『 -- 大学の小児科医が激減 3年前の半数 救急医療の現場へ影響も --

 ことし4月から大学の医局や関連病院で小児科医になる医師の数が、3年前の半数近くに激減していることが21日、日本小児科学会の調査で分かった。

 この傾向が続くと、多くの大学が市中の病院から医師を医局に引き上げざるを得なくなり、病院の小児科医が不足。「たらい回し」と批判の多い特に小児救急の現場の崩壊がさらに進む恐れがあるという。

 調査は、医学部のある全国の106大学を対象に実施。これまでに83大学から回答を得た。

 大学病院や関連の病院で新たに小児科医になった医師は2002年は394人、03年は502人だった。この中で04年、医師免許取得後に指導を受けながら診療経験を2年間積む新臨床研修制度がスタート。新制度を終えた医師が初めて進路を決める06年は03年の約55%の276人にとどまった。

 一方、全国の小児科がある約1000の医療施設を対象とした調査で、研修前に小児科志望だったのにその後ほかの科に変更した人は223人だった。多くは内科や外科に移った。反対にほかの科から小児科に変更した人は70人で、地域医療の現場でも小児科離れが進んでいることを裏付けている。

 学会は「小児科医が不足しているために勤務が過酷になり、さらに小児科離れが進むという悪循環に陥りつつある」と分析。「地域医療だけでなく子どもの難病の研究などへも影響しかねない。職場を離れている女性医師の活用や、診療報酬制度の見直しも含めて小児科医を確保する必要がある」としている。』

 小児科学会はかなりの危機感を持っているのだろう.産婦人科学会はやらないのだろうか.脳外科専門医は多すぎるという声も依然あるようだから脳外科学会はたぶんやらないだろう.

 ただ,これは調査の対象が大学病院とその関連病院だけのようだから本当は研修医全体を対象にしなければ正確なことは言えないだろう.研修先の小児科が人的にも治療内容も充実したものであれば小児科を希望する研修医も当然いるはずである.しかし,大学病院とその関連施設で45%も希望者が減っているということは,今後,地方の公立病院の小児科は閉鎖が相次ぐことになることは間違いないだろう.

 ところで診療科はどうやって決めるのだろうか.私の場合は大学の脳外科医局に入った理由は1.ヒトの中枢神経系に興味があった.2.講義を聞いてみて教授がよかった.3.外科系に進みたかった.4.大学院で研究してみたかった.という順番の単純な理由である.

 親が医者でもない医学生だった私にとっては純粋に自分の好きな道を選んだつもりだった.もちろん1年目は後悔の毎日であり,私が病棟でボロボロになっている姿を見て2年程は部活の後輩が入局しなかったくらいである.

 現在は研修医制度があるのでもっと現場を良く見て考える時間があるのだろうか.だが,昔と違って情報も時間もあるとなれば純粋にというか何も考えずに診療科を選んでしまうことはなくなるだろう.こうなると診療科の選択は「学問的な興味」よりは「やりがい」があるかどうかということになってしまうのではないだろうか.

 ここで言う「やりがい」には当然,知的欲求を満たすということもあるが,むしろ楽でお金になるとか,自分の時間が持てるとか,都会で働ける,なんてことが選択の基準になることもあるだろう.だが,私は医師の「やりがい」で最も大きなものは『患者さんに喜ばれる』ということではないかと思うのである.

 確かに過重労働は医師の寿命を縮めるだけでなく,患者のリスクを高めるものであるから早急に改善する必要があるだろうし,なり手が少ない診療科の報酬を上げるのもいいだろう.だが,それ以上に病院にかかる患者側にも医師がやめたくなる理由があるということにそろそろ気がついてもいいのではないだろうか.
『 -- 公的医療機関に協力義務 小児科などの医師確保で --

 厚生労働省は20日、人手不足の小児科、産科、へき地、救急医療などの医師確保策について、2007年度から公立病院などの公的医療機関に協力義務を課す方針を都道府県の医政関係主管課長会議に示した。

 今回の医療制度改革に伴う医療法改正案で、都道府県による「医療対策協議会」の開催を明文化。病院や大学、社会医療法人などの関係者が参加し、小児科などの医師確保に向け「都道府県を中心に、実効性ある施策を講じる」と位置付けた。

 都道府県は地域で不足している診療科などの医師確保策を医療計画の重点項目とするほか、公的医療機関は協力義務を負い、医師や看護師も「協議会の結果を踏まえ、都道府県に協力する」努力義務が生じる。

 協議会はこれまでも、厚労省などの通知に従い、ほとんどの都道府県に設置されていたが、「取り組みがまちまちで、差が大きかった」(同省)という。

 医師確保策では、医療保険から医療機関や調剤薬局に支払われる診療報酬の06年度改定で小児科などが引き上げられるほか、医師の就労を支援する補助金制度なども新設される。』

 仕事がら拘束時間が多い医師であれば,それ以外で拘束されることを最も嫌うのは当然であるのだが,もともと診療報酬,応召義務とただでさえ不自由な思いをさせられた上に最近では刑事訴訟だ逮捕だと精神的に医師は追い込まれる一方なのである.

 なのに,今度は公的医療機関に協力義務ときた.目的が人手不足の小児科、産科、へき地、救急医療などの医師確保というのだから机上の空論も極まった感がある.いったいどこの公的医療機関に余剰な小児科医や産科医がいるのであろうか.

 この時代,働き盛りの医師はいつ公立病院を辞めて開業しようかと考えたり,小児科や産科の医師はいつ他の科に変わろうかと思ったりしているのである.そこにこんな義務が生じたら逃げ出したくなるのも当然である.これで2006年度中に公的医療機関からの医師の引き上げが一層加速し多くの公立病院は赤字のまま消えていくのだろう.

 相変わらず厚生労働省の官僚は何を考えているのかと言いたいところだが,これはひょっとすると国民の声を聞いているふりをしながら公的医療機関を整理するつもりなのかもしれない.入院するベッドがなくなれば医療費は削減できると考えているようであるから.

 
『 -- 認知症ホームの47%で違反 総務省が消防法実態調査 --
 全国に約8000ある認知症高齢者のグループホームのうち、防炎カーテンや誘導灯の未設置など何らかの形で消防法に違反する施設(棟数)は46・8%、3866棟に上ることが20日までに、総務省消防庁の調査で分かった。

 大規模な施設に設置が義務付けられているスプリンクラーを備えていない例もあった。消防庁は「施設側が消防法の規定を知らないケースも多く、法令の周知徹底が必要」として、各都道府県に防火対策を指導するよう要請した。

 今年1月、7人の死者を出した長崎県大村市の認知症高齢者グループホームの火災を受けて、全国の7963施設の8259棟を調査した。

 違反が最も多かったのは、消火器や火災報知機などの設置状況を定期的に消防本部に知らせる点検報告で24・4%。カーテンやじゅうたんなど防炎物品の不備も24・3%と多かった。

 ほかに避難誘導灯の未整備が4・0%、延べ床面積300平方メートル以上の施設に義務付けられている自動火災報知機の未設置が2・9%だった。スプリンクラーが義務付けられた原則1000平方メートル以上の施設で未設置は0・2%。

 また大村市の施設では火災発生当時に9人の入所者がいたが、夜間の当直は1人で、避難誘導上での問題も指摘されている。調査では職員数が最も少ない時間帯での職員1人に対する入所者数が10人以上だったのが、11・0%に上った。』

 介護レベル以前に安全設備でこれほど問題があるとはいったいどういうことだろう.もしホテルがこのレベルだったら東横インどころの騒ぎではないだろう.グループホームの開設の認可がどこの省庁の管轄かは知らないが,認知症患者や要介護患者を病院から施設へ移そうとしている厚生労働省はこの現実を知っているのだろうか.

 まさか,縦割り行政で厚生労働省の管轄ではないから関知しないとでも言うのだろうか.こんな施設に自分の大切な家族を安心して入所させることができるだろうか.厚労省は病院の療養病床に代わる療養向きの新しい施設を整備することを提案しているようだが,それ以前に現在ある施設の基準を上げることが急務だろう.

 グループホームや老人保健施設の医療レベルは非常に低いことを痛感する毎日であるが,それ以前に施設の安全基準が守られていないなんてことは考えもしなかったことなので驚いた.厚生労働省の役人たちはいったい何を考えているのだろうか.
『 -- 帝王切開ミスで医師逮捕 胎盤癒着の経験なし --

 福島県大熊町の福島県立大野病院で2004年12月、帝王切開した女性=当時(29)=が死亡した医療ミスで、富岡署は18日、業務上過失致死と医師法違反の疑いで執刀した医師加藤克彦(かとう・かつひこ)容疑者(38)=大熊町下野上清水422ノ22=を逮捕した。

 調べでは、加藤容疑者は04年12月17日、胎盤の癒着で大量出血する可能性を知りながら、十分な検査などをせず帝王切開を執刀、癒着した胎盤を無理にはがし大量出血で福島県楢葉町の女性を死亡させた疑い。

 また女性の死体検案を警察署に届けなかった疑い。

 加藤容疑者は容疑の一部を否認、富岡署は「事故を警察に届けておらず証拠隠滅の恐れがあった」としている。病院側は「手術直後はミスという認識はなく、届けなかった」と話している。

 福島県などによると、加藤容疑者はこれまで胎盤癒着の執刀経験はなく、大野病院で産婦人科医は加藤容疑者だけで、手術にほかの産婦人科医の立ち会いもなかった。

 加藤容疑者は1996年に医師免許を取得し、04年4月から産婦人科医として大野病院に勤務。04年度に大野病院で約200例の出産を手掛けるなど中堅の産婦人科医で帝王切開はうち約40例あった。

 富岡署は病院関係者から当時の経緯などの事情を聴いている。

 福島県は昨年3月に事故を公表。加藤容疑者の判断ミスを認め、遺族に謝罪し、昨年6月に加藤容疑者を減給1カ月の懲戒処分とし、病院長を戒告処分としている。

 富岡署は県の公表で事故を知り、昨年4月に病院を家宅捜索、18日には県病院局などを捜索した。

 大野病院は総合病院で1951年に開設され、病床数は150床。産婦人科に入院している妹の見舞いに来た主婦(34)は「私の出産も加藤先生だった。評判は悪くなかったが、事故後そのまま働いているのはおかしいと思った。妹が帝王切開になったらいやだと思っていた」と話した。』

 胎盤癒着のリスクがわからずここで取り上げなかったのだが,その後も気になるので色々なブログや掲示板を見ていたら大変なことになっているようだ.

 警察は医療ミスを隠ぺいしようとしたから逮捕したというのだろうが,これが医療ミスだという根拠こそ議論されるべきで,カルテや手術記録などの証拠保全をきちんとやればそれで済むことだったのではないだろうか.

 同じ外科系の医師として自分のやっている手術でもこのような事態に陥ることは十分考えられるだけに,患者が死亡すれば即逮捕されると考えなければいけない時代になったのかと思うと暗澹たる気持ちになってしまう.

興味のある方は以下へどうぞ
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/02/post_1b76.html
『-- 24時間往診で在宅医療推進 条件厳しいと参入難しく --

 今回の診療報酬改定では、在宅医療の推進が柱の1つとなっているが、その中心的役割を果たすのが「在宅療養支援診療所」。24時間往診に応じ、自宅のほか特別養護老人ホームや有料老人ホームなどへも出向き、高齢患者の療養生活を支え、最期をみとる。

 緊急往診や在宅ターミナルケアなどの診療報酬を他の医療機関より高く設定するが、24時間往診のほか、受け持つ患者の容体が急激に悪化した時などに緊急入院を受け入れてくれる病院や介護保険のケアマネジャーと連携していることなどが条件だ。

 現在は8割が病院など医療機関で亡くなっているが、直前1カ月の1人当たり医療費は約112万円。厚生労働省は年間の終末期医療費(2002年度)を約9000億円と推計している。療養支援診療所は、高齢者が家族や身近な地域で在宅医療を選べる態勢を整え、結果的には医療費の抑制につなげる狙いがある。

 ただ今回の支援診療所の条件である病院との連携について「病院は入院日数の短縮を迫られており、いつ退院するのか見通しがつきにくい在宅療養患者の受け入れに慎重だ」と、心配する声も。

 医師や看護師らと日本在宅医療研究会を設立した多摩大統合リスクマネジメント研究所の真野俊樹教授は「条件が厳しすぎると参入が難しくなる。病院の外来を外に出した格好の門前診療所や入院用ベッドがある診療所しかできないのなら在宅医療の拡大にはつながらない」と懸念している。』

 療養型病床を削減すればその分健康保険料が削減され,医師も小児科,産婦人科,救急での医師不足も改善されると言っていたはずなのに.より効率が悪く手間のかかる在宅診療のために「在宅療養支援診療所」なんてつくれるのだろうか.現状でも病院の在宅支援部門は診療単価が低くて不採算部門であるはずである.支払いを介護保険にしたら単価が上がるということは国民の負担が増えることにほかならない.

 支援診療所の条件に病院との連携をいわれても確かに入院日数の上で足かせになりやすい在宅療養患者の入院にはかかわりたくないのが病院の本音だろう.現時点で療養型入院の診療報酬体系がどのように変わるのかも見えていないうちに在宅患者の受け入れを決定するのは病院にとってリスクが大きすぎるのである.

 仮に善意から受け入れを決めても診療報酬上でのメリットがなければ不採算となるだろう.帳尻を合わせるために終末期延命治療をやる病院が現れることも考えられる.家族にしても病院から追い出されて在宅療養にしてもいずれ介護量が増えて自宅では見られなくなる現実に直面することが今後増えることは間違いない.厚生労働省の言う医療費の抑制とは結局は国民の負担増にほかならないのである.
『 --へき地医療義務付け見送り--

 厚生労働省は7日、過疎地や救急現場の医師不足を解消するため、病院の院長や開業を目指す医師に、へき地や救急医療現場で一定期間の実務を義務付ける制度の新設を、今国会に提出する医療法改正案に盛り込むことを断念した。

 同省は、こうした制度改革を先月、社会保障審議会医療部会に示していたが、日本医師会などが「医師の職業選択の自由や居住の自由を奪いかねない」などと強く反発し、調整がつかなかった。』

『 --「議論不十分」と反対表明 療養病床再編で医師会など--

 日本医師会と全日本病院協会などの病院団体は7日、都内で記者会見し、自民党が同日了承した医療制度改革関連法案に盛り込まれた療養病床の再編、縮小方針に対し、「議論が不十分」などとして反対を表明した。

 会見で、寺岡暉(てらおか・あきら)日本医師会副会長は「(社会保障審議会などで)十分な議論がないまま、療養病床の廃止(縮小)を決めたことは誠に遺憾」と述べ、(1)これまでの議論では療養病床の廃止は前提になっていなかった(2)患者の利益を考えた包括的な議論をすべきだ-と指摘。今後は反対派の国会議員と連動し、「われわれの意見が反映されるよう運動していく」としている。

 療養病床には、常時の治療を必要としない長期の入院患者が多く入院。その縮小と患者の受け皿整備が、改革関連法案の医療費適正化の柱に据えられている。』

 厚生労働省のなんでも改革路線にはいいかげんにあきれてしまう.よく医療の現場のことを調べもせずに思いつきの改革案が通用すると思っているところが机の上だけで仕事をする官僚ゆえなのだろう.医療と言うのはもっと人間臭い仕事だということが医師でもない彼らにわかるはずもないが,もう少し医療を理解しようと努力することぐらい医師でなくともできるだろう.

 彼らこそ僻地の公立病院や療養型病床のある病院のベッドサイドで働いてみるべきだろう.そうすれば問題の本質が見えるはずだし,自分たちが何をすべきかもわかるのではないだろうか.現場のことをよくわかっていない人たちが制度を作ってきたことが健康保険制度の崩壊の原因であることにもうそろそろ気づいて欲しいものである.
『 --介護施設での医療を拡充 自民、医療改革法案了承--

 厚生労働省は7日、常時の治療を必要としない長期入院患者が多い療養病床の再編、縮小計画に関連し、こうした患者の受け皿となる老人保健施設など介護施設での医療提供を拡充する方針を、自民党厚生労働部会に示した。同部会は、この方針を付則に盛り込んだ医療制度改革関連法案を了承した。法案は、10日に閣議決定し、今国会に提出する。

 厚労省は医療制度改革で、必ずしも治療が必要ではない「社会的入院」を減らし医療費を抑制するため、療養病床(38万床)のうち、介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減する案を示したが、自民党内で「症状によっては入る施設がなくなる老人がでる」などの反対論が出て、調整が続いていた。』

 「常時の治療を必要としない長期入院」と同程度に「介護施設での医療を拡充」という言葉はおかしい.これでは施設とか病院とかいう名称の違いはあれやっていることは同じという意味にもとれる.だからこそ自民党厚生労働部会は、この方針を付則に盛り込んだ医療制度改革関連法案を了承したのかもしれないが,実際には提供される介護のレベルも医療のレベルも低下することはあっても向上することはないだろう.朝三暮四ということばがあるが,厚生労働省の官僚は自民党厚生労働部会を猿以下と見なしているのではないだろうか.

 介護施設の医療レベルは脳外科医や神経内科医などのように特種疾患療養型病棟も診ている医師が療養型病棟も診るのに比べたらまったくお話にならないレベルである.介護施設で病状が変化すればすぐに救急車で病院に転送しているのが現実であるし,神経症状の悪化でなくとも褥瘡の予防さえもできない介護施設がたくさんあるのが実態である.わざわざ病院の療養型病床から介護施設に患者さんを移して褥瘡や嚥下性肺炎で状態を悪くする必要がどこにあるのだろうか.

 医師や看護師の必要数を減らしても看護助手を増やしたりすれば介護施設に入所させるよりもより低コストで療養することは可能でそのほうが社会全体から見ればよりコストパフォーマンスが高いはずである.健康保険を使わせたくないのなら病院に居ながらにして介護保険を使えるように制度を変えればいいのであってわざわざレベルの低い介護保険施設やグループホームに入所させるのは私が家族ならお断りである.

 厚生労働省の官僚に医師コンプレックスでもあるのか,それとも介護施設業者からなんらかの見返りがあるのかも知れないが,より安全な介護と医療サービスを提供できる病院から患者をひき離す根拠がどこにあるのだろうか,自民党厚生労働部会の方にはそういったところをもっとよく考えていただきたいのであるが,厚生労働省の官僚の方がやはり一枚も二枚も上手ということなのだろうか.
『--健康志向なのに? 肥満や大量飲酒増加、国の目標遠のく--

 肥満や大量飲酒する人の割合などが、国の定めた目標値から、より遠のいていることが厚生労働省のまとめでわかった。国民の健康づくり計画「健康日本21」に掲げる70項目の達成目標値のうち、約20項目で計画をつくった時より悪化していた。健康志向が高まっていると言われる中、目標達成が難しくなっている実態が浮かび上がった。

 健康日本21は、同省が00年につくり、国民の食生活や運動量、がん患者の数などを改善しようと、70項目について「目標値」を決めた。2010年までの達成を目指している。

 同省が、各項目について計画をつくった当時の国民健康・栄養調査などの数値と、昨年5月までにわかった数値(暫定)を比べたところ、20〜60歳代の男性の肥満の割合は、計画時の24.3%から29.5%に悪化。目標値の15%以下には遠く及ばなかった。

 飲酒量では、日本酒換算で1日3合以上飲む男性の割合が、目標値は3.2%以下なのに、策定時の4.1%から5.3%に増えた。

 牛乳、乳製品などカルシウムを含む食品の摂取量(目標値・1日当たり130グラム以上)は策定時は107グラムだったが、97グラムに減った。また、朝食を食べない中高生の割合は、6.0%から8.7%に、30歳代の男性では20.5%から23.0%にそれぞれ増えていた。

 運動の目安になる1日当たりの歩数も男女とも減った。

 幼児の虫歯や食塩摂取量など目標値に近づいた項目もあったが、多くが横ばい。調査中で比較できない項目も3割以上あった。

 厚労省は今年度中をめどに計画の中間見直しを進めており、「目標値の見直しも含めて検討していきたい」としている。 』

 現状の分析から将来の予測そして対策までがきちんとできて初めて数値目標の意味があると思うのだが,厚生労働省の目標値というのは目標というより要望と言ったほうがいいのではないだろうか.予防医学という点からみれば,この結果は厚生労働省のミスと言っていいだろう.

 名義貸し問題への対応や診療報酬の削減も然りである.国家権力を背景に自分の都合を押し付けるだけの厚生労働省には合理的な問題解決能力があるとは思えない.最近はこんなことも問題になっている.

『--医療改革法案了承持ち越し 自民、療養床再編に反対論--

 自民党厚生労働部会は3日午前、入院日数の短縮や生活習慣病対策などで医療費抑制を目指す、厚生労働省の医療制度改革関連法案の了承手続きに入ったが、長期入院患者が多い療養病床の再編、縮小案に反対意見が出て、了承を同日午後以降に持ち越した。

 会合では、常時の治療を必要としていない「社会的入院」を減らすため、療養病床(38万床)のうち、介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減するとの同省の再編案に議論が集中。「現在入院している患者や家族の意向を調査せずに決めている」「老人の症状によっては、入る施設がなくなってしまう」などの反対論が続出し、意見が集約できず、午後、部会を再開し議論を続けることになった。』

 現在入院している患者や家族の意向を調査していないというのはどうだろうか.先日の,過剰な医療を減らし給付費の膨張を抑制するだけでなく、「医療の供給体制全体を国民の要望に応える形に改革する」(同省幹部)狙いというのは言葉だけだったと思われてもしょうがないだろう.なんと典型的なお役所仕事で誠意のないことだろうか.

 医療現場から言わせてもらえば,「介護型(13万床)を全廃し、医療型(25万床)を4割縮減する」という論理的な根拠がないしこれによって生じる患者の家族や国民の負担増の予測も明かされていない.要するに現状分析も将来の予測も示さずに削減論だけを出しているわけだ.

 これでは,患者が在宅や施設への移動する際の心理的,肉体的な不安,そして家族の経済的負担の増加などによる医療機関とのトラブルはすぐに起こるだろうし,将来的には団塊の世代による病床不足からの入院拒否や介護保険料の急増による国民の負担増はむしろ医療保険の増額を上回る可能性すら出てくるのではないだろうか.

 厚生労働省が財務省でもないのにお金の話ばかりするのには失望させられる.国民の健康を守り,福祉を充実させるという視点からの現状分析と将来の予測というものを国民に示して施策の合理的な根拠を示す義務はないのだろうか.それを示してもらえるなら医師として納得できるのであるが.

 どうも厚生労働省の論理は「お金がないから払えない.もっと医療費を安くしろ.」と言っているだけにみえる.こんな見かけの数字合わせをしたら現実はうまくいくはずはないのである.そんなことは当然わかっているはずで,やはりわかっていながらうまく偽装して責任逃れするつもりなのだろう.こうして問題はまた先送りとなり,医療現場でこちらが苦労させられるわけである.
『ペースメーカーに悪影響 CT検査のエックス線

 重い心臓病患者が装着する植え込み型のペースメーカーに、コンピューター断層撮影(CT)検査のエックス線が当たると心拍のリズムが遅くなるケースがあることが分かり、厚生労働省は26日発行の「医薬品・医療機器等安全性情報」に記載して注意喚起した。

 また、心臓の異常を感知して電気ショックを与えて心拍を戻す「植え込み型除細動器」では、同様の不具合に加えて、心臓に問題がないのに誤って電気ショックを与える恐れがあるとして、除細動器にCT検査のエックス線を当てないよう求めた。

 実験では、国内で製造販売が認められているすべてのペースメーカーで同様の不具合が起こることが判明。厚労省は「本体に5秒以上照射しない」などの内容を添付文書に記載するよう指示し、医療機関にも同様の注意を求めた。

 診療上やむを得ずCT検査をする場合は、ペースメーカーにエックス線が当たらないようにするか、それも無理なときは一定の心拍を続けるように設定した上で、脈拍を監視するよう指示した。』

 昨年の5月28日に書いたが,やはりすべてのペースメーカーで問題が起きるようである.ペースメーカー使用の方は循環器内科のある病院で胸部のCT検査を受けていただくしかないであろう.それにしてもこんなことの検証に1年近くもかかるとはどういうことだろうか.

『 --アクセス殺到、HPパンク 医薬品の副作用公表--

 医薬品による副作用の全例公表を31日に始めた独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページ(HP)に、同日午後からアクセスが殺到し、つながりにくい状態になった。

 機構は「アクセスが1日平均の約63万件(2004年度)を大きく上回った。予想外だった」としており、市民の副作用への関心の高さと、機構の認識の甘さを示した格好。

 医薬品の使用上の注意などの情報提供にも影響が出かねないため、機構は早急に対策を取るとしている。

 機構は医薬品の承認審査や副作用による健康被害救済、安全対策業務に当たっており、HPは医療関係者らに利用されることが多い。パンク状態になったのは機構が発足した04年4月以降、初めてという。』

 おそらくは自分が病院からもらっている薬のことを心配してのことなのかも知れない.自分の薬に関心を持つことは非常に結構なことである.「病院からもらった薬がわかる本」なんていうのが売れた時代もあったが,最近はネットで調べられるから便利になったものだ.だが,それにしては外来に他の病院でもらっている薬のリストを持ってくる人はまだまだ少ない.

 病院にかかるときには健康保険証だけでなく他の病院からの診療情報提供書というものを持っていけばお互いに余計な手間が省けるものである.薬の副作用には単独で起きるもののほかに他の薬剤との相互作用で起こるものもあるのである.自分の体を守りたかったら是非そういった情報を持参することをお勧めする.
『 --介護疲れで妻殺害、猶予判決受けた夫が自殺 名古屋--

 自宅で介護していた認知症の妻を絞殺したとして、殺人罪で25日に執行猶予付きの有罪判決を受けた、名古屋市千種区北千種2丁目、無職梶恒夫元被告(68)が29日に飛び降り自殺していたことが分かった。

 愛知県警千種署によると、梶元被告は29日午後7時55分ごろ、市営住宅5階の自宅前の通路から飛び降りたとみられる。自宅には、親類にあて「ごめんなさい」とだけ書かれたメモが残されていたという。

 梶元被告は、03年にアルツハイマー病を発症した妻の介護を1人で続けてきた。しかし昨年7月、症状が悪化し、夜中に苦しむ妻(当時74)の様子を見て不憫(ふびん)に思い、ネクタイで首を絞めて殺害し、警察に自首した。

 近くの住民らは、裁判で情状酌量を求めるために嘆願書を提出。名古屋地裁は、「心情には酌むべきものがある」として、懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡していた。 』

 在宅での介護の苦労は一般の人が想像するよりはるかに大変なものである.介護保険制度にはじまり,今年の療養型病床のさらなる削減へと厚労省は病院から慢性期の入院患者を引き離すのに躍起になっている.

 しかし,介護保険施設への入所は経済的な負担があるし在宅療養では家族の肉体的な負担も大きい.そんな中で最近は介護者が介護疲れからこれを放棄してしまい殺人や心中という悲惨な結末となるケースがニュースで取り上げられるのが目立つようになってきたような気がする.

 痴呆で徘徊したり暴言を吐いたりする老人に一人で対応するのも,寝たきりで全介助を要する家族を一人で世話することも不可能な話である.寝たきりと言っても喀痰を吸引したり,蓐瘡(じょくそう)予防のために時間ごとに体の向きを変えたり,食事,排泄,着替えなどやることはいくらでもあるのである.ヘルパーや入浴サービスがあってもつかの間の休息にしかならない.

 核家族化と少子化のわが国では夫婦と子供一人の家族で在宅介護なんて到底出来るはずがない.大家族制の残る田舎を引き合いに出すのは時代錯誤的でさえある.このニュースのように68歳の夫が74歳の妻を介護するなんてまったくひどい話である.この夫はいったい何のために人生最後の時を費やしたのであろうか.最初はできると思っても毎日続けば無理なものはやはり無理なのである.離婚して妻を生活保護にして施設入所させればよいとでも言うのだろうか.

 健康保険が破綻するとして厚労省は経済的にも社会的にも最も効率的に行われてきた社会的入院から慢性期の患者を退院させようとしている.だが問題は解決するどころか経済的な国民の負担とともに,もっと深刻な社会問題を増やす方向に進んでいるように見えるのだがこれからどうなるのだろうか.在宅介護が無念の死で終わるような日本に誰がしたのであろうか.

追加記事

『--介護施設への転換など課題 療養病床再編で受け皿に--

 常時の治療を必要としない人が数多く長期入院している療養病床の再編、縮小と患者の受け皿づくりが、来年度から始まる医療制度改革の大きな課題になっている。再編は医療費適正化の鍵となる入院日数の短縮に不可欠だが、療養病床の受け皿となる介護施設への転換方法などをめぐり、病院経営者らは懸念を表明している。

 政府、与党は昨年12月に決定した医療制度改革大綱で、平均入院日数の短縮を生活習慣病対策と並ぶ中・長期対策の柱に据えた。厚生労働省は改革による医療給付費の抑制効果を2025年度で計8兆円と見込むが、このうち入院日数の短縮は3兆8000億円とほぼ半分を占める。

 療養病床の再編は、こうした基本方針の具体策となる。医療保険が適用される医療型約25万床、介護保険が適用される介護型約13万床を来年度から順次縮小し、将来は「医療の必要度の高い患者を対象とする施設」に衣替え。介護型は12年度に保険適用を廃止する。

 医療の必要度が低い人で、家庭の事情などにより自宅へ戻れない人には、不要になる療養病床からの転換で増える、老人保健施設やケアハウスなどの居住系施設への移動を促す。同省は施設転換費用の助成などを行う。

 これに伴い、医師や看護師も、医師が不足している救急、産科、小児科、終末期を含む往診・訪問看護へ振り向ける余地が生じる。同省は医療保険から医療機関や調剤薬局に支払われる診療報酬の配分を、こうした分野に手厚くすることなどで後押しする。

 過剰な医療を減らし給付費の膨張を抑制するだけでなく、「医療の供給体制全体を国民の要望に応える形に改革する」(同省幹部)狙い。

 これに対し、与党の一部から「入院患者の仕分けがうまくできるのか」、病院団体から「介護保険法の改正が必要なので十分な審議を」「療養病床と建築基準が違う介護施設などに転換するには、土地の手当てや多額の改築費用が必要」などの疑問や指摘が出ている。

 ただ改革の方向性への異論は少なく、「やらなければならない課題」(自民党の厚労族幹部)とされる。今国会への関連法案提出に向け、同省がより具体的な施設転換の手順や方法を提示し、早急に関係者の理解を得る必要がありそうだ。』

 少なくとも医師不足解消の話は嘘でしょう.これは療養病床の必要医師数を減少させれば済むことです.そうすれば人件費が減るので入院費も下げられます.改革の方向性への異論が少ないのは小泉首相が恐いのだろうか.療養病床からの転換で増える、老人保健施設やケアハウスなどの居住系施設ということはまた建築需要が出るので景気対策という意味もあるのだろうか.こんなことで「医療の供給体制全体を国民の要望に応える形に改革する」といえるのだろうか.私には理解できないことだらけ.
『 --「妻子の誕生日は休もう」 働き過ぎ、子育て対策に、労働時間改善法で厚労省--

 単身赴任者は妻子の誕生日には休みを―。厚生労働省が近くまとめる労働時間設定改善法の指針案で、会社が家族の記念日に休みを付与することを提案する。ほかにも2週間程度の長期連続休暇や出産時に父親の休暇制度の整備も推奨しており「休もう運動」の指針となっている。
 背景には長時間労働や、近年増加する過労死、メンタルヘルス(心の健康)問題がある。同時に少子化対策や介護問題で、働き過ぎのサラリーマンを家庭や地域社会に戻すことも目的としている。
 昨年、労働者の年間総労働時間を1800時間にすることを目指した時限法の時短促進法を改正し、労働時間設定改善法を制定。今年4月からの施行に合わせ、具体例を記載した指針作りを始めた。
 改善法では会社と組合が委員会を設置し、それぞれの会社にあった休日取得を促進するよう求めている。日本経団連など経営者団体や連合も協力を約束しており、休日増を望むサラリーマンの期待が高まりそうだ。』

『--週40時間労働制限、高収入社員は撤廃 労基法改正検討--

 労働時間制度の見直しを議論している厚生労働省の研究会(座長・諏訪康雄法政大学教授)は25日、これまでの管理職に加え、一定以上の収入や権限のある労働者を、1日8時間・週40時間の労働時間規制から外す新制度の導入を盛り込んだ報告をまとめた。これを受け、同省は労使代表も含めた審議会の議論を経て、07年にも労働基準法の改正を目指す。成果主義などで自律的に働く人が、出退勤時間などに縛られず働けるようにする狙いだが、長時間労働や過労死の増加を懸念する声もあり、議論を呼びそうだ。

 対象者は、業務量を自分で決められる「管理職手前の中堅社員」や「プロジェクトチームのリーダー」ら。報告では、(1)仕事の進め方で指示を受けず業務量をコントロールでき、成果で賃金が決まる(2)一定水準以上の年収があり、本人が同意している(3)過労を防ぐ健康確保措置がある(4)導入は労使協議で合意する――の4点を条件とするよう求めている。具体的な金額は各企業の労使で決める。企業側は、残業代などの割増賃金を支払う必要がなくなる。

 労働時間規制を巡ってはこれまで、人事や労務管理に決定権がある企業の部長ら「管理監督者」や、研究開発や企画立案などの業務で、実際の労働時間にかかわらず一定時間働いたとみなす「裁量労働制」の人は、対象外だった。企業側から対象の拡大を求める声があった一方、労働者側からは権限がない人にまで適用され、過労死や不払い残業につながるとの指摘があった。報告では、対象者の要件を明確にし、既存の制度と整理・再編することを提案している。

 また報告では、04年度で取得率が46.6%と低迷する年次有給休暇について、現行のように労働者に任せるのではなく、企業側に具体的な取得日の決定を義務づけさせ、確実に消化させることも盛り込んだ。

 研究会の報告を受けて連合は25日、「過労死・過労自殺が社会問題となっている中で、適用除外の拡大は長時間労働を助長することになる。導入は大きな問題だ」とする談話を発表した。 』

 これらの記事の対象となる労働者の違いはなんだろうか.自分がどちらの労働者に該当するかすぐに自分でわかる人はそれでいいのだが,たとえば勤務医ならどちらに該当するのだろうか.

 特に医師については何も書かれていないが,医師不足を理由に「2)一定水準以上の年収があり、本人が同意している」にされたのではたまったものではない.仕方がないからやっているのであって誰も望んで時間外まで無料奉仕しているわけはないだろう.当直の回数でさえ制限されているという話も聞いたことがない.ましてや患者を断る権利もない.就労時間の制限が撤廃され勤務医に流用されることのないよう祈るのみである.

 働き過ぎのサラリーマンである勤務医の年間総労働時間を1800時間にするのなら大賛成だ.ただ「妻子の誕生日は休もう」というのはちょっと安易ではないだろうか.共働き夫婦だったら妻も休みをもらえないと意味がない.ここはやはり「夫婦の誕生日は公休」というようにしてもらったほうがいいだろう.夫婦だけの時間がもらえれば多少は少子化対策になるかもしれない.

 
『--すべての保険が負担抑制 診療報酬マイナス改定で--

 厚生労働省は25日、2006年度の医療制度改革が、健康保険組合(健保組合)など各公的医療保険制度の財政に与える影響の試算を自民党厚生労働部会に示した。

 08年度の医療給付を賄うのに必要な保険料は、現行制度のままで推移した場合に比べ、すべての保険制度で抑制され、国、都道府県、市町村の負担も抑制されるとしている。

 昨年10月に厚労省が示した改革試案の段階では、大企業のサラリーマンが加入する健保組合が08年度に必要とする保険料は、現行制度のまま推移する場合よりも2200億円の上乗せだったが、その後、06年度の診療報酬を全体で3・16%のマイナス改定とすることが決まり、給付の抑制、保険財政の改善につながった。 医療保険全体の保険料は現行制度のままに比べ、改革試案では2000億円の抑制にとどまっていたが、今回の試算では抑制幅は8300億円に拡大する見通し。内訳は、健保組合が600億円、政府管掌健康保険(政管健保)が3500億円、国民健康保険(市町村国保)が2500億円など。

 さらに、国保などに支出している都道府県の負担は現行制度に比べ200億円の上乗せだったが、500億円の抑制に転じる。国庫と市町村の抑制幅も、それぞれ2200億円から5700億円、200億円から600億円に広がる見通しだ。』

 1月21日に書いたとおり保険料ベースで医療費の抑制は8300億円だそうだ.まあ,実際にはおそらく6000億円程度しか抑制されないとは思う.小泉首相が日本橋の上の空を広くしたら消えてしまう程度.つまりコストで診療が抑圧されストレスをためた医師たちが日本橋の景観を寄付したと思えばいいってことなんでしょうか.

 なるようになるってことだろう.それでも医師になりたい人はたくさんいるんだから,まだまだ人件費が下がっても誰も困らないって思っているんでしょうね.そう,これからは優秀な人は医師になんかならないんだから.医療費なりに医療レベルが下がってバランスがとれるんでしょうか.財政が破綻しそうだから医師も痛みを分け合ってといったのも首相でしたでしょうか.

 それが日本橋の景観で消えてしまう程度のものだなんて,なんだか我慢するのがばからしいと思うのは私だけでしょうか.そういえば工学部の人気がなくなり,医学部志望は増えているそうな.まあ,確実に就職はできるでしょうが,労働環境は最悪ですから.最近は医学部より獣医学部の方が偏差値が高いそうだから,将来いい医療を受けられるのはペットかもしれませんね.ペットの平均寿命が世界一になるころには医者を辞めて獣医をめざすのがはやるかも.
『--舞鶴市民病院、民間委託へ 内科医集団辞職の影響で--

 京都府舞鶴市は15日までに、内科医が集団辞職し混乱が続いていた市立舞鶴市民病院(田中明(たなか・あきら)院長)の運営を、京都市下京区の医療法人社団「恵心会」に委託することを決めた。

 集団辞職の影響などで累積赤字は約30億円に膨らみ、舞鶴市は「医師の確保が難しく、病院経営は困難」と判断したという。

 委託開始は4月ごろの予定で、一部の診療科をほかの病院に移管、廃止するなどし、リハビリ医療などを中心とした療養型病院に機能を縮小する。

 同病院では、運営や人事をめぐる対立から2003年9月から04年3月末にかけ、常勤の内科医14人のうち13人が辞職。市は内科医の補充のため関西地方の医大などに医師の派遣を要請してきたが見通しがつかず、05年5月に内科の入院病棟を休止した。

 同病院は1947年11月開設。病床数は198で、内科、外科など19診療科と8つの専門外来がある。』

 昨日書いたばかりのことがもうすでに現実となっているようだ.やはり原因は赤字そして医師の確保ができないということらしい.今後は国公立病院から僻地の診療所への出張をさせる権限が知事に与えられるそうだから,そんなことに院長が同意すれば嫌気がさして辞める医師は増えることはあっても減ることはないだろう.

 地方の医療は一部の採算のとれる医療機関に託されることになる.診療報酬の改定と医師不足で自治体病院の行く末は悲観的である.きっと全国で自治体病院の委託や売却が進むことだろう.
『--自治体病院、自力で黒字はわずか8% 政投銀調査--

 全国の自治体病院のうち、補助金などに頼らず実質的な営業黒字を確保しているのは、全体の8%程度しかないことが、日本政策投資銀行の分析でわかった。補助金を含めて経常黒字を確保している病院は4割近くまで増えるが、累積赤字は増加傾向だ。自治体病院は「へき地医療など民間ではできない分野を担っている」(総務省)だけに、経営の効率化が求められそうだ。

 政策投資銀が03年度に1000あった自治体病院について、地方公営企業決算をもとに分析したところ、実質的に営業黒字なのは82病院しかなかった。大半が診療報酬など本業の収入では、必要経費をまかなえない状況だ。

 03年度の地方公営企業決算によると、自治体や国からの補助金で経常黒字の病院は389と4割近くまで増えるが、6割はなお赤字。病院事業全体の経常赤字額は合計で1400億円近くに達する。補助金に当たる病院事業会計への他会計からの繰入金は、全体で5451億円だった。

 政投銀は、自治体ごとの一般財源の規模を表す「標準財政規模」に対する繰入金の比率も分析した。平均では3.4%になり、高い自治体では15%に達するところもあった。公共事業や福祉など全体の行政活動に必要な財源のうち、病院事業支援のためだけに15%を割いていることになり、財政負担が大きいことを示している。

 診療報酬の引き下げや地方財政改革による補助金の削減が進めば、「自治体病院の経営はさらに厳しさを増す」(政策投資銀政策企画部)と見ている。 』

 「自治体病院は「へき地医療など民間ではできない分野を担っている」(総務省)だけに、経営の効率化が求められそうだ。」という記事にひっかかってしまった.僻地での救急医療などは本来コスト面からはやらないほうがいいはずだし,僻地からの医師の引き上げが相次ぐ中で総合病院の看板を自治体病院が上げることすら不可能になりつつあるのが現実だ.

 以前お世話になった自治体病院の副院長は「医師がいなくて大変です.」と年賀状に書いてあったし,看護部長たちからも「病院はいつも大変な状態です.」とあった.以前,私のところで働いていた看護師長も有能な部下と共に個人病院へ転職するとメールが来ていた.

 自治体本体が今や病院の赤字とともに沈んでいくかもしれない状態である.効率化といっても診療報酬の引き下げや地方財政改革による補助金の削減で自治体病院の収益は今後下がる一方であろう.人件費の節約で経営の効率化をはかるにも限度があるだろうし,その限度に達する前に医師も看護師も確保できなくなることは見えている.

 医療に限らず福祉に関して言えば,僻地に住んでいること自体が悪いこととされているかのようだ.その一方で地方で高収益を上げ続ける開業医もたくさんいる.これが現実だから自治体病院の勤務医はますます地域医療に貢献しているという誇りとともに勤労意欲を失って開業に走ることになるのだろうか.

 本来は僻地医療などは奉仕活動みたいなものなのだからそこに効率化などということを言い出せば成立しなくなるのではないかと疑問に感じるのは私だけだろうか.
『--手術ミスで70代患者死亡 鳥取大病院--

 鳥取大病院(鳥取県米子市)は26日、人工呼吸器をつける際の気管切開ミスによる出血で米子市の70代男性患者が死亡したと発表した。

 男性は16日、同大病院に意識不明の状態で救急搬送され、小脳出血のため手術を受けた。男性の意識は戻らず、21日、気管を切開し人工呼吸器を取り付けたが、約1時間後に口や気管に挿入したチューブ内に出血が見つかった。再び切開したが出血場所が見つからず、男性は間もなく死亡した。

 届けを受けた米子署が司法解剖した結果、死因は気管に血がたまったことによる窒息死だった。のどの横の静脈が2カ所切れており、詳しい原因を調べている。

 石部裕一(いしべ・ゆういち)病院長は「患者に申し訳ない。調査委員会を開き防止策を検討したい」としている。』

 大学病院が自らミスと言っているのだったら手術ミスということでいいのだろうが,死因が血液による窒息であったのだとしたら私にはちょっと疑問が残る.

 気管切開による手術ミスで私の記憶にある最も悲惨なものは小樽市の病院であった頚動脈を切断したというものである.さすがに頚動脈切断ではそれ自体手術ミスといえるのだろう.しかし,のどの横の静脈が2カ所切れて出血してもそれが気管内に流れこまなければ窒息はしないはずである.気管カニューレにはカフが付いているので,正常に機能していればたとえ出血があっても気管内には流入しないはずである.

 再び切開したとあるが,出血点を探す前に経口挿管してまず気道が確保できていれば気管内に流入した血液も吸引できて窒息は回避できた可能性はある.とは言えこれを一人で落ち着いてできる医師はベテランで研修医レベルでは困難であろう.

 気管切開術やその後の処置をした医師に関する情報はないが,小脳出血のため手術を受けたとあるのでおそらくは脳外科医またはその指導で研修医が行ったのであろう.血だらけになり焦りながら出血点を夢中で探しているうちに呼吸停止そして心停止となったであろう現場を想像すると冷や汗が出る思いだ.

 患者さんは小脳出血のため意識不明であり,おそらくは救命のために手術を受けたのであろうからこんなことで亡くなったのではなんのために救命したのかわからない.かといって気管切開をしなければおそらく長期の生存は不可能であったのだろう.亡くなった患者さんや家族もお気の毒だが,患者を失ってしまった医師の精神的なダメージは計り知れないものがあるはずである.

 きっとまた業務上過失致死で刑事告訴されるのだろう.診療報酬引き下げや給与がまた下がるなんて話はこれに比べればどうでもいい話である.でも人のために働いてもミスしたら刑事処分されるというのだけは勘弁してもらえないものなのだろうか.リピーターは困るがなんとか立ち直って脳外科医として頑張って欲しいような気がするのは私だけだろうか.
『--「手術の事前説明不足」 遺族が済生会に賠償請求--

 山口市の済生会山口総合病院で心臓手術を受け死亡した山口県萩市の男性=当時(62)=の遺族が、病院側が事前に手術の危険性を十分に説明しなかったとして、20日までに病院を経営する恩賜財団済生会(東京)に約5570万円の損害賠償を求める訴訟を山口地裁に起こした。

 訴状によると、男性は今年2月、胸の痛みなどを訴えて入院。病院から「手術の危険性(死亡率)は3-5%」などと説明を受け、3月に大動脈弁を人工弁にする手術を受けたが、手術中の出血が原因で重症心不全となり、翌日死亡した。

 遺族側は「危険で困難な手術になるという説明を事前に受けていれば、手術は見合わせた」と主張。同病院は「弁護士と相談して対応を考えたい」としている。』

 例によってこの記事の内容がどの程度まで事実を反映しているのかはわからないが,手術の危険性(死亡率)が3−5%と説明を受けていてながら遺族側が「危険で困難な手術になるという説明を事前に受けていれば、手術は見合わせた」と主張したのが事実ならば術前の説明はほとんど無意味だろう.遺族にとっては結果がすべてということなのだろうから.

 この判決がどのようになるのか非常に興味があるところだが,一般的に死亡率が3−5%というのが危険で困難な手術かどうかは意見が分かれるところであろう.私としては十分危険で困難であると考えられるのだが,一般の人の感覚としてはどうなのであろうか.飛行機に百回乗ったら3−5回は墜落しますよと言われたら乗る人はいるのだろうか.

 さらに考えてもらいたいのは飛行機なら乗らなければ墜落しないが,病気では治療しないことによるリスクもあるということだ.治療するリスクとしない場合のリスクを比較するのでなければ病気の場合は意味がない.結果が悪くなる可能性があるのだったら治療しないというのもひとつの選択肢かもしれないが,それにしても最終的な選択は本人の問題であって遺族が決めるべきことでもない.

 本人が治療の結果死亡したことに対する結果責任で遺族が損害賠償を病院に求めるというのが当たり前になるのであれば,病院は賠償責任保険を増額しなければならないが,その余分な経費はどこから捻出できるであろうか.少なくとも診療報酬にはそんなものは含まれてはいない.大動脈弁の置換術など技術料は100万円にも満たないのだ.

 100例やって1億円の技術料が入っても3例死亡して訴訟で3X5000万円=1億5000万円払ったら5000万円の赤字である.こんな手術はやめたほうがいいということにならないだろうか.死亡したら「危険で困難な手術になるという説明を事前に受けていれば、手術は見合わせた」というなら死亡率が0%でない手術はすべて危険で困難と説明しなければいけないということになる.これでは手術で助かる95−97%の患者を手術から遠ざけることにはならないだろうか.

 私は死亡も含めすべての合併症の発生率の合計が5%以下なら十分手術を受ける価値があると思っているし,死亡率だけなら2%以下ならまあ安全と言えるのではないだろうか.そもそも死亡や寝たきりになった場合のことを考えるなら本人が死亡・高度傷害の場合の保険に加入しておくべきであろう.病院が損害賠償するにしても(手術による死亡率-治療しない場合の死亡率)×技術料くらいが採算性から言って妥当だと思うのだがどうだろうか.
『--自分に麻酔剤注射し死亡 福井大病院の女性医師--

 福井大病院(福井県松岡町)の医師当直室で、麻酔科の女性医師(29)が腕に注射針を刺した状態で死亡していたことが14日、分かった。

 福井県警や同病院によると、死亡推定時刻は5日午後11時ごろで、6日朝に出勤してきた男性医師が発見した。遺体脇には手術用麻酔剤「プロポフォール」の容器と注射器が落ちていた。同病院では、疲れなどを紛らわすために麻酔剤を使い、量を誤って死亡したとみている。

 女性医師は同僚や両親に「個人的な悩みがある」などと打ち明け、不眠に悩んでいた様子もあったという。自宅からは空になった麻酔剤の容器8本が見つかった。

 この女性医師は勤務先の神奈川県こども医療センター(横浜市南区)で今年春、向精神薬を無断で自分に注射したとして、8月に戒告処分を受けて同医療センターを辞め、9月16日付で福井大病院に採用されていた。

 福井大病院の上田孝典(うえだ・たかのり)院長は「福井医科大(現福井大)出身の医師で、反省していると思って採用した。麻酔剤の管理は適切だったと思うが残念だ」と話した。』

 このニュースを単に麻酔科医の薬物乱用事件としたり妙齢の女医だから好奇心で見た人も多いのではないだろうか.今年春の向精神薬を無断で自分に注射した件もニュースになったような気もするが麻酔科医の薬物乱用は昔からあることなのであまり気にも留めなかったのではっきりした記憶がない.

 だが,麻酔科医は鎮静剤や麻酔薬が手に入りやすく使用法も心得ているから心に問題があるとこういう落とし穴にはまってしまいニュースになりやすいと考えられはしないだろうか.いい医者でいるためにはストレスの自己コントロールは重要であると思うが,それが自分でできないような状況になったらどうすればいいのだろうか.

 今でも臨床では徒弟制度のような上下関係が医師の間に残っているところが多いと思うが,上司との関係がよければ部下が上司に相談する昔ながらのことも可能であろう.だが,最近の医師の人間関係はそうあるのは難しいと思う.大学からの派遣によるにせよ自分で就職するにせよ医師の流動性が高まった結果,昔のような家庭的な人間関係は形成しにくくなったと思われる.

 その一方で,病院の経営上の問題から医療事故そして患者や家族との関係において仕事のストレスは増える一方であるから,ストレスを溜め込んでしまうような医師は一人で悩むことになるであろう.それがまた仕事の集中力をなくすという悪循環におちいる可能性もある.これは本人のみならず患者にとっても危険なことではないだろうか.

 上司にしても責任の増大と人手不足によるストレスがあっても誰にも相談できない孤独な状態にある場合が多いであろう.特に自分のこれからのことを考えて明るい気持ちになる医師はほとんどいないのではないだろうか.

 もちろん医師がすべてそういう状態にあると言うつもりはないが,医師には病院にかかる暇もないことが多いから自分の病院にちょっと話や悩みを聞いてくれるセラピストがいてくれればどんなに救われることだろうか.私は,このような人がいてくれる病院は聞いたことがないが,医療事故や患者や家族との無用なトラブルを避けるためにもこれからは必要だと思うのだがどうだろうか.できれば病院機能評価の中にも入れてもらえれば最も望ましいのだが..
『実は、「足のしびれ」や「力がはいらない」などの症状は、脳梗塞の前触れである、かくれ脳梗塞の典型的な症状なのです。「かくれ脳梗塞」とは、脳の血管全てが塞がってしまうわけではなく、一部分だけが塞がっていて血流が少なくなっている状態、あるいは、一度血管を塞いだ血栓が、血圧などの影響により、移動した状態のことを指します。』

『・朝起きたとき、手足がシビレて感覚が鈍くなっている。
 ・めまいがして天井がぐるぐる回る。
 ・ろれつが回らなかったり、
 ・食事中に箸を落としたりする・・・・。
こんな症状が見られると、「無症候性脳梗塞」の可能性がある。
脳梗塞の初期段階で、隠れ脳梗塞の正式名称だ。』

『専門語でいうと一過性脳虚血発作(TIA)のことです。脳梗塞といえば脳の血管がつまってその血管で栄養を送られている脳細胞が壊れてしまうことによって手足の麻痺、言語障害などが起こる病気です。では、「かくれ脳梗塞」はどんな状態かというと、脳の血管全てが塞がってしまうわけではなく一部分だけが塞がっていて、血流が少なくなっている状態、あるいは、一度血管を塞いだ血栓が血圧などの影響により移動した状態のことをいいます。 』

『隠れ脳梗塞は小さな梗塞が徐々に増え本当に脳梗塞になる一歩手前の状態だ。確実な発見法は脳ドックでの検査。自覚症状が無くても、MRI検査で脳の血管に直径2〜3mmの地位SAS名梗塞が数ヶ所見つかる場合もあるという。早い段階で見つかれば薬物治療も効果を増す。塩酸チクロピジンなど抗血小板薬の服用や運動療法などを適切に組み合わせれば約85%は再発を防げ、重い脳梗塞に進行する可能性も小さい。』

 外来に来る患者さんたちがテレビでやっていたという「かくれ脳梗塞」についてGoogleで調べてみた.読んでみても脳梗塞の病態が混同されていて本当はどの病態のことをさすのか理解できなかった.こんな話をテレビで聞いていったい何をわかったつもりになっているのだろうか.

 いろいろ読んでみると「かくれ脳梗塞」というのは脳梗塞にはなっていないが将来において脳梗塞になる可能性のある状態の総称のようであると思われる.だから無症候性脳梗塞や一過性脳虚血発作や心原性塞栓症といった病態が説明の中にとりあげられているのだろう.そういう意味ではどの説明も部分的に正しいともいえるがすべて不十分であるともいえるのではないだろうか.

 患者さんたちはこれら説明のうち自分に該当するものだけを勝手に「かくれ脳梗塞」の症状だと思って外来にやってくるのであろう.かくして外来には「頭が心配で」やってくる患者さんが後を絶たない.まあ,ほとんどの人はまったく異常がないかびまん性白質病変なわけで,無症候性梗塞やラクナ梗塞の患者というものはそれほど見つかるものではない.

 これが脳ドックとしての受診なら自費なので問題ないが,「かくれ脳梗塞」のまえぶれ症状で受診されると健康保険をつかわれることになるのである.病院勤務の私としてはいずれも大事なお客様であるが,時間と医療資源の無駄使いをしているような気がしないでもない.健康な老人の不安を煽る健康番組の真意は健康保険の破綻であろうか,それとも外来を忙しくして医者を困らせることなのであろうか.

 診療報酬が引き下げられるということは診療単価が下がるということだが,こんな「かくれ脳梗塞」の患者様のお相手をして外来の薄利多売をやらなければ病院が潰れるというのなら皆保険制度などいらないと思うのは私だけだろうか.皆保険制度を維持するつもりなら「かくれ脳梗塞」のお客様は是非「脳ドック」で受診されることをおすすめしたい.

 誤解のないように書いておきますが,上の引用文の内容は不正確ですので信用なさらないように.ちなみに「無症候性脳梗塞患者では高血圧の管理が推奨される(グレードB)」ですから研修医の方々はパナルジン投与などしないように..(老婆心?)
『--「天下り幹部が問題発言」 骨髄移植財団で労組結成--

 骨髄バンクを運営する骨髄移植推進財団(東京)の職員2人が2日、記者会見し「厚生労働省からの天下り幹部が、部下の人格を否定するような発言を続けている。退職者が相次ぎ、移植あっせん業務に支障が出かねない」として、職場環境の改善を求めて労働組合を結成したと発表した。

 労組の遠藤允(えんどう・とおる)委員長は同日、正岡徹(まさおか・とおる)理事長に業務運営について労使協議の場を設置するよう申し入れた。正岡理事長は「外部調査委員会を設けて(幹部の言動を)調べる」とし、幹部は「ノーコメント」としている。

 労組側は「雇用をたてに職員を不安に陥れる行為が行われている」と指摘。労組には財団の中央事務局(39人)のほぼ半数が加入、地方の地区事務局(27人)にも呼び掛けるという。

 労組によると、幹部は厚労省を退職後、民間企業を経て昨年8月に就任した。部下に「国立大の経済、商学部(卒業)でないと駄目だ」など学歴差別とも取れる発言を繰り返したり、月給制の契約社員として採用した職員を一方的に時給待遇の臨時職員にしたりした。

 幹部就任後に、職員の約4割に当たる26人が退職。提供者(ドナー)から白血病などの患者へ骨髄移植をあっせんする部門では、経験1年未満の職員が約半数に上るという。

 同財団は1991年12月設立。10月末までに移植は約6900件行われ、ドナー登録者は約29万人に上る。』

 天下り先で自分の学歴コンプレックスのうっぷんでも晴らしたかったのであろうか.その天下り幹部の学歴がどの程度のものか興味があるが,どんなにいい大学を出ていたとしても母校の恥以外の何者でもないであろう.雇用をたてに自分より立場の弱い職員を不安に陥れるとはなんとも下品な弱いものいじめをしたものだ.

 こんなことがニュースになると骨髄バンクひいては骨髄移植へのイメージ低下につながることはまちがいない.天下りさせることにどういうメリットがあるのかわからないが,天下りをさせる企業にはどうも官庁と裏取引をしているようでいいイメージはない.公務で得たメリットを自分の再就職に利用するような人間に学歴なんか意味はないだろう.

 マスコミの医師たたきも高学歴,高収入というイメージへのコンプレックスなのかも知れないが,現在でもマスコミに比べれば高収入ではないし,将来は優秀な人間は医師にはならないだろうからいずれマスコミ並に高学歴でもなくなることだろう.今後は安全・格安な医療が求められているようだからきっとそれでいいのだろう.どこかの役人が言ってくれたが,いっそのこと医師はすべて国家公務員にしてくれたら仕事も楽になり天下りもできていいかもしれない.

 
『--HPで医師資格照会可能に 行政処分も確認、厚労省--

 厚生労働省の検討会は1日、医師、歯科医師の国家資格について、名前だけで厚労省のホームページから照会できるようにすることを決めた。2007年4月から実施される予定。

 同時に、刑事責任を問われるなどした医師が現在、行政処分を受けているかどうかも確認可能になる。ただ、個人情報保護の観点から、処分期間が満了した後は削除されるため、過去に免許取り消しや医業停止の処分を受けていても知ることができない。

 医師・歯科医師資格の照会はこれまで氏名、生年月日、登録番号の3つの情報がそろった場合だけ登録の有無を厚労省が回答していた。しかし、国民が登録番号を知ることは難しく実効性がないとの批判があった。

 さらに、厚労省は本年度から医師・歯科医師国家試験の合格者名を非公表にすることを決定。合格者名簿の代わりに、医師が〓本物〓かどうかを確認する手段が必要となっていた。

 データベースには医師約27万人、歯科医師約9万人の氏名、性別、登録年月日を全員入力。氏名表記を漢字にするか仮名にするかは決まっていないという。

 また検討会は同日、調査に強制力がある医療版の「事故調査委員会」の新設や、処分医師の再教育義務付けなどを盛り込んだ報告書案をまとめた。これを受け厚労省は、来年の通常国会に医師法改正案を提出する。』

 医師資格照会と言っているがこの真の目的は行政処分を受けているかどうかを確認させることだろう.本音を言えば過去の処分歴を知りたいところなのだろうがそれはやはりできないということなのだろう.

 こういう制度をつくるなら医師や歯科医師だけではなくて裁判官や警察官そして国会議員まですべてつくった方がいいだろう.過去かかわった事件などがわかると最高裁判事の信任投票もより意味のあるものになるだろう.ついでに国家公務員の資格や処分についても公開したほうがいいだろう.税金の無駄使いをしても責任をとる必要のない公務員には特にあったほうがいい制度ではなかろうか.まあ,それも過去の処分歴でなければ価値は少ないだろうが...

 医師に話をもどすが,氏名,性別と登録年月日がわかるとだれでも簡単に医師になりすますことができるようになるのではないだろうか.登録番号もきっと知ることができるだろうから,医師免許なんて簡単に偽造できるようになるだろう.それをネットで確認しても意味がないだろう.これでは本末転倒である.情報というものは公開したとたんに偽造できるようになるということが厚労省の役人にはわからないのだろう.

 悪用されてから「性善説で運用される前提でしたので,まさかこんなことになるとは..」などと言うのじゃ国交省と同じである.国家公務員には責任感も危機感もないということか.せめて自分の氏名が結婚詐欺師や医師とのお見合いクラブなどで悪用されないように祈るとしよう.

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