『 -- 赤ワイン成分が老化を遅らせる可能性 --

resveratrolが寿命を延ばし、老化関連疾患を抑える可能性
Jennifer Warner WebMD Medical News Reviewed by Louise Chang, MD

 グラス1杯の赤ワインは食事に華を添えるだけではなく、人生を楽しむ時間をさらに増やしてくれるという。

新規の研究において、ぜん虫およびミバエでの延命効果が以前に証明されている赤ワイン成分が、脊椎動物(魚類、またヒトも含まれる可能性がある)の寿命も延ばす可能性が示されている。

研究者らによると、ブドウ、特に赤ワインに含まれる有機成分resveratrolを短寿命の魚の毎日のエサに加えたところ、寿命が延長し、老化に関連する記憶などの障害の発現が遅くなった。

resveratrolはポリフェノールと呼ばれる抗酸化物質群の一種であり、赤ワインに含まれる。この物質は、抗炎症作用および抗癌作用をもつことが報告されており、幅広い医薬分野での利用について現在研究されている。

赤ワインによる寿命延長

resveratrolが酵母、ミバエ、ぜん虫など、非常に短命な種の寿命を延長することが以前の研究で示されているが、マウスといった寿命の長い多くの種において大規模な一生涯におよぶ研究を実施するには、多額の費用がかかりすぎる、と研究者らは述べている。

研究者らはresveratrolの作用について、捕獲状態での寿命が3カ月間しかない小型の魚1種類を用いて検討した。本研究は『Current Biology』2月7日号に掲載されている。

本研究の結果では、魚の毎日のエサに赤ワイン成分resveratrolを添加すると、期待寿命が延長し、記憶および筋肉に関する老化関連障害の進行が遅くなった。

通常のエサを与えた魚に比較すると、低用量のresveratrolを与えた魚では平均33%、高用量を与えた魚では50%以上生存期間が延長したことを研究者らは認めている。

resveratrolは、まったく異なる数種類の動物群で一貫して寿命延長効果を示した最初の化合物であり、ヒトにおける老化関連疾患の予防薬を開発する上で足がかりとなることが示唆される、と研究者らは述べている。
Valenzano, D. Current Biology, Feb. 7, 2006; vol 16: pp 296-300. News release, Cell Press.』

 ビールも好きだがワイン特に赤ワインが私は好きなほうで,1ヶ月に1本くらいは飲んでいる.アルコールが脳梗塞や心筋梗塞などの虚血性血管障害のリスクを下げることは以前にも書いた.中でもビールが動脈硬化の予防にいいらしいのでこれが毎日ビールを飲む根拠になっている.

 酒が好きな私にとって赤ワイン成分resveratrolが記憶および筋肉に関する老化関連障害の進行を遅らせ寿命延長効果を示した最初の化合物であるというニュースは赤ワインを飲む論理的根拠を与えてくれるたいへんよい知らせとなった.

 これからは最初にビール,次に赤ワイン,そして最後はウィスキーか焼酎でという具合にいこうかと思うが,アルコールの総量をどうやって抑えるかそれが問題だ.
ハッピーバレンタイン
まだ火曜日なのにいろいろあって疲れてしまった。
とりあえず少しはいいこともあったので、いつも私の拙文を読んでくださる皆様に心ばかりのプレゼント。
冬の森の中で見つけたハートマークです。
『 -- OLの7割 「なくなって」 バレンタインデー調査 --

 「チョコレート受け渡しの習慣なんかなくなればいい」というOLは70%。サラリーマンも50%がそう感じていることが、インターネットで情報提供を手掛けるアイブリッジ(大阪市)が実施したバレンタインデーに関するアンケートで分かった。
 同社のモニター会員のうち、企業に勤務する20−30代の独身男女各300人がネット上で回答した。
 女性は47%が「数日前から」、26%が「1週間以上前から」贈り物を用意、義理チョコの理由は「コミュニケーションの手段」(42%)、「毎年の恒例」(40%)などだった。 』

 男性社員も半分はやめて欲しいというのは本音だろう.私も義理チョコはもらってもまったく嬉しくないばかりか,もらったチョコの始末やお返しのクッキーを期待されて迷惑といったほうがいいかもしれない.そんなものをもらって嬉しいおじさんがいるなんてまったく信じられない話だ.

 そういうわけで私の職場では義理チョコは昨年からご遠慮させていただいている.7割ものOLが本当はやめたいのに職場の上司が欲しそうな顔をするというのでは,これはもう立派なセクハラの一種ではないだろうか.チョコをたくさんもらって喜んでいたら本当はOLには最も嫌われているというのではあまりに情けないような気がする.
親子
グレーの白鳥なんて1月27日に書いてしまいましたが,この春に巣立ちする幼鳥だったんですね.この春から新入学の子供をもつ親も準備に忙しいことでしょう.ところで,写真の白鳥はどちらがお父さん,お母さんだと思いますか.私は,右側がお父さんのような気がするのですが...

皆さま今週もご苦労さまでした.
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『 -- 鈴花ちゃん、仮入園認められ初登園 --

 息を吸う時に気管がふさがり呼吸しにくくなる病気の東京都東大和市、青木鈴花ちゃん(5)が10日朝、市立向原保育園に初めて登園した。定期的に痰(たん)の吸引が必要なことを理由に、同市から保育園入園を拒否されたが、東京地裁から入園を承諾する仮の義務づけの決定が出て仮入園が認められた。

 前日から楽しみにしていたという鈴花ちゃんは、タオルとおたより帳が入った小さなかばんを手に「うれしい。おままごとがしたい」とにっこりした。

 父親の繁宜(しげよし)さんが痰や唾液(だえき)の吸引に必要な器具を携えて園まで付き添った。繁宜さんは「初めて市に入園をお願いしてから2年ちょっと。長かったですが、皆さんの力であっという間にいい方向に決まり、感謝しています」。1時間のならし保育を終えると、鈴花ちゃんは「いっぱい友だちがつくれそう」と話した。

 鈴花ちゃんの病気は「喉頭(こうとう)軟化症」。市はこれまで鈴花ちゃんが通っていた施設の看護師を臨時に同保育園に配置し、吸引などのケアに当たる。吉野豊子園長は「緊張もありますが、スムーズに鈴花ちゃんが生活を送れるよう安全に配慮して園全体で考えて保育したい」と話した。

 市は仮入園を認めたが、「裁判所の決定は我々の主張と隔たりがある」としており、両親との訴訟はまだ続いている。3月10日に第1回口頭弁論が開かれる予定だ。』

 昼のニュースで鈴花ちゃんが自分で吸引をしている映像を見た.その笑顔からは保育園に通うのを楽しみにしている様子が伝わってきた.「裁判所の決定は我々の主張と隔たりがある」のところがわからないのでコメントのしようがないが,現実的に対応は可能であると思われることをやろうとしない市の姿勢は批判されるべきであろう.

 障害があるからできることに差があるのは仕方がないことである.しかし,できることまでさせてもらえないのは不当な差別である.こういうおかしな差別をなくすのも行政の仕事であろう.障害者の傍に実際に寄り添ってみれば出来ることか出来ないことかは見ればわかるはずである.鈴花ちゃんが元気に通園する姿をみれば市側の『我々の主張』がなんであれ無意味であるような気がするのである.

 病気の後遺障害で療養型病床に入院中の人たちを施設に追いやるような厚生労働省の主張も同じようなものだろう.もっとも,患者の家族とのトラブルは追い出した病院の問題になるだろうから,厚生労働省の役人はなにも感じることはないのだろう.決めるのは官僚で,責任は医師まかせ,そして困るのは患者と家族になるとは一体誰のための国民皆保険制なのだろうか.
『 --へき地医療義務付け見送り--

 厚生労働省は7日、過疎地や救急現場の医師不足を解消するため、病院の院長や開業を目指す医師に、へき地や救急医療現場で一定期間の実務を義務付ける制度の新設を、今国会に提出する医療法改正案に盛り込むことを断念した。

 同省は、こうした制度改革を先月、社会保障審議会医療部会に示していたが、日本医師会などが「医師の職業選択の自由や居住の自由を奪いかねない」などと強く反発し、調整がつかなかった。』

『 --「議論不十分」と反対表明 療養病床再編で医師会など--

 日本医師会と全日本病院協会などの病院団体は7日、都内で記者会見し、自民党が同日了承した医療制度改革関連法案に盛り込まれた療養病床の再編、縮小方針に対し、「議論が不十分」などとして反対を表明した。

 会見で、寺岡暉(てらおか・あきら)日本医師会副会長は「(社会保障審議会などで)十分な議論がないまま、療養病床の廃止(縮小)を決めたことは誠に遺憾」と述べ、(1)これまでの議論では療養病床の廃止は前提になっていなかった(2)患者の利益を考えた包括的な議論をすべきだ-と指摘。今後は反対派の国会議員と連動し、「われわれの意見が反映されるよう運動していく」としている。

 療養病床には、常時の治療を必要としない長期の入院患者が多く入院。その縮小と患者の受け皿整備が、改革関連法案の医療費適正化の柱に据えられている。』

 厚生労働省のなんでも改革路線にはいいかげんにあきれてしまう.よく医療の現場のことを調べもせずに思いつきの改革案が通用すると思っているところが机の上だけで仕事をする官僚ゆえなのだろう.医療と言うのはもっと人間臭い仕事だということが医師でもない彼らにわかるはずもないが,もう少し医療を理解しようと努力することぐらい医師でなくともできるだろう.

 彼らこそ僻地の公立病院や療養型病床のある病院のベッドサイドで働いてみるべきだろう.そうすれば問題の本質が見えるはずだし,自分たちが何をすべきかもわかるのではないだろうか.現場のことをよくわかっていない人たちが制度を作ってきたことが健康保険制度の崩壊の原因であることにもうそろそろ気づいて欲しいものである.
『 --介護施設での医療を拡充 自民、医療改革法案了承--

 厚生労働省は7日、常時の治療を必要としない長期入院患者が多い療養病床の再編、縮小計画に関連し、こうした患者の受け皿となる老人保健施設など介護施設での医療提供を拡充する方針を、自民党厚生労働部会に示した。同部会は、この方針を付則に盛り込んだ医療制度改革関連法案を了承した。法案は、10日に閣議決定し、今国会に提出する。

 厚労省は医療制度改革で、必ずしも治療が必要ではない「社会的入院」を減らし医療費を抑制するため、療養病床(38万床)のうち、介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減する案を示したが、自民党内で「症状によっては入る施設がなくなる老人がでる」などの反対論が出て、調整が続いていた。』

 「常時の治療を必要としない長期入院」と同程度に「介護施設での医療を拡充」という言葉はおかしい.これでは施設とか病院とかいう名称の違いはあれやっていることは同じという意味にもとれる.だからこそ自民党厚生労働部会は、この方針を付則に盛り込んだ医療制度改革関連法案を了承したのかもしれないが,実際には提供される介護のレベルも医療のレベルも低下することはあっても向上することはないだろう.朝三暮四ということばがあるが,厚生労働省の官僚は自民党厚生労働部会を猿以下と見なしているのではないだろうか.

 介護施設の医療レベルは脳外科医や神経内科医などのように特種疾患療養型病棟も診ている医師が療養型病棟も診るのに比べたらまったくお話にならないレベルである.介護施設で病状が変化すればすぐに救急車で病院に転送しているのが現実であるし,神経症状の悪化でなくとも褥瘡の予防さえもできない介護施設がたくさんあるのが実態である.わざわざ病院の療養型病床から介護施設に患者さんを移して褥瘡や嚥下性肺炎で状態を悪くする必要がどこにあるのだろうか.

 医師や看護師の必要数を減らしても看護助手を増やしたりすれば介護施設に入所させるよりもより低コストで療養することは可能でそのほうが社会全体から見ればよりコストパフォーマンスが高いはずである.健康保険を使わせたくないのなら病院に居ながらにして介護保険を使えるように制度を変えればいいのであってわざわざレベルの低い介護保険施設やグループホームに入所させるのは私が家族ならお断りである.

 厚生労働省の官僚に医師コンプレックスでもあるのか,それとも介護施設業者からなんらかの見返りがあるのかも知れないが,より安全な介護と医療サービスを提供できる病院から患者をひき離す根拠がどこにあるのだろうか,自民党厚生労働部会の方にはそういったところをもっとよく考えていただきたいのであるが,厚生労働省の官僚の方がやはり一枚も二枚も上手ということなのだろうか.
『 --喫煙率に数値目標設定へ 厚労省が〓再挑戦〓 たばこ業界の反対必至--

 厚生労働省は5日までに、がんや脳卒中の原因とされるたばこの喫煙率減少に向けた数値目標を新たに設定する方針を固めた。

 2000年から国民運動として始まった「健康日本21」で、厚労省は酒類や塩分摂取量の数値目標を設定、たばこも「成人喫煙率と国民1人当たりのたばこ消費量を半減させる」との具体目標を盛り込もうとしたが、たばこ業界を中心に反対が強く、見送られた。

 厚労省は、近年の禁煙・分煙化を追い風に、あらためて数値目標が必要と判断。有識者による議論で具体的な数値を決めたい考えだが、同省の〓再挑戦〓に反対の声が上がるのは必至だ。

 1990年に60%を超えていた成人男性の喫煙率は2000年には53・5%、5年には45・8%(日本たばこ産業調べ)と漸減したが、20-50代の男性の率はほとんど変わらず、女性の喫煙率はかえって増えていると指摘されている。

 生活習慣病対策を検討する厚労省の部会でも「喫煙率を下げなければ病気は減らない」「たばこの大幅値上げか、具体的目標が必要」との意見が出されていた。

 たばこ対策では、03年5月に公共施設での受動喫煙防止を定めた健康増進法が施行され、自治体レベルで路上喫煙防止条例が制定されるなどして禁煙・分煙化が進んでいる。昨年2月には「たばこ規制枠組み条約」が発効し、たばこの箱の30%以上の面積を健康被害の警告に充てることなど規制が強化された。』

 数値目標をつくっても実効性に薄いことはもうすでに明らかになっている.厚生労働省の意味のないことをあたかも議論しているように見せる茶番劇はもう見飽きた.それよりもたばこによる健康被害を推定することは可能であろうから,煙草業界に健康被害による医療費の損失分を負担してもらえばいいだろう.今やたばこは一種の公害とも考えられるから製造者は責任を負うべきだろう.

 明らかに健康に悪い嗜好品が誰にでも手に入るのはよくないし,健康保険料が喫煙者と非喫煙者で同額なのは不公平だろう.不公平感をなくすためにもたばこに健康保険のマイナス分を補填するような高額の課税をして間接的に喫煙者の自己負担分を増額するのがいいのではないだろうか.自分でたばこをやめられない人もそれならやめるきっかけとなるだろう.

 またこんな意味のない数値目標を議論してなんの効果も上げられないばかりか,現在入院している患者や家族の意向は調査もしないのにたばこ業界の圧力には簡単に屈するお役所仕事が得意な厚生労働省の予算ももっと削減した方が財政再建のためにはいいだろう.
旅立ちを待っているのか.....
春の訪れとともに北へと旅立つ白鳥たち.
流れに浮かぶ白鳥も春を感じているだろうか.

皆さま今週もご苦労様でした.
『--健康志向なのに? 肥満や大量飲酒増加、国の目標遠のく--

 肥満や大量飲酒する人の割合などが、国の定めた目標値から、より遠のいていることが厚生労働省のまとめでわかった。国民の健康づくり計画「健康日本21」に掲げる70項目の達成目標値のうち、約20項目で計画をつくった時より悪化していた。健康志向が高まっていると言われる中、目標達成が難しくなっている実態が浮かび上がった。

 健康日本21は、同省が00年につくり、国民の食生活や運動量、がん患者の数などを改善しようと、70項目について「目標値」を決めた。2010年までの達成を目指している。

 同省が、各項目について計画をつくった当時の国民健康・栄養調査などの数値と、昨年5月までにわかった数値(暫定)を比べたところ、20〜60歳代の男性の肥満の割合は、計画時の24.3%から29.5%に悪化。目標値の15%以下には遠く及ばなかった。

 飲酒量では、日本酒換算で1日3合以上飲む男性の割合が、目標値は3.2%以下なのに、策定時の4.1%から5.3%に増えた。

 牛乳、乳製品などカルシウムを含む食品の摂取量(目標値・1日当たり130グラム以上)は策定時は107グラムだったが、97グラムに減った。また、朝食を食べない中高生の割合は、6.0%から8.7%に、30歳代の男性では20.5%から23.0%にそれぞれ増えていた。

 運動の目安になる1日当たりの歩数も男女とも減った。

 幼児の虫歯や食塩摂取量など目標値に近づいた項目もあったが、多くが横ばい。調査中で比較できない項目も3割以上あった。

 厚労省は今年度中をめどに計画の中間見直しを進めており、「目標値の見直しも含めて検討していきたい」としている。 』

 現状の分析から将来の予測そして対策までがきちんとできて初めて数値目標の意味があると思うのだが,厚生労働省の目標値というのは目標というより要望と言ったほうがいいのではないだろうか.予防医学という点からみれば,この結果は厚生労働省のミスと言っていいだろう.

 名義貸し問題への対応や診療報酬の削減も然りである.国家権力を背景に自分の都合を押し付けるだけの厚生労働省には合理的な問題解決能力があるとは思えない.最近はこんなことも問題になっている.

『--医療改革法案了承持ち越し 自民、療養床再編に反対論--

 自民党厚生労働部会は3日午前、入院日数の短縮や生活習慣病対策などで医療費抑制を目指す、厚生労働省の医療制度改革関連法案の了承手続きに入ったが、長期入院患者が多い療養病床の再編、縮小案に反対意見が出て、了承を同日午後以降に持ち越した。

 会合では、常時の治療を必要としていない「社会的入院」を減らすため、療養病床(38万床)のうち、介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減するとの同省の再編案に議論が集中。「現在入院している患者や家族の意向を調査せずに決めている」「老人の症状によっては、入る施設がなくなってしまう」などの反対論が続出し、意見が集約できず、午後、部会を再開し議論を続けることになった。』

 現在入院している患者や家族の意向を調査していないというのはどうだろうか.先日の,過剰な医療を減らし給付費の膨張を抑制するだけでなく、「医療の供給体制全体を国民の要望に応える形に改革する」(同省幹部)狙いというのは言葉だけだったと思われてもしょうがないだろう.なんと典型的なお役所仕事で誠意のないことだろうか.

 医療現場から言わせてもらえば,「介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減する」という論理的な根拠がないしこれによって生じる患者の家族や国民の負担増の予測も明かされていない.要するに現状分析も将来の予測も示さずに削減論だけを出しているわけだ.

 これでは,患者が在宅や施設への移動する際の心理的,肉体的な不安,そして家族の経済的負担の増加などによる医療機関とのトラブルはすぐに起こるだろうし,将来的には団塊の世代による病床不足からの入院拒否や介護保険料の急増による国民の負担増はむしろ医療保険の増額を上回る可能性すら出てくるのではないだろうか.

 厚生労働省が財務省でもないのにお金の話ばかりするのには失望させられる.国民の健康を守り,福祉を充実させるという視点からの現状分析と将来の予測というものを国民に示して施策の合理的な根拠を示す義務はないのだろうか.それを示してもらえるなら医師として納得できるのであるが.

 どうも厚生労働省の論理は「お金がないから払えない.もっと医療費を安くしろ.」と言っているだけにみえる.こんな見かけの数字合わせをしたら現実はうまくいくはずはないのである.そんなことは当然わかっているはずで,やはりわかっていながらうまく偽装して責任逃れするつもりなのだろう.こうして問題はまた先送りとなり,医療現場でこちらが苦労させられるわけである.

父親の子育て

2006年2月3日 その他
『 --赤ちゃん待ってパパも太る 2種のサルで米チーム確認--

 つがいの雌が妊娠中には雄も体重が増える現象を、米ウィスコンシン大の研究チームが2種のサルで確認し、英科学誌バイオロジーレターズに1日、発表した。

 人間の男性でも妻の妊娠中に体重が増えたり、つわりのような症状を経験したりする例が知られており、その原因解明につながる可能性もある。

 チームが研究対象に選んだのは、小型サルのコモンマーモセットとワタボウシタマリン。一夫一婦婚で父親が母親と同等かそれ以上に子育てをすることで知られる。

 同大の飼育施設で、つがいの雌が妊娠中の雄計25匹の体重を調べたところ、5-6カ月の妊娠期間に体重が平均で約10%増えた。そうではない雄13匹の体重に変化は見られなかった。

 父親サルは、誕生直後から赤ちゃんを何匹も背負って動かなければならないため、研究チームは「厳しい労働に備えたエネルギー貯蔵では」と推定。人間の男性の症状は心因性だと考えられてきたが「進化の過程で必要だったことの名残だったのかも知れない」と指摘している。』

 進化の過程で外敵に襲われ生存が脅かされていた時代には父親サルは赤ちゃんを何匹も背負って急いで動かなければならなかったということだろうか.人類も進化の過程で同じように父親も積極的に子育てをしていたのだろうか.

 残念ながらわが国で父親が積極的に子育てに参加することは一般化しているとは言いがたいと思う.父親は仕事,母親は家庭といういつから始まったかわからない固定観念にとらわれている人(男性?)が非常に多いのではないだろうか.

 医療の世界はもともと看護婦さんと言ったくらい看護師は圧倒的に女性の職業であったし,昔は女医は珍しかったとはいえ極めて女性の比率の高い職場であった.最近は女性医師が増加しておりいずれ50%に迫ると思われるから医療業界は今後も女性の比率が高くなるのだろう.

 ところが,これほど女性の職場であるのに男性医師には男尊女卑というか封建的な考えの持ち主が意外に多いのだ.こういう考え方を変えるのはかなり困難なようで,米国に留学しても知識や技術のコピーはできても家族や家庭中心の考え方やレディーファーストのマナーを身につけることまでは出来ないらしい.

 男性医師のなかには子育てが面倒なのか,仕事が終わっても家に帰らない人までいる.おかげで後輩も家に帰れなくなり迷惑したりする.きっと家族は仕事が忙しいと思っているのだろうが,私は家族に不誠実な人間が患者に誠実なんてことはないと思っているから一見仕事ができそうでもそういう医師は信用しない.

 医師に限らず他人の命を預かるものはまず家族を大切にする心がなければならないし,社会を考えるならその一番小さな構成員である自分の子供をまずしっかり育てることが大切であると思う.有名人の子供が問題児ということはよく聞く話であるが,仕事を言い訳にしないで子育てを妻と共にしっかりできる父親にならなければ,なんのための仕事であるかがわからなくなるのではないだろうか.

 
『ペースメーカーに悪影響 CT検査のエックス線

 重い心臓病患者が装着する植え込み型のペースメーカーに、コンピューター断層撮影(CT)検査のエックス線が当たると心拍のリズムが遅くなるケースがあることが分かり、厚生労働省は26日発行の「医薬品・医療機器等安全性情報」に記載して注意喚起した。

 また、心臓の異常を感知して電気ショックを与えて心拍を戻す「植え込み型除細動器」では、同様の不具合に加えて、心臓に問題がないのに誤って電気ショックを与える恐れがあるとして、除細動器にCT検査のエックス線を当てないよう求めた。

 実験では、国内で製造販売が認められているすべてのペースメーカーで同様の不具合が起こることが判明。厚労省は「本体に5秒以上照射しない」などの内容を添付文書に記載するよう指示し、医療機関にも同様の注意を求めた。

 診療上やむを得ずCT検査をする場合は、ペースメーカーにエックス線が当たらないようにするか、それも無理なときは一定の心拍を続けるように設定した上で、脈拍を監視するよう指示した。』

 昨年の5月28日に書いたが,やはりすべてのペースメーカーで問題が起きるようである.ペースメーカー使用の方は循環器内科のある病院で胸部のCT検査を受けていただくしかないであろう.それにしてもこんなことの検証に1年近くもかかるとはどういうことだろうか.

『 --アクセス殺到、HPパンク 医薬品の副作用公表--

 医薬品による副作用の全例公表を31日に始めた独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページ(HP)に、同日午後からアクセスが殺到し、つながりにくい状態になった。

 機構は「アクセスが1日平均の約63万件(2004年度)を大きく上回った。予想外だった」としており、市民の副作用への関心の高さと、機構の認識の甘さを示した格好。

 医薬品の使用上の注意などの情報提供にも影響が出かねないため、機構は早急に対策を取るとしている。

 機構は医薬品の承認審査や副作用による健康被害救済、安全対策業務に当たっており、HPは医療関係者らに利用されることが多い。パンク状態になったのは機構が発足した04年4月以降、初めてという。』

 おそらくは自分が病院からもらっている薬のことを心配してのことなのかも知れない.自分の薬に関心を持つことは非常に結構なことである.「病院からもらった薬がわかる本」なんていうのが売れた時代もあったが,最近はネットで調べられるから便利になったものだ.だが,それにしては外来に他の病院でもらっている薬のリストを持ってくる人はまだまだ少ない.

 病院にかかるときには健康保険証だけでなく他の病院からの診療情報提供書というものを持っていけばお互いに余計な手間が省けるものである.薬の副作用には単独で起きるもののほかに他の薬剤との相互作用で起こるものもあるのである.自分の体を守りたかったら是非そういった情報を持参することをお勧めする.
『 --介護疲れで妻殺害、猶予判決受けた夫が自殺 名古屋--

 自宅で介護していた認知症の妻を絞殺したとして、殺人罪で25日に執行猶予付きの有罪判決を受けた、名古屋市千種区北千種2丁目、無職梶恒夫元被告(68)が29日に飛び降り自殺していたことが分かった。

 愛知県警千種署によると、梶元被告は29日午後7時55分ごろ、市営住宅5階の自宅前の通路から飛び降りたとみられる。自宅には、親類にあて「ごめんなさい」とだけ書かれたメモが残されていたという。

 梶元被告は、03年にアルツハイマー病を発症した妻の介護を1人で続けてきた。しかし昨年7月、症状が悪化し、夜中に苦しむ妻(当時74)の様子を見て不憫(ふびん)に思い、ネクタイで首を絞めて殺害し、警察に自首した。

 近くの住民らは、裁判で情状酌量を求めるために嘆願書を提出。名古屋地裁は、「心情には酌むべきものがある」として、懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡していた。 』

 在宅での介護の苦労は一般の人が想像するよりはるかに大変なものである.介護保険制度にはじまり,今年の療養型病床のさらなる削減へと厚労省は病院から慢性期の入院患者を引き離すのに躍起になっている.

 しかし,介護保険施設への入所は経済的な負担があるし在宅療養では家族の肉体的な負担も大きい.そんな中で最近は介護者が介護疲れからこれを放棄してしまい殺人や心中という悲惨な結末となるケースがニュースで取り上げられるのが目立つようになってきたような気がする.

 痴呆で徘徊したり暴言を吐いたりする老人に一人で対応するのも,寝たきりで全介助を要する家族を一人で世話することも不可能な話である.寝たきりと言っても喀痰を吸引したり,蓐瘡(じょくそう)予防のために時間ごとに体の向きを変えたり,食事,排泄,着替えなどやることはいくらでもあるのである.ヘルパーや入浴サービスがあってもつかの間の休息にしかならない.

 核家族化と少子化のわが国では夫婦と子供一人の家族で在宅介護なんて到底出来るはずがない.大家族制の残る田舎を引き合いに出すのは時代錯誤的でさえある.このニュースのように68歳の夫が74歳の妻を介護するなんてまったくひどい話である.この夫はいったい何のために人生最後の時を費やしたのであろうか.最初はできると思っても毎日続けば無理なものはやはり無理なのである.離婚して妻を生活保護にして施設入所させればよいとでも言うのだろうか.

 健康保険が破綻するとして厚労省は経済的にも社会的にも最も効率的に行われてきた社会的入院から慢性期の患者を退院させようとしている.だが問題は解決するどころか経済的な国民の負担とともに,もっと深刻な社会問題を増やす方向に進んでいるように見えるのだがこれからどうなるのだろうか.在宅介護が無念の死で終わるような日本に誰がしたのであろうか.

追加記事

『--介護施設への転換など課題 療養病床再編で受け皿に--

 常時の治療を必要としない人が数多く長期入院している療養病床の再編、縮小と患者の受け皿づくりが、来年度から始まる医療制度改革の大きな課題になっている。再編は医療費適正化の鍵となる入院日数の短縮に不可欠だが、療養病床の受け皿となる介護施設への転換方法などをめぐり、病院経営者らは懸念を表明している。

 政府、与党は昨年12月に決定した医療制度改革大綱で、平均入院日数の短縮を生活習慣病対策と並ぶ中・長期対策の柱に据えた。厚生労働省は改革による医療給付費の抑制効果を2025年度で計8兆円と見込むが、このうち入院日数の短縮は3兆8000億円とほぼ半分を占める。

 療養病床の再編は、こうした基本方針の具体策となる。医療保険が適用される医療型約25万床、介護保険が適用される介護型約13万床を来年度から順次縮小し、将来は「医療の必要度の高い患者を対象とする施設」に衣替え。介護型は12年度に保険適用を廃止する。

 医療の必要度が低い人で、家庭の事情などにより自宅へ戻れない人には、不要になる療養病床からの転換で増える、老人保健施設やケアハウスなどの居住系施設への移動を促す。同省は施設転換費用の助成などを行う。

 これに伴い、医師や看護師も、医師が不足している救急、産科、小児科、終末期を含む往診・訪問看護へ振り向ける余地が生じる。同省は医療保険から医療機関や調剤薬局に支払われる診療報酬の配分を、こうした分野に手厚くすることなどで後押しする。

 過剰な医療を減らし給付費の膨張を抑制するだけでなく、「医療の供給体制全体を国民の要望に応える形に改革する」(同省幹部)狙い。

 これに対し、与党の一部から「入院患者の仕分けがうまくできるのか」、病院団体から「介護保険法の改正が必要なので十分な審議を」「療養病床と建築基準が違う介護施設などに転換するには、土地の手当てや多額の改築費用が必要」などの疑問や指摘が出ている。

 ただ改革の方向性への異論は少なく、「やらなければならない課題」(自民党の厚労族幹部)とされる。今国会への関連法案提出に向け、同省がより具体的な施設転換の手順や方法を提示し、早急に関係者の理解を得る必要がありそうだ。』

 少なくとも医師不足解消の話は嘘でしょう.これは療養病床の必要医師数を減少させれば済むことです.そうすれば人件費が減るので入院費も下げられます.改革の方向性への異論が少ないのは小泉首相が恐いのだろうか.療養病床からの転換で増える、老人保健施設やケアハウスなどの居住系施設ということはまた建築需要が出るので景気対策という意味もあるのだろうか.こんなことで「医療の供給体制全体を国民の要望に応える形に改革する」といえるのだろうか.私には理解できないことだらけ.
『--ホームレステント、大阪市が2公園で強制撤去--
  
 大阪市は30日、公園整備の妨げになるとして、行政代執行法に基づき、靭(うつぼ)公園(西区)と大阪城公園(中央区)に建てられた野宿者のテントの強制撤去を始めた。市職員約310人、民間会社の警備員350人を動員し、計22テントを取り壊す。このうち、15テントが集まる靭公園では、野宿者や支援者ら約50人が激しく抗議し、市側ともみあいになった。

 大阪市内の野宿者は03年の厚生労働省の調査で約6600人。全国の約2万5300人の4分の1を占める。大阪城公園では3〜5月に「全国都市緑化おおさかフェア」が、靭公園では5月に「世界バラ会議」が開かれるため、市は昨年10月から、両公園で暮らす野宿者に市の施設への入居を勧めてきた。

 しかし、20人以上が「施設は不自由だ」などとして応じなかったため、今月18日から強制排除に向けた手続きを始め、24日に最後通告に当たる代執行令書を交付していた。

 靭公園では午前8時、市職員が「行政代執行」の開始を宣言、作業区域からの退去を求めた。野宿者側は鉄パイプで骨組みした団結小屋の周辺に人垣をつくるなどして抵抗。市側は約200人で団結小屋を取り囲み、周辺のテントから撤去を始めている。

 もみあいの中で、野宿者1人が頭を打ち、救急車で病院に運ばれた。大阪府警は警官120人を公園周辺に配置し、警戒している。

 野宿者側は今月、2度にわたり撤去の差し止めを大阪地裁に申し立てたが、いずれも棄却された。一方、市内の別の公園に住む野宿者が、テント生活をしている公園を「住所」と認めるよう求めた行政訴訟で、大阪地裁が今月27日、訴えを認める判決を出した。これを受け、強制排除の対象となった2公園の計9人が区役所に住民登録を届け出たが、「判決が確定していない」として、扱いは保留となっている。 』

 イベントのための公園整備の妨げというのはあくまでも大義名分でこれに乗じてホームレステントを一掃しようとする意図があまりにも見えすぎなので反発を招いたのであろう事はだれにでもわかることである.今まで何度も説得や話し合いをしたのであればこのような事態にはなっていなかったのではないだろうか.

 こういった社会にとって重要な問題をなかば強引な方法でかたずけて「全国都市緑化おおさか○○」「世界○○」とやったとしてもそれではたとえ大阪でもただお祭り騒ぎが好きなバカな自治体にしか見えない.もっとも公務員に名目だけの無駄な手当てを払い続けていた自治体にいきなり体質を改善せよというのは無理なことだろうが,もうすこしやり方を考えた方がいいだろう.

 ところで,公園にテントを張って生活することはいけないことなのであろうか.「施設は不自由だ」という理由で入居を断った人たちは本当に公園のテントの方が快適なのだろうか.私には長期のテント生活はできそうにないが,キャンピングカーで自分の好きなところに行って暮らせるとしたらやってみたいような気もする.

 毎日公園のテントで暮らし,そこから仕事に行ってまたテントに戻るというのは考えてみればもっともシンプルで自由な生活のようにも思えてくる.社会にはいろいろなルールがあることはわかるが,本来は地球はみんなのもので誰でも好きなところに住む権利があると考えれば,テント生活者がどこにでも住んでいいようにも思うのはいけないことなのだろうか.もちろん,それで他人の生活を脅かすのであれば話は別だろうが.

 基本的人権を尊重するのであれば,テントに生活したい人のために「おおさかテント村」でも作ってあげたらそれこそ一大イベントとして注目されることであろう.全国の4分の1といわずすべてのホームレスを集めれば大阪市の株も少しは上がるのではないだろうか.
『--のど病気の女児拒否は違法 市に保育園受け入れ義務
 父親「春が来た」と笑顔--

 のどの病気に対応できないことを理由に入園を拒否したのは不当として、東京都東大和市の青木鈴花(あおき・すずか)ちゃん(5)と両親が、同市に認可保育園への入園を仮に義務付けることを求めた申し立てで、東京地裁は26日までに申し立てを認める決定をした。市は入園を認める方針。

 決定を受けて、鈴花ちゃんらが会見。父親の繁宜(しげよし)さん(40)に「保育園に行ったら何がしたい」と聞かれ、鈴花ちゃんは「積み木で遊ぶ」と笑顔で話した。繁宜さんも「一足早くわが家に春が来た。一日でも早く入園させたい」と喜んだ。

 仮の義務付けは裁判所が緊急性のある処分を行政側に義務付けることができる制度で、2005年施行の改正行政事件訴訟法に盛り込まれた。

 決定理由で菅野博之(かんの・ひろゆき)裁判長は「障害は成長につれて改善されている。普通の保育園での保育は可能」と判断。入園を認めなかった市の処分は違法とした。

 鈴花ちゃんは気管の病気のため、のどに気管チューブを装着し、定期的にたんを吸引する必要がある。たんの吸引は自分でできるため、認可保育園への入園を希望したが、市は吸引が医療行為に該当し、対応できないとして、昨年、2回にわたり入園を断った。

 鈴花ちゃんは03年6月から障害のある子供が通う療育施設に通っており、来春には小学校に通う予定。』

 医療業界用語で「サクション」と言っている喀痰の吸引除去は口腔(こうくう)や鼻腔(びくう)経由で気管内の喀痰を吸引するには確かに技術を要する.しかし,気管切開され気管チューブが装着されていればそれほど難しいものではなく何回か指導を受ければ家族でも可能なものだと思う.

 在宅介護の現場でも以前は医師や看護師または家族しかできなかったが,現在では規制が緩和され介護スタッフもできるようになっているはずである.だから,普通の保育園でもこれくらいのことは可能と考えるのは妥当なことだと思う.

 ただ,勘違いしてはいけないと思うこともある.喀痰の吸引ができるということと何かトラブルが起きたときに対応できるかということは別だということを保育園と親の双方がちゃんと理解しているかということである.たとえば気管チューブが抜けてしまった時にはどうするのであろうか.万が一のことを考えると保育園にも医療スタッフが必要だろう.

 財政危機がすべての原因なのかはわからないが,最近,社会的な弱者への風当たりが強くなっているような気がする.勝ち組,負け組という言葉で煽られているが,よく考えればほとんどの人は負け組なのではないだろうか.勝ち組になろうと不正まで働いて躍起になっても所詮人間に変わりはないのである.自分がいつ障害を持つ身になっても安心な「やさしい社会」をつくるのが大切なのではないだろうか.

春を待つ

2006年1月27日 私の写真集
春を待つ
みにくいアヒルの子ではないが,グレーの白鳥というのもいるのだろうか.

最近は気温も上がり春が来るのを感じられるような気がする.
『 --「妻子の誕生日は休もう」 働き過ぎ、子育て対策に、労働時間改善法で厚労省--

 単身赴任者は妻子の誕生日には休みを―。厚生労働省が近くまとめる労働時間設定改善法の指針案で、会社が家族の記念日に休みを付与することを提案する。ほかにも2週間程度の長期連続休暇や出産時に父親の休暇制度の整備も推奨しており「休もう運動」の指針となっている。
 背景には長時間労働や、近年増加する過労死、メンタルヘルス(心の健康)問題がある。同時に少子化対策や介護問題で、働き過ぎのサラリーマンを家庭や地域社会に戻すことも目的としている。
 昨年、労働者の年間総労働時間を1800時間にすることを目指した時限法の時短促進法を改正し、労働時間設定改善法を制定。今年4月からの施行に合わせ、具体例を記載した指針作りを始めた。
 改善法では会社と組合が委員会を設置し、それぞれの会社にあった休日取得を促進するよう求めている。日本経団連など経営者団体や連合も協力を約束しており、休日増を望むサラリーマンの期待が高まりそうだ。』

『--週40時間労働制限、高収入社員は撤廃 労基法改正検討--

 労働時間制度の見直しを議論している厚生労働省の研究会(座長・諏訪康雄法政大学教授)は25日、これまでの管理職に加え、一定以上の収入や権限のある労働者を、1日8時間・週40時間の労働時間規制から外す新制度の導入を盛り込んだ報告をまとめた。これを受け、同省は労使代表も含めた審議会の議論を経て、07年にも労働基準法の改正を目指す。成果主義などで自律的に働く人が、出退勤時間などに縛られず働けるようにする狙いだが、長時間労働や過労死の増加を懸念する声もあり、議論を呼びそうだ。

 対象者は、業務量を自分で決められる「管理職手前の中堅社員」や「プロジェクトチームのリーダー」ら。報告では、(1)仕事の進め方で指示を受けず業務量をコントロールでき、成果で賃金が決まる(2)一定水準以上の年収があり、本人が同意している(3)過労を防ぐ健康確保措置がある(4)導入は労使協議で合意する――の4点を条件とするよう求めている。具体的な金額は各企業の労使で決める。企業側は、残業代などの割増賃金を支払う必要がなくなる。

 労働時間規制を巡ってはこれまで、人事や労務管理に決定権がある企業の部長ら「管理監督者」や、研究開発や企画立案などの業務で、実際の労働時間にかかわらず一定時間働いたとみなす「裁量労働制」の人は、対象外だった。企業側から対象の拡大を求める声があった一方、労働者側からは権限がない人にまで適用され、過労死や不払い残業につながるとの指摘があった。報告では、対象者の要件を明確にし、既存の制度と整理・再編することを提案している。

 また報告では、04年度で取得率が46.6%と低迷する年次有給休暇について、現行のように労働者に任せるのではなく、企業側に具体的な取得日の決定を義務づけさせ、確実に消化させることも盛り込んだ。

 研究会の報告を受けて連合は25日、「過労死・過労自殺が社会問題となっている中で、適用除外の拡大は長時間労働を助長することになる。導入は大きな問題だ」とする談話を発表した。 』

 これらの記事の対象となる労働者の違いはなんだろうか.自分がどちらの労働者に該当するかすぐに自分でわかる人はそれでいいのだが,たとえば勤務医ならどちらに該当するのだろうか.

 特に医師については何も書かれていないが,医師不足を理由に「2)一定水準以上の年収があり、本人が同意している」にされたのではたまったものではない.仕方がないからやっているのであって誰も望んで時間外まで無料奉仕しているわけはないだろう.当直の回数でさえ制限されているという話も聞いたことがない.ましてや患者を断る権利もない.就労時間の制限が撤廃され勤務医に流用されることのないよう祈るのみである.

 働き過ぎのサラリーマンである勤務医の年間総労働時間を1800時間にするのなら大賛成だ.ただ「妻子の誕生日は休もう」というのはちょっと安易ではないだろうか.共働き夫婦だったら妻も休みをもらえないと意味がない.ここはやはり「夫婦の誕生日は公休」というようにしてもらったほうがいいだろう.夫婦だけの時間がもらえれば多少は少子化対策になるかもしれない.

 
『--すべての保険が負担抑制 診療報酬マイナス改定で--

 厚生労働省は25日、2006年度の医療制度改革が、健康保険組合(健保組合)など各公的医療保険制度の財政に与える影響の試算を自民党厚生労働部会に示した。

 08年度の医療給付を賄うのに必要な保険料は、現行制度のままで推移した場合に比べ、すべての保険制度で抑制され、国、都道府県、市町村の負担も抑制されるとしている。

 昨年10月に厚労省が示した改革試案の段階では、大企業のサラリーマンが加入する健保組合が08年度に必要とする保険料は、現行制度のまま推移する場合よりも2200億円の上乗せだったが、その後、06年度の診療報酬を全体で3・16%のマイナス改定とすることが決まり、給付の抑制、保険財政の改善につながった。 医療保険全体の保険料は現行制度のままに比べ、改革試案では2000億円の抑制にとどまっていたが、今回の試算では抑制幅は8300億円に拡大する見通し。内訳は、健保組合が600億円、政府管掌健康保険(政管健保)が3500億円、国民健康保険(市町村国保)が2500億円など。

 さらに、国保などに支出している都道府県の負担は現行制度に比べ200億円の上乗せだったが、500億円の抑制に転じる。国庫と市町村の抑制幅も、それぞれ2200億円から5700億円、200億円から600億円に広がる見通しだ。』

 1月21日に書いたとおり保険料ベースで医療費の抑制は8300億円だそうだ.まあ,実際にはおそらく6000億円程度しか抑制されないとは思う.小泉首相が日本橋の上の空を広くしたら消えてしまう程度.つまりコストで診療が抑圧されストレスをためた医師たちが日本橋の景観を寄付したと思えばいいってことなんでしょうか.

 なるようになるってことだろう.それでも医師になりたい人はたくさんいるんだから,まだまだ人件費が下がっても誰も困らないって思っているんでしょうね.そう,これからは優秀な人は医師になんかならないんだから.医療費なりに医療レベルが下がってバランスがとれるんでしょうか.財政が破綻しそうだから医師も痛みを分け合ってといったのも首相でしたでしょうか.

 それが日本橋の景観で消えてしまう程度のものだなんて,なんだか我慢するのがばからしいと思うのは私だけでしょうか.そういえば工学部の人気がなくなり,医学部志望は増えているそうな.まあ,確実に就職はできるでしょうが,労働環境は最悪ですから.最近は医学部より獣医学部の方が偏差値が高いそうだから,将来いい医療を受けられるのはペットかもしれませんね.ペットの平均寿命が世界一になるころには医者を辞めて獣医をめざすのがはやるかも.
『 --「世界一に」疾走暗転 堀江社長逮捕 --

 あっけらかんと「世界一」を口にし、「人の心は金で買える」と言い放ったライブドア社長の堀江貴文容疑者(33)が23日、証券取引法違反の疑いで逮捕された。わずか600万円で起業して10年。プロ野球や民放業界への新規参入騒動から総選挙出馬まで突き進んできたが、ホリエモンは30歳代の側近たちとともに「人生ゲーム」につまずいた。

 午後9時半ごろから、東京都葛飾区の東京拘置所には、堀江社長らを乗せたワゴン車が、警察車両に先導されて相次いで到着し、敷地内に入っていった。拘置所前には100人を超える報道陣が集まった。近所の人らも加わって、騒然とした雰囲気となった。

 逮捕前、堀江社長にいつも随行しているライブドア広報担当の乙部綾子さんは、力無く語った。

 「堀江は罪の意識はなかったと言ってるので……」

 04年に出版した著書で、「人の心はお金で買える」と書いた堀江社長。世論を二分した勝ち気な物言いとは違う姿だった。

 「せかいいち」。同年の七夕の日には、堀江社長は、ピンク色の短冊にそう書いた。

 女性起業家の私的なパーティーだった。主催した女性(37)は「長髪でオタクっぽかった時代とは比較にならないほど、生き生きしていた」と振り返る。

 その2日前、堀江社長は大阪ドームで約1000人のファンに囲まれ、「堀江コール」を浴びていた。プロ野球・大阪近鉄バファローズの買収に名乗りを上げた直後。近鉄のユニホームを着て一塁側内野席で声援を送った。

 社名を「エッジ」(尖端(せんたん))から「ライブドア」に変えた年だったが、ヤフーや楽天といったIT企業の中でも、知名度が乏しかった。ライブドアとホリエモンの名が、全国にとどろいた瞬間だった。

 当時の取材には「営業利益でも時価総額でも何でもいいから世界一になる」とあっけらかんと宣言した。その理由は、「なるんです。もう既定路線。すごろくみたいなもので、間違いなくゴールに向かっている」。

 「人生ゲームM&A」は、堀江社長ら起業家7人が監修したすごろく型の盤ゲームだ。タカラが昨年9月に発売し、10万個以上も売れている。

 各プレーヤーは10億円の資金でスタートし、放送会社を買収したり、財務のプロを仲間にしたりしながら資産をふやす。全部で129個のマスの中に「敵対的M&A」が10回も出てくる。

 「巨大コンツェルン総帥の楽園」にゴールし、最も資産総額の大きな人が勝ちだ。勝者の資産は数兆円にも上る。

 事業に失敗すると、「挫折の地」にコマを置き、他のプレーヤーがゴールするのを待つのみとなる。「エッジ」を歩んできたホリエモンは、その地まで落ちた。 』

 「誤解を恐れずに言えば、人の心はお金で買えるのです。女はお金についてきます」(04年8月、著書「稼ぐが勝ち」)の真意はどこにあったのか.そんなことをわざわざ言葉にして言ったのは,結局は自分の心がお金に買われてしまっていることに気がついていなかったからだと私は思う.

 この人の発言はいろいろなところで取り上げられることが多かったが,あまり心に残るような発言はなかったのかほとんど憶えていない.だが,この「人の心はお金で買えるのです。女はお金についてきます」という言葉は非常にnegativeな発言として記憶していた.たとえそう思っても口にしてはいけない言葉というものがあると思うが,そういう言葉を口にした時から運に見放されるものなのだろう.

 人間というのは,普段から思っていることは口からこぼれ出てくるものだし,いつも口にしているとそのように行動してしまうものではないだろうか.これはおそらく人間の脳というものが次第に言葉で人の行動を制御するように進化してきているせいではないかと私は思っている.

 特にデジタル社会になってこの傾向はより強まっているのではないだろうか.その理由として,昔は単純な道具を手足の感覚で使うようなものが多かったのが,コンピュータを使うようになってから言葉で考えながらでないと使えない機械が増えたということが考えられる.つまりコンピュータのために人間はより頭でっかちな生物に進化しなくてはならなくなったのである.

 最近のネット世代の人間はコンピュータを使っているうちに行動そのものがコンピュータ的な単純な論理に陥っているのではないだろうか.Blogなどをみていても確かに一見論理的ではあるのだが,非常に思考が単純で中身がなく,人間性に乏しいものが多いような気がするのは私だけだろうか.

 しかし,これは書いている人の人間性の問題ではないと私は思いたい.むしろ無理に言葉にしたり,論理的に判断しようとするあまり表現力がそれについていけないせいではないかと思っている.そして一言で断言しようとしてついNGワードを言ってしまい,挙げ句には自分で発したNGワードに縛られて行動してしまうのではないだろうか.

 パソコンと一緒に人間が成長しているようなデジタル時代を否定するつもりはないが,こんな時代であるからこそもっと人間としての自分に目を向ける必要があるのではないだろうか.数字やデータ偏重も結構であるが,ヒトも生き物であれば遺伝子が進化の過程で獲得してきた冗長性もその存在には重要だということに気がつくべきだろう.

 少なくとも私は『人の心がお金で買える.』なんて思いたくないし,『お金についてくる女』がいたとしてもお断りである.言葉や論理は尊重しても自分の感覚や感性を重視して生きたいから,計算の得意な女性より感覚的な女性のほうに魅力を感じるのである.
 
これ本気?
『--「不具合ゼロと思っていた」 大学入試センターが会見--

 大学入試センターは21日午後10時過ぎから記者会見を開いた。

 松浦功事業部長は「ICプレーヤーの不具合の申し出はゼロだと思っていた。こんなにあるとは」と話した。原因については「わからない」としたうえで、「メーカーの全数チェックや受験生による動作確認を繰り返したのにICプレーヤーの不良が起こり、大変遺憾です」と述べた。

 松浦部長によると、受験生から不具合の申し出があってもその場で、本当に故障しているのかどうか監督者が確認することはなく、すべて再テストを受けさせるよう指示していたという。 』

『--リスニング、トラブルで436人再テスト センター試験--

 50万人を超える受験生が挑んだ大学入試センター試験は21日、1日目の日程を終えた。初めて実施した英語のリスニングテストでは、全国の試験会場で、ICプレーヤーの不具合などによって聞き取れないトラブルが相次いだ。トラブルに遭った受験生に対しては再テストが実施された。大学入試センターの22日午前1時半現在のまとめによると、448人が再テストを申し出てうち436人が実際に受けたことが確認された。センターは「予想を超えるトラブルだ」としており、原因の分析を急ぐ。

 リスニングテストは、1日目の午後、80分の筆記試験(200点)の後に実施された。各受験生に再生専用のICプレーヤーが配布され、イヤホンを通じて問題を聞き取る形式。受験生には、ICプレーヤーを配布してすぐに「確認音声」が流れるかなどのチェックをさせた後で、試験進行について説明し、計30分をかける。その後に30分間の解答時間を設けている。配点は50点。受験者は49万2596人だった。受験生は両耳にイヤホンをつけ、再生専用ICプレーヤーで問題文と設問を聞き取る。

 不具合が起きた場合、受験生は黙って手を挙げて申し出る。監督者はその時点で何問目まで解答したかを確認する。再テストは、新しい解答用紙を使い、不具合が起きた問題以降だけを解答することができる。

 大学入試センターによると、再テストが実施された会場は北海道から九州まで全国にわたる。448人の再テスト対象者のうち、4試験場で辞退したかどうかの確認がとれておらず、これを経て最終確定する。トラブルの原因で最も多いのは、「機器の不具合」によるものだという。センターは、トラブルのあったICプレーヤーはすべて回収し、メーカーに分析させる。

 記者会見したセンターの松浦功事業部長によると、昨年に実施した試行テストの際には、約3万5000人の受験に対して故障は18台だった。今回は、その故障率を上回る予想外の結果となったが、松浦部長は「改良して来年度も同じシステムで実施する」と述べた。

 仙台市青葉区の東北大川内北キャンパスの会場では、7人が、雑音が出て音量を調整しても消えないなどのトラブルを訴え、再テストを受けた。

 宇都宮市の宇都宮大学では、プレーヤーを床に誤って落とし、壊してしまった2人やプレーヤーが不調だった3人が再テストを受けた。』

 本気で「不具合ゼロと思っていた」とは思えない.試行テストで約3万5000人の受験に対して故障は18台だったのだから,50万人なら250台という計算だが,どう見ても安物の機械のようだから数が多くなれば点検から試験までの期間が長くなり故障率が上がっても別に不思議ではないだろう.だから安全係数を2倍とすれば500台までは故障しても想定内と言うのが本当のところだろう.

 こんな機械に頼ってまでヒアリングの試験をしないと英語の実力はわからないのだろうか.せっかくヒアリングの能力が高くても機械がこわれて動揺し実力を出せなかった受験生はいなかったのだろうか.2日目への影響を最小限にするためにこの機械を使う試験は最後にするのがいいかもしれない.

 入試はできるかぎり平等に行われるのが当然で,学生も入試センターの人も理想主義でいいのかもしれないが,現実には運も実力の内というか,人との出会いも含めすべてが不確定なものの上に成り立っているのである.いろいろなリスクを考えながらもトラブルに遭遇しても冷静に対応する.結局この当たり前のことを繰り返すしか生き残る方法はないのだろう.

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