発熱
2016年1月16日 病院のかかり方(脳神経外科の場合)『インフルエンザが例年より遅れて全国的な流行期に入った。国立感染症研究所(感染研)が15日に発表、流行のピークもやや遅れて2月中になる見込みという。ただ、「流行の規模が小さくなるとは限らない」とし、手洗いやマスクの着用などによる予防を呼びかけている。
感染研によると、全国約5千カ所の定点医療機関から直近の1週間(4~10日)に報告されたインフルエンザの患者数は1カ所あたり2・02人。流行開始の目安となる「1人」を超えた。12月中に流行期に入らなかったのは2006~07年シーズン以来。
都道府県別で1カ所あたりの患者数の報告が多いのは沖縄県8・19人、秋田県7・85人、新潟県5・73人、北海道4・84人、千葉県2・49人など。この1週間に全国の医療機関を受診した患者は約13万人と推計されるという。
直近5週間に検出されたインフルエンザウイルスはA香港型(H3N2)と、09~10年に新型として流行したH1N1型がほぼ同程度で、次いでB型の順という。』
インフルエンザがいよいよ流行期に入ったようだ.私の外来には今のところ感染患者さんは来ていないが,隣の内科外来には時々来ているようだ.
救急隊がたまに発熱で動けなくなった患者さんを脳外科疾患と思って運んでくることがあるが,最近は家族が外来に連れてくることも多くなった.
発熱があったとしてもそのために脱水になり脳梗塞を起こすなんてこともあるかもしれないから頭の検査をしてみるのもいいのだろうが,救急隊にしても家族にしても最近は熱もろくに測らないうちから頭の病気を心配するようになっているようだ.
脳梗塞の後遺障害で手足の麻痺や口のもつれが残っている場合には,発熱や脱水症状で症状が悪化して見えることはよくある話で,食事や水分が取れなくなれば脳神経外科に入院になることも多い.大抵は退院して元の生活には戻れることが多いが,肺炎などを合併するとそれをきっかけに廃用症候群から寝たきりになってしまうこともある.
脳血管障害で入院する人には,高齢者が多く糖尿病などを合併していることも多いからたとえただの風邪でも肺炎を起こしたり,脱水症から腎不全になったりすることもある.ノロウィルス感染では嘔吐もよくありそのために誤嚥性肺炎を起こしてしまうこともある.
脳血管障害の後遺症がある患者さんは,それ自体の再発のリスクもあるが感染症とその合併症のリスクも高いのである.ノロウィルスや風邪のワクチンはないから手洗いするしかないけれど,インフルエンザや肺炎はワクチンがあるからできるだけ接種しておいた方が感染のリスクは下がるだろう.
最近はPM2.5のこともあるのか普段からマスクをしている人をよく見かけるようになったが,よほど高性能なマスクでなければウィルス感染防御は期待できないだろう.結局のところウィルス感染の多くは接触感染なので手洗いをするしかない.特に顔や口を手で触る前に必ずきれいに手を洗うのが一番効果的だろう.
感染研によると、全国約5千カ所の定点医療機関から直近の1週間(4~10日)に報告されたインフルエンザの患者数は1カ所あたり2・02人。流行開始の目安となる「1人」を超えた。12月中に流行期に入らなかったのは2006~07年シーズン以来。
都道府県別で1カ所あたりの患者数の報告が多いのは沖縄県8・19人、秋田県7・85人、新潟県5・73人、北海道4・84人、千葉県2・49人など。この1週間に全国の医療機関を受診した患者は約13万人と推計されるという。
直近5週間に検出されたインフルエンザウイルスはA香港型(H3N2)と、09~10年に新型として流行したH1N1型がほぼ同程度で、次いでB型の順という。』
インフルエンザがいよいよ流行期に入ったようだ.私の外来には今のところ感染患者さんは来ていないが,隣の内科外来には時々来ているようだ.
救急隊がたまに発熱で動けなくなった患者さんを脳外科疾患と思って運んでくることがあるが,最近は家族が外来に連れてくることも多くなった.
発熱があったとしてもそのために脱水になり脳梗塞を起こすなんてこともあるかもしれないから頭の検査をしてみるのもいいのだろうが,救急隊にしても家族にしても最近は熱もろくに測らないうちから頭の病気を心配するようになっているようだ.
脳梗塞の後遺障害で手足の麻痺や口のもつれが残っている場合には,発熱や脱水症状で症状が悪化して見えることはよくある話で,食事や水分が取れなくなれば脳神経外科に入院になることも多い.大抵は退院して元の生活には戻れることが多いが,肺炎などを合併するとそれをきっかけに廃用症候群から寝たきりになってしまうこともある.
脳血管障害で入院する人には,高齢者が多く糖尿病などを合併していることも多いからたとえただの風邪でも肺炎を起こしたり,脱水症から腎不全になったりすることもある.ノロウィルス感染では嘔吐もよくありそのために誤嚥性肺炎を起こしてしまうこともある.
脳血管障害の後遺症がある患者さんは,それ自体の再発のリスクもあるが感染症とその合併症のリスクも高いのである.ノロウィルスや風邪のワクチンはないから手洗いするしかないけれど,インフルエンザや肺炎はワクチンがあるからできるだけ接種しておいた方が感染のリスクは下がるだろう.
最近はPM2.5のこともあるのか普段からマスクをしている人をよく見かけるようになったが,よほど高性能なマスクでなければウィルス感染防御は期待できないだろう.結局のところウィルス感染の多くは接触感染なので手洗いをするしかない.特に顔や口を手で触る前に必ずきれいに手を洗うのが一番効果的だろう.
神戸市救急受診ガイド
2015年9月11日 病院のかかり方(脳神経外科の場合) コメント (1)
『救急車呼ぶ?自分で病院?神戸市消防局が判定サイト開設
救急車を呼ぶべきか、自分で病院へ行くべきか――。体調不良やけがをした時の判断に役立ててもらおうと、スマートフォンやパソコンで救急車を呼ぶ必要があるかを確認できるインターネットサイトを、神戸市消防局が兵庫県内24消防本部で初めて開設する。
http://www.kyukyujushinguide.jp/kobe/
サイト名は「神戸市救急受診ガイド」。総務省消防庁が作成した市民向けのガイドを基に、医師らと手順や内容を議論して作った。
サイトは、呼吸の有無など重要な7項目に当てはまらないかを確認することから始まり、頭痛や腹痛などの項目から該当するものを選択していく。長くても数分で終わり、119番通報する必要がある「赤」、2時間以内を目安に医療機関の受診を勧める「黄」、医療機関の受診を勧める「緑」、経過観察を勧める「白」に分類される。
「顔色が真っ青」「安静にしていても胸が痛い」などが「赤」に該当し、スマートフォン使用の場合はそのまま119番通報ができる。そのほかは医療機関の案内や電話相談の利用などを提示する。』
救急車をタクシー代わりにして時間外に受診するような意識レベルの低い人達は別にしても,なかなか面白いアイデアだと思いちょっと頭に関するところだけを見てきた.
結論から言うと,頭に関しては割と簡単に判定できるようだ.
頭痛に関してはリストにあるように未だかつて自分が経験したことのないような激しいもしくは吐き気を伴う頭痛の場合と手足のしびれや脱力や目や言葉の症状を伴うもの,そして痙攣や意識障害があるものは赤信号で,それ以外でも歩けないほどひどい場合は救急車を呼ぶということだ.
頭のけがでは血が出ている場合と血が出ていなくてもひどい頭痛や頭痛以外のなんらかの症状がある場合,そして妊婦さんや歩けないほどのけがの場合は救急車を呼ぶことになっているようだ.
医師らと手順や内容を議論して作ったとあるし,少なくとも頭に関しては内容的には妥当な線ではないかと思う.ただ,頭痛に関しては感じ方の個人差が大きいので普段は頭痛などまったくない人の頭痛のときは注意が必要だろう.
脳動脈瘤では特殊なものを除いて脳ドックで有無を調べておくことはできるので,クモ膜下出血の家族歴があったりして心配な人は一度は受けておいてもいいだろう.
なかなか良いアイデアだと思うが,これで救急車の要請件数が減るとは思えない.こういうサイトをちゃんと見るような人はたとえ見なくても適切に救急車を呼んでいることだろう.
救急車を呼ぶべきか、自分で病院へ行くべきか――。体調不良やけがをした時の判断に役立ててもらおうと、スマートフォンやパソコンで救急車を呼ぶ必要があるかを確認できるインターネットサイトを、神戸市消防局が兵庫県内24消防本部で初めて開設する。
http://www.kyukyujushinguide.jp/kobe/
サイト名は「神戸市救急受診ガイド」。総務省消防庁が作成した市民向けのガイドを基に、医師らと手順や内容を議論して作った。
サイトは、呼吸の有無など重要な7項目に当てはまらないかを確認することから始まり、頭痛や腹痛などの項目から該当するものを選択していく。長くても数分で終わり、119番通報する必要がある「赤」、2時間以内を目安に医療機関の受診を勧める「黄」、医療機関の受診を勧める「緑」、経過観察を勧める「白」に分類される。
「顔色が真っ青」「安静にしていても胸が痛い」などが「赤」に該当し、スマートフォン使用の場合はそのまま119番通報ができる。そのほかは医療機関の案内や電話相談の利用などを提示する。』
救急車をタクシー代わりにして時間外に受診するような意識レベルの低い人達は別にしても,なかなか面白いアイデアだと思いちょっと頭に関するところだけを見てきた.
結論から言うと,頭に関しては割と簡単に判定できるようだ.
頭痛に関してはリストにあるように未だかつて自分が経験したことのないような激しいもしくは吐き気を伴う頭痛の場合と手足のしびれや脱力や目や言葉の症状を伴うもの,そして痙攣や意識障害があるものは赤信号で,それ以外でも歩けないほどひどい場合は救急車を呼ぶということだ.
頭のけがでは血が出ている場合と血が出ていなくてもひどい頭痛や頭痛以外のなんらかの症状がある場合,そして妊婦さんや歩けないほどのけがの場合は救急車を呼ぶことになっているようだ.
医師らと手順や内容を議論して作ったとあるし,少なくとも頭に関しては内容的には妥当な線ではないかと思う.ただ,頭痛に関しては感じ方の個人差が大きいので普段は頭痛などまったくない人の頭痛のときは注意が必要だろう.
脳動脈瘤では特殊なものを除いて脳ドックで有無を調べておくことはできるので,クモ膜下出血の家族歴があったりして心配な人は一度は受けておいてもいいだろう.
なかなか良いアイデアだと思うが,これで救急車の要請件数が減るとは思えない.こういうサイトをちゃんと見るような人はたとえ見なくても適切に救急車を呼んでいることだろう.
転倒
2014年11月23日 病院のかかり方(脳神経外科の場合) コメント (2) 転倒して頭を床にぶつけてしばらくしてから意識障害になった脳梗塞の患者さんの手術をした.画像診断は「急性硬膜下血腫」.
急性硬膜下血腫では受傷時から意識障害があるものと理解している脳神経外科医もいるかもしれないが,脳挫傷などを伴わず脳の血管でも特に静脈損傷による出血の場合には経過が比較的ゆるやかで「急性硬膜外血腫」でみられるような意識清明期(lucid interval)がみられることもある.そして意識状態が悪化すると急速に昏睡状態になり,たとえ手術で血腫を除去しても障害が残ることが多いのである.
最近では脳梗塞の予防薬として抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者さんが多いので,比較的軽微な頭部打撲でも頭蓋内出血を起こすことが多いのではないだろうか.「急性硬膜外血腫」や「急性硬膜下血腫」といった致命的なものではないにせよ,「慢性硬膜下血腫」の患者さんでこういった薬を服用しているケースは多くなったように思う.転倒した場合,特にこういう薬を服用しているときは,見た目で大丈夫そうだからなどという判断はしないほうがいいだろう.
そして,当然ではあるが脳梗塞の後遺症で転倒しやすくなっている患者さんも増えているからこれからは頭部外傷による頭蓋内出血の患者さんも増えていくような気がする.救命が目的となる頭蓋内出血の手術は開頭血腫除去術しかないから手術のできる脳神経外科医は今後も必要で,血管内手術全盛となっても脳神経外科医たるもの基本的な開頭術くらいは一人でできないといけないだろう.
急性硬膜下血腫の詳細については以下でどうぞ.
http://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/305.html
急性硬膜下血腫では受傷時から意識障害があるものと理解している脳神経外科医もいるかもしれないが,脳挫傷などを伴わず脳の血管でも特に静脈損傷による出血の場合には経過が比較的ゆるやかで「急性硬膜外血腫」でみられるような意識清明期(lucid interval)がみられることもある.そして意識状態が悪化すると急速に昏睡状態になり,たとえ手術で血腫を除去しても障害が残ることが多いのである.
最近では脳梗塞の予防薬として抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者さんが多いので,比較的軽微な頭部打撲でも頭蓋内出血を起こすことが多いのではないだろうか.「急性硬膜外血腫」や「急性硬膜下血腫」といった致命的なものではないにせよ,「慢性硬膜下血腫」の患者さんでこういった薬を服用しているケースは多くなったように思う.転倒した場合,特にこういう薬を服用しているときは,見た目で大丈夫そうだからなどという判断はしないほうがいいだろう.
そして,当然ではあるが脳梗塞の後遺症で転倒しやすくなっている患者さんも増えているからこれからは頭部外傷による頭蓋内出血の患者さんも増えていくような気がする.救命が目的となる頭蓋内出血の手術は開頭血腫除去術しかないから手術のできる脳神経外科医は今後も必要で,血管内手術全盛となっても脳神経外科医たるもの基本的な開頭術くらいは一人でできないといけないだろう.
急性硬膜下血腫の詳細については以下でどうぞ.
http://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/305.html
モンスター患者?
2013年3月1日 病院のかかり方(脳神経外科の場合)『モンスター患者に殴られた医師10人に1人 会話不足も一因か
医師の10人に1人が患者から暴力を振るわれた経験がある――との衝撃的な調査結果が出た。
医療従事者向けの情報サービスサイトを運営するケアネットが会員医師1000人に行った意識調査によると、自己中心的で理不尽な要求を繰り返す悪質な患者、いわゆる「モンスターペイシェント」に悩まされたことがあると回答した一般病院の医師が70.7%もいたそうだ。
その内容は、医療スタッフに対するクレーム(60.5%)から、「訴える」「刺す」などといった脅迫(27.6%)、暴力(16.2%)、土下座ほか度を越した謝罪の要求(11.3%)まで。およそ医療現場とは思えぬトラブルが頻発していることが分かる。
患者の健康を守るはずの医師が、患者によって身の危険にまで晒されている現状。同調査に寄せた医師の匿名コメントからは、悲痛な叫びが伝わってくる。
■俺の言うとおりの薬だけ出せと強要する(60代内科)
■循環器内科であるにもかかわらず局所を出して「腫れているので触ってくれ」と何度も強要する(40代循環器科)
■患者の自分本位な要求に応じなかったら、激昻して殴られたことがある(40代精神・神経科)
■危険が予測される場合には、眼鏡やポケットの中身などを外すようにしている(30代精神・神経科)
■逃げ場のない個室で診察しているときに、監禁されたことあり(40代内科)
患者は精神的にも不安定なのは当然だが、監禁や暴行まで発展すれば、医師にとっては明らかな業務妨害となるばかりか、犯罪行為に該当する。そのため、暴力事案が発生すると館内放送でスタッフが集まるような仕組みをつくったり、ボタンひとつで警察に通報できる非常装置を設置したりするなど、防衛策をとる病院も増えた。
だが、モンスターペイシェントの増加は、医療システムそのものが招いた結果だと話す医師もいる。医療問題に詳しい作家で医学博士の米山公啓氏が話す。
「いまの病院は電子カルテ化が進み、医師はパソコンのモニターを眺めながら診察して患者の顔色さえ見なくなりました。あの光景だけ見れば、患者が怒るのも無理はありません。経営効率を上げるためにコンピューターを導入したのに、結局は患者サービスにつながっていないのです」
電子カルテ化により、レントゲンや血液検査の結果が診察当日に素早く出るなど、患者にとっては便利になった反面、医師と患者の会話が減っていく。「トラブルの7割はコミュニケーション不足による患者の誤解から起きる」(都内の大学病院医師)というのも頷ける。
新渡戸文化短期大学学長で医学博士の中原英臣氏は、さらに厳しい指摘をする。
「患者さんが納得するまで平易な言葉で診断をくだし、十分なコミュニケーションが取れている医師は、怒鳴られたり殴られたりすることも少ないと思います。それでもモンスターペイシェントやドクターハラスメント(医師による患者への嫌がらせ)の問題が収まらないのなら、診察室を可視化したり診察内容を録音したりするしか手はありません」
現行の医師法では、正当な事由がない限りどんな患者でも診察・治療の求めを拒めないことになっている。そのため、医療機関としてはトラブル対策やリスク対応を定めておかなければ、現場の混乱は避けられない。
前出の米山氏は、防衛一辺倒の医療サイドに同情的な見解も示す。
「いまは小さな医療ミスでもすぐに訴えられて、医者の刑事責任が問われる時代。医者の裁量権は法律では通用せず、訴えた者勝ちみたいな風潮になっています。でも、そうやって医療現場が弱体化すれば、無難な処置しか行われなくなり、最終的には患者のメリットがなくなることを、もっと考えるべきです」
医師と患者。立場は違えど対等な信頼関係のうえに成り立っていることを、改めて双方が認識する必要があるだろう。』
私が最近気になっているのは,本人が自分でも特に異常を感じているわけでもないのに病院に初診でやって来てMRI検査や血液検査を希望する人たちである.
まあ,暇な時には頭部MRIやMRAなど脳ドックでやっているような検査をしてあげてもいいのだけれど,忙しくて検査が立て込んでいる時には希望に従ってあげるわけにはいかないので後日に予約で検査を受けてもらうことにしている.
しかし,これですんなり予約して帰ってくれるような人は少数で今日中に検査の結果が出ない事に不満を言いながら渋々予約して帰って行く人が多い.その後どうなったかは次回に受診すればわかるのだが,実際には半数くらいの人は検査をキャンセルしているようである.
特に悪いところもないのに病院にやってきて,自分の希望の検査結果を欲しがり,自分の意に添わないとまた他の病院へ行く.こういうのはどう考えても正しい病院のかかり方じゃないように思うのだがどうだろうか.
医師の10人に1人が患者から暴力を振るわれた経験がある――との衝撃的な調査結果が出た。
医療従事者向けの情報サービスサイトを運営するケアネットが会員医師1000人に行った意識調査によると、自己中心的で理不尽な要求を繰り返す悪質な患者、いわゆる「モンスターペイシェント」に悩まされたことがあると回答した一般病院の医師が70.7%もいたそうだ。
その内容は、医療スタッフに対するクレーム(60.5%)から、「訴える」「刺す」などといった脅迫(27.6%)、暴力(16.2%)、土下座ほか度を越した謝罪の要求(11.3%)まで。およそ医療現場とは思えぬトラブルが頻発していることが分かる。
患者の健康を守るはずの医師が、患者によって身の危険にまで晒されている現状。同調査に寄せた医師の匿名コメントからは、悲痛な叫びが伝わってくる。
■俺の言うとおりの薬だけ出せと強要する(60代内科)
■循環器内科であるにもかかわらず局所を出して「腫れているので触ってくれ」と何度も強要する(40代循環器科)
■患者の自分本位な要求に応じなかったら、激昻して殴られたことがある(40代精神・神経科)
■危険が予測される場合には、眼鏡やポケットの中身などを外すようにしている(30代精神・神経科)
■逃げ場のない個室で診察しているときに、監禁されたことあり(40代内科)
患者は精神的にも不安定なのは当然だが、監禁や暴行まで発展すれば、医師にとっては明らかな業務妨害となるばかりか、犯罪行為に該当する。そのため、暴力事案が発生すると館内放送でスタッフが集まるような仕組みをつくったり、ボタンひとつで警察に通報できる非常装置を設置したりするなど、防衛策をとる病院も増えた。
だが、モンスターペイシェントの増加は、医療システムそのものが招いた結果だと話す医師もいる。医療問題に詳しい作家で医学博士の米山公啓氏が話す。
「いまの病院は電子カルテ化が進み、医師はパソコンのモニターを眺めながら診察して患者の顔色さえ見なくなりました。あの光景だけ見れば、患者が怒るのも無理はありません。経営効率を上げるためにコンピューターを導入したのに、結局は患者サービスにつながっていないのです」
電子カルテ化により、レントゲンや血液検査の結果が診察当日に素早く出るなど、患者にとっては便利になった反面、医師と患者の会話が減っていく。「トラブルの7割はコミュニケーション不足による患者の誤解から起きる」(都内の大学病院医師)というのも頷ける。
新渡戸文化短期大学学長で医学博士の中原英臣氏は、さらに厳しい指摘をする。
「患者さんが納得するまで平易な言葉で診断をくだし、十分なコミュニケーションが取れている医師は、怒鳴られたり殴られたりすることも少ないと思います。それでもモンスターペイシェントやドクターハラスメント(医師による患者への嫌がらせ)の問題が収まらないのなら、診察室を可視化したり診察内容を録音したりするしか手はありません」
現行の医師法では、正当な事由がない限りどんな患者でも診察・治療の求めを拒めないことになっている。そのため、医療機関としてはトラブル対策やリスク対応を定めておかなければ、現場の混乱は避けられない。
前出の米山氏は、防衛一辺倒の医療サイドに同情的な見解も示す。
「いまは小さな医療ミスでもすぐに訴えられて、医者の刑事責任が問われる時代。医者の裁量権は法律では通用せず、訴えた者勝ちみたいな風潮になっています。でも、そうやって医療現場が弱体化すれば、無難な処置しか行われなくなり、最終的には患者のメリットがなくなることを、もっと考えるべきです」
医師と患者。立場は違えど対等な信頼関係のうえに成り立っていることを、改めて双方が認識する必要があるだろう。』
私が最近気になっているのは,本人が自分でも特に異常を感じているわけでもないのに病院に初診でやって来てMRI検査や血液検査を希望する人たちである.
まあ,暇な時には頭部MRIやMRAなど脳ドックでやっているような検査をしてあげてもいいのだけれど,忙しくて検査が立て込んでいる時には希望に従ってあげるわけにはいかないので後日に予約で検査を受けてもらうことにしている.
しかし,これですんなり予約して帰ってくれるような人は少数で今日中に検査の結果が出ない事に不満を言いながら渋々予約して帰って行く人が多い.その後どうなったかは次回に受診すればわかるのだが,実際には半数くらいの人は検査をキャンセルしているようである.
特に悪いところもないのに病院にやってきて,自分の希望の検査結果を欲しがり,自分の意に添わないとまた他の病院へ行く.こういうのはどう考えても正しい病院のかかり方じゃないように思うのだがどうだろうか.
転倒して認知症になった?
2011年3月9日 病院のかかり方(脳神経外科の場合) 今年は全国的に雪が多かったので凍った路面で足を滑らせ転倒し道路に頭をぶつけた人が多かったのではないだろうか.そして,それから1〜2ヶ月して認知症のような症状が出てきたという高齢者がもし身近にいたら慢性硬膜下血腫かもしれない.
慢性硬膜下血腫は私の受験した医師国家試験の脳神経外科のヤマで「高齢の酒好きな男性が,酔って転んで頭をぶつけ,数カ月して見当識障害,歩行障害,尿失禁がみられたらこれを疑う」と記憶した病態である.
教科書的には,頭部外傷後1〜3ヶ月に約90%が発症し,高齢の男性に多く,主な症状としては頭痛,片麻痺,意識障害があるとされている.治療としては穿頭による血腫の洗浄と閉鎖式血腫腔ドレナージである.
先日,久しぶりにこの手術をして術後に家族に話をしたのであるが,家族は年明けから認知症になってきたと思っていたらしい.そして,今度は歩くとふらつくので脳梗塞になったと思って病院に連れてきたようだが,実は慢性硬膜下血腫だったというわけだ.
症状が見当識障害だけの場合,内科や精神科に認知症だと思って受診すると見落とされる可能性があるので,認知症だと思う前にまず脳神経外科で手術で治る病気かどうかを診てもらったほうがいいかもしれない.
慢性硬膜下血腫は私の受験した医師国家試験の脳神経外科のヤマで「高齢の酒好きな男性が,酔って転んで頭をぶつけ,数カ月して見当識障害,歩行障害,尿失禁がみられたらこれを疑う」と記憶した病態である.
教科書的には,頭部外傷後1〜3ヶ月に約90%が発症し,高齢の男性に多く,主な症状としては頭痛,片麻痺,意識障害があるとされている.治療としては穿頭による血腫の洗浄と閉鎖式血腫腔ドレナージである.
先日,久しぶりにこの手術をして術後に家族に話をしたのであるが,家族は年明けから認知症になってきたと思っていたらしい.そして,今度は歩くとふらつくので脳梗塞になったと思って病院に連れてきたようだが,実は慢性硬膜下血腫だったというわけだ.
症状が見当識障害だけの場合,内科や精神科に認知症だと思って受診すると見落とされる可能性があるので,認知症だと思う前にまず脳神経外科で手術で治る病気かどうかを診てもらったほうがいいかもしれない.
新薬を試してみるのはいいが
2011年1月14日 病院のかかり方(脳神経外科の場合) コメント (3)『イレッサ和解勧告「治験以外の副作用、検討必要だった」
肺がん治療薬「イレッサ」訴訟の和解勧告で、東京地裁が、国に対し、個人輸入などで使った患者の副作用情報も慎重に検討して、治療が難しい肺炎の副作用が起きうると強く注意喚起すべきだったとの認識を示していることがわかった。厚生労働省内では「不確実な情報でも確認を求められ、新薬の審査期間が長くなるなどの影響が出かねない」との声が出ている。』
先日,他の病院で治療をうけている認知症の患者さんと家族が私の外来に初診で受診した.夜間せん妄や暴言が目立ってきたということなのだが,何故か主治医からの診療情報提供書はなく在宅介護支援の職員が書いた病状説明書を持ってやって来た.
まあ,認知症だと思っていても慢性硬膜下出血や脳梗塞ということもあり得るし,認知症の患者さんが脳卒中になっても不思議はないから頭部MRIで検査した.幸い検査の結果は脳が萎縮はあるものの脳梗塞など入院を要するような異常はなかったので薬を調整するということになった.
この場合,通常は治療をうけている病院で内服薬を調整してもらえばいいのだが,そのように説明しても家族は納得しなかった.いや,納得しないばかりか今度アルツハイマー病治療薬の新薬が出るからそれを使ってくれないかと言い出した.使ってくれるなら病院を替わりたいと言うのだ.
突然の話であるし,初めて診る患者さんでもある.返答に窮していると,今度は自分が出来ないなら新薬で治療してくれそうな神経内科の専門医を紹介しろと言い出した.さすがにこれはちょっとまともに相手をしてられないと思ったので,新薬を使うかどうかは現在使えるアリセプトでの経過をみるのと,新薬について自分で治療効果や副作用に関して納得してからだと話した.
話を聞いているうちに,今回受診の目的は現在の病院の治療に満足していないのと,新薬に過大な期待を抱いているらしいということがわかったので,新薬を使うかどうかは約束できないということと,とりあえず今回問題になっている症状については薬をひとつだけ出してみるからそれで様子をみるように話した.
家族は「それは病院として方針か,それとも先生の考えか.」と言ったので,「私の考えだ.」と言ったら「どうもありがとうございました.」と言って帰っていった.長い問答で疲れたが,病院にかかるにもマナーがあるのではないだろうか.
1.他の病院で継続的に治療を受けているなら,救命救急時でもない限り主治医に診療情報提供書を書いてもらうこと.
2.治療方針を決定するに足る情報なしに医師に治療方針を聞いても無駄.
3.病院を選択し治療を選択する自由は患者にあるが,薬を処方するかしないかは医師の裁量.
4.治療は医師と患者の信頼関係で成り立つということを患者側も忘れるべきではない.
結局のところ4.が一番大切だと思うのだが,最近はそんなことはお構いなしに自分の都合ばかり言う患者や家族が増えてきているようで恐ろしい..
肺がん治療薬「イレッサ」訴訟の和解勧告で、東京地裁が、国に対し、個人輸入などで使った患者の副作用情報も慎重に検討して、治療が難しい肺炎の副作用が起きうると強く注意喚起すべきだったとの認識を示していることがわかった。厚生労働省内では「不確実な情報でも確認を求められ、新薬の審査期間が長くなるなどの影響が出かねない」との声が出ている。』
先日,他の病院で治療をうけている認知症の患者さんと家族が私の外来に初診で受診した.夜間せん妄や暴言が目立ってきたということなのだが,何故か主治医からの診療情報提供書はなく在宅介護支援の職員が書いた病状説明書を持ってやって来た.
まあ,認知症だと思っていても慢性硬膜下出血や脳梗塞ということもあり得るし,認知症の患者さんが脳卒中になっても不思議はないから頭部MRIで検査した.幸い検査の結果は脳が萎縮はあるものの脳梗塞など入院を要するような異常はなかったので薬を調整するということになった.
この場合,通常は治療をうけている病院で内服薬を調整してもらえばいいのだが,そのように説明しても家族は納得しなかった.いや,納得しないばかりか今度アルツハイマー病治療薬の新薬が出るからそれを使ってくれないかと言い出した.使ってくれるなら病院を替わりたいと言うのだ.
突然の話であるし,初めて診る患者さんでもある.返答に窮していると,今度は自分が出来ないなら新薬で治療してくれそうな神経内科の専門医を紹介しろと言い出した.さすがにこれはちょっとまともに相手をしてられないと思ったので,新薬を使うかどうかは現在使えるアリセプトでの経過をみるのと,新薬について自分で治療効果や副作用に関して納得してからだと話した.
話を聞いているうちに,今回受診の目的は現在の病院の治療に満足していないのと,新薬に過大な期待を抱いているらしいということがわかったので,新薬を使うかどうかは約束できないということと,とりあえず今回問題になっている症状については薬をひとつだけ出してみるからそれで様子をみるように話した.
家族は「それは病院として方針か,それとも先生の考えか.」と言ったので,「私の考えだ.」と言ったら「どうもありがとうございました.」と言って帰っていった.長い問答で疲れたが,病院にかかるにもマナーがあるのではないだろうか.
1.他の病院で継続的に治療を受けているなら,救命救急時でもない限り主治医に診療情報提供書を書いてもらうこと.
2.治療方針を決定するに足る情報なしに医師に治療方針を聞いても無駄.
3.病院を選択し治療を選択する自由は患者にあるが,薬を処方するかしないかは医師の裁量.
4.治療は医師と患者の信頼関係で成り立つということを患者側も忘れるべきではない.
結局のところ4.が一番大切だと思うのだが,最近はそんなことはお構いなしに自分の都合ばかり言う患者や家族が増えてきているようで恐ろしい..
病院のかかり方(脳出血編)
2008年7月8日 病院のかかり方(脳神経外科の場合)『 くも膜下出血:初診、6.7%見落とす CT実施せず--脳神経外科学会調査
くも膜下出血の患者のうち、脳神経外科医以外が初診した6.7%が風邪などと診断され、事実上、病気を見落とされていたことが7日、日本脳神経外科学会の調査で分かった。患者が軽い頭痛しか訴えなかったことなどから、くも膜下出血を発見できるCT(コンピューター断層撮影)を実施していなかった。同学会は「軽い頭痛の患者全員にCTを行うわけにはいかない。現代医療の限界とも言える」としている。
同学会学術委員会の嘉山孝正・山形大教授らが、宮城県と山形県の2病院で、脳神経外科のカルテ全491例を調査した。
宮城県は07年1月〜08年5月が対象。198例中37例が脳神経外科医以外で初診を受け、うち10例(5.1%)が風邪、高血圧、片頭痛などと診断されてCTを受けず見落とされた。10例すべてが再発し2例が死亡した。
山形県は96〜05年が対象。専門医以外の初診は293例中48例で、23例(7.8%)が見落とされ、すべてが再発し2例が死亡した。
見落とし計33例のうち17例は、くも膜下出血の常識に反して発症時に軽い頭痛しか起きておらず、委員会は「専門医以外では他の頭痛と区別できない」と指摘。他の16例も「診断が難しい例がある」とした。山形県では脳神経外科医でも見落とした軽度頭痛の患者が1例あった。
米国では5〜12%の見落とし率という報告がある。嘉山教授は「くも膜下出血の診断は難しく、完ぺきな診断はできない。現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し、脳ドックの普及など社会全体で対策を考えるべきだと思う」と話している。』
素人がこの記事を読むと,脳神経外科医以外だから見落としたかのように思うのだろうが,この記事では結果的にくも膜下出血があった患者で脳神経外科を受診した患者のみが対象なのだから,脳神経外科医以外で頭部CTを撮らずに見落としが多いのは当たり前で,このこと自体は最初から予想されたことである.
そして,次に頭部CTを撮っていれば見逃さなかったかのように思うのだろうが,それもまた素人の考えにすぎない.以前にも書いたが,脳神経外科専門医でも頭部CTだけで100%くも膜下出血の診断ができるわけでもないのである.頭痛症状のはじまり方やその後の経過も重要な情報だが,MRIやMRAそして3D-CTAといった他の画像診断に頼らなければならないこともよくあるのが現実である.
病院のかかり方ということで一番いい方法は,「くも膜下出血の時は脳神経外科医に診てもらう」ということになるのだろうが,ではどんな時に脳神経外科にかかればいいかということが一番知りたいところではないだろうか.
脳出血の場合の特徴的な症状にはまず,突然はじまる頭痛と嘔吐がある.この場合,突然というのはそれまで痛くなかったのが,ある瞬間から痛くなるということである.これだけで,脳神経外科医はくも膜下出血を疑う.
さらに,これに意識障害や手足の麻痺といったものが加わると出血による脳の損傷が疑われ脳内出血があることを考えるが,こういった神経症状がある場合は,救急車を呼べば脳神経外科のある病院に運んでもらえるだろうからあまり考えることはないだろう.
脳出血かどうかを症状で判断できるとしたら,この程度ではないだろうか.この場合,痛みの強さについてはあまり当てにはならないことも付け加えておこう.頭部CTでくも膜下出血と脳内出血があった患者さんでも「激しいというほどの痛みではない.」と言って歩いて来院した人も本当にいたくらいである.痛みの感じ方というのはかなり個人差があるものらしい.
くも膜下出血はもっとも危険な頭痛であり緊急性を要する病態であるから以上のような頭痛を経験したら24時間いつでも脳神経外科を受診することをおすすめする.もちろん脳出血以外にも頭痛を伴う脳の病気はたくさんあるが,それらについてはまた機会があれば書いてみよう.
くも膜下出血の患者のうち、脳神経外科医以外が初診した6.7%が風邪などと診断され、事実上、病気を見落とされていたことが7日、日本脳神経外科学会の調査で分かった。患者が軽い頭痛しか訴えなかったことなどから、くも膜下出血を発見できるCT(コンピューター断層撮影)を実施していなかった。同学会は「軽い頭痛の患者全員にCTを行うわけにはいかない。現代医療の限界とも言える」としている。
同学会学術委員会の嘉山孝正・山形大教授らが、宮城県と山形県の2病院で、脳神経外科のカルテ全491例を調査した。
宮城県は07年1月〜08年5月が対象。198例中37例が脳神経外科医以外で初診を受け、うち10例(5.1%)が風邪、高血圧、片頭痛などと診断されてCTを受けず見落とされた。10例すべてが再発し2例が死亡した。
山形県は96〜05年が対象。専門医以外の初診は293例中48例で、23例(7.8%)が見落とされ、すべてが再発し2例が死亡した。
見落とし計33例のうち17例は、くも膜下出血の常識に反して発症時に軽い頭痛しか起きておらず、委員会は「専門医以外では他の頭痛と区別できない」と指摘。他の16例も「診断が難しい例がある」とした。山形県では脳神経外科医でも見落とした軽度頭痛の患者が1例あった。
米国では5〜12%の見落とし率という報告がある。嘉山教授は「くも膜下出血の診断は難しく、完ぺきな診断はできない。現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し、脳ドックの普及など社会全体で対策を考えるべきだと思う」と話している。』
素人がこの記事を読むと,脳神経外科医以外だから見落としたかのように思うのだろうが,この記事では結果的にくも膜下出血があった患者で脳神経外科を受診した患者のみが対象なのだから,脳神経外科医以外で頭部CTを撮らずに見落としが多いのは当たり前で,このこと自体は最初から予想されたことである.
そして,次に頭部CTを撮っていれば見逃さなかったかのように思うのだろうが,それもまた素人の考えにすぎない.以前にも書いたが,脳神経外科専門医でも頭部CTだけで100%くも膜下出血の診断ができるわけでもないのである.頭痛症状のはじまり方やその後の経過も重要な情報だが,MRIやMRAそして3D-CTAといった他の画像診断に頼らなければならないこともよくあるのが現実である.
病院のかかり方ということで一番いい方法は,「くも膜下出血の時は脳神経外科医に診てもらう」ということになるのだろうが,ではどんな時に脳神経外科にかかればいいかということが一番知りたいところではないだろうか.
脳出血の場合の特徴的な症状にはまず,突然はじまる頭痛と嘔吐がある.この場合,突然というのはそれまで痛くなかったのが,ある瞬間から痛くなるということである.これだけで,脳神経外科医はくも膜下出血を疑う.
さらに,これに意識障害や手足の麻痺といったものが加わると出血による脳の損傷が疑われ脳内出血があることを考えるが,こういった神経症状がある場合は,救急車を呼べば脳神経外科のある病院に運んでもらえるだろうからあまり考えることはないだろう.
脳出血かどうかを症状で判断できるとしたら,この程度ではないだろうか.この場合,痛みの強さについてはあまり当てにはならないことも付け加えておこう.頭部CTでくも膜下出血と脳内出血があった患者さんでも「激しいというほどの痛みではない.」と言って歩いて来院した人も本当にいたくらいである.痛みの感じ方というのはかなり個人差があるものらしい.
くも膜下出血はもっとも危険な頭痛であり緊急性を要する病態であるから以上のような頭痛を経験したら24時間いつでも脳神経外科を受診することをおすすめする.もちろん脳出血以外にも頭痛を伴う脳の病気はたくさんあるが,それらについてはまた機会があれば書いてみよう.
病院のかかり方(外来編1)
2007年3月28日 病院のかかり方(脳神経外科の場合) コメント (3) 最近,外来で気になるのは認知症の患者さんの家族だけがやってくることである.
認知症で足腰も弱っている患者さんを病院に連れてくるのが大変なのはわかるし,状態が特に変わっていなくて薬の処方を前回と同じにして欲しいとかいうのならわからないでもない.
困るのは,家族の説明で認知症が悪化しているようだったり,前回処方した薬のきき具合をみたくても患者さんが来ていないので状態がわからない時である.それなのに家族の希望は精神科の病院にかかりたいので手紙を書いて欲しいとか,薬を飲んでも変わらないので他の薬にして欲しいということなのである.
仕方がないので前回までの治療経過の手紙を書いたりくらいはするのであるが,薬の変更はやはり患者さんを診察しないことにはできないと説明するしかないわけである.なかには家族の都合で,毎回ちがう外来担当医のところに来る人までいて,もうこうなると誰が主治医かもわからなくなりとても責任ある診療などは望めないのである.
だから,
1.前回受診時に新しい薬が処方された時
2.以前と状態が変わった時
3.初診あるいは主治医以外の医師に診てもらう時
は,必ず患者さん本人が来ること.
そして出来ることなら,
4.家族を代表する人が毎回いっしょに受診して主治医の説明を聞く.
ということが,認知症の家族をしっかり診てもらい今後の治療方針を決定してもらうのにとても大切なことだと私は思います.
認知症で足腰も弱っている患者さんを病院に連れてくるのが大変なのはわかるし,状態が特に変わっていなくて薬の処方を前回と同じにして欲しいとかいうのならわからないでもない.
困るのは,家族の説明で認知症が悪化しているようだったり,前回処方した薬のきき具合をみたくても患者さんが来ていないので状態がわからない時である.それなのに家族の希望は精神科の病院にかかりたいので手紙を書いて欲しいとか,薬を飲んでも変わらないので他の薬にして欲しいということなのである.
仕方がないので前回までの治療経過の手紙を書いたりくらいはするのであるが,薬の変更はやはり患者さんを診察しないことにはできないと説明するしかないわけである.なかには家族の都合で,毎回ちがう外来担当医のところに来る人までいて,もうこうなると誰が主治医かもわからなくなりとても責任ある診療などは望めないのである.
だから,
1.前回受診時に新しい薬が処方された時
2.以前と状態が変わった時
3.初診あるいは主治医以外の医師に診てもらう時
は,必ず患者さん本人が来ること.
そして出来ることなら,
4.家族を代表する人が毎回いっしょに受診して主治医の説明を聞く.
ということが,認知症の家族をしっかり診てもらい今後の治療方針を決定してもらうのにとても大切なことだと私は思います.
病院のかかり方(予告)
2007年3月28日 病院のかかり方(脳神経外科の場合) コメント (5) 以前からこのタイトルで書きたいと思っていたのですが.まとめて書こうと思ってもいざ書くとなると何から書いていいのかわからないし,適当な事例をあげることも難しくてどうしても書き出せませんでした.そこで日記のテーマの一つとして少しずつ書いていくことにしました.
具体的には,こういう風にして病院や医師を利用してもらうとより良い治療を受けられるだろうというポイントなどを診療をしていて経験することを例に書いてみたいと思います.
これに関連して以前に「おすすめ本」のテーマにあったものは「その他」のテーマに移動しました.
具体的には,こういう風にして病院や医師を利用してもらうとより良い治療を受けられるだろうというポイントなどを診療をしていて経験することを例に書いてみたいと思います.
これに関連して以前に「おすすめ本」のテーマにあったものは「その他」のテーマに移動しました.