『--治療行為の停止、殺人容疑と認定 医師を書類送検--

 北海道立羽幌病院で昨年2月、当時勤務していた女性医師(33)が人工呼吸器を取り外して男性患者(90)を死亡させた問題で、道警は18日、同医師を殺人の疑いで旭川地検に書類送検した。

 調べでは、男性患者は食事をのどに詰まらせて病院に搬送されたが、心肺が停止。医師の蘇生措置で心臓は動いたものの、自発呼吸停止と瞳孔拡大から医師は脳死状態と判断した。翌日に親族の同意を得て呼吸器を外したという。

 95年の「東海大病院事件」の横浜地裁判決で、治療行為の中止が合法とされる要件として、死が避けられない末期状態であることや、家族による本人意思の推定などの3点が示された。道警は今回のケースが当てはまるかどうかについて、専門知識が必要になるため判断を避けたという。

 神戸生命倫理研究会代表の額田勲医師は「今回のような場面に医師として遭遇することはよくある。生命維持装置を使った延命と、患者個人の尊厳のどちらを重視するかは現代医学最大の難問とも言え、今回の件を一人の医師の問題に矮小(わいしょう)化するべきではない」と話している。 』

『--羽幌病院問題の経過-- 
 2004年2月14日午後1時ごろ 男性=当時(90)=が昼食をのどに詰まらせ心肺停止状態で病院搬送。女性医師が蘇生(そせい)措置したが、自発呼吸が戻らず、瞳孔散大。人工呼吸器を装着し、家族に「脳死状態。長くもたない」と伝える

2月15日午前 家族が人工呼吸器の停止に同意

15日午前10時40分ごろ 家族立ち会いの下、医師が人工呼吸器のスイッチを切る

15日午前10時55分ごろ 男性の死亡を確認

16日 医師が院長に「家族に説明は十分した。家族の強い希望があった」と説明

5月14日 問題発覚 』

 現場で行われる手順としては,1.自発呼吸がない時点で人工呼吸器を装着するかどうか家族の同意を得て呼吸器を装着する.2.呼吸器を装着した場合はそのまま心停止を待つ.というのが正解だろう.

 救命救急の現場ではとりあえず可能な救命処置をやってから家族にインフォームドコンセントする場合がほとんどである.この女性医師がまずかったのは一人で勝手に脳死と決めてしまったことにある.医師が脳死状態と考えることと法的な脳死とは違うということがわからなかったためにこんな結果になったのだろう.

 マスコミはこれを終末医療と関連づけて論評しているが,それはちょっと違うような気がする.また,このケースでは脳死判定が必要な状態とも考えられない.問題は救命救急の手順であって1週間くらいで死亡するような患者に生命維持装置を使うか使わないかの問題ではないだろう.呼吸器を装着するだけで何年も生存する遷延性意識障害の患者とは違うのである.
『--JR脱線事故「過去の行政も検証したい」 国交相--

 JR宝塚線の脱線事故をめぐり、北側国土交通相は13日の閣議後会見で、原因究明や再発防止と並行して、過去の同省の監督・指導が適切だったかどうか検証する考えを明らかにした。

 北側国交相は、監督官庁としては「事故が二度とないようにするのが最大の責任」とする一方、「国交省は車体の基準を定めたり、立ち入り検査をしたりするなどの権限がある。これまでさまざまな指導をしてきたが、制度面、運用面で問題がなかったかどうかの検証をしたい」と述べた。

 また、事故発生直後の救助活動に協力した地元の人や消防関係者らに対し、総務省や地元自治体と協議して謝意を表したいと述べた。』

『--羽田空港の管制ミスなどで17人処分 国交省--

 羽田空港で先月29日夜、管制官が工事で滑走路が閉鎖されたことを忘れたまま、日本航空機2機に着陸を指示した問題で、国土交通省は13日、現場にいた次席航空管制官(54)ら管制官5人と、監督する立場の岩崎貞二航空局長ら6人の計11人を訓告などの処分にした。あわせて情報共有のマニュアル導入など再発防止策をまとめた。

 また、同空港で3月、誘導路から十分な距離をとらずに設置した監視カメラに日航機の主翼が接触した問題でも、東京航空局管理課長ら6人を処分した。

 国交省の調べでは、当日の担当だった管制官18人には3月3日に閉鎖の情報が伝えられ、4月以降は職場の掲示板などに閉鎖情報が掲示されていた。しかし、航空情報の担当管制官は当日の勤務前の打ち合わせで閉鎖を知らせず、次席も気づかなかった。同省は、重要な情報の管理手続きが不明確で、相互監視態勢が機能していなかったなどと結論づけた。

 新たにまとめた再発防止策は、重要な情報の入手・共有のためのマニュアルを定め14日から実行▽管制官の使うパソコン画面に、必要な情報を常時掲示▽航空情報担当をベテラン管制官から指名――など。

 相次ぐトラブルを受けて国交省は13日、航空局と主要空港の幹部による緊急会議を開き、北側国交相が、「一連のトラブルに共通しているのは、安全に対する意識の甘さと、安全に関する組織の風通しの悪さだと痛感している」と語った。』

 常識のある対応とはこういうものだろう.省みるに厚生労働省はどうであろうか.古くは公害病の認定にはじまり最近ではプリオン病や薬害エイズはたまた医師の名義貸しや病院の不正請求の見落とし,そして大学病院での相次ぐ医療事故など監督省庁としての責任は感じないのであろうか.

 普段は医師や病院まかせにし,いい加減な監査で医師数や不正な診療報酬請求を見落とし(見逃し?)する.マスコミに指摘されるや必要以上に執拗な監査を繰り返し,自分たちの監査もれは棚にあげて病院の責任を過去にさかのぼって追及し保険医を停止して地域の病床数を削減し地方の医療を荒廃させる.
 
 確かに医師名義貸しは不正請求に直結する違法行為であるが,毎年監査していながら気づかなかったとでもいうのであろうか.マスコミに叩かれたら今度は執拗に監査して自分たちの監督責任をごまかしたのではないかと思われても不思議はないだろう.なんといっても公金を着服したり無駄使いした実績のあるあの社会保険庁である.

 厚生労働省も過去にさかのぼって監督・指導が適切だったかどうか自ら検証する必要があるのではないだろうか.不正請求した病院の処分もいいが,監査の責任者も過去にさかのぼって処分されるのが常識ある公正な対応というものであろう.
『--「記者がJR西日本幹部に暴言」 読売新聞が謝罪--

 JR宝塚線(福知山線)の脱線事故を取材していた読売新聞大阪本社社会部の記者がJR西日本の記者会見でJR幹部らに暴言をあびせたとして、読売新聞は13日の朝刊に谷高志・大阪本社社会部長名の謝罪記事を掲載した。「読者や関係者に不快感を与えたことに対し、深くお詫(わ)びします」としている。

 記事や同社によると、今月4日から5日未明にかけて事故直後にJR社員らがボウリングなどをしていた問題についてJR西本社が開いた会見で、記者がJR幹部らに「あんたら、もうええわ、社長を呼んで」などと声を荒らげたり、感情的な発言をしたりしたという。

 この時の様子は「記者会見で罵声(ばせい)」などとしてテレビや週刊誌で報じられた。読売新聞はこの記者を会見取材の担当からはずして注意した。記事は「使命感や熱心さのあまりとはいえ、常に心がけるべき冷静さを欠いたと言わざるを得ません。日頃の指導が生かされなかったことに恥じ入るばかりです」としている。』

 読売新聞といえば古田選手に暴言を吐いた社長がいた全国紙であるが,JR西日本だけでなくマスコミもこうなると会社の体質ではないかと思いたくもなる.TBSの編成制作本部スポーツ局企画渉外部の担当部長がコラムを盗作したのも記憶に新しい.

 それでなくても健康番組を見て意味不明な病名を言って外来にくる心配性の方々が増えて説明するのが厭になっているところだからマスコミ関係者はお断りしたいところである.

 新聞記者やテレビ局は何かというと報道の自由を唱えるが,それは取材はしてもいいという意味で,なんでも報道してよいというのとは違うだろうし,取材も現場のお邪魔でしょうが取材させていただいているという謙虚な態度のものは皆無である.

 使命感や熱心さのあまりというと聞こえはいいが,熱しやすく冷めやすいだけで思慮に欠けているのでは大衆そのものだ.いつから読売新聞は大衆紙になりさがったのであろうか.マスコミ関係者には知性と行動力を期待したいところであるが痴性と暴力が目立つようでは日頃の指導とはいったいどんなものなのか内部取材をして報道していただきたいものである.
 
『--「背景に医師不足」と指摘 介護報酬詐欺で道知事 --

 医師の数を水増しし介護報酬を詐取したとして北海道網走市の旧藤田病院(廃院)の元院長らが逮捕された事件について、北海道の高橋(たかはし)はるみ知事は10日の記者会見で「監督する立場にある道としても極めて残念、遺憾だ」と述べた。

 高橋知事は「過疎地域を抱える北海道の医師不足が大きな背景になったのではないか」と指摘。「医師の配置基準を国一律で決めるのはナンセンス。わたしどもが道内の医療状況を一番分かっている」として、配置基準を決める権限の委譲を引き続き国に求める考えを示した。』

 高橋知事の意見はもっともだ.厚生労働省は今後入院のできる診療所の医師配置基準を引き上げるようだが,過疎地域では不可能な話である.医師配置基準を引き上げて医療サービスの向上を計るというと聞こえはいいが,実際には地方の診療所からの医師撤退をすすめ入院可能な診療所が減少していくことになるだろう.

 仮に厚生労働省が言うように過疎地域では現状での診療所の存続をみとめるようなことをしても地方の診療所の医師のみが孤軍奮闘するという今の図式では先細りなのは見えている.ここに診療報酬の全国統一価格を適用されたのでは誰だって都市の病院へ逃げ出したくなるだろうし,たとえ医師が残っても地方の診療所の医療レベルも現状のままだ.

 高橋知事は「わたしどもが道内の医療状況を一番分かっている」とおっしゃったらしい.地方の医師不足という問題点はわかったのかもしれないが,具体的な解決策はあるのだろうか.あるのであれば具体的なプランを公表して国との交渉をしていただきたいものである.私も地方での医療に関わってきた医師として言いたいことはたくさんあるが,具体的な解決策など簡単には浮かばないのである.

 わたしが感じることは,国が医療に求めるのは医療費削減だけで,社会福祉の基本である国民の健康維持とか弱者救済というものは見えてこないのである.
 
『--JR西乗務員へ嫌がらせ120件 脱線事故後に相次ぐ--
 
 JR宝塚線(福知山線)の脱線事故後、JR西日本の乗務員を狙った悪質な嫌がらせ行為が相次いでいる。同社が8日までに確認できただけでも、120件に上る。事故当日のボウリング大会開催など一連の「不適切な行為」(同社)の発覚直後には、女性運転士がホームでけられてけがをする傷害事件も発生。レール上に石などが置かれる事件も多発しており、同社の3労組は10日、安全運転に協力を求める異例の共同声明を出した。

 同社によると、120件の内訳は暴行・傷害2件、職務妨害18件、乗務員が「暴言」と感じた行為100件。

 脱線事故が起きた4月25日午後9時すぎ、大阪駅の神戸線ホームで乗務予定の電車を待っていた20代の男性運転士に向けて中身が入った清涼飲料水の缶が投げつけられた。運転士にけがはなかった。

 天王寺車掌区の社員らが事故当日にボウリング大会を開いていたことが発覚した後の今月6日午前9時半ごろには、同じ神戸線のホームで乗務を終えて電車を見送っていた20代の女性運転士が背後から足首をけられて軽傷を負った。本人から被害届を受けた大阪府警が傷害容疑で捜査している。

 無言の抗議が運転士にとっては大きなプレッシャーになっている行為も続発。事故から2日後の4月27日、大津駅に入った電車の運転席後ろのガラスに「命」と書かれた紙がはられているのを運転士が発見。同日、大阪駅に着いた別の電車にも同じ字が書かれた紙が逆さにはりつけられているのが見つかった。

 乗客に「人殺し」と言われるなど、乗務員が暴言と感じた行為も後を絶たないほか、レール上に石や自転車などが置かれる列車往来危険容疑事件も今月8日までに計23件起きているという。

 こうした行為に対し、同社は「乗務員が動揺して運転に支障が出るおそれがある」と判断。9日、社員のメンタルケアを専門にした電話相談窓口を設けた。

 10日夕、帰宅ラッシュで混雑する大阪駅で乗務を交代した男性運転士は「事故前よりも緊張し、肩が凝るようになった。平常心を保つように努めています」と話した。

 一方、同社最大労組のJR西労組など3労組のまとめでは、7日現在の嫌がらせ行為は180件を超えた。

 4月27日には、京都電車区の20代の女性運転士が事故の救出状況を報じた新聞を突きつけられたり、運転中に別の乗客から「JRは人殺しだ」と言われたりした。女性運転士は精神的苦痛を訴えて4日間の休暇を取り、復帰した今も内勤をしているという。

 このほか、「運転する様子をビデオ撮影された」「速度計の表示を大声で読み上げられた」と、事故前なら気にならなかった乗客の行為に過敏になっている運転士もいるという。

 3労組の幹部の一人は「批判は甘んじて受けるが、乗客の生命をおびやかすことにつながる行為は許されない」と話している。 』

 中国での日本バッシングがようやく下火になったと思ったら今度はJR西日本へのバッシング.不満のはけ口をどこか適当なところに求めただけと言う点で何ら変わりは無いと思う.戦争や事故に遭った方の家族なら気持ちもわからないでもないが,むしろ悲しみが深い家族であればこそそういった無意味な行為には走らないものだろう.

 問題はこうした社会批判の風潮のしり馬に乗って混乱を起こそうとしている人たちである.小さな暴力行為ではあるが,こういった行動はイラクのテロリストに通じるものがあるだろう.JR西日本の企業としての安全管理責任は問われて当然であるが,そこで働いている個々の運転士を攻撃する正当な理由はどこにもない.たとえ小さな暴力であっても見逃してはいけないだろう.

 マスコミにも責任の一端があるだろう.JR西日本に関するマスコミの報道も即時性だけで先走ったものが多いのではないだろうか.自分で正しく考えることのできない人が情報を流したり,情報に流されて曖昧な不安や怒りで行動するのは危険なことである.もっと頭を冷やしてじっくり考えてもらう必要があるだろう.
『--「答えられない生徒は切ります」 授業中に教諭がナイフ--

 鹿児島県開聞町の町立開聞中学(福元隆志校長、203人)で4月中旬、男性教諭(39)が授業中、質問に答えられなかった1年の男子生徒の顔にカッターナイフを突きつけていたことが、7日分かった。女子生徒2人にもナイフを取り出して見せており、教諭は質問する前に「答えられない生徒は切ります」と話していたという。生徒にけがはなかった。教諭は「緊張感を持って授業に臨んでもらいたかった」と話しているという。

 同校の説明では、教諭は4月13日、美術の授業で質問に答えられなかった男子生徒に対し、胸ポケットから小型カッターナイフを取り出し、刃を出して生徒の顔から20〜30センチの距離まで近づけた。このクラスで美術の授業は初めてで、ナイフは教材の荷造りをほどくために持っていたという。

 学校側は同14日、別の生徒の保護者からの問い合わせで教諭の行為を知り、町教委に報告。全校生徒とこのクラスの保護者に謝罪した。福元校長は「軽はずみな行動で生徒に不信感を持たせ申し訳ない」と話している。

 指宿署は、脅迫の疑いもあるとみて教諭らから任意で事情を聴いている。』

 体罰教師はよくニュースになり教育現場で生徒を指導することに行き詰っているようでつくづく教師も大変だとは思う.だが,ナイフを見せて質問する前に「答えられない生徒は切ります」と言うというのは冗談でもやるべきことではない.こんなことをやっても生徒に刺されなかっただけ幸運だったというべきでさっさとこの教師の首を切るべきである.

 校長が「軽はずみな行動で生徒に不信感を持たせ申し訳ない」と話しているというが校長が謝ってすむ問題ではないであろう.やっていいことと悪いことの分別のない大人は即座に教師失格である.教師はまず人としての手本であるべきで,教師の方こそ自分の行動が生徒にどういう影響を与えるのか「緊張感を持って授業に臨んでもらいたい」ものである.

 ただでさえ生命が軽んじられているような風潮の現代にあって我々医師は当然としても,他の職種であってもまず第一に人間の命の尊さを重んじるべきなのは言うまでもないことである.JR西日本の社員が特に最近報道で取り上げられているようであるが,事故現場や病院で救助活動の妨げになった報道関係者だって救命救急の現場への理解は同程度のものだっただろう.

 現場で救助にあたった救急隊や医療関係者にとっては現場に来ないJR西日本社員よりも現場に群がる報道関係者のほうがよほど救助の妨げだったに違いないが,そんな報道機関にJR西日本社員を論評する資格はないであろう.報道機関が自局の問題点を自ら取りあげて報道することなど一度でもあっただろうか.NHKなんかはその隠し方が稚拙なために国民の怒りをかったようだが,民放などは取材にルールさえないようで現場で怒りを買うことも多いようである.

 一般人にしても同じことだ.自分のことになるとたいしたこともないのに大騒ぎして病院へ来て医師に検査を要求する人たちが多い.そんなことをする前に人の命にかかわることで常識として知っておくべきことはたくさんあると思うのだがどうだろうか.もっともそういった知識を教えるのも教育なのだから,教師が馬鹿をやっていると今に日本中がJR西日本のようなことになるのではないだろうか.
『--26トンなぜ「飛んだ」 JR脱線事故の先頭車両--

 車体26トン、乗客を含めると約30トンもの重量がある車両が、なぜ「跳びはねるように」横転したのか。兵庫県尼崎市で起きたJR宝塚線(福知山線)の脱線事故は、最初に脱線したと見られる先頭車両の動きが焦点になっている。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は事故原因の特定に慎重だが、速度超過やブレーキ操作、軽量化された車体、きついカーブなど、さまざまな要因がかかわっていたとみられることが明らかになってきた。

◆非常ブレーキ 片輪走行中、外へ力
 「非常に原因特定は難しい。速度が高く、車両が傾いたとみているが、それだけが原因ではないと考えている」
 脱線事故から1週間を迎えた2日。会見した航空・鉄道事故調査委員会の佐藤泰生・鉄道部会長は様々な要因が重なった「複合脱線」との見方を改めて示した。

 調査委の慎重姿勢の一方で、事故の状況はかなり明らかになってきた。 快速電車は、半径300メートルの比較的きついカーブで、内側に当たる右側の車輪が浮き上がった。左側の車輪は非常ブレーキのためロックされてレール上を跳びはねるような状態になり、そのまま左側に横転したと見られている。

 独立行政法人「交通安全環境研究所」(東京都調布市)の松本陽・交通システム研究領域長によると、カーブで片輪走行中、非常ブレーキがかかると、レールと接している外側の車輪のブレーキしか利かないため、車両を反時計回りに回転させる力が働き、カーブの外側に押し出されて脱線しやすくなるという。

 兵庫県警が回収した先頭車両、5両目、7両目のモニター制御装置に記録されていた脱線直前の速度は、いずれも時速108キロだった。 松本領域長の試算では、横転の危険速度は、事故車両の設計上の最高速度にあたる時速約120キロ。ただし、直線からカーブに入る部分のレールのゆがみや乗客の位置や重量など細かな条件を加えていくと、時速108キロ前後でも横転は十分あり得るという。

◆軽量化車両 乗客が重心を左右

 事故を起こした「207系」は、軽量ステンレス製の通勤型車両として開発。91年から導入され、京阪神近郊路線で現在、約480両使われている。旧国鉄時代の鋼鉄製車両より約2割軽い。 「207系」の先頭車両はモーターがなく、重量は26トン。後部のモーター付き車両より10トン前後軽い。先頭車両はブレーキなどの運転関連の機器が車両床下にあるため、モーターを搭載しないのが一般的だという。

 こうした軽量化と事故との関連について、鉄道車両の設計に詳しい松本金矢・三重大学助教授(機械工学)は「軽量化が進むほど乗客の重量や場所が、車両の重心の位置を左右しやすくなる」と指摘する。 急なカーブを高速で通過しようとすると、乗客は外側に振られる。重心が外側に移動すると、事故の際には車両が横倒しになりやすい。乗客が多くなるほど、この力は強まる。
 カーブで車両には、遠心力と重力を合成した力(合力)が斜め下の方向に働く。遠心力が大きくなって合力の延長線が左車輪の外側にずれると、車両のバランスが崩れて横転を招くことになる。

 曲線半径300メートル(R300)という現場カーブの形状も、調査対象になっている。半径が大きくなるほど、カーブは緩やかになる。在来線の平均曲線はR600だ。JRの元運転士は「R300は相当、急だ。もし時速100キロ超で突っ込んだのなら、運転士は恐怖感を覚えたはずだ」とみる。 R300は線路の用地買収が難しい都市圏の在来線で多く、関東で約100カ所。関西でも同程度とみられる。これより急なカーブは少ない。

 旧国鉄小倉工場長を務めた交通研究家の久保田博さんは「カーブでは昔の鋼鉄製の車両の方が安定していた。特に事故車両はモーターが床下にないのに、台車と同じくらいの重さがあるエアコン装置が天井の上に載っていて重心が高く、ひっくり返りやすかったのではないか」と話す。

●カーブ事故、教訓生きず
 現場のカーブが急だったことも事故につながった。だが、他社では、過去の教訓を生かして横転事故を防ぐ手だてを取っていた例もある。
 北海道のJR函館線では、国鉄時代の1976年からJR移行後の96年にかけて、宝塚線の脱線現場と同じ半径300メートルのカーブを100キロ超で走行中の貨物列車が横転する事故が3件起きた。JR貨物によると、いずれも速度超過の原因は、運転士の飲酒や居眠りなどだったが、下り勾配(こうばい)の直線に続くカーブで、速度が出やすい場所だった。

 カーブの速度超過は運転士の技量や注意力で防ぐのが基本とされているが、JR貨物は「ソフト対策だけでは事故は防げない」と判断。赤信号無視による衝突事故を防ぐ自動列車停止装置(ATS)の機能を利用し、速度オーバーに自動ブレーキがかかる保安装置を97年に設けた。

 JR東海も在来線の直線と急カーブの制限速度の差が40キロ以上ある全8カ所に、急カーブ手前に速度をチェックする装置を94年から設け、ATSで自動ブレーキがかかるようにした。JR東日本は、常に列車の速度をチェックするよう改良した新型の自動列車停止装置(ATS―P)の機能を利用したり、新幹線並みの自動列車制御装置(ATC)を導入したりして、カーブの速度超過を自動的に防ぐ仕組みを採り入れている。東京駅を中心とした100キロ圏内がほぼ100%、全線でも30%で整備を済ませた。

 JR西日本のATS―Pが全線に占める割合は7.7%。東海道・山陽線や北陸線は半径500メートル以下のカーブにJR北海道や東海と同様の自動ブレーキ装置を整備してあるが、宝塚線は対象外だった。 』

列車運行の遅れを取り戻そうとした速度超過とブレーキの遅れそして操作の誤りといったミスが重なったということが原因の複合脱線ということのようだが,運転士ひとりの責任というのは問題がありそうだ.というのも同じ列車に同乗していたJR西日本の運転士2人が救助活動に参加せずに職場に向かっていたことがわかり,どうやら職場の安全管理の姿勢に根本的な問題がありそうだからである.

 少しのミスも許されない過密なダイヤ編成,ミスをするとすぐに厳しい処分が待っているというような環境で乗客の生命を賭けてミスを挽回しようとした運転士にも責任はある.だが,すべてを運転士の責任にして乗客の安全確保のための積極的対策をとらなかったJR西日本の責任はさらに重いはずである.

 同様のことは医療現場でも起こっている.大学病院での医療事故の多さがいい例だろう.高度な医療を行う先進的医療機関と信じられている大学病院でなぜあれほど避けられるはずの人為的ミスが多数おこるのだろうか.対岸の火事ではなく組織としての安全対策を真剣に考えるべきであるが,それが本当に可能な大学病院はどれほどあるのだろうか.
『--バイパス血管切り患者死亡 新潟県立がんセンター--

 新潟県立がんセンター新潟病院(田中乙雄(たなか・おつお)院長)は27日、新潟市の70代の男性患者に実施した手術で、心臓へのバイパスになっていた動脈を知らずに切り離し、患者が心筋梗塞(こうそく)で死亡したと公表した。

 病院によると、5日午前に胆のう摘出などの手術をした際、胃の動脈が傷つき出血。患者は以前に別の病院で受けたバイパス手術で、この動脈を心臓につなげていたが、外科部長の執刀医(44)は気付かずに止血のため切り離した。

 その後、動脈が心臓につながっていたことが分かったが、患者の状態が安定していたため、執刀医は手術を続けた。しかし、術後に患者の血圧が低下。バイパスの動脈を再びつなげる手術をしたが容体は改善せず、5日夜に死亡した。血管を切り離したことが、心機能を低下させたとみられるという。

 執刀医は、患者のバイパス手術を知っていたが、どの血管をバイパスに使っているのか確認しなかった。

 田中院長は「患者とご遺族に衷心よりおわび申し上げる。今後は慎重な情報把握に努める」と話している。』

 執刀医の外科部長は業務上過失致死罪を免れることができるのだろうか.患者も医師も誠にお気の毒な話ではあるが,執刀医は2つの点で最善をつくさなかったことの責任をとらざるを得ないだろう.

 ひとつは患者のバイパス手術を知っていたが、どの血管をバイパスに使っているのか確認しなかったということで,もう一点は動脈が心臓につながっていたことが分かった時点で再吻合するなどの処置を試みなかったことである.

 手術前のリスクの評価として既往歴は非常に大切な場合があるが,術野が近い過去の手術はその最たるものであろう.脳外科でも以前に開頭術をしていた場合に脳が周囲と癒着していて手術が非常に困難なことがあったり,血管吻合術を受けた患者さんに別な手術をしなければならない場合などは吻合した血管の処理にかなり気を使うことになる.

 それ以外の一般的な既往歴として高血圧,糖尿病,虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞),喘息などは術中,術後の合併症のリスクが高く要注意であるが,病状が悪いか不安定な場合は専門医に相談し麻酔科にもリスクの評価をしてもらうことになる.

 こういった術前のリスクの評価がきちんとなされないと術者は予期しないトラブルに巻き込まれるわけだ.だから,術者は自分でこれらの確認をすべきなのだが,大きな病院ほど術者も忙しいのかこれらを人まかせにしてしまう傾向があるような気がする.これも大病院の知られざるリスクだろう.

 いずれにしても最近の傾向としては知らなかったではすまされないわけで,知っていたのに対応を誤ったのであればさらに責任は重いだろう.

 そういえば羽田空港の管制官の方々は工事で使用中止の滑走路に新千歳と帯広からの便を着陸させようとしたそうだ.帯広からの便は確認はしたものの管制にしたがってそのまま着陸したそうだが,新千歳からの便の機長は確認後に自分の判断で管制に従わずに別な滑走路に着陸したそうである.

 外科医であれば私は後者の機長のようなリスクマネージメントのできる執刀医が理想だと思うのだがどうだろうか.
『--「カーブ外側に傾いて走行」 脱線事故で複数住民目撃--

 兵庫県尼崎市のJR宝塚線(福知山線)で起きた快速電車の脱線事故で、電車が車体をカーブの外側に傾けながら走行していた可能性があることが28日、兵庫県警捜査本部(尼崎東署)の調べで分かった。速度超過などのため、カーブ部分でバランスを崩したことも考えられるという。また、松下正俊車掌(42)は脱線時、最後部の車掌室にいたこともわかった。県警は、松下車掌が速度メーターで速度超過を認識していた疑いがあるとみて事情を聴いている。

 調べによると、電車は脱線前、制限速度(70キロ)を上回る100キロ超の速度でカーブに入り、カーブ手前付近で非常ブレーキが作動していたことがすでに分かっている。1両目は脱線した後、マンション1階の駐車場で左を下にした状態で横転していた。

 県警が現場付近の住民から事故当時の事情を聴いたところ、「電車はカーブの外側に傾きながら走ってきた」という複数の目撃情報が得られたという。

 現場付近は右カーブになっているため、左側のレールが右側に比べて9.7センチ高くなっており、本来なら内側に傾いて通過する形になる。このため、県警は、電車が速度やブレーキなどの影響でバランスを崩しながら走行していた可能性があると見ているが、目撃者が脱線後の状態を見たことも考えられるとしている。

 一方、松下車掌はこれまでの調べに対し「(高見運転士が)遅れを取り戻すためにスピードを上げていた」と供述している。』

 まず106人の死亡者と461人の負傷者を出し大惨事となった今回の列車事故の犠牲者の方のご冥福をお祈りし負傷された方々の一日もはやい回復をお祈りいたします.

 ところで事故の真の原因は依然謎のままであるが,この記事を読んでいてひとつ気にかかったことがある.それは非常ブレーキは誰がかけたのか,あるいはかけることができたのかということである.

 JRの説明にもあったが理論的にはこのカーブは時速120キロでも脱線しないはずであったのだから速度超過だけで脱線したとは考えにくく非常ブレーキが脱線を招いた直接の原因であったのではないかと考えられるからである.

 私の記憶が正しければ非常ブレーキは乗客でも操作できるはずで,異常な速度に気づいた乗客や車掌がこれを操作した可能性は否定できないだろう.そうなると事故を引き起こしたのが運転士だと断定できない可能性が残る.

 過去に訓告を受けているし前駅でオーバーランをし事故で死亡してしまった運転士の責任にするのはたやすいことではあるが,真の原因を科学的に究明することこそが今後の事故を防ぐために必要なことであろう.

 国土交通省は28日、JR西日本に対し、安全性向上計画を早急に策定するよう指示したそうであるが,それ以前にやるべきことはまだあるはずである.いままで,そしてこれからも安全対策をJRまかせにしている監督省庁としては安易な責任逃れのような気がするのは私だけだろうか.
『--感染者と患者1万人超す エイズ、最悪の状況 厚労省の動向委まとめ--

 エイズ発生報告制度が始まった1984年以降、国内のエイズウイルス感染者とエイズ患者の累計が1万人を超えたと、厚生労働省エイズ動向委員会が25日発表した。

 85年に国内で患者が初確認され、99年に5000人を突破。2004年は新たな感染者、患者とも過去最多で、年間合計が1000人を初めて突破し1165人に達するなど最悪ペースで増加している。

 吉倉広(よしくら・ひろし)委員長(前国立感染症研究所長)は「感染の早期発見による早期治療と、感染拡大の抑制が重要だ」と指摘した。

 感染者は、15-19歳が約2%、20-24歳は約15%、25-29歳は約24%、30-34歳は約20%、35-39歳は約12%で、最近は若年層に広がってきている。

 感染経路別にみると、日本国籍の感染者では、同性間性的接触による感染が最も多く約2500人で、男性が多数を占める。日本国籍の患者では異性間性的接触が約1120人、同性間が約790人。

 04年は東京をはじめ関東、甲信越の報告が依然多く、感染者、患者の半分以上。他の地域でも過去最悪レベルが続き、特に近畿で著しい。』

 早期発見といっても若者が自主的に検査に行くなんてことはないだろうし,AIDSの可能性のある者が検査のために献血するなんてことがあっては感染の抑制はできないだろう.

 病院でもルーチンに肝炎や梅毒の検査をすることは健康保険で認められてもAIDS検査は認められていないのが現状であるし,職場での健康診断でも結核くらいは胸部写真で見つけられてもAIDS検査は行っていないから一般人のスクリーニングはまったく行われていないわけだ.

 いまだに同性愛との関連を言ってもこれだけ増えてくれば無意味だろう.すでに妊婦から胎児へのAIDS感染が問題になっているほどである.梅毒や淋病やクラミジアといった性感染症と同様にこれからは爆発的に増えていくのであろう.

 同性愛に限らず怪しい人間とは関わらないほうが安全である.医師も看護師もAIDS検査がルーチンで行われない以上は患者を診たらAIDSと思えという考え方でないと自分を守ることはできない.注射や手術などの観血的処置はリスクを伴うことを自覚すべきだろう.

 先進国の中でAIDS感染者が増加しているのは日本だけだそうであるが,GDPに占める医療費も最低なわが国はすでに医療では先進国とはいえない状態になりつつあることに気づくべきだろう.
『--ウイルスバスター不具合 ユーザー苦情にPC会社悲鳴--

 「ウイルスバスター」によるトラブルは23日、企業や一部官公庁だけでなく、個人ユーザーにも広がり、パソコンメーカーに電話が殺到するなどの影響も出た。このソフトを販売するトレンドマイクロ社は24日未明、テストをしないファイルを配布していたことを明らかにした。ウイルスの侵入を防ぐはずのソフトが招いた混乱に、ユーザーからは「十分検証もしていないファイルを出すなんて信じられない」と怒りの声が上がった。

 「パソコンが起動しない」「画面が白っぽく、動かなくなった」――。 パナソニック」ブランドの松下電器産業やNECなどパソコンメーカーの相談窓口には23日朝から個人ユーザーからの苦情電話などが殺到し、対応に追われた。
 パナソニックの大阪相談窓口センターのパソコン約100台もウイルスバスターを使っていた。午前8時半過ぎ、一斉にシステムトラブルが発生し、直後から電話が始まった。専用電話約50台が一斉に鳴り続け、担当者だけでは対応しきれなくなったという。 担当者の一人は「自分のパソコンは起動しないし、お客様からは電話がかかってくるしで午前中はオフィスがパニックに陥った」と話した。また、NECのパソコン相談センターでも、ユーザーからの苦情は夕方までに約200件にのぼったという。

 都内に住む30代の勤務医の女性は23日朝、パソコンを立ち上げようとしたが、内部の音がうるさく、立ち上がらなかった。
 午前10時すぎ、パソコンメーカーのサポートセンターに電話をかけたが、つながらなかった。
 正午すぎ、秋葉原にあるメーカーのパソコンセンターに持ち込んだ。ハードディスクを初期化することにし、普段使っていた医療辞書ソフトや年賀状のあて名を打ち込んだ住所録ソフトのデータがすべてなくなった。
 ウイルスバスターが原因だと知ったのは、その2時間後だった。
 女性は「テストもしないファイルを配布したのはいい加減で許せない。トレンドマイクロ社は社会的責任と影響を考えていたのか」と憤る。

 トラブル対応に追われた人たちからは「十分検証してから配布してほしい」などの声が上がった。 』

 パソコンのワクチンも安全性を検証しないで使用するとウィルスに感染するよりひどいことになるようだ.起動さえもしなくなったパソコンにパニックになってこの女性のようにハードディスクを初期化してしまった人の被害は補償されるのであろうか.

 WindowsXPのセーフモードで立ち上げて修復ソフトを使えばいいようだが,これがちゃんとできる人はそれほど多くはないだろう.ウィルスバスターのために仕事にならなかった人たちの怒りはPCメーカーに向くのだろうか,それともトレンドマイクロ社に向くのだろうか.

 私は根元的な問題点はWindowsXPにあると考えている.私も必要に迫られて使ってはいるのだが,修正ファイルがあまりにも多いのにはあきれている.インストールした直後からアップデートを山ほどしないと使い物にならないOSなんてWindowsXP以前には見たことがなかった.

 鉄道や製薬、食品、マスコミなどで被害が出たようだが,病院でもきっとかなりの被害が出たことだろう.個人情報保護を本気で考えるなら,仕事で使うPCのOSくらい自国で開発していないとそのうちとんでもないことになるような気がするのは私だけだろうか.
『--幹細胞、長い培養でがん化 欧で確認、安全確保に課題--

 人の骨髄や脂肪細胞などに含まれ、日本や各国で傷んだ組織を修復する再生医療に使われ始めている「間葉系幹細胞」と呼ばれる未熟な細胞について、スペイン・マドリード自治大などのチームが「試験管内で約5カ月にわたって培養したら、がんを起こす細胞に変質した」と米医学誌「キャンサーリサーチ」に21日までに発表した。一般的とされる2カ月以下の培養では異常はなかったものの、幹細胞を医療に利用する際には安全性の慎重な確認が課題となりそうだ。

 チームが調べたのは、人の脂肪細胞から分離した間葉系幹細胞。4-5カ月培養を続けた細胞のサンプルの一部が、分裂速度が速く染色体に異常を持つ細胞に変質し、これをマウスに移植したらがんができたという。受精卵からつくる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)は、人体のどんな細胞にも成長できる代わりに、そのまま移植するとがん化することが分かっている。しかし間葉系幹細胞のような大人の体からも採れる細胞が、培養中に自然にがん化したとの報告は初めて。』

 脳神経外科領域では脳梗塞や脊髄損傷の夢の治療である神経再生の鍵となる幹細胞であるが神経細胞は間葉系ではなく外胚葉系であるのがせめてもの救いなのだろうか.

 脊髄のような末梢神経系でも細胞分化の制御ができなければ移植した細胞が癌化する可能性があるのだろうから,こういうニュースをみると夢がまた遠のくような気分になる.

 これが皮質領域の脳梗塞となると細胞分化の後に神経回路の再構築という問題があるわけだからさらに道のりは遠いのだろう.この辺に中枢神経系ならではの問題があるのだが,この問題はいつになったら先が見えるのだろうか.私にとってはまだまだ先の長い道のりのように思える.
『 --重大な医療事故533件 初集計、半年で死亡83件 報告義務化で主要病院--

 患者が死亡するなどの重大な医療事故が、大学病院や国立病院など主要な病院で3月までの半年間に533件あり、うち死亡例は83件に上ることが15日、財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)の集計で分かった。昨年10月、報告が義務付けられてから集計は初めて。同機構は事例を分析し、再発防止に役立てる考え。

 報告が義務化されたのは、大学病院や国立病院など276施設。ほかに任意で医療機関257施設が参加し、集計対象は計533施設。1施設当たり1件の報告があった計算となった。

 事故の程度は「障害が残る可能性が低い」が254件で最多。「不明」(104件)「死亡」(83件)「障害が残る可能性が高い」(74件)の順だった。発生場所は病室が241件でトップ、手術室も77件と多かった。体内に異物が残った事故は16件。ガーゼや縫合針、鉗子(かんし)、ねじ、義歯、カテーテルなど多岐にわたっていた。

 同機構は当面、異物残存のケースと、医療機器の使用に関する事故(7件)の2つのテーマで原因などを分析する。2005年度は年4回の集計を予定しており、医療機関に傾向や対策をフィードバックする。

 報告制度は、後を絶たない医療事故の再発防止を目指し厚生労働省が医療法施行規則を改正して義務付けた。患者が死亡したり予期しない処置が必要となったりした重大事故が報告対象。正直に報告してもらうため病院名は伏せ、行政処分をする厚労省とは別の同機構が受け付ける。』

 これを見てその多さに驚いた人は大学病院で勤務した医師ではないだろう.大学で勤務医をやったことがある人ならまあこんなものだろうと思うだろうし,まだまだ全部を報告していないんじゃないかと思う医師も多いだろう.

 医療事故のニュースに大学病院の事故が多く取り上げられているように感じるが,特に大学病院だからではなく重大事故が実際に起こっているから報道されているだけなのかもしれない.

 たしかに大学病院のように高度な先端医療を要する病気ならばリスクがあっても大学病院にかかるしかないだろうが,小さな病院でもいいような病気でかかると思わぬリスクを背負い込むことになりかねない側面も大学病院にはあるということをこの報告は示しているのではないだろうか.

 病院の規模が大きくて手術数の多い病院がより良いと一般には信じられているのかもしれないが大病院ならではのリスクがあることを忘れてはいないだろうか.続く...
『--各地で反日デモ 瀋陽で初の大規模化、総領事館に被害--

17日、日系スーパー、ジャスコが入る広州市内の商業施設「中華広場」は、警官や武装警察で重々しい雰囲気に包まれた。

 中国では17日も、遼寧省の省都・瀋陽市、福建省アモイ市、広東省深セン市など、香港を含む少なくとも7カ所で反日デモが繰り広げられた。瀋陽では総領事館内の乗用車の窓が割られたり、総領事公邸の壁が汚されたりした。北京市や、前日に数万人規模のデモがあった上海市などは、厳重な警備が敷かれ混乱は見られなかったものの、週末の反日デモは各地に広がり、収まる気配がない。日本語の看板をはずすなどの自衛策をとる商店も増えてきた。

 瀋陽では、約千人が参加し、東北地方で初の大規模デモとなった。総領事館によると、17日午前、若者らが市内中心部の電器街に集合。総領事館に向かった。しかし、武装警察官が道路を封鎖したため、裏道などを抜けた数十人が数十メートル先の総領事館に向かって、卵やペットボトル、インク瓶などを投げつけた。領事館の敷地内にある総領事公邸の壁や庭に、紫や青、赤のインク染みがついたほか、駐車していた領事館員の車の後部ガラスが割られた。同領事館に対するデモは3月末から4回あったが、いずれも数十人以下の小規模だった。

 また深センでは3週連続の反日デモが行われ、1万人以上が参加した。広州市の総領事館によると、このほか東莞、珠海両市、福建省アモイ市、浙江省寧波市で、デモなどがあった。アモイでは6000人が参加した。また、広州、重慶両市の総領事館によれば、広西チワン族自治区の南寧市、四川省成都市などでも集会などが開かれたとの情報があるが、確認できないという。このほか、香港でも約5000人がデモに参加した。

 東莞の日系電子メーカーでは、待遇改善を求めるストが反日デモに変わった。また別の日系企業では監視カメラが壊された。珠海でもデモ隊が日系企業に向けてペットボトルや石を投げ、1社の窓ガラス4枚が割れ、1社の回転灯が壊れた。

 町村外相が視察のため訪れた在北京日本大使館の周辺は一時、武装警察官や警察官ら約1500人が配置された。16日に大きな被害を受けた上海総領事館の周辺では、1千人の警察官らが警備にあたった。総領事館によると、上海でのデモでは、邦人2人が襲われてけがをし、付近の日本料理店など12店が襲われて被害を受けた。 』

 日本の戦争犯罪を訴えるのは結構だが、手段として暴力的行為を行うものは戦争犯罪人と同じであるということがわからないのであろうか.

 私感ではあるが,今の中国の状況は日系企業や日本人から利益を得ることができた勝ち組とそうではない負け組とが明らかになってきたことに原因があるのではないだろうか.中国人の経営する日本料理店や中国人が働いている企業がターゲットになっていることがそれを示しているのではなかろうか.

 もちろん純粋な中華思想から日本がアジアの盟主たるかのような現状に反感を抱くのも理解はできる.だが,思想としてはすでに時代に遅れてしまっているところが近代化半ばの中国らしい点である.戦争犯罪をおかした半世紀前の日本人について中国にいまさら謝罪というのは現代の日本人には理解できないことである.それよりも中国人の強盗や窃盗団を迷惑に思う日本人のほうがはるかに多いだろう.

 中国人のなんでも日本に責任があるという理屈は韓国にも通じるところがあり先祖の恨みがあるのかもしれないが,そんなことは原爆を落とされても米国人を恨むこともしない日本人に通用するはずもないことはきっと理解できないだろう.日本人は良くも悪くも平穏を好む民族のようである.

 だが,思想や価値観の違いを理解してもらうのに暴力的行為を用いることはいかなる理由があろうとも間違いであることは理解してもらいたいものである.その点で自国民の暴力的行為を肯定しているかのような映像は中国とその国民の評価を低めることはあっても高めることは決してないであろう.これはイラクの平和のために武力を用いた米国がいい例である.

 アジアでの国民感情のもつれの解決にはどれくらいの時間があればいいのであろうか.
『--主治医を業過致死で起訴 埼玉医大で不適切な治療--

 環境評論家船瀬俊介(ふなせ・しゅんすけ)さん(54)の長女真愛美(まなみ)さん=当時(14)=が、埼玉医大病院(埼玉県毛呂山町)で入院中に死亡したのは適切な治療を怠ったためとして、さいたま地検は14日、業務上過失致死罪で、当時主治医だった田島弘(たじま・ひろし)医師(50)=東京都世田谷区=を在宅起訴した。

 起訴状によると、田島被告は、体調を崩して入院していた真愛美さんに、2000年5月1日から28日にかけ、高カロリー輸液剤の点滴をする際にビタミンB1を並行して投与する指示をせず、同月30日に多臓器不全で死亡させた。

 船瀬さんらは01年2月、当時の浦和地検に未必の故意による殺人容疑で田島被告を告訴していた。田島被告は昨年、埼玉医大を退職している。

 船瀬さんはベストセラー「買ってはいけない」の著者の1人。船瀬さん夫妻は01年10月に病院と主治医らに損害賠償を求め提訴。東京高裁は04年11月「適切な処置が遅れたことに過失があった」として約4500万円の支払いを命じた。

 医師の起訴に対し、埼玉医大は「司法の判断を待ちたい」としている。』

 この記事を読んでまず思ったのは,「殺人罪というからにはビタミンB1を補給していればこの娘さんが必ず助かっていたということをどうやって検察が科学的に証明するのか」ということである.

 なにもしなければ死亡する患者に医療行為を施して救命もしくは延命することが治療で,医療行為を施してもその行為の一部にミスがあり結果として患者が死亡すれば殺人罪と家族はいいたいのだろうか.気持ちはわからないでもないが,娘が死亡した恨みを医師にぶつけたら気が晴れるのだろうか.

 訴えられたくなければ医師は重症の患者の治療を避けるのが懸命ということになるかもしれない.ところが患者や家族は医師を選ぶことができるのに医師は患者を選ぶことはできない.医師には病院に来た患者を診る義務が課せられているからだ.だから医療ミスを起こす医師に遭遇するのは患者や家族に選択ミスがあったといえるかもしれない.このように結果で考えると医療事故は虚しい話になる.

 患者が死亡したらどこかにミスがあったのではと疑われ,結果が悪ければ損害賠償を請求され,挙句に殺人罪で訴えられるというのが社会現象になるようなら医師にも患者を診ない権利を与えるのが公平だろう.医療行為とは信頼関係で成り立っているはずである.お互いに信じられない者が患者と医師の関係になるのが不幸の始まりだろう.

 そもそも病気とは患者のかかえる問題であり医師はそれに救済の手を差し伸べる存在であるということをお互いに忘れてはいないだろうか.もちろん患者の家族もである.
『--提供拒否の登録制を検討へ 移植法改正で与党議員ら--

 本人が事前に拒否していなければ家族の同意で臓器を提供できるとする臓器移植法改正案について、与党議員らでつくる検討会の河野太郎衆院議員(自民)は12日、移植患者団体からの意見聴取の後、記者会見で「(提供は)ノーという意思表示を担保するための登録方法を考えないといけない」と述べた。

 提供拒否の意思表示を、現在の意思表示カードだけでなく、登録方式でもできるよう制度を検討する考え。厚生労働省は「拒否の人を全員登録するシステムは難しい。アイデアの一つとしてうかがっている」としている。

 この日の検討会では、メンバーの議員から「脳死判定の実施は、従来通り家族が拒否できるようにすべきだとの声が党内にある」との意見も出された。改正案では、判定は医師の裁量に委ねるとしており、検討課題とすることを確認した。

 提供しない意思について、河野議員は「(改正で)意思に反して臓器を摘出されるとの誤解もあり、必要なら登録制をやらなければならないのかなと思う」と説明した。』

本人の意思表示がない場合は臓器を摘出するというのが前提になっているということを自然に受け入れられる人が多数派なのだろうか.これと同様のことが延命拒否の意思表示だろう.

あくまでも移植医療をすすめたいのであれば,本人の意思表示がなければ延命しないことにすれば話は非常にすっきりするような気がするが,それでいいのだろうか.

問題は移植医療や延命治療にほとんど関心のない人たちが普段から臓器提供拒否や延命治療拒否の意思表示をするかどうかだろう.移植医療に携わる者や移植を受ける者は当然のことながら臓器提供の機会を増やしたいのだろうからこういう人たちが中心になっている今の議論には問題があると思うのだがどうだろうか.
『--「意図的な死」と非難 ローマ法王庁--

 ローマ法王庁(バチカン)の報道官は3月31日、米フロリダ州のテリ・シャイボさん(41)が栄養補給を打ち切られて死亡したことについて「一つの命が絶たれた。意図的に死が早められた」と非難した。

 法王庁は、中絶を含め、人工的に人間の命が操作されることに基本的に反対している。ANSA通信によると、法王ヨハネ・パウロ二世は昨年3月「生命延長のための栄養補給を中断するのは、不作為による安楽死に当たる」とスピーチしており、報道官の発言もその考え方に沿っている。

 バチカンは「過度な治療」には反対しているが、報道官は「栄養補給は過度な治療には当たらない」としている。』

延命とは本来助からないものを意図的に生きながらえさせることである.だから,延命の中止を意図的に死が早められたというのか本来の自然な死をむかえさせたというのかは主観的な表現の問題だろう.

生物とは本来は自分で摂食できなくなれば死に至るものであると考えれば意識が一定期間以上なければ餓死してしまうのは自然の摂理といえるだろう.テリ・シャイボさんは栄養補給を打ち切られて14日目に死亡したそうだから,そのあたりが遷延性意識障害の場合の本来の生死の境であるのだろうか.

瀕死の状態のローマ法王も自身の自然な死を希望されることだろうが,主治医たちは延命治療をどこで打ち切るか,または打ち切らないのか宗教倫理と医師の使命感との間で悩んでいるに違いない.

家族に迷惑をかけないよう癌の末期や遷延性意識障害になった時のために,今のうちに自分の治療をどこでやめてもらうのかを決めて遺書にでも書いておき,意識がなくなって2週間くらいしたら読んでもらうのがいいのかもしれない.
『--病院側に550万賠償命令 「延命の可能性はあった」--

 兵庫県西宮市の笹生病院に入院し劇症型心筋炎で死亡した男性=当時(21)=の遺族が「医師の診断ミスがあった」として、病院を経営する医療法人と担当医に計約9100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁尼崎支部は31日、計550万円の支払いを命じた。

 安達嗣雄(あだち・つぐお)裁判長は「担当医が容体に応じた治療をしていれば死亡自体を回避することは困難だったとしても、延命できる可能性はあった」と認定。「延命の可能性を侵害され被った損害を賠償する義務がある」と慰謝料の支払いを認めた。

 遺族側は「当初から劇症型心筋炎と診断し、より高度な医療施設に転院させれば死なずにすんだ」と主張したが、安達裁判長は当時の医療水準から担当医に診断ミスはなく転院させる義務はなかったと判断した。

 判決によると、男性は2000年12月1日、胸の痛みを訴え、笹生病院に入院し電気ショックなどの治療を受けたが翌日に死亡した。』

「延命の可能性を侵害され被った損害を賠償する義務がある」という部分の意味がよくわからない.「...より高度な医療施設に転院させれば死なずにすんだ」という家族の希望をかなえなかったという意味なのだろうか?

私は専門外なのでよくわからないが,診断ミスはなく転院させる義務はないのに家族に慰謝料というのがどうもピンと来ない.亡くなってしまった本人にとっては意味のないことだ.結局,結果が家族の希望どおりでなければ訴えられて損害賠償させられるということならば救急患者を受け入れる病院は減っていくだろう.

救急医療で延命の可能性を侵害しないことを徹底すれば医師は好むと好まざるとにかかわらず過剰診療となることは必至だろう.過剰診療は社会保険庁が査定するわけだから医師は家族と監査の板挟みになるわけである.

救急車は有料になるらしいが,救急医療における延命治療もすべてオプションとして自由診療にしたらいいだろう.健康保険で風邪薬を出すのも無駄だが延命治療に使うのも同様に医療資源の無駄使いであろう.

米国でも最近話題の延命治療であるが,ドナーカードなんかより延命治療を希望しない意思表示カードでもつくった方が医療現場ではずっと役に立ちそうである.
『--人工呼吸器外し患者死亡 「家族の希望」広島の病院 県警が聴取へ--

 広島県福山市の民間病院で今月中旬、院長が入院患者の女性の人工呼吸器を外し、死亡させていたことが25日、分かった。同日午後、記者会見した院長によると、家族の希望を受けたためだが、患者本人の同意はなく、院長1人で判断したという。広島県警は患者死亡の経緯について院長らから事情を聴く方針。

 同病院などによると、女性は3月4日に入院し、腎不全と肺炎の治療を受けていた。チューブを通して人工呼吸器を取り付けた。女性は間もなく尿が出ないなど容体が悪化し、意識不明に陥ったため、家族が13日、「楽にしてあげてほしい」と院長に要望した。院長は「人工呼吸器を外すと死亡する」と説明した上で急きょ、家族の同意を確認する「承諾書」を作成。一家が署名したのを受けチューブを外すと、女性は間もなく死亡したという。

 院長は会見で「間違っていなかった。今後は自分1人の意見ではなく、他のスタッフの意見を聞いて判断したい」と述べた。』

 症状が悪化して担当医も治療をあきらめたということなのだろうか.だが,最近の家族の同意があれば治療を中止してもいいかのような風潮には賛成できない.治療の効果が上がらないからといって途中で家族の希望を簡単に受け入れるくらいなら最初にどういう状態になったら治療を打ち切るのかを本人や家族と決めておくほうがいいだろう.

 人工呼吸器などは一度装着すると病状が回復していない状態で急に外せば死亡する可能性が極めて高いのであるから医師としてはいくら家族の希望があっても外したくはないものだ.家族もそんなことを希望するくらいなら最初から装着を希望しないほうがいいだろう.

 では,救急外来ではどうしたらいいのだろうか.ドナーカードのように意識のない場合にどこまでの治療を希望するかの意思表示を書いたカードでも持ってもらえばいいのだろうか.本人の意思確認ができないときに家族の希望でどこまで治療するか決めることにどういう意味があるのだろうか.

 できるだけの治療をした結果として遷延性意識障害の状態で寝たきりとなった患者さんたちもたくさんいる.これも医師の説明と家族の希望の結果なのだろう.だが,家族の希望で呼吸器を外したり経管栄養を中止できるのだったらどういうことになるのだろうか.そんなことは避けたいが,この医師の行為が正当化されるのだったらいずれ経管栄養の中止を希望する家族も出てくることだろう. 

どっちもどっち

2005年3月22日
『--族議員が巻き返し 医師免許の更新で--

 自民党が18日開いた行政改革推進本部総会で、「規制改革・民間開放推進3カ年計画」の検討項目から医師免許の更新制度導入を削除することが決まった。その背景には、規制緩和で影響力を失うことを恐れた厚労族の激しい巻き返しがあった。

 「単なる医師いじめだ。徹底的に反対だ」。前日開かれた総会には、医師の関連団体の支援を受ける族議員らが勢ぞろいした。「誰がこんなことを考えたんだ」「なぜ医師だけ厳しくするのか」などと免許更新制を批判する声が相次いだ。

 当初は意欲を示していた村上誠一郎・規制改革担当相も18日朝の会見で「長期的に検討は必要だが(計画の)まとめ方は官僚に一任している」とトーンダウン。規制改革会議は、25日の閣議決定に間に合わせるため、計画から削除せざるを得なかった。

 規制改革会議は、医療分野の規制を緩和し競争原理を持ち込むことで、患者本位の治療が実現し、医師の技術向上も期待できるという考え。

 しかし選挙で医師らの支援を得てきた厚労族にとって、規制改革会議は支持基盤を脅かす存在。総会は厚労族にとって影響力をアピールする格好の場となった。』

『--医師免許の更新制度--

 最新の医学知識を医師が吸収するためだけでなく、相次ぐ医療ミスを抑制する観点からも規制改革・民間開放推進会議などで導入の是非が議論されている。医療事故を起こした医師の処分が軽すぎるという批判も背景にある。ただ更新制度で診察などの臨床の能力は判断できず、医療ミス減少にはつながらないという見方もある。』

 相次ぐ医療ミスというが,これを人間の犯すミスと考えると本当に有意に発生率が高いのであろうか.人間がミスをする存在であることを前提として医療行為が成り立っているのかと考えるとおそらくほとんどの場合そうはなっていないことが問題だろう.

 あらゆる医療行為をミスを前提として安全性を追及していたらおそらく現在の医療はここまで進歩しなかったであろう.先端医療に限らず安全性が確立された医療が理想ではあるが,現実には人間がやる以上ミスをゼロにはできないだろう.

 人間のミスというものは偶発的に起こるものであるからミスなのであって,必然的に起きるものとは区別されるべきであろう.だから,経験のない手術で患者さんを傷つけるなどというのは論外である.偶発的なミスを試験で排除できるわけはないから,医療ミスを抑制するための医師免許の更新制度というのはまったく無意味だろう.まあ,医療知識のない方々の短絡的発想ということで大目にみてあげることにしよう.

 だが,この問題が規制緩和で影響力を失うことを恐れた厚労族の影響力をアピールする格好の場となったというのはいただけない.いままで開業医の代表である日本医師会と科学的根拠の薄い診療報酬請求を談合してきたあげくに医療費がかさむという理由で社会保険庁のつじつま合わせを黙認しているのも彼らだからだ.

 名義貸し問題にしても社会保険庁はその気になればずっと以前に指摘できたはずであるが,マスコミに騒がれるまで見逃してきたのはどういうわけなのだろうか.マスコミに騒がれると今度は躍起になって監査をし保険医停止処分をしているようだ.だが,何年間も監査していながら見て見ぬふりをしていた責任はないのであろうか.

 保険医停止も結構だが,何年間も不正請求を見抜けなかった責任を公務員として社会保険庁もきちんととるべきであろう.社会保険庁は解体されて名前はなくなるようだが,この無責任な管理職の公務員たちが横滑りで残ることのないようにきちんと整理して医師も国民も納得させることが厚生族議員の責務であろう.

 こんなこともできない国会議員では規制改革・民間開放推進会議の方々とどっちもどっちで医療従事者の失笑を買うだけだろう.医は算術を医師が望むと望まないとにかかわらず経済的な理由から医療現場が荒廃していくことを危惧しているのは私だけだろうか.

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