いて枝についていた葉をくちばしで噛み切ってばらばらにしてしまった.なにかちょっと恐くなって私が後ずさりしたら,今度は私の後ろの木の枝に飛び移ってきた.こちらを見てニヤッと笑ったような気がしたのでもう一枚撮ったのがこの写真.
こんなに近くでカラスを見たことはなかったが,よく見ればなかなか愛嬌のある顔つきをしているような気がする.
皆さま今週もご苦労さまでした.週末も天気は悪そうですが,風邪などひかないようお体ご慈愛くださいませ.では,ブログランキングのため[HOME]↑のクリックをよろしくお願いします.
『 -- 療養型の収益率8・3% 一般病院の6倍強 --
長期療養向け患者が多く入院する療養型病院は収入に対する黒字の割合(収益率)が8・3%と、一般の病院の1・3%の6倍強となっていることが21日、厚生労働省の2005年6月実施の医療経済実態調査で分かった。
病院には急性期の医療を担う一般病床のほか、慢性病などを抱えた療養病床があるが、今回新たに全病床のうち療養病床が6割以上を占める療養型病院の収支が判明し、初めて公表された。
公的病院などを除く医療法人の収支を見ると、一般病院の場合、収入に対する費用の割合は給与費52・1%、医薬品11・8%など全体で98・7%。この結果、収益率は1・3%となった。
一方、療養型は費用のうち医薬品が6・2%と一般に比べ低く、費用が収入に占める割合は91・7%と低く抑えられ、収益率は8・3%と高水準となった。
これまで療養病床は高齢化の進展を背景に、高齢者医療や慢性期医療を支える病床として位置付けられてきたが、今回の調査で高収益体質が明らかになり、7月からの診療報酬を引き下げる材料となりそうだ。』
療養病床の削減と診療報酬改定が終わったばかりなのにそれ以前の収益率を今頃だしてくるのは何故なのだろうか.療養型病床の認定を受ける時に病棟の増改築をやった病院がほとんどのはずなのにたった数年でまた制度の変更をされ,まだ借金の返済も終わらないうちに今回の改定で病棟を閉鎖したところも多いというのに.官庁の優越的地位の乱用というものはわが国では問題にされないということだろう.
厚生労働省は本気で健康保険医療を崩壊させようとしているのではないだろうか.一般の病院の1・3%の6倍強というと高く聞こえるかもしれないが,一般の病院の収益率が1・3%しかなかったということは今回の改定では赤字に転落しているはずで,これで医療費削減をするのは無謀なのではないのだろうか.勤務医の立場で言わせてもらえば,その高い収益率というのも厚生労働省が意図的に労働基準法を医師に適用せずに医療コストを下げるという不公正な手段を用いて達成されているということも忘れるべきではないだろう.
医療機関に自ら健康保険診療を放棄させた挙げ句にすべてを医者の責任にして厚生労働省の責任を隠ぺいするという常套手段で健康保険制度を崩壊させようとしているのかもしれない.そうなれば困るのは高額な医療費を直接負担する患者ということになるだろうが,それでいいのだろうか.最近のB型C型肝炎の訴訟に対する厚生労働省の態度をみてもまったく無責任な彼らのやることなど信用できないと思うのは私だけだろうか.
長期療養向け患者が多く入院する療養型病院は収入に対する黒字の割合(収益率)が8・3%と、一般の病院の1・3%の6倍強となっていることが21日、厚生労働省の2005年6月実施の医療経済実態調査で分かった。
病院には急性期の医療を担う一般病床のほか、慢性病などを抱えた療養病床があるが、今回新たに全病床のうち療養病床が6割以上を占める療養型病院の収支が判明し、初めて公表された。
公的病院などを除く医療法人の収支を見ると、一般病院の場合、収入に対する費用の割合は給与費52・1%、医薬品11・8%など全体で98・7%。この結果、収益率は1・3%となった。
一方、療養型は費用のうち医薬品が6・2%と一般に比べ低く、費用が収入に占める割合は91・7%と低く抑えられ、収益率は8・3%と高水準となった。
これまで療養病床は高齢化の進展を背景に、高齢者医療や慢性期医療を支える病床として位置付けられてきたが、今回の調査で高収益体質が明らかになり、7月からの診療報酬を引き下げる材料となりそうだ。』
療養病床の削減と診療報酬改定が終わったばかりなのにそれ以前の収益率を今頃だしてくるのは何故なのだろうか.療養型病床の認定を受ける時に病棟の増改築をやった病院がほとんどのはずなのにたった数年でまた制度の変更をされ,まだ借金の返済も終わらないうちに今回の改定で病棟を閉鎖したところも多いというのに.官庁の優越的地位の乱用というものはわが国では問題にされないということだろう.
厚生労働省は本気で健康保険医療を崩壊させようとしているのではないだろうか.一般の病院の1・3%の6倍強というと高く聞こえるかもしれないが,一般の病院の収益率が1・3%しかなかったということは今回の改定では赤字に転落しているはずで,これで医療費削減をするのは無謀なのではないのだろうか.勤務医の立場で言わせてもらえば,その高い収益率というのも厚生労働省が意図的に労働基準法を医師に適用せずに医療コストを下げるという不公正な手段を用いて達成されているということも忘れるべきではないだろう.
医療機関に自ら健康保険診療を放棄させた挙げ句にすべてを医者の責任にして厚生労働省の責任を隠ぺいするという常套手段で健康保険制度を崩壊させようとしているのかもしれない.そうなれば困るのは高額な医療費を直接負担する患者ということになるだろうが,それでいいのだろうか.最近のB型C型肝炎の訴訟に対する厚生労働省の態度をみてもまったく無責任な彼らのやることなど信用できないと思うのは私だけだろうか.
健康保険制度の崩壊は地方から?
2006年6月22日 医療の問題 コメント (3)『 -- 75歳以上は独立医療制度 政管健保は県単位に運営 --
75歳以上が加入する独立した「後期高齢者医療制度」が2008年4月に創設され、医療費の公定価格である診療報酬も別建てになる。都道府県内の全市町村が参加する広域連合が運営し、患者の窓口負担を除いた財源は高齢者本人の保険料1割や現役世代からの支援金4割、税金5割で賄う仕組みだ。
これに伴い、健康保険組合加入者などの扶養家族でこれまで保険料を負担していない人も含めて、全員が保険料を支払う。医療費のコスト意識を持ってもらうため、地域の医療費によって異なった保険料になる。
厚生労働省の試算では、全国平均で見ると厚生年金を年208万円受給している場合の保険料は月6200円、基礎年金(年79万円)だけの場合は月900円。扶養家族になっている高齢者については、激変緩和措置として加入から2年間は軽減される。原則、年金からの天引きになる。
中小企業の会社員が加入する政府管掌健康保険も08年10月に再編。現在は社会保険庁が全国一本で運営しているが、新たに発足する「全国健康保険協会」が都道府県ごとの支部で運営する。
保険料率も同様に地域の医療費に見合った額になる。試算では、現在は全国一律の8・2%(労使折半)が、最低の長野県で7・6%、最高の北海道で8・7%となる。』
今後は健康保険制度の運営は地方単位にするということなのだろう.医療費は地域差が大きく,最多の福岡県と最少の長野県では1.5倍も違うそうだから医療費の多い地域を狙い撃ちにして抑制させようということなのだろう.医療費適正化計画とかいうのを策定させて達成が危ぶまれるときは,その都道府県だけの診療報酬を引き下げる特例措置も盛り込まれたそうだ.診療報酬を引き下げて病院の数を減らせば医療費が抑制されるとでも思っているのだろうか.
保険料率も地域によって格差が生じることが明らかになった.地域の拠点病院に医師を集約しても労働時間や訴訟リスクの軽減にはならないだろうから地方の医師不足もさらに加速することになるのだろう.今後は都道府県単位での勝ち負けがより鮮鋭化し地方の住民の生活や健康が脅かされることになるような気がするのだがどうだろうか.
75歳以上が加入する独立した「後期高齢者医療制度」が2008年4月に創設され、医療費の公定価格である診療報酬も別建てになる。都道府県内の全市町村が参加する広域連合が運営し、患者の窓口負担を除いた財源は高齢者本人の保険料1割や現役世代からの支援金4割、税金5割で賄う仕組みだ。
これに伴い、健康保険組合加入者などの扶養家族でこれまで保険料を負担していない人も含めて、全員が保険料を支払う。医療費のコスト意識を持ってもらうため、地域の医療費によって異なった保険料になる。
厚生労働省の試算では、全国平均で見ると厚生年金を年208万円受給している場合の保険料は月6200円、基礎年金(年79万円)だけの場合は月900円。扶養家族になっている高齢者については、激変緩和措置として加入から2年間は軽減される。原則、年金からの天引きになる。
中小企業の会社員が加入する政府管掌健康保険も08年10月に再編。現在は社会保険庁が全国一本で運営しているが、新たに発足する「全国健康保険協会」が都道府県ごとの支部で運営する。
保険料率も同様に地域の医療費に見合った額になる。試算では、現在は全国一律の8・2%(労使折半)が、最低の長野県で7・6%、最高の北海道で8・7%となる。』
今後は健康保険制度の運営は地方単位にするということなのだろう.医療費は地域差が大きく,最多の福岡県と最少の長野県では1.5倍も違うそうだから医療費の多い地域を狙い撃ちにして抑制させようということなのだろう.医療費適正化計画とかいうのを策定させて達成が危ぶまれるときは,その都道府県だけの診療報酬を引き下げる特例措置も盛り込まれたそうだ.診療報酬を引き下げて病院の数を減らせば医療費が抑制されるとでも思っているのだろうか.
保険料率も地域によって格差が生じることが明らかになった.地域の拠点病院に医師を集約しても労働時間や訴訟リスクの軽減にはならないだろうから地方の医師不足もさらに加速することになるのだろう.今後は都道府県単位での勝ち負けがより鮮鋭化し地方の住民の生活や健康が脅かされることになるような気がするのだがどうだろうか.
福井俊彦総裁と村上世彰はどっちが善人か?
2006年6月21日 社会の問題『 -- 福井総裁、運用益1473万円 報酬の3割返上 --
日本銀行の福井俊彦総裁は20日、村上ファンドへの投資問題について日銀本店で記者会見し、当初は1000万円だった元本が05年末時点で2231万円に膨らんだ、と発表した。総裁就任後の投資継続は「不適切だった」と認め、報酬月額の3割を半年間返上すると表明したが、「批判を受け止めて職務を全うしたい」と辞任する考えはないことを改めて強調した。日銀から報告を受けた衆院委員会は22日の閉会中審査で、この問題を引き続き取り上げることを決めた。
福井氏の説明によると、富士通総研理事長時代の99年10月に1000万円を投資。まだ理事長だった01年春に、ファンドの改組でいったん242万円の利益を得た後、元本を現在のファンドに再投資した。現ファンドでの運用益は昨年末時点で1231万円で、運用益は当初からの総額で1473万円になる。福井氏は「巨額にもうかっている感じはない」と13日の国会で答弁していた。
福井氏は、受け取った242万円に加え、6月末時点での残高から手数料や税金を払った後の全額を、慈善団体などに寄付する意向だ。元本を含めて放棄する理由について「(投資先が)すべて適正であれば、元本まで返す必要はなかったかもしれない」と、自らの資金が村上世彰容疑者によるインサイダー取引に回った可能性を否定できない点を挙げた。
また、保有している株式は、商船三井など社外取締役だった3社計2万株と、顧問を務めた新日鉄など2社計1万5千株。20日時点での時価合計額は約3400万円になり、福井氏が総裁に就任した03年3月時点と比べて2.5倍に増加。いずれも民間在任中に取得し、総裁就任後の売買はしていないとしたが、透明性を高めるために信託などの措置をとる考えを示した。
報酬の自主返上は、一連の行為が「内部ルールに違反はしていないものの、国民の信頼を損ねたけじめをつける」ために自ら決断したと述べた。そのうえで「反省すべきは反省し、批判は率直に受け止めて職責を全うする」と、改めて強い意欲を示した。
さらに、総裁ら政策委員9人に理事、監事を加えた役員の金融取引に関する内部規定を早急に見直すと表明。武藤敏郎副総裁を議長とする検討会議を設置してこの日初会合を開き、外部有識者の意見を聞きながら、外国の中央銀行のルールを参考に決める方針だ。
日銀は一連の対応でけじめとする考えだが、総裁辞任を求める方針の民主党は22日の衆院財務金融委員会に福井氏を呼び、改めてトップとしての適格性を問う姿勢だ。』
村上ファンドのやったことはインサイダー取引で証券取引法上の違法行為.福井俊彦総裁の場合は内規にも違反していないが道義的な責任.どっちが悪質なのかは法律上は明らかだ.では,人間としてどちらが良心的なのだろうかという問題になると議論が分かれるのではないだろうか.
私は本人が総裁就任後の投資継続は「不適切だった」と認め、報酬月額の3割を半年間返上し現ファンドでの運用益を元本を含めて放棄するというペナルティを自らに課した点を評価してあげていいと思う.相田みつをさんが言うところの「あやまりっぷりのいい人間」が福井俊彦総裁で,村上世彰は「べんかいのうまい人間」なのではないでしょうか.どっちでもなくて男として情けないのはやっぱりホ○エ○ンでしょうか.
本人がちゃんと反省しているのだったら総裁辞任を求める方針の民主党も勢いづいてやぶ蛇にならないように気をつけたほうがいいと思うのですが...
日本銀行の福井俊彦総裁は20日、村上ファンドへの投資問題について日銀本店で記者会見し、当初は1000万円だった元本が05年末時点で2231万円に膨らんだ、と発表した。総裁就任後の投資継続は「不適切だった」と認め、報酬月額の3割を半年間返上すると表明したが、「批判を受け止めて職務を全うしたい」と辞任する考えはないことを改めて強調した。日銀から報告を受けた衆院委員会は22日の閉会中審査で、この問題を引き続き取り上げることを決めた。
福井氏の説明によると、富士通総研理事長時代の99年10月に1000万円を投資。まだ理事長だった01年春に、ファンドの改組でいったん242万円の利益を得た後、元本を現在のファンドに再投資した。現ファンドでの運用益は昨年末時点で1231万円で、運用益は当初からの総額で1473万円になる。福井氏は「巨額にもうかっている感じはない」と13日の国会で答弁していた。
福井氏は、受け取った242万円に加え、6月末時点での残高から手数料や税金を払った後の全額を、慈善団体などに寄付する意向だ。元本を含めて放棄する理由について「(投資先が)すべて適正であれば、元本まで返す必要はなかったかもしれない」と、自らの資金が村上世彰容疑者によるインサイダー取引に回った可能性を否定できない点を挙げた。
また、保有している株式は、商船三井など社外取締役だった3社計2万株と、顧問を務めた新日鉄など2社計1万5千株。20日時点での時価合計額は約3400万円になり、福井氏が総裁に就任した03年3月時点と比べて2.5倍に増加。いずれも民間在任中に取得し、総裁就任後の売買はしていないとしたが、透明性を高めるために信託などの措置をとる考えを示した。
報酬の自主返上は、一連の行為が「内部ルールに違反はしていないものの、国民の信頼を損ねたけじめをつける」ために自ら決断したと述べた。そのうえで「反省すべきは反省し、批判は率直に受け止めて職責を全うする」と、改めて強い意欲を示した。
さらに、総裁ら政策委員9人に理事、監事を加えた役員の金融取引に関する内部規定を早急に見直すと表明。武藤敏郎副総裁を議長とする検討会議を設置してこの日初会合を開き、外部有識者の意見を聞きながら、外国の中央銀行のルールを参考に決める方針だ。
日銀は一連の対応でけじめとする考えだが、総裁辞任を求める方針の民主党は22日の衆院財務金融委員会に福井氏を呼び、改めてトップとしての適格性を問う姿勢だ。』
村上ファンドのやったことはインサイダー取引で証券取引法上の違法行為.福井俊彦総裁の場合は内規にも違反していないが道義的な責任.どっちが悪質なのかは法律上は明らかだ.では,人間としてどちらが良心的なのだろうかという問題になると議論が分かれるのではないだろうか.
私は本人が総裁就任後の投資継続は「不適切だった」と認め、報酬月額の3割を半年間返上し現ファンドでの運用益を元本を含めて放棄するというペナルティを自らに課した点を評価してあげていいと思う.相田みつをさんが言うところの「あやまりっぷりのいい人間」が福井俊彦総裁で,村上世彰は「べんかいのうまい人間」なのではないでしょうか.どっちでもなくて男として情けないのはやっぱりホ○エ○ンでしょうか.
本人がちゃんと反省しているのだったら総裁辞任を求める方針の民主党も勢いづいてやぶ蛇にならないように気をつけたほうがいいと思うのですが...
『 -- 優しい心で冷たいメスを 心臓移植の和田氏が学生に --
1968年に国内で初めて心臓移植手術を行い、手術の是非が論議を招いた札幌医大の和田寿郎(わだ・じゅろう)名誉教授(84)が18日、手術を行った同大で学生らに講演、「手には冷たいメスを握ろうとも、優しい心を持ってほしい」などと訴えた。
講演は大学祭の一環。実行委員会によると、和田氏が学生に講演することは珍しく、熱心な依頼で実現したという。
和田氏は講演で、さまざまな問題が指摘されている現在の医療現場について「心の勉強が足りていない」と倫理面の重要性を指摘。「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」などと強調した。
問題視された心臓移植手術については「(手術後に)世界全部を敵に回すことになった」と振り返ったのにとどまった。
講演は約300人が傍聴し熱心に耳を傾けた。北海道大医学部5年の庄司哲明(しょうじ・てつあき)さん(23)は「後進のためになろうという意思を感じた。期待に応えたい」と話した。
和田氏は同大教授だった68年8月に心臓移植手術を執刀したが患者は83日目に死亡。臓器提供者の死の判定をめぐって刑事告発され不起訴となったが、その後の臓器移植や脳死論議などに大きな影響を及ぼした。』
若い医師に「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」と言ったところで理解できるものはほとんどいないだろう.若い頃は誰でも向学心や功名心という不純な動機が困難な仕事に対するエネルギー源になるのであって,和田寿郎氏だってきっとそうだったに違いない.
『衣食足りて礼節を知る』というが,人間は昔から生活が安定してはじめて良い人間ということを意識できるものなのだろう.しかし,人間の欲は際限がないもので,最近のニュースに出てくる人たちは私から見ればすでに十分お金持ちだが礼節には至らないようだ.そう言えば世界一お金持ちのビル・ゲイツ氏がマイクロソフトを引退して慈善事業にお金と時間をかけるそうだが,彼が50歳だそうだから,私もそれまでにはお金の心配をせずに「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」などと言えるようになりたいものだ.
1968年に国内で初めて心臓移植手術を行い、手術の是非が論議を招いた札幌医大の和田寿郎(わだ・じゅろう)名誉教授(84)が18日、手術を行った同大で学生らに講演、「手には冷たいメスを握ろうとも、優しい心を持ってほしい」などと訴えた。
講演は大学祭の一環。実行委員会によると、和田氏が学生に講演することは珍しく、熱心な依頼で実現したという。
和田氏は講演で、さまざまな問題が指摘されている現在の医療現場について「心の勉強が足りていない」と倫理面の重要性を指摘。「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」などと強調した。
問題視された心臓移植手術については「(手術後に)世界全部を敵に回すことになった」と振り返ったのにとどまった。
講演は約300人が傍聴し熱心に耳を傾けた。北海道大医学部5年の庄司哲明(しょうじ・てつあき)さん(23)は「後進のためになろうという意思を感じた。期待に応えたい」と話した。
和田氏は同大教授だった68年8月に心臓移植手術を執刀したが患者は83日目に死亡。臓器提供者の死の判定をめぐって刑事告発され不起訴となったが、その後の臓器移植や脳死論議などに大きな影響を及ぼした。』
若い医師に「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」と言ったところで理解できるものはほとんどいないだろう.若い頃は誰でも向学心や功名心という不純な動機が困難な仕事に対するエネルギー源になるのであって,和田寿郎氏だってきっとそうだったに違いない.
『衣食足りて礼節を知る』というが,人間は昔から生活が安定してはじめて良い人間ということを意識できるものなのだろう.しかし,人間の欲は際限がないもので,最近のニュースに出てくる人たちは私から見ればすでに十分お金持ちだが礼節には至らないようだ.そう言えば世界一お金持ちのビル・ゲイツ氏がマイクロソフトを引退して慈善事業にお金と時間をかけるそうだが,彼が50歳だそうだから,私もそれまでにはお金の心配をせずに「良い医者になるには良い人間でなくてはならない」などと言えるようになりたいものだ.
他人を気にして足元をすくわれた?
2006年6月19日 私の写真集
久しぶりに天気が良くなったので山に登った.いつも登っているとお互いに顔見知りになる人もいる.「おはようございます.」と声を掛け合うはマナーだと思うが,おなじ事でも色々な人がいるものだ.アイコンタクトをとってさわやかに言う人も入れば,下を向いて息を切らせながら言う人もいる.無言のままの人も当然いる.
最近見かけるようになった70歳くらいの男性は「おはよう.」と偉そうに挨拶する.私は「おはようございます.」と言ってすれ違うのみだが,その日は「あー疲れたな.」と偉そうにもう一言.私に「ご苦労様です.」とでも言ってもらいたかったのだろうか.思わず笑いながら降りていると今度は立ち止まって丁寧に頭を下げて「おはようございます.」という35歳くらいの男性が現れた.世の中には本当にいろんな人がいるものだ.普段はどんな仕事をしている人たちだろうかなどと考えながら歩いてちょっと油断したら泥に足元をすくわれつるっと滑って転倒してしまった.カメラはなんとか救ったものの右上腕を階段の丸太に思いきりぶつけてしまった.痛かったがお尻が泥だらけになった自分に思わず笑ってしまった.
人生何が起こるかわからない.今週は『謙虚に注意深く』を仕事の目標にしよう.
最近見かけるようになった70歳くらいの男性は「おはよう.」と偉そうに挨拶する.私は「おはようございます.」と言ってすれ違うのみだが,その日は「あー疲れたな.」と偉そうにもう一言.私に「ご苦労様です.」とでも言ってもらいたかったのだろうか.思わず笑いながら降りていると今度は立ち止まって丁寧に頭を下げて「おはようございます.」という35歳くらいの男性が現れた.世の中には本当にいろんな人がいるものだ.普段はどんな仕事をしている人たちだろうかなどと考えながら歩いてちょっと油断したら泥に足元をすくわれつるっと滑って転倒してしまった.カメラはなんとか救ったものの右上腕を階段の丸太に思いきりぶつけてしまった.痛かったがお尻が泥だらけになった自分に思わず笑ってしまった.
人生何が起こるかわからない.今週は『謙虚に注意深く』を仕事の目標にしよう.
小さな花には小さな虫が
2006年6月16日 医療の問題 コメント (2)
なんという名前かわからないのですが,登山道の脇に直径5mmくらいの小さな花が集まって咲いている木がありました.
よく見るとその小さな花にこれまた小さな昆虫が何匹も来ているではありませんか.(何匹いるかわかりますか?)
地球に群がる人間も宇宙から見たらこの虫たちみたいなものかもしれないですね.
今週もご苦労さま.天気が悪いので週末はゆっくり休養しましょう.
よく見るとその小さな花にこれまた小さな昆虫が何匹も来ているではありませんか.(何匹いるかわかりますか?)
地球に群がる人間も宇宙から見たらこの虫たちみたいなものかもしれないですね.
今週もご苦労さま.天気が悪いので週末はゆっくり休養しましょう.
判決に疑問があるのだが
2006年6月16日 医療の問題『 -- 青戸病院事件の判決要旨 --
東京地裁が15日、青戸病院の元医師3人に有罪を言い渡した判決の要旨は次の通り。
【3人の技術】
前立腺がん摘出の腹腔(ふくくう)鏡手術は開腹術に比べ技術的困難性が高く、生命身体への危険性が高い。斑目旬(まだらめ・じゅん)被告ら3人の中には、前立腺がん摘出の腹腔鏡手術を術者として経験したことのある人は1人もいなかった。長谷川太郎(はせがわ・たろう)、前田重孝(まえだ・しげたか)両被告は手術に立ち会った経験すらなかった。
3人は、自分たちの技術が手術を安全に施行できるか否かをまったく確認せず、出血管理の困難さについて、事前に一切考慮しなかった。高度先進医療の申請などの手続きもとらなかった。
3人は、開腹術に移行すれば安全に手術を終えることができるなどと安易に考え、指導医を呼ばず、どのような場合開腹術に移行すべきかなどを検討していなかった。
手術では組織をいたずらに傷つけて出血させ、最も基本的な出血管理もせず続行した。3人だけで手術を安全にできる最低限度の能力がなかったことは明らかだ。
【死亡との因果関係】
患者は低酸素脳症が原因の肺炎によって死亡した。知識、技術や経験がない3人が患者の全身状態を全く把握せずに手術を続けて死亡させたことから、その過失と死亡との間に因果関係があることは明らかだ。また麻酔医の輸血措置などについては非常識な行為だったとまでは認められず、因果関係を否定するほどの特殊事情はない。
被告らは死亡は麻酔医の輸血の遅れによるものだとして、あたかも出血管理に責任がないように主張している。しかし出血管理が麻酔医だけの責任でないことは明らか。被告らに責任がないとする根拠は認められない。
【量刑の理由】
3人に手術を安全に施行する能力はなく、適切な鉗子(かんし)操作ができず組織を傷つけ、出血管理もできなかった。自分たちの能力を過信し、安全対策を講じないままの手術で、無謀というほかなく過失の程度は大きい。必要性、緊急性がないのにこの方法を選択し、何度も開腹術へ移行する機会がありながらこの方法を続行した経過をみれば、少しでもこの方法の経験を積みたいという自己中心的な利益を優先していたことも否定できず、患者の安全と利益の確保という医師としての最も基本的な責務を忘れた行為は強い非難に値する。無謀な行為が真剣に医療に取り組む多くの医師に与えた委縮的効果も見過ごせず、責任は重い。
泌尿器科診療部長、同副部長らが監督責任を果たしていたとはいえず、その責任は軽視できない。また手術後、慈恵医大と青戸病院では死因を心不全と偽る工作を行うなど、組織ぐるみで事件の隠ぺいを図ろうとしたことが認められる。患者の全身管理を第1次的に担う麻酔医が必要な情報を被告らに伝えなかったことも死に至らしめた大きな要因となっている。
【結論】
刑事責任は重いが、責任を全面的に負わせることが相当でない事情もあり、今回に限り刑の執行を猶予するのが相当だ。』
患者は低酸素脳症が原因の肺炎によって死亡したとあるが,直接の死因が肺炎であるのであれば過失致死になるのだろうか.肺炎で死亡したのならなぜ慈恵医大と青戸病院では死因を心不全と偽る必要があったのだろうか.また,今回に限り刑の執行を猶予するのが相当だというのはどういう意味なのだろうか.他にも責任をとるべきものがいるとすればそれは誰なのか.
こういった点がこの判決要旨を読んでいて疑問だったのだがどうなのだろうか.相手が裁判官では解説は期待できない.前立腺がん摘出の腹腔鏡手術を術者として経験したことがないのに手術をするなんてことは私の常識では考えられないことなので,脳外科医としてはこの事件の判決が真剣に医療に取り組む多くの医師に委縮的効果を与えるとも思えない.少なくとも自分の患者さんにとって最適な治療を患者さんの理解と同意のもとに行っているのであればここまでひどい話にはならないと思う.
今回の事件はむしろ手術を受ける患者と家族にとって学ぶべきことが多いのではないだろうか.最近はテレビや週刊誌で医療機関や名医そして最新の治療に関する情報があふれているが,私はそんなものは信用しないほうがいいと思っている.それよりも自分の目の前にいる主治医の話を良く聞いて治療法を選択し,手術をしてくれる執刀医に手術の適応や手術法の話を良く聞いて信頼関係を築くことが一番だと思う.
自分たちにとって都合いいように話を聞いて,結果が悪いと訴えるというのではライブドアに投資しておきながら後で損害賠償を請求するようなものではないだろうか.確かに外科医としてあるまじき手術であったと思うが,そんな医師を信用してしまった患者や家族にも反省すべき点はあったようにも思えるのである.少なくとも私が患者なら手術前にもっと情報収集をしただろうとは思う.
長女は医師3人に対し「二度と医師をしてほしくない。1日でも長く刑務所にいて、罪を考えてほしい」とコメントしていたが,私は「死亡させたことは申し訳ないが、麻酔医の過失」と無罪を主張したという記事を見て,その外科医としてはあまりに情けない言い訳に『医師である以前に人として責任感に欠けているのではないか』という思いを禁じえなかった.
東京地裁が15日、青戸病院の元医師3人に有罪を言い渡した判決の要旨は次の通り。
【3人の技術】
前立腺がん摘出の腹腔(ふくくう)鏡手術は開腹術に比べ技術的困難性が高く、生命身体への危険性が高い。斑目旬(まだらめ・じゅん)被告ら3人の中には、前立腺がん摘出の腹腔鏡手術を術者として経験したことのある人は1人もいなかった。長谷川太郎(はせがわ・たろう)、前田重孝(まえだ・しげたか)両被告は手術に立ち会った経験すらなかった。
3人は、自分たちの技術が手術を安全に施行できるか否かをまったく確認せず、出血管理の困難さについて、事前に一切考慮しなかった。高度先進医療の申請などの手続きもとらなかった。
3人は、開腹術に移行すれば安全に手術を終えることができるなどと安易に考え、指導医を呼ばず、どのような場合開腹術に移行すべきかなどを検討していなかった。
手術では組織をいたずらに傷つけて出血させ、最も基本的な出血管理もせず続行した。3人だけで手術を安全にできる最低限度の能力がなかったことは明らかだ。
【死亡との因果関係】
患者は低酸素脳症が原因の肺炎によって死亡した。知識、技術や経験がない3人が患者の全身状態を全く把握せずに手術を続けて死亡させたことから、その過失と死亡との間に因果関係があることは明らかだ。また麻酔医の輸血措置などについては非常識な行為だったとまでは認められず、因果関係を否定するほどの特殊事情はない。
被告らは死亡は麻酔医の輸血の遅れによるものだとして、あたかも出血管理に責任がないように主張している。しかし出血管理が麻酔医だけの責任でないことは明らか。被告らに責任がないとする根拠は認められない。
【量刑の理由】
3人に手術を安全に施行する能力はなく、適切な鉗子(かんし)操作ができず組織を傷つけ、出血管理もできなかった。自分たちの能力を過信し、安全対策を講じないままの手術で、無謀というほかなく過失の程度は大きい。必要性、緊急性がないのにこの方法を選択し、何度も開腹術へ移行する機会がありながらこの方法を続行した経過をみれば、少しでもこの方法の経験を積みたいという自己中心的な利益を優先していたことも否定できず、患者の安全と利益の確保という医師としての最も基本的な責務を忘れた行為は強い非難に値する。無謀な行為が真剣に医療に取り組む多くの医師に与えた委縮的効果も見過ごせず、責任は重い。
泌尿器科診療部長、同副部長らが監督責任を果たしていたとはいえず、その責任は軽視できない。また手術後、慈恵医大と青戸病院では死因を心不全と偽る工作を行うなど、組織ぐるみで事件の隠ぺいを図ろうとしたことが認められる。患者の全身管理を第1次的に担う麻酔医が必要な情報を被告らに伝えなかったことも死に至らしめた大きな要因となっている。
【結論】
刑事責任は重いが、責任を全面的に負わせることが相当でない事情もあり、今回に限り刑の執行を猶予するのが相当だ。』
患者は低酸素脳症が原因の肺炎によって死亡したとあるが,直接の死因が肺炎であるのであれば過失致死になるのだろうか.肺炎で死亡したのならなぜ慈恵医大と青戸病院では死因を心不全と偽る必要があったのだろうか.また,今回に限り刑の執行を猶予するのが相当だというのはどういう意味なのだろうか.他にも責任をとるべきものがいるとすればそれは誰なのか.
こういった点がこの判決要旨を読んでいて疑問だったのだがどうなのだろうか.相手が裁判官では解説は期待できない.前立腺がん摘出の腹腔鏡手術を術者として経験したことがないのに手術をするなんてことは私の常識では考えられないことなので,脳外科医としてはこの事件の判決が真剣に医療に取り組む多くの医師に委縮的効果を与えるとも思えない.少なくとも自分の患者さんにとって最適な治療を患者さんの理解と同意のもとに行っているのであればここまでひどい話にはならないと思う.
今回の事件はむしろ手術を受ける患者と家族にとって学ぶべきことが多いのではないだろうか.最近はテレビや週刊誌で医療機関や名医そして最新の治療に関する情報があふれているが,私はそんなものは信用しないほうがいいと思っている.それよりも自分の目の前にいる主治医の話を良く聞いて治療法を選択し,手術をしてくれる執刀医に手術の適応や手術法の話を良く聞いて信頼関係を築くことが一番だと思う.
自分たちにとって都合いいように話を聞いて,結果が悪いと訴えるというのではライブドアに投資しておきながら後で損害賠償を請求するようなものではないだろうか.確かに外科医としてあるまじき手術であったと思うが,そんな医師を信用してしまった患者や家族にも反省すべき点はあったようにも思えるのである.少なくとも私が患者なら手術前にもっと情報収集をしただろうとは思う.
長女は医師3人に対し「二度と医師をしてほしくない。1日でも長く刑務所にいて、罪を考えてほしい」とコメントしていたが,私は「死亡させたことは申し訳ないが、麻酔医の過失」と無罪を主張したという記事を見て,その外科医としてはあまりに情けない言い訳に『医師である以前に人として責任感に欠けているのではないか』という思いを禁じえなかった.
国家公務員こそ愛国心教育が必要
2006年6月15日 社会の問題『 -- 「文化庁の体制、無責任」 高松塚壁画損傷で調査委 --
奈良県明日香村の高松塚古墳(特別史跡、7世紀末〜8世紀初め)で、防護服未着用の工事によってカビの大量発生を招いたとされる問題や国宝壁画の損傷事故について、文化庁の調査委員会(委員長=石澤良昭・上智大学長)が、背景に「庁内の無責任体制」や「担当課の連携不足」があったとする報告書案をまとめたことが14日、関係者の話でわかった。壁画の劣化原因はこれまで地球温暖化などとされてきたが、報告書案は同庁の体質自体を問題視し、劣化が「人災」であることを強く示唆している。
調査委は15日、東京都内で9回目の会合を開いて報告書案を調整し、今月下旬にも最終会合で成案をまとめる予定。今のところ調査委には、当時の関係者個人の責任問題に強く踏み込む考えはないが、文部科学相は調査委の結論を待って関係者の処分を検討する考えを示しており、報告書完成まで曲折も予想される。
複数の関係者によると、報告書案は(1)庁内の「無責任体制」や「思考停止的」姿勢が適切な対応を遅らせ、カビの大量発生を招いた(2)事故などを積極的に公表する努力をしなかった(3)特別史跡の墳丘を記念物課、国宝壁画を美術学芸課がそれぞれ管理する「縦割り」が、連携不足を招いた??などと指摘した。
また02年1月、電気スタンドの接触で損傷するなどした壁画を泥で補修した問題について、美術学芸課の主任文化財調査官(当時)が主導的役割を果たしたと認定。特定の個人に権限が集中していた点を問題視し、現場の専門家に頼った管理体制の甘さを指摘した。
損傷事故を部課長レベルの協議で非公表と決めたことについて、「隠蔽(いんぺい)する自覚さえなかった」とし、それ自体が隠蔽体質などと批判した。』
小学校の通知表の「愛国心」の評価項目には「我が国の歴史・政治・国際社会に関心をもち、意欲的に調べることを通して国を愛する心情をもつ」とあるようだが,我が国の歴史的文化遺産を調査する文化庁がこの程度ではまず文部科学省の公務員に愛国心教育をする必要がありそうだ.
文部科学省に限らず日本銀行の福井俊彦総裁が村上ファンドに1000万円を投資していた問題なども同様である.国家の中枢にいる者が私利私欲のためと思われても仕方がない行為を平然と行うことは国民への背信行為で国を愛しているとは思えない.国家とは国民があってこそ成り立つものなのである,相変わらず年金や医療で国民を窮地に追い込むようなことを続けている厚生労働省の職員には特に愛国心教育が必要だろう.
奈良県明日香村の高松塚古墳(特別史跡、7世紀末〜8世紀初め)で、防護服未着用の工事によってカビの大量発生を招いたとされる問題や国宝壁画の損傷事故について、文化庁の調査委員会(委員長=石澤良昭・上智大学長)が、背景に「庁内の無責任体制」や「担当課の連携不足」があったとする報告書案をまとめたことが14日、関係者の話でわかった。壁画の劣化原因はこれまで地球温暖化などとされてきたが、報告書案は同庁の体質自体を問題視し、劣化が「人災」であることを強く示唆している。
調査委は15日、東京都内で9回目の会合を開いて報告書案を調整し、今月下旬にも最終会合で成案をまとめる予定。今のところ調査委には、当時の関係者個人の責任問題に強く踏み込む考えはないが、文部科学相は調査委の結論を待って関係者の処分を検討する考えを示しており、報告書完成まで曲折も予想される。
複数の関係者によると、報告書案は(1)庁内の「無責任体制」や「思考停止的」姿勢が適切な対応を遅らせ、カビの大量発生を招いた(2)事故などを積極的に公表する努力をしなかった(3)特別史跡の墳丘を記念物課、国宝壁画を美術学芸課がそれぞれ管理する「縦割り」が、連携不足を招いた??などと指摘した。
また02年1月、電気スタンドの接触で損傷するなどした壁画を泥で補修した問題について、美術学芸課の主任文化財調査官(当時)が主導的役割を果たしたと認定。特定の個人に権限が集中していた点を問題視し、現場の専門家に頼った管理体制の甘さを指摘した。
損傷事故を部課長レベルの協議で非公表と決めたことについて、「隠蔽(いんぺい)する自覚さえなかった」とし、それ自体が隠蔽体質などと批判した。』
小学校の通知表の「愛国心」の評価項目には「我が国の歴史・政治・国際社会に関心をもち、意欲的に調べることを通して国を愛する心情をもつ」とあるようだが,我が国の歴史的文化遺産を調査する文化庁がこの程度ではまず文部科学省の公務員に愛国心教育をする必要がありそうだ.
文部科学省に限らず日本銀行の福井俊彦総裁が村上ファンドに1000万円を投資していた問題なども同様である.国家の中枢にいる者が私利私欲のためと思われても仕方がない行為を平然と行うことは国民への背信行為で国を愛しているとは思えない.国家とは国民があってこそ成り立つものなのである,相変わらず年金や医療で国民を窮地に追い込むようなことを続けている厚生労働省の職員には特に愛国心教育が必要だろう.
最近は天気がいまいちで早朝の散歩が億劫になる.健康のためと思ってはじめたのだが,散歩写真が面白くなっている.天気が悪いとただでさえ早朝は薄暗いので撮影条件が非常に厳しくなりいい写真がなかなか撮れないのが厭なのだ.でも,かえって雰囲気のある写真が撮れる時もあり本当は行くべきか行かないべきか迷いながら出ることも多い.野鳥を撮ろうと重たい望遠レンズを担いで出かけても収穫なしの時もある.
先日のよさこいソーランの時にはテレビ局のカメラマンが炎天下で立ちっぱなしで望遠レンズと重たいデジタル一眼レフで仕事をしていたし,休日の街角でもかわいい女の子を取材するインタビューアの横でPARCOの女性カメラマンがこちらはフィルム一眼レフを取り換えながら黙々と仕事をこなしていた.
まあ,それに比べれば写真で獲物がなくても別に困らないアマチュアカメラマンの私はなんと気楽なことか.なんでも結果を要求されるプロっていうのは本当に大変なものなんですね.もっとも私は手術の結果が悪いと逮捕されるかもしれないのですが,ちょっと不安になりながらも脳外科医はやめられないわけで,また散歩写真でストレス解消したくなるのです.私のひとときの休息がこの一枚というわけです.
先日のよさこいソーランの時にはテレビ局のカメラマンが炎天下で立ちっぱなしで望遠レンズと重たいデジタル一眼レフで仕事をしていたし,休日の街角でもかわいい女の子を取材するインタビューアの横でPARCOの女性カメラマンがこちらはフィルム一眼レフを取り換えながら黙々と仕事をこなしていた.
まあ,それに比べれば写真で獲物がなくても別に困らないアマチュアカメラマンの私はなんと気楽なことか.なんでも結果を要求されるプロっていうのは本当に大変なものなんですね.もっとも私は手術の結果が悪いと逮捕されるかもしれないのですが,ちょっと不安になりながらも脳外科医はやめられないわけで,また散歩写真でストレス解消したくなるのです.私のひとときの休息がこの一枚というわけです.
政治のツケは国民の命で払えってこと?
2006年6月14日 医療の問題『 -- 医療制度改革法が成立 高齢者の負担増、入院日数削減 --
高齢者を中心とする患者の窓口負担増や、新たな高齢者医療制度の創設を柱とする医療制度改革関連法は、14日午前の参院本会議で自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。患者負担引き上げに加え、長期入院患者の療養病床削減、生活習慣病予防など、高齢化で増え続ける医療費の抑制を強く打ち出した内容で、今年10月から順次実施される。
10月には患者の負担増が始まる。70歳以上で一定所得以上の人の窓口負担は現在の2割から、働く世代と同じ3割に。療養病床に入院しているお年寄りの食費・居住費が全額自己負担になるほか、70歳未満の人も含め医療費の自己負担の月額上限が引き上げられる。
75歳以上の全員が加入する高齢者医療制度は08年4月スタート。これに合わせて一般的な所得の70〜74歳の窓口負担が1割から2割に上がる。75歳以上は1割のままだが、全国平均で月6200円程度と見込まれる新保険制度の保険料を払わなければならなくなる。
現在、全国に約38万床ある療養病床は12年度初めまでに15万床に削減。減らす23万床分は老人保健施設や有料老人ホーム、在宅療養などに移行させる。生活習慣病予防は中長期的な抑制策の軸で、40歳以上の全員を対象にした健康診断・保健指導を健康保険組合などの保険者に義務づける。
地方に抑制の責任を担わせるのも特徴。都道府県ごとに平均入院日数の短縮など数値目標を盛り込んだ医療費適正化計画を作らせる。中小企業の会社員ら約3600万人が加入する政府管掌健康保険の運営は、国から公法人の「全国健康保険協会」に移管。都道府県の支部ごとに保険料率を決めるようになる。
厚生労働省はこれらの施策で2025年の医療給付費を、現行のままの場合の56兆円から48兆円程度に抑えられるとしている。
国会審議では、野党側が患者負担増について「高齢者の家計は大きな打撃を受ける。行き過ぎた受診抑制を招く」と批判。療養病床削減には与党からも、行き場のない高齢者が出かねないと心配する声があがった。
このため参院厚生労働委員会での採決では、低所得者への配慮や、療養病床再編に対する支援策の充実などを盛り込んだ付帯決議がつけられたが、どこまで実効性があるかは未知数だ。』
団塊の世代が死に絶えるまでこうやって医療費を抑制しないと健康保険制度が崩壊するということらしい.もちろん健康保険制度が崩壊する前に保険医療そのものが崩壊しないというのが前提だろう.だが,「次の世代のために、このつらさを耐えなければならない」と医療機関が耐えられるのはいつまでだろうか.今日という日が年金事業を破綻させた厚生労働省が医療制度も崩壊させる最悪のシナリオの記念日とならないことを祈るのみである.
高齢者を中心とする患者の窓口負担増や、新たな高齢者医療制度の創設を柱とする医療制度改革関連法は、14日午前の参院本会議で自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。患者負担引き上げに加え、長期入院患者の療養病床削減、生活習慣病予防など、高齢化で増え続ける医療費の抑制を強く打ち出した内容で、今年10月から順次実施される。
10月には患者の負担増が始まる。70歳以上で一定所得以上の人の窓口負担は現在の2割から、働く世代と同じ3割に。療養病床に入院しているお年寄りの食費・居住費が全額自己負担になるほか、70歳未満の人も含め医療費の自己負担の月額上限が引き上げられる。
75歳以上の全員が加入する高齢者医療制度は08年4月スタート。これに合わせて一般的な所得の70〜74歳の窓口負担が1割から2割に上がる。75歳以上は1割のままだが、全国平均で月6200円程度と見込まれる新保険制度の保険料を払わなければならなくなる。
現在、全国に約38万床ある療養病床は12年度初めまでに15万床に削減。減らす23万床分は老人保健施設や有料老人ホーム、在宅療養などに移行させる。生活習慣病予防は中長期的な抑制策の軸で、40歳以上の全員を対象にした健康診断・保健指導を健康保険組合などの保険者に義務づける。
地方に抑制の責任を担わせるのも特徴。都道府県ごとに平均入院日数の短縮など数値目標を盛り込んだ医療費適正化計画を作らせる。中小企業の会社員ら約3600万人が加入する政府管掌健康保険の運営は、国から公法人の「全国健康保険協会」に移管。都道府県の支部ごとに保険料率を決めるようになる。
厚生労働省はこれらの施策で2025年の医療給付費を、現行のままの場合の56兆円から48兆円程度に抑えられるとしている。
国会審議では、野党側が患者負担増について「高齢者の家計は大きな打撃を受ける。行き過ぎた受診抑制を招く」と批判。療養病床削減には与党からも、行き場のない高齢者が出かねないと心配する声があがった。
このため参院厚生労働委員会での採決では、低所得者への配慮や、療養病床再編に対する支援策の充実などを盛り込んだ付帯決議がつけられたが、どこまで実効性があるかは未知数だ。』
団塊の世代が死に絶えるまでこうやって医療費を抑制しないと健康保険制度が崩壊するということらしい.もちろん健康保険制度が崩壊する前に保険医療そのものが崩壊しないというのが前提だろう.だが,「次の世代のために、このつらさを耐えなければならない」と医療機関が耐えられるのはいつまでだろうか.今日という日が年金事業を破綻させた厚生労働省が医療制度も崩壊させる最悪のシナリオの記念日とならないことを祈るのみである.
W杯サッカーは猫だまし
2006年6月14日 社会の問題 コメント (4)『 -- サポーターら殴り合い、数人けが 山梨の観戦会場 --
13日午前0時ごろ、サッカーW杯ドイツ大会の日本対豪州戦を観戦する山梨県韮崎市本町4丁目のパブリックビューイング会場で、サポーターの若者10人ほどが殴り合う騒ぎがあり、数人が軽いけがを負った。山梨県警韮崎署は、暴行の疑いもあるとみて、関係者から事情を聴いている。
同署によると、市営総合運動場体育館での試合観戦後、一部の若者が「日本が負けたのににやにやしている」などと因縁をつけ、もみ合いになったという。
同夜のパブリックビューイングでは、約400人のサポーターが観戦した。韮崎市は、日本代表の中田英寿選手の母校・韮崎高校がある。 』
『 -- 療養病床削減の影響懸念 参院が地方公聴会 --
参院厚生労働委員会は12日、高齢者の負担増や入院日数の短縮で医療給付費の抑制を図る医療制度改革関連法案について、北海道千歳市で地方公聴会を開いた。高齢者が長期入院する療養病床の削減による影響を懸念する意見が相次ぎ、受け皿づくりの必要性が指摘された。
苫小牧東病院の橋本洋一(はしもと・よういち)理事長は「病院経営に大きな打撃を与えるだけでなく、淘汰(とうた)される病院の続出も予想される」と懸念を表明。北海道勤労者医療協会の堀毛清史(ほりけ・きよし)副理事長は「地域医療そのものが崩壊しかねない」と述べ、同法案の廃案を訴えた。
一方、北海道医師会の山本直也(やまもと・なおや)常任理事は「次の世代のために、このつらさを耐えなければならない」と法案に一定の理解を示した。北海道奈井江町の北良治(きた・りょうじ)町長は「家庭の事情などで入院し続ける社会的入院が多いのも現実だが、この人たちが安心して移行できる受け皿づくりが必要だ」との認識を示した。
同法案について、13日の委員会で採決するよう求めている与党側に、野党側は「審議が不十分だ」として反発しているが、与党側は同日の質疑終了後に採決する方針だ。』
W杯の初戦は負けたようだ.ドーハの悲劇以来サッカーは観ていない.日本が負けてがっかりするのが厭だからだ.そもそも自分が出場しているわけでもないのに一喜一憂してもしょうがない.しかし,サポーターほどではないにせよ今週はテレビでサッカー観戦に興じる人は多いのだろう.テレビを観るだけで日頃のストレスが解消されるならそれはそれで結構なことだ.だが,たとえ日本が負けてもそのウサばらしを他の観客にするのはやめてもらいたいものだ.
ところで,国民の関心がサッカーに向いている間に医療制度改革関連法案というまれにみる悪法がロクな議論もされないままに成立しようとしている.サッカー観戦に興じている若者にわかるはずもないだろうが,それがどんなに自分たちにとって負担の大きいものかは彼らの親が病気になった時にいやというほど思い知ることになるのだろう.
ここでもまた知らぬが仏なのだが,その時になって病院や医師にウサばらしされるのではないかと心配になるのは私だけだろうか.今の日本は知らない者がバカを見るような社会になっているということに気づいて冷静に考えれば,こんなものはマスコミの猫だましだということくらいわかるのではないだろうか.小泉首相を筆頭に政府や官僚そしてマスコミまでもが一体になってお人好しな国民をだましているような気がするのは私だけだろうか.
13日午前0時ごろ、サッカーW杯ドイツ大会の日本対豪州戦を観戦する山梨県韮崎市本町4丁目のパブリックビューイング会場で、サポーターの若者10人ほどが殴り合う騒ぎがあり、数人が軽いけがを負った。山梨県警韮崎署は、暴行の疑いもあるとみて、関係者から事情を聴いている。
同署によると、市営総合運動場体育館での試合観戦後、一部の若者が「日本が負けたのににやにやしている」などと因縁をつけ、もみ合いになったという。
同夜のパブリックビューイングでは、約400人のサポーターが観戦した。韮崎市は、日本代表の中田英寿選手の母校・韮崎高校がある。 』
『 -- 療養病床削減の影響懸念 参院が地方公聴会 --
参院厚生労働委員会は12日、高齢者の負担増や入院日数の短縮で医療給付費の抑制を図る医療制度改革関連法案について、北海道千歳市で地方公聴会を開いた。高齢者が長期入院する療養病床の削減による影響を懸念する意見が相次ぎ、受け皿づくりの必要性が指摘された。
苫小牧東病院の橋本洋一(はしもと・よういち)理事長は「病院経営に大きな打撃を与えるだけでなく、淘汰(とうた)される病院の続出も予想される」と懸念を表明。北海道勤労者医療協会の堀毛清史(ほりけ・きよし)副理事長は「地域医療そのものが崩壊しかねない」と述べ、同法案の廃案を訴えた。
一方、北海道医師会の山本直也(やまもと・なおや)常任理事は「次の世代のために、このつらさを耐えなければならない」と法案に一定の理解を示した。北海道奈井江町の北良治(きた・りょうじ)町長は「家庭の事情などで入院し続ける社会的入院が多いのも現実だが、この人たちが安心して移行できる受け皿づくりが必要だ」との認識を示した。
同法案について、13日の委員会で採決するよう求めている与党側に、野党側は「審議が不十分だ」として反発しているが、与党側は同日の質疑終了後に採決する方針だ。』
W杯の初戦は負けたようだ.ドーハの悲劇以来サッカーは観ていない.日本が負けてがっかりするのが厭だからだ.そもそも自分が出場しているわけでもないのに一喜一憂してもしょうがない.しかし,サポーターほどではないにせよ今週はテレビでサッカー観戦に興じる人は多いのだろう.テレビを観るだけで日頃のストレスが解消されるならそれはそれで結構なことだ.だが,たとえ日本が負けてもそのウサばらしを他の観客にするのはやめてもらいたいものだ.
ところで,国民の関心がサッカーに向いている間に医療制度改革関連法案というまれにみる悪法がロクな議論もされないままに成立しようとしている.サッカー観戦に興じている若者にわかるはずもないだろうが,それがどんなに自分たちにとって負担の大きいものかは彼らの親が病気になった時にいやというほど思い知ることになるのだろう.
ここでもまた知らぬが仏なのだが,その時になって病院や医師にウサばらしされるのではないかと心配になるのは私だけだろうか.今の日本は知らない者がバカを見るような社会になっているということに気づいて冷静に考えれば,こんなものはマスコミの猫だましだということくらいわかるのではないだろうか.小泉首相を筆頭に政府や官僚そしてマスコミまでもが一体になってお人好しな国民をだましているような気がするのは私だけだろうか.