『 -- 手術中に出血、男性死亡 青森署に異状死届け出 --

 青森県立中央病院(青森市)で食道がんの胸腔(きょうくう)鏡手術を受けた男性患者(72)が、手術中に大量出血して出血性ショックで死亡し、病院は25日までに、医師法に基づき異状死として青森署に届けた。

 青森署で司法解剖して死因の特定を進めるとともに、関係者から事情を聴く。

 原田征行(はらた・せいこう)院長らによると、手術は24日午前9時45分に開始。患者の胸に穴を開け胸腔鏡でがん組織を取り除こうとした際、徐々に出血量が増え始めた。開胸手術に切り替えたが出血は止まらずに血圧が低下、同日午後1時50分に死亡した。

 出血部位は最後まで特定できず、輸血分を含め約10リットルの出血があった。動脈の損傷は考えにくいという。

 患者の死亡が避けられなかったか不明だったため同病院は医療事故対策委員会を招集、届け出を決めた。

 難易度が高い手術だったが、30年以上の経験を積んだ医師が執刀に加わり、胸腔鏡手術も多数手掛けているという。』

 先日の福島県の産婦人科医逮捕の際に問題となった異状死届け出である.青森県立中央病院の医療事故対策委員会は担当医の逮捕を避けるために届け出が必要と判断したのだろう.手術中の死亡というのはもちろんそんなにあるものではないが,今のままではこのように警察に届け出る以外に方法はないのだろう.

 患者さんのためにより低侵襲な手術となるはずの内視鏡手術であるが,このようなケースの場合は,結局は開胸手術にならざるを得ないわけで,それでも死亡するということになれば手術適応が狭まることは間違いないだろう.つまり本来はリスクの高い症例にこそ必要な内視鏡手術が万が一のことを考えればできないということになるのではないだろうか.

 脳神経外科領域でも脳動脈瘤の血管内手術で以前に血管内手術の専門医が術中破裂を起して患者が死亡し業務上過失致死で訴えられた事件があった.これからは同様に警察に届けなければならないのだろうから,未破裂動脈瘤の血管内治療はかなりやりにくくなるだろう.というか術中破裂は開頭手術でも起こることだが死亡する確率は血管内手術の方がかなり高そうだから血管内手術専門医が開頭手術をすすめるケースが今後は増加するのだろう.

 結局,低侵襲を売りにする内視鏡手術や血管内手術が警察の介入という心理的な負担のためにやりにくくなることは確実で,大昔のように『助かる確率は低いかもしれないがやってみる価値がある手術』などというのはたとえ家族の了承があってももうできないということである.これからは『間違っても死なない手術』というものだけが残っていくことになるのだろう.

 リスクの高い手術をして癌患者の延命のために自分の医師生命を賭ける医師がたとえいたとしても,むしろそういう医師ほど警察のお世話になりやすくなるわけだから長続きはしないだろう.外科医としてはなんともつまらない事態になってしまったが,これで手術が減れば医療費は節約されるのだから厚生労働省は医師法改正なんかする気はないのだろう.

近況

2006年4月24日 その他
 今日は『寒の戻りの特異日』だそうである.今日は気温が5度前後と確かに少し寒い感じがする.急に気温が下がったせいかも知れないが,出勤したらもうクモ膜下出血の患者さんが入院され検査中であった.午後からは最近1週間で3例目の脳動脈瘤の手術である.

 今年度は,本来の脳外科医にもどって仕事も頑張ろうなんて思ったせいかもしれないが,4月に入ってからは仕事が確かに増えたような気がする.単なる偶然なのかもしれないが,やる気がある時に仕事があるのはいいことで,仕事は楽しんでしまうのが一番だと思っているから,月曜日から忙しくても当直でも気にならない.

 過労と家族のことを気にしながらも,脳外科医として充実した毎日が送れることを感謝している.
桜はまだだね
 雪が近くの山にはまだ少し残っていて,公園の桜の蕾もまだ硬いようだ.今年は梅と桜が同時に開花するのだろうか.
 暖かくなってきているのになかなか桜が咲かないのと散歩写真のタイミングがとれないのがちょっとだけ不満な今日この頃です.

皆さま今週もご苦労様でした.
『 -- 駒大苫小牧の野球部員らに酒 居酒屋店長ら書類送検 --

 今年3月、駒大苫小牧高校(北海道苫小牧市)の当時3年生だった野球部員らが市内の居酒屋で飲酒や喫煙をして、同校が春の選抜甲子園の出場を辞退した問題で、道警苫小牧署は20日、部員らに酒を提供したとして居酒屋を経営する会社(同美唄市)と、男性店長(40)ら5人を風営法違反(未成年者への酒類提供)の疑いで苫小牧区検へ書類送検した。

 同署の調べでは、店長らは3月1日夜、卒業式を終えた後、店を訪れた野球部員ら12人にビールや焼酎などを出した疑い。店長は調べに対し、「未成年であることは分かっていたが黙認した」と話しているという。

 同校野球部は04、05年の夏の甲子園大会で57年ぶりの連覇を果たし、今年の春の選抜大会は「夏春連覇」がかかっていた。』

 こんなことだろうとは思っていたが,たしかこの店長は事件当時は未成年とは知らなかったとしらばっくれていましたよね.売り上げのためかどうかはわかりませんが,結果的に地元の人たちの期待を裏切ったわけです.たかが未成年の飲酒を黙認しただけかもしれませんが,自分のやることの結果が予想できなかった情けない大人の一例になってしまいましたね.

 しかし,未成年の飲酒について厳密に言うならば,この時期に大学で行われている歓迎コンパで新入生に酒を飲ませるのも同じことなんですよね.医学部でも例にもれず盛大にコンパをやっていることだと思いますが,それでいいんでしょうか.もちろん,20歳になっていればいいんでしょうけど.現役合格者はほとんどが未成年のはずですからね.

 これを黙認している大学が,居酒屋の店長にならなければいいのですが,現実には急性アルコール中毒で死亡した例もあるようですから本当はもっと真面目に考えてもらいたいものです.

 私も大学の救急部時代に自分の後輩になるはずの新入女子部員が急性アルコール中毒で新歓コンパの会場から運ばれてきたことがありました.もっともその女子医学生は勧めもしないのに自分から何回もいっき呑みをしたそうです.事件後すぐに退部したという話を聞きましたが,今頃はどこかで立派な女医さんになってくれているのでしょうか.
『 -- 財政難のNHKに関連会社が20億円配当へ --

 NHKの関連会社、NHKエンタープライズの板谷駿一社長は13日の定例会見で、05年度決算でNHK本体に対して20億円余りの配当を予定していることを明らかにした。ほかに、番組映像などの2次利用に伴う使用料として16億9000万円を支払う見通しという。

 NHKエンタープライズは昨年4月、番組制作会社のNHKエンタープライズ21と、放送した番組のDVD販売などの権利ビジネスを手がけるNHKソフトウェアが合併してできた。

 板谷社長によると、05年度の決算見込みでは総売り上げが412億円で、その約2%にあたる税引き後利益の約20%を配当に回す予定。これとは別に、合併前の2社の剰余金(内部留保)から、大型(特別)配当もする。NHKからの要請に応じたといい、6月の株主総会を経て正式決定する。

 同社によると、合併前の2社の内部留保の合計額は151億円。同社の主要株主は金融機関やNHK関連会社だが、NHK本体が80.7%の株式を所有している。NHKは受信料収入の落ち込みが響き、06年度予算の事業収入は前年より506億円減の6217億円。

 NHKはほかの関連会社2社にも同様の要請をしているという。04年度決算では、ソフトウェアは約3億円を配当したが、エンタープライズ21は配当していなかった。』

 放送した番組のDVD販売などの2次利用に伴う使用料とあるが,NHKの視聴者はNHKの受信料を払っているのにDVDを買うとまた利用料を取られるわけである.これって何か変じゃないでしょうか.

 しかも,NHKエンタープライズの主要株主は金融機関やNHK関連会社だが、NHK本体が80.7%の株式を所有しているとある.まさかとは思いますが,この会社の役員や重役はNHKの退職者が天下ってるんじゃないでしょうか.

 税金と受信料で番組をつくり,その番組を格安な使用料で天下り先の会社に渡して利益を上げさせ天下った元幹部職員を養う.なんて仕組みだったら官庁と同じですよね.しかも,総務省は受信料を義務化して罰則まで設けようとしているんですから,これは受信料なんてものではなくNHK省の特別会計の確保にほかならないのではないでしょうか.

 数々の不祥事をみてもわかるようにNHK職員の意識はまるで公務員並ですから,このまま受信料を義務化されたのでは割り切れない気分がするのは私だけではないでしょう.

 ここは受信料ではなくNHKの株式を発行して国民が全員株主になるのはどうでしょうか.購入は日本国民一人につき一株が上限ということで,株主には番組映像の個人使用権を与え,NHKが黒字になったら配当もするのです.そして,株主にはNHKエンタープライズのDVD購入の株主優待割引をする.

 総務省がこれくらい国民のことを考えて義務化するというのならまあわかりますが,NHKが公共放送だからというだけではぜんぜん説得力に欠けるんじゃないかと思いますね.
 小児科の個人病院から依頼書を持って10ヶ月の子供が受診してきた.

 『床に座っていて後方に転倒し,後頭部を打撲しました.後頭部に腫脹をみとめています.貴科的精査をご依頼申し上げます.』と書いてあった.2時間ほど前にひとり座りをしてバランスをくずし後方に倒れて頭をぶつけたらしい.

 20代後半らしい外見の母親が言うには.
『きのうまではあたまにこんなでっぱりはなかったんです.』

 診察させていただくと,頭皮に発赤や腫脹はなし.母親の言う『あたまのでっぱり』とは外後頭隆起のこと.たしかに少し右寄りにあるが別に異常というほどではない.赤ちゃんは機嫌が良かったが,私と母親が頭をごりごり触るものだから泣き出してしまった.ごめんね赤ちゃん.でも,こんなのでX線検査されるよりはいいんだよ.X線検査で脳腫瘍になるリスクだってあるんだから.

 最近,母親になっている人は頭にたんこぶをつくったこともないんだろうかと思う.おでこに直径1cmくらいのたんこぶをつくった小学生を1日経ってから病院につれてきた母親もいた.こどもが頭を痛がるので連れてきたそうな.今まで1回も頭のCTを撮ったことがないというから,先天異常がないかどうかのチェックの意味も含めて検査しておきましょうか.

 私が子供の頃は遊んでいて木に激突して頭に怪我しても血が止まれば病院などへは行きませんでしたけどね.医療が進歩していつでも病院にかかれるからいいんでしょうか.先に書いた小児科の先生もたんこぶつくったことがない世代だったんでしょうか.それとも,母親の言う通り脳外科に依頼しておかないと後でなにかあったら訴えられるからなのでしょうか.

 医療費削減の時代ですから病院の収益になるご依頼患者様は病院理念に従って大切にお取り扱いさせていただくつもりではございますが,本音で感想を言っていいのであれば,『つまらないことで病院にかかるな』と言ったほうがいいのでしょうか,それとも『厚生労働省でもないのに保険料を無駄使いするな』と言ったほうがいいのでしょうか.

 まあ,別にどうでもいいことなんですが,医療の質は患者の質にも影響されると感じている医師はきっと私だけではないでしょう.

川の流れ

2006年4月15日 私の写真集
川の流れ
 早朝の街角.川沿いの古い木造の集合住宅にはいつもの朝が来ているのだろうか.
この家々を見ていると,春が来ても変わっているのは目の前の川の流れだけのようにも思えてくる.

皆さま今週もご苦労様でした.
『 -- 脳腫瘍見落としと発表 横浜市、主治医ら処分検討 --

 横浜市は10日、同市立脳血管医療センターで2004年5月、50代の男性の脳腫瘍(しゅよう)を見落とすミスがあり、男性は約3カ月後に死亡したと発表した。市は主治医らの処分を検討している。

 同センターによると、男性は04年5月11日、倒れて入院。脳にうみがたまる脳膿瘍(のうよう)と診断されたが、同年6月3日、脳腫瘍と判明。2日後に腫瘍から出血し緊急手術を受け、7月に転院した病院でがんも見つかり、8月に死亡した。

 遺族の要請で昨年末、磁気共鳴画像装置(MRI)の画像などを再調査した結果、センターは「遅くとも5月17日の時点で脳腫瘍を疑うべきだった」と結論づけた。

 横浜市はまた、03年8月に同センターでくも膜下出血の手術を受けて死亡し、遺族が医療ミスを指摘している米国籍の男性=当時(54)=について「治療に問題はなかった」とする調査結果を10日、発表した。』

 脳膿瘍と鑑別診断が難しい脳腫瘍はそれほど珍しいものではない.転移性脳腫瘍では消化器のがんである腺腫といわれるものが画像で脳膿瘍との鑑別が難しいことは脳外科専門医なら誰でも知っていることである.だから1.脳膿瘍,2.転移性脳腫瘍,3.原発性悪性脳腫瘍くらいの診断で抗生物質を投与して経過観察中に腫瘍内出血をきたしたのではないだろうか.

 転移性脳腫瘍ということであれば末期がんということで,たとえ予想される診断の1.と2.の順位が変わったところで生命予後はほとんど変わらなかったことだろう.腫瘍内出血して急変でもしない限りがんの原発巣を検索して治療可能性を検討する方が先であり,余命3ヶ月であれば脳腫瘍摘出術をして残り少ない人生を無駄に入院させる必要はないと考えるのが普通ではないだろうか.

 結果が家族にとって満足できないものだったので市が調査し,主治医らの責任にして決着させるつもりなのかもしれないが,そんなことをしていたら横浜市の病院にはまともな医師はいなくなるに違いない.診断というものは考えられる可能性を検証していく過程でもっとも確率の高い病名であって,検査などで新しい情報が加われば変わる可能性があるのだが,一般人にはそれがわからないということなのだろう.

 脳腫瘍について言えば確定診断はMRI画像ではなく病理組織でつけるものである.このケースのように末期がんで死亡したにもかかわらず,MRI画像を検討して主治医の診断を非難するのが横浜市のやり方というのなら,今後は横浜市では防衛医療が横行することになるのだろう.市立病院を自らの手でダメにしているようにしか見えないが,そんなことをしなくても全国的に市立病院は医師引き上げ対象なのにいったい何をやっているのだろうか.
『  --  愛媛県警、GPS情報端末を参考人の車に無断で設置 --

 愛媛県警捜査1課の男性警部(42)の私有パソコンからファイル交換ソフト「ウィニー」を介して捜査情報などがインターネット上に流れた問題で、同県警が殺人事件の参考人に浮上した女性の車に、全地球測位システム(GPS)を使って位置情報を提供する大手警備会社の携帯端末を取り付けて行動確認をしていたことを報告する文書が流出していたことが10日、明らかになった。女性には無断だったと見られる。県警は事実関係を明らかにしていないが、犯罪捜査に詳しい専門家から賛否両論の声が上がっている。

 この文書は「行動確認報告書」。1980年代に同県内で起きた殺人事件に関するもので、計4通あり、作成日はいずれも02年6月。5日付の報告書によると、県警の捜査員が午前9時ごろ、女性の自宅を訪問。車がなかったため、大手警備会社の位置情報提供サービスの携帯端末で、近くのスーパーの駐車場にあることを確認し、その後は捜査員が尾行した、と書かれている。

 9日付の報告書でも、女性が高速道路のインターチェンジの料金所そばに駐車していることを端末で確かめ、捜査員が現地で確認。車に取り付けた端末を充電のために取り外し、2時間半後に取り付けたと記していた。22、29日付の報告書でも病院と喫茶店にある車を確かめたとしている。

 女性は逮捕されず、事件は未解決のまま公訴時効になった。朝日新聞の取材に「報告書に書かれているのと同じ行動をした記憶はあるが、尾行に気づかず、端末を付けられていたことも知らなかった」と話す。

 大手警備会社の広報室は県警との契約を否定し、「契約者には警察官がいるかどうかは言えない。ただ、本人の了承なしに車に取り付けたり他人の服に忍び込ませたりすることは規約で禁止している」と説明する。

 これに対し、県警捜査1課は「流出した文書の内容を明らかにすることは、情報の拡散を招くおそれがあり、プライバシー保護の観点から答えられない」としている。』

 Winnyの使用者は全国で30万人以上と推定されているらしい.WinnyでダウンロードしたファイルにAntinyが感染しているとこれがWinnyを悪用して感染したPC内のデータをネット上に流すということらしい.Winnyで流出したファイルについてのデータベースサイトを見るとその多さにはあきれてしまう,

 犯罪や軍事のプロフェッショナルである警察の捜査情報や自衛隊の機密情報までが流出してしまうことには情報管理の意識の低さにあきれるしかないが,このニュースのように警察の違法捜査などの不正行為が期せずして表に出てしまうのはなんとも皮肉な話である.

 もちろんAntiny自体がコンピュータウィルスでそれによって得られた情報も不法に入手されたものであるから証拠としての価値があるかどうかは不明である.しかし,そうした違法捜査が行われていないかどうか情報公開を請求する助けくらいにはなりそうである.

 これに対して県警捜査1課の「流出した文書の内容を明らかにすることは、情報の拡散を招くおそれがあり、プライバシー保護の観点から答えられない」というのはなかなかいい答えだと思う.これからは意に反して流出したデータに関してはすべてこの答弁でいいという警察のお手本というふうに理解させていただくことにしよう.
忘れていた走り方
 春になって雪がとけて泥でぬかる道に遭遇した.ぬかるみに足元をとられないようにゆっくりと進むことが必要だ.しかも,立ち止まったら2度と前へ進むことはできなくなるかもしれない.いつも舗装された道路をスピードを出して走っていて忘れていたことを思い出した.

皆さま今週もご苦労様でした.
『 --「小学生は国語力を磨け」、石原都知事が文科省を批判 --

 小学生は、まずは十分な国語力を身につけよ。東京都の石原慎太郎知事は7日の記者会見で、「自分の国の言葉を完全にマスターしない人間が、外国の知識の何を吸収できるのか」などと話し、小学校段階での英語必修化の動きを批判した。

 石原知事は「若い人の国語力は低下している。人間の感性や情念を培うのは国語力だ」とも述べた。小学生時代、ドイツ人宣教師に英語を習っていたという自身の逸話を披露。「おやじに言われて習いに行ったが、何の効果もなかったね」と明かした。

 6日の首都大学東京の入学式でも、知事は新入生への祝辞の中で「日本で一番バカな役所の文部(科学)省が小学生から英語を教えるとか言っている。全くナンセンスだ」などと批判。

 これに対し、小坂文科相は7日午前の閣議後記者会見で、「日本語をしっかり勉強することが基本だが、柔軟な児童が英語に親しみ、英語教育に取り組むのは決して否定すべきことでない」と反論していた。 』

 石原慎太郎知事の日の丸や国歌へのこだわりには賛成しかねるのだが,「若い人の国語力は低下している。人間の感性や情念を培うのは国語力だ」というのには部分的に賛成である.付け加えるならば人間の論理的思考能力というものは言語によって成り立っているから,言語能力というのは人間の知性の大部分を占めると言えると思われる.もちろん日本語でなく英語で考えることができればそれでもいいのだろう.結局,何語でしゃべっても中身がないのはどうしようもないのである.まずは,正しく知識を吸収し,きちんと考えられるだけの日本語力を身につけるべきだろう.

 だから,正確には「日本人の感性や情念を培うのは国語力」と言うべきかもしれない.ここに石原慎太郎知事の日本語へのこだわりが感じられる.先日,フランスのシラク大統領がブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)臨時首脳会議で、フランス人が英語を使ったことにショックを受けて一時、退出するハプニングがあった.日本人には奇異に感じる事件だが,フランス人の個性はまさにフランス語に因るところが大きいと感じさせられた.

 しかし,考えてみれば日本語も歴史の中でその時代の価値観とともに姿を変えてきたのだろうから,イラク問題や勝ち組負け組をはじめ米国中心の価値観に巻き込まれている現在の日本を見れば第2国語が英語となる日も案外近いのかもしれない.そうすると問題の根っこは日本で一番バカな役所の文部(科学)省ではなく歴代3位の長期政権である小泉内閣のほうであるような気がしてくるのだがどうだろうか.
『 -- 北海道の呼吸器取り外し 医師の起訴は困難 「死亡との因果関係なし」検察当局 --

 北海道立羽幌病院で平成十六年二月、女性医師(34)が男性患者=当時(90)=の人工呼吸器を外し死亡させたとして殺人容疑で書類送検された事件で、複数の医師が「呼吸器を外さなくても数十分後には死亡していた」との鑑定結果を旭川地検に提出していたことが六日、分かった。検察当局は「呼吸器外しと死亡には因果関係が認められない」として、医師を起訴するのは困難と判断したもようだ。

 ただ終末期医療をめぐり、富山県の射水(いみず)市民病院で医師が人工呼吸器を取り外し七人が死亡した問題が発覚したため、厚生労働省による延命治療中止に関する指針作りの状況を見ながら最終判断する。

 薬物などを投与する「積極的安楽死」ではなく、延命治療を中止する行為について刑事責任が問われた全国で初めての事件で、検察の判断が注目されていた。調べでは、医師は羽幌病院に勤務していた十六年二月十五日午前十時四十分ごろ、自発呼吸のない患者の人工呼吸器を外し患者は約十五分後に死亡した。十四日昼に食事をのどに詰まらせ心肺停止状態で搬送されていた。

 北海道警は十七年五月、(1)他の医師の意見を聞かずに一人で判断した(2)患者の同意がなく、家族も患者の意思を十分理解していたとは言えない−として医療行為を逸脱していると判断し、書類送検した。旭川地検は複数の医師にカルテなどの鑑定を依頼。死亡直前の状態について「血圧が極度に低下しており、治療の施しようがなかった」との結論を得た。医師の中には「呼吸器を外さなくても二十分以内に死亡していた」との意見もあった。女性医師は事前に家族に十分な説明をし、同意を得ていたという。
    

 羽幌病院呼吸器取り外し事件

 平成16年2月14日、当時90歳の男性が昼食をのどに詰まらせ心肺停止状態で病院に搬送された。女性医師(34)が蘇生(そせい)措置し、心臓は動きだしたが自発呼吸が戻らず、人工呼吸器を装着した。家族に「脳死状態」と説明、翌15日午前、家族の同意の下、人工呼吸器を取り外し男性は死亡した。5月に問題が発覚。17年5月、北海道警は「医療行為を逸脱している」として殺人容疑で女性医師を書類送検した。延命治療を中止した行為だけの立件は全国初めて。』

 不起訴の理由が呼吸器とりはずしと死亡の因果関係にあるとしたら,呼吸器をつけ延命治療を施しても1週間以内に死亡するような重症例については延命中止をしても罪には問われないということなのだろうか.それならそれで延命を中止する際のガイドラインの作成を急いでもらえるとありがたいと思うのは私だけだろうか.

 もっともガイドラインが出来たとしても家族が納得しない場合は対応を誤ると面倒が増えるだけだからすべてがそれで解決するとは思えない.少なくとも家族の同意が得られればここで延命治療はやめていいよという程度のものしか期待できないだろう.実際,末期で亡くなるのを待っていたはずの家族が心肺蘇生をやめないでなどということもあるのだから.

 ところで当の女性医師は不起訴になってどう思ったのだろうか.結果的に最悪の事態は避けられたもののダメージはそうとうなものだろうと思われる.きっと失ったものも多いだろう.誰がそれを補ってくれるのだろうか.

 北海道警はこの件に関して(1)複数の経験豊富な医師の意見を十分に聞かずに医療行為について判断した(2)当時の家族や患者の精神状態を十分理解していたか−警察として医療に関して職務権限を逸脱した点はなかったなどの点で批判されてしかるべきであろう.複数の医師が「呼吸器を外さなくても数十分後には死亡していた」との鑑定結果を旭川地検に提出していたということが真実を示しているのだろうから,捜査の過程に問題がなかったかの検証は当然なされるべきであろう.

 いま話題になっている外科医の方も家族が外科医に呼吸器をはずすように依頼したというようなニュースが出てきている.本来は医師の治療方針に家族が同意すれば延命治療の中止は問題のない話であるはずが,司法が介入することでなにかおかしくなっているような気がするのは私だけではないだろう.
『 -- NHK受信料不払いに「罰則検討を」 自民・片山氏 --

 自民党の通信・放送産業高度化小委員会で小委員長を務める片山虎之助・参院幹事長は5日、日本記者クラブで会見し、NHKの受信料不払い問題について「受信料は公共放送を支える国民の負担で、大威張りで払わない人がいるようでは不公平。罰則の導入も検討した方がいい」と述べ、支払いを法的に義務づけるなどの対策が必要だとの考えを示した。

 政府・自民党に強化を求める声があるNHKの海外向け放送にも触れ、「広告料をとったらどうかという議論も一部にあるが、国費を入れるのが妥当と思う」と語り、公的支援が必要との認識を示した。

 民間放送については、地上デジタル化への投資負担が重い地方局を支援するため、公的支援の必要性に言及した。特定企業による複数放送局の株式保有を規制する「マスメディア集中排除原則」については、一部緩和してキー局と地方局が共同で持ち株会社を設立できるよう制度改正を検討すべきだとした。

 一方、竹中総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」については「そこで全部決めるなんてできるわけがない」と牽制(けんせい)した。』

 公平・不公平で言うならNHKをほとんど見ない人に受信料を払わせることも不公平だろう.情報通信という点で言えばインターネットのように常時見る人は定額制でたまにしか見ない人は従量制でというのが現代の常識で,公共放送というならNHKの組織改革もして国際放送などの不採算部門だけを税金でまかなえばいいのではないだろうか.ニュースのみを定額にしたり教育テレビや総合テレビの娯楽番組はスクランブルをかけてペイパービューでいいのではないだろうか.そこまでやれば視聴者の立場では公平な料金体系と言ってもいいだろう.

 NHKの経営上の問題を公共放送という呼び名でごまかしてどんぶり勘定で国民に均一に負担させることこそ不公平だろう.そんなこともわからない国会議員にはNHKばかり見ていないでブログや掲示板で世の中のことをもっと勉強してもらう必要がありそうだと思うのだがどうだろうか.
『 -- 政管健保保険料で温泉旅行 不適切支出1775万円  --

 社会保険庁は3日、政府管掌健康保険(政管健保)の保険料などから支出される健康保険関連補助金事業費を、同庁の関連団体職員が温泉旅行や忘年会費に使うなど、不適切な支出が5年間で計1775万円あったと発表した。

 社保庁が事業委託した全国社会保険協会連合会は、高額医療費への貸し付け事業や健康づくり事業費として支給された補助金のうち、計200万円を職員親睦(しんぼく)の温泉旅行や忘年会のほか、政管健保の野球大会開催費に使った。

 宮城県社会保険協会は、実際には臨時職員を雇っていないのに職員給与費として計774万円の補助金の支給を受け、パンフレット作成代や切手購入費などの事務費に流用していた。

 生活習慣病予防健診事業を委託された社会保険健康事業財団では、財団本部や全国18の支部で406万円を職員の親睦会の飲食代などに充てた。同財団支部の調査は終了しておらず、さらに不適切な支出が見つかる可能性があるという。

 このほか決算時に返還すべき剰余金を翌会計年度に繰り越して支出した事例などが判明した。

 補助金は政管健保のほか船員保険の保険料からの支出で、同庁は返還作業を進めている。

 昨年10月に総務省の行政評価で669万円の不適切支出を指摘されたのを受け、書類が残っている2000-04年度の5年分を同庁があらためて調査し、判明した。』

 ちょっとした休暇を終えて新年度を迎えた.心機一転また新たな気持ちで働こうと気合いを入れ直したばかりだというのにこのニュース.医療機関が不適切な保険請求をすると不正請求と言うのに自分たちが健康保険料を温泉旅行や忘年会費に使い込んだのは不適切支出と表現するらしい.それでもだれも懲戒免職になったりしないんだから国家公務員はいい職業である.これが4月バカなら笑えもするが,月末毎にレセプトに泣かされ,この4月からはさらに診療報酬が引き下げになって泣きっ面に蜂の病院や医師にすれば腹立たしいことしきりであろう.あまりにバカだと怒る気も失せるが,それも向こうの狙いかもしれないから世の中わからない.

 ところで,呼吸器を外して延命を中止した外科医の話題は私が休暇中に風向きがだいぶん変わってきたようである.どういう形で決着するかもう少し様子を見てからコメントさせていただきたい.なにせしばらく(といっても1週間ほどだが)ベッドサイドを離れただけですっかり感覚がリセットされてしまい脳外科医にもどるのにはもう数日はかかりそうだったりするのである.

 というわけで,無事に病棟復帰を果たしましたので,またこれからも『病室の窓から見えるもの』をよろしくお願いいたします.
 私の患者さんに脊髄損傷で四肢麻痺のため寝たきりになった70歳くらいの女性がいる.もう何年も寝たきりで食事は胃漏からの経管栄養.楽しみは午後の面会と夕方のテレビドラマと相撲くらいしかない.そして,回診で私と話すのを首を長くして待っているらしい.

 この女性と話しながら窓の外に目をやるとそこには街と自然がパノラマのように広がっている.移り行く季節の話題からいつも会話は始まる.そして世間話になり医療の話になる.時々は最後に自分の身の上話.「これは運命だと思ってあきらめています.」というのを何度か聞いた.もっとたくさん半分愚痴のようなものも聞いたかもしれないが,忘れてしまった.その話の頃には私は窓の外を眺めながらいつも自分や医療がこの先どうなるのかとぼんやり考えていた.

 介護保険制度ができた頃から医療業界は明らかに変わってきたと思う.その頃,在宅医療にかかわり自宅で長期療養している患者さんの家族の話をよく聞いた.経過の長い人の家族は公的扶助制度や介護の技術について私の想像を超える知識を持っていた.しかし,介護保険で状況が改善したという声は聞いたことがない.見かけ上サービスの種類は増えたが,かえって不自由になったり採算性から過疎地域では提供を受けられないものもあった.

 名義貸し事件で医局を中心とする医師派遣制度にも嵐が吹き荒れた.医局を離れる医師が増え地方の公立病院からの撤退が始まったのが3年ほど前である.医局を辞めてクリニック開業するものが出たり,医師紹介業なるものの広告が目立つようになったのもこの頃からである.医局をやめて医局の派遣先だったところに自分の意思でとどまる医師もいて医局の研修ローテーションは崩れ去った. 

 東京女子医大事件以降は医療事故での医師への責任追及やマスコミの医師へのバッシングとも思えるような報道が強くなった.医療不信の声が大きくなると共に防衛医療という言葉がネット上の医師の間でささやかれるようになった.毎日のように医療訴訟が報道されるようになり医療不信は患者不信を引き起こし医師と患者の間の溝をさらに広く深いものにしている.

 小泉改革という言葉が聞こえるようになってからは診療報酬の改定は医療費削減だけが目標のようになった.手術症例数と治療成績は相関するなどという地方で頑張っている外科医にとって心外な評価で診療報酬が削減されるようになり,外科医のプライドは打ち砕かれた.もう撤回されたが,失われた外科医のやる気はもう回復することはないだろう.

 最近の福島の産婦人科医師逮捕と療養型病床削減で初めて現場の医師たちや患者を抱える家族の声が世の中に聞こえるようになってきている.医師と患者の間の溝を埋め,行政の怠慢や横暴を非難するのでなければ今後の医療は進歩どころか矮小なものに変質してしまうという危機感が国民の中にも芽生えるのだろうか.

 これからも「病室の窓から見えるもの」を私といっしょに考えてくれる人が増えてくれれば,今日の日記にも少しは価値があったということになるかもしれない.
『 -- 医師、延命治療中止に信念か 富山・呼吸器外し7人死亡 --

 富山県の射水市民病院でがんなどの末期患者7人の人工呼吸器が取り外され、死亡した問題で、人工呼吸器を取り外した外科部長(50)は95年4月から同病院に勤務していた。病院によると、昨秋、診療現場をはずれ、自宅待機や金沢大で研修を続けてきた。

 外科ではチーム医療をしているが、麻野井英次院長によると、外科部長は責任感が強く、自分で全責任を負うタイプ。一連の延命治療の中止についても信念をもってやったようだといい、「ほかの外科医はなかなか反論できなかったと理解している」と麻野井院長は述べた。

 昨秋まで同病院に勤務していた市職員は、「退院する患者さんが『いい先生だった』と言っていたのを何度も聞いたことがある。病院内でのトラブルもなかったのではないか」という。

 外科部長の執刀で夫(59)が大腸がんの手術を受けたという射水市内の女性は「02年10月から先生にお世話になってきた。2カ月入院したが、病気の説明がわかりやすくて人柄もよく、主治医として信頼していた。昨年10月にいなくなられ困っていた。今日話を聞いてショックを受けている」と話した。

 かつて外科部長と一緒に働いたことがある病院関係者も、「患者の覚えがよく、気さくに声をかける人だった。手術などについても、患者や家族が分かるまで、ゆっくり説明する人だった」と話した。 』

『 -- 「医師の独断」問題視、家族同意「文書ない」 病院会見 --

 富山県の射水市民病院でがんなどの末期患者7人の人工呼吸器が取り外され、死亡した問題で、残されたカルテには「家族の希望」などと記されていた。だが、同意取り付けの経緯は不明確で、病院内での合意も十分とはいえなかった。延命治療の停止は、やむを得ない選択だったのか。

 25日午後、麻野井英次院長ら幹部4人がそろって記者会見し、院内調査の結果を説明した。「数が多かったこともあり、非常に、社会的にも問題があると思った。犯罪性についての調査は我々だけではできないので警察の調査にゆだねた」。麻野井院長は苦渋の表情を浮かべた。

 きっかけは内科系看護師長の報告だった。「外科部長から人工呼吸器を外すよう指示がありました」

 昨年10月12日、知らせは副院長経由で麻野井院長に入った。対象患者は外科系。たまたま内科系病棟に入院していた。

 院長はすぐに外科部長に「人工呼吸器を外してはならない」と命じた。「部長の言動から人工呼吸器の取り外しに関する認識の違いを知り、ほかにも同様の事例があるのではないかと心配になった」のだという。

 同日、緊急に院内調査委員会が発足した。カルテの記録や医師、看護師らの記憶を元に過去10年間に外科で死亡した患者について調査し、七つの事例がわかった。

 院長は会見で、「問題にしたのは、患者の意思が明確だったか、呼吸器を外すにあたって他の医師による確認などの手続きを踏んでいるかということだ」と説明した。

 外科部長は患者の状態と、治療中止について家族らにどこまで説明していたのか。「同意書という形にはなっていなかった」と院長。4人いたという外科系医師らの間でどんな判断があったのかも、会見では明確にはならなかった。』

 けっこうなニュースになっているようなので,ちょっとだけ現場の医師としてコメントさせてもらいたい.

 病院側が問題にしているのは手続きのことである,医師が独断で安楽死させていたのではないかということで,法的にも問題があるのではないかと言うことである.これはおそらく法的に問題になるであろう.以前に道立羽幌病院で同様の事件があった.延命処置の中止は現状ではできないと考えたほうがいいだろう.

 だが,医療としてそれでいいのかどうかは別問題だと私は思う.私は脳外科医なので死に至る病気や遷延性意識障害の患者さんを診る機会が多いほうだと思う.そして思うことはどうせ死ぬなら自分の普段のイメージのままで死にたいということだ.遷延性意識障害で長期療養になったり,延命治療で1週間も経つとすっかり顔つきも変わってしまうのが普通である.本人は意識がないから気にならないのだが,それを毎日見る家族はどう思うであろうか.愛する人の変わり果てた姿をみるのは非常につらいものなのである.私は家族に自分のそんな姿を晒したくはない.

 私自身がそのような状態になった場合の希望としては遷延性意識障害なら6ヶ月で経管栄養の中止による死.そして延命治療は断固としてお断りということである.だが,今の日本ではこんなことはたとえ本人が希望してもできないだろう.自分に意識がない場合に家族が延命治療を拒否することは場合により可能だろうが,他人に自分の死に様を決めて欲しいとは思わない.

 本人の意思があれば自分でどのような死を迎えるかを選べることが尊厳死だと思うし,本人に意識がない場合は家族が納得できる最期を迎えさせてあげることが終末期医療なのではないかと思うのだがどうだろうか.
旅立ち
寒くて厳しい冬が過ぎ.
新しい季節がやって来た.
この春は私たちも新天地に向かって出発します.

皆さま今週もご苦労様でした.

旅行のため3月27日より10日間ほどお休みさせていただきます.

健康な時はわからない
 療養型病床の回診中に変なものを見つけた.廊下にテーブルが置いてあってその上になにやら用紙が置いてある.その前の壁には『介護難民34万人に加え療養難民23万人』と書いたチラシが貼ってある.

 これは,現在38万床ある療養病床を2012年までに15万床まで削減する医療制度改革法案に反対する署名運動であった.療養型病床に入院している患者さんの家族が設置したものであろうか.

 自分の家族が寝たきりになれば誰にでも気づくことが,そうでない人たちにはまったくわからないというのが問題なのだが,そういう人たちも高齢化社会ではいつ自分たちの家族が寝たきりなってもおかしくないということを忘れるべきではないだろう.なってしまってから療養する場所がないことに気がついても手遅れなのだが,こんなことに気づく国民はわずかだし,マスコミはなぜかあまり社会問題としては取り上げない,いったいどうなっているのだろうか?

『 -- 介護保険料、4090円に 65歳以上、24%引き上げ --

 厚生労働省は23日、2006年度の介護保険料改定に伴い、4月から3年間適用される65歳以上の保険料が全国平均で、月額4090円となる見通しを介護保険事業運営懇談会に示した。改定前の3293円より24%アップの大幅引き上げとなる。

 高齢化や介護事業者による需要の掘り起こしで、介護サービスの利用が増加、総費用が制度開始時の2000年度に比べ、06年度(予算ベース)は約2倍の7兆1000億円に増え、その後も増加が見込まれるため。上げ幅は前回03年度改定時の13%増を上回った。

 高齢者がより高齢化することで、今後も介護サービス需要が増えるのは確実なため、次回改定の09年度以降も引き上げが続く見通し。 』

 今後介護保険はいずれ健康保険料並になるにちがいない.その時になってから国民はだまされたことに気づくのだろう.介護保険料の引き上げの原因についてマスコミは高齢化社会だからという一言で済ましているようだが,本当にそれだけだろうか.

 団塊の世代が高齢化することによる老齢人口の増加が一因となることは誰が考えてもわかるだろう.だが,介護保険施設の不正請求がニュースになるくらいであるから,介護事業者による需要の掘り起こしは今後も増大し,過分な費用が発生することは確実である.介護サービスに対する家族の期待が高まることも当然あるだろう.自己負担分も増えるだろうが,介護保険の範囲内で受けられるサービスが増えれば介護保険料も増大するのは当たり前だろう.

 さらに,今後は厚生労働省の言うところの社会的入院の患者さんを病院から在宅や施設での介護に切り替えていくことによる介護保険申請の増加が予想される.これはいわば健康保険から介護保険と自己負担への切り替えであるから介護保険料へ跳ね返ることは確実だろう.しかも,病院で介護するよりも効率は低下するから,質を維持しようとすれば余分に費用がかかる.つまりコストパフォーマンスも低下するのである.

 確かに厚生労働省の仕事である健康保険料の抑制には効果があるかもしれない.しかし,介護保険料と自己負担分がそれ以上に増大すれば馬鹿をみるのは国民である.介護保険料は所得による格差はない.低所得者ほど実質的な負担増になるということも忘れるべきではないだろう.
『 -- NHK番組改変・説明「出向いたことに」 担当者が証言 --

 NHKの番組が01年、放送直前に改変された問題で、取材対象の市民団体とNHKなどが争っている訴訟の口頭弁論が22日、東京高裁で開かれ、当時のチーフプロデューサー・永田浩三氏が証人として出廷した。朝日新聞の記事などで番組への政治家の関与が指摘された後の昨年1月、NHK幹部らが対応を話し合った際、放送前に安倍晋三衆院議員に会った経緯について「呼びつけられたのでなく、こちらから出向いたことにしよう」とのやりとりがあったと証言した。話し合いに参加した上司から聞いた内容として明らかにした。

 NHKは、放送前に安倍氏に番組内容を説明したことについて昨年1月、「呼び出されたのではなく、事業計画の事前説明のために出向いた」と説明していた。

 問題になっているのは、旧日本軍による性暴力を民間人が裁く「女性国際戦犯法廷」を取り上げた番組。

 永田氏の証言によると、「出向いた」とすることは、松尾武・元放送総局長と、国会対策担当だった野島直樹・元総合企画室担当局長との間で決まり、永田氏は、その場にいた上司から直接聞いたという。「NHKの公式見解と違い、衝撃的な内容だった。本当なのかなあと思った。(NHKは)真実は何か、世間に説明するべきだ」と述べた。

 また永田氏は、番組改変の過程で、伊東律子・番組制作局長(当時)の部屋に呼ばれたと言及。伊東氏は、歴史教科書問題に取り組む議員グループの著書に載った名簿を示し、中川昭一衆院議員の名前を指さしながら「言ってきているのは、この人たちよ」と話したという。

 永田氏は、慰安婦や加害兵士の証言が、「信憑性(しんぴょうせい)が疑わしい」との理由で放送直前に削られたことについて「つらい経験をされた方の言葉について疑うのはあり得ないと思っている」と声を詰まらせた。改変に抵抗できなかったことについて「悔いが残る。5年前に戻りたい」とも述べた。

 NHK広報局の話 伊東元局長は、中川氏の名を指して「言ってきているのはこの人たちよ」というやりとりをした記憶はない、と話している。昨年1月の話し合いは、朝日新聞の記事掲載などを受けて、松尾元放送総局長が当時の事情を記者会見で説明すべきかどうかを話し合ったもの。話し合いに野島元担当局長は参加していない。

 松尾氏は朝日新聞の取材に対し、永田氏が証言した野島氏とのやりとりについて「そうした事実は全くない。その席に野島氏は出ていないからだ」と語った。「ほかのメンバーとの間でも口裏合わせのような話は一切なかった」と述べた。』

 恥ずかしながら近代日本史は学年末のあわただしい時期に習ったせいかぜんぜん憶えていない.特に太平洋戦争については今でも歴史が隠ぺいや歪曲されているようでわからないところだらけである.「女性国際戦犯法廷」なんていうのも自慢するわけじゃないが,もちろん知らないからどうも事の重大さがぴんとこない.

 だが,番組制作の上でNHKがマスコミの良識に従ったのではなく政治的な配慮をしようとしたらしいということは私にもわかる.政治家が何と言おうとなんらかの政治的な圧力がマスコミに働いていることは日本の常識であろう,古くは歴史教科書問題があるし最近では卒業式での国歌斉唱,そして先日は被爆体験者の政治的発言の自粛強要など過去の戦争の傷跡を消し去ろうという動きは以前からあるし,憲法改正を前提にさらにこういう動きが加速しているようにも見える.

 NHKは国民と契約して受信料を集めながらも実体は国営放送であるから政治家に「呼びつけられたのでなく、こちらから出向いた」のかもしれないが,事実がどちらであってもNHKの体質を評価する上ではたいした問題ではないだろう.要するにNHKの番組には政治的意図が隠されているということである.視聴者はそういう番組を見ないことにするか,あるいはこのことをちゃんと理解して番組を見るのでなければ偏った考え方を植え付けられることに注意すべきであろう.

 医療関係の番組なら私は嘘にすぐ気付くことができるが,俗に言う健康番組や医療ドキュメント風番組にだまされている人たちも多いようだ.日本のマスコミの信憑性は低いという意識を持っていないといつの間にかテレビに洗脳されてしまうということはおぼえておいたほうがいいだろう.

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