『---遺伝子情報を使用せず 採用、保険加入でIBM---
米コンピューター大手IBMは10日、特定の病気へのかかりやすさを知る手掛かりとなる遺伝子情報を、新規社員を採用する際の判断材料などとして使用しない方針を発表した。米大手企業としてこうした方針を明言したのは初めてとみられる。ロイター通信が伝えた。
血液などの遺伝子を精密分析することで得られる遺伝子情報が雇用や昇進に悪影響を及ぼす「遺伝子差別」への懸念が増す中、IBMの決定は遺伝子分野でのプライバシー問題と企業活動の関係をめぐる議論に影響を与えそうだ。
発表によると、IBMは新規社員採用時に加え、現社員についても健康保険加入などの適性検査で遺伝子情報は一切使用しない。担当者は「遺伝子情報は個人の特性をほぼ決定する情報ではあるが、会社への貢献やチームワークなど社員としての資質とは何の関係もない」と同通信に話した。
米メディアによると、潜在的に病気になる可能性のある社員を特定することで、社員の健康管理に役立ち、健康保険料の企業側負担を減らすことができるとして、一部の企業が入社希望者を対象とした遺伝子診断の実施を検討。
既に社員の遺伝子情報を収集、管理する請負業務をビジネス化する動きも見られるが、「究極のプライバシー」とされる遺伝子情報を企業が利用することへの反発は強く、第三者に情報が漏えいする可能性も指摘されている。』
日本ではまだあまり一般的な話ではないが,今後ジーンチップの普及とともに遺伝子診断は一般化すると思われる.これが純粋に予防医学や治療に利用されるのなら問題ない.その場合,得られた情報は医師と患者のみが知ることで医師には守秘義務があるから外部に漏れる心配もない.
問題はこれら情報を医療目的以外で使用することに法的な規制をかけられるかどうかであろう.遺伝子の研究がさらに進みこれら情報が企業に漏れればあらゆる点で新たな差別が生まれることは明白であろう.特に保険料不払いで問題になるほど保険料を払いたくないわが国の保険会社や社員の医療費で会社が傾いてしまった米国のGMのような会社では利益追求のための手段として利用できるなら是非欲しい情報だろう.
わが国も医療費を減らすことに躍起になっているのが現状で,すでに手段を選ばない状態になっているようだが,究極の個人情報である遺伝子情報を企業の手にゆだねるようなバカな真似だけはやめて欲しいものだ.
米コンピューター大手IBMは10日、特定の病気へのかかりやすさを知る手掛かりとなる遺伝子情報を、新規社員を採用する際の判断材料などとして使用しない方針を発表した。米大手企業としてこうした方針を明言したのは初めてとみられる。ロイター通信が伝えた。
血液などの遺伝子を精密分析することで得られる遺伝子情報が雇用や昇進に悪影響を及ぼす「遺伝子差別」への懸念が増す中、IBMの決定は遺伝子分野でのプライバシー問題と企業活動の関係をめぐる議論に影響を与えそうだ。
発表によると、IBMは新規社員採用時に加え、現社員についても健康保険加入などの適性検査で遺伝子情報は一切使用しない。担当者は「遺伝子情報は個人の特性をほぼ決定する情報ではあるが、会社への貢献やチームワークなど社員としての資質とは何の関係もない」と同通信に話した。
米メディアによると、潜在的に病気になる可能性のある社員を特定することで、社員の健康管理に役立ち、健康保険料の企業側負担を減らすことができるとして、一部の企業が入社希望者を対象とした遺伝子診断の実施を検討。
既に社員の遺伝子情報を収集、管理する請負業務をビジネス化する動きも見られるが、「究極のプライバシー」とされる遺伝子情報を企業が利用することへの反発は強く、第三者に情報が漏えいする可能性も指摘されている。』
日本ではまだあまり一般的な話ではないが,今後ジーンチップの普及とともに遺伝子診断は一般化すると思われる.これが純粋に予防医学や治療に利用されるのなら問題ない.その場合,得られた情報は医師と患者のみが知ることで医師には守秘義務があるから外部に漏れる心配もない.
問題はこれら情報を医療目的以外で使用することに法的な規制をかけられるかどうかであろう.遺伝子の研究がさらに進みこれら情報が企業に漏れればあらゆる点で新たな差別が生まれることは明白であろう.特に保険料不払いで問題になるほど保険料を払いたくないわが国の保険会社や社員の医療費で会社が傾いてしまった米国のGMのような会社では利益追求のための手段として利用できるなら是非欲しい情報だろう.
わが国も医療費を減らすことに躍起になっているのが現状で,すでに手段を選ばない状態になっているようだが,究極の個人情報である遺伝子情報を企業の手にゆだねるようなバカな真似だけはやめて欲しいものだ.
『--横浜市に1億円賠償命令 救急医療施設で診察ミス--
横浜市救急医療センター(同市中区)の診察ミスが原因で長男(10)の全身にまひが残ったとして、両親らが約2億1800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は29日、市と小児科医に1億円と介護費用などとして月々30万-50万円を今後支払うよう命じた。
小林正(こばやし・ただし)裁判長は判決理由で「小児科医は気道閉塞(へいそく)を起こす恐れがある急性喉頭蓋(こうとうがい)炎に気付き、適切な対応を取るべきだったのに怠った」と診察ミスを認めた。
判決によると、長男は4歳だった1999年3月「のどが苦しい」と訴え受診。長男は急性喉頭蓋炎の疑いがあったが、小児科医は見過ごし、薬を処方して診察を終えた。長男は翌日未明、一時呼吸停止となり病院に運ばれ、全身まひの後遺症を負った。
横浜市医療政策課は「判決をよく読み、対応を決めたい」としている。』
『--救急医療センターの深夜診療を廃止--
横浜市は十五日、同市中区の市救急医療センター(桜木町夜間急病センター)で午前零時〜翌朝六時までの深夜帯における診療をとりやめる方針を明らかにした。一方で、市内の方面別に毎日の深夜帯に患者を受け入れる「基幹病院」を整備し救急医療の充実を図るとしている。小児救急のあり方が問われる中、同日の市会定例会では議員から同センターの方向性や、初期救急のあり方をめぐり質問が相次いだ。
一九八一年に開設した同センターは、深夜帯に初期救急患者を受け入れる市内唯一の施設。午後八時から翌朝六時まで、内科・小児科の患者を受け付ける夜間救急の要だ。
しかし入院設備がないことから、午前零時以降に入院・転送が必要な重症患者の割合が高くなる実態に、対応しきれない状況があった。さらに近年では小児科専門医の確保が困難な状況で、乳幼児を持つ親のニーズに応えられないことも課題だった。
同市は重症者に迅速・的確な対応を図るため、小児救急拠点病院を中心に、深夜帯の内科・小児科の初期救急を担当する「基幹病院」構想を提案。市内の方面別に六カ所以上整備する。市民への周知期間を設け、来年四月からの実施を目指すという。
同日の定例会では指定管理者の導入に先立ち診療時間を変更すると提案。質問に立った議員からは「関係団体や各病院の合意形成はできているのか」「複数の基幹病院で対応することで運営経費はどうなるのか」「深夜帯診療の廃止で市民サービスの低下を招かないか」など市民生活に直結した救急医療の方向性を探る質問が相次いだ。 』
夜間救急で内科・小児科をやっている医師の本音は小児の夜間診療はお断りということだろう.急性喉頭蓋炎で今にも窒息というのを見逃したのならわかるが,急変して気道閉塞を起こす恐れに対する適切な処置とは何であろうか.念のため耳鼻科に紹介しておけばよかったなどというのなら「のどが苦しい」だけですべて転送するのがいいのだろうか.
結果的に不幸な転帰をとったので診察した医師を訴えるという訴訟が増える中で,医師側がこのようなトラブルに巻き込まれたくなければもっとも単純な答えは「夜間救急患者お断り」ということであろう.病院としても救急医療などは人手が要る割りに診療報酬が低く割が合わないのでやめたいのが本音だろう.
救急医療を充実させるといっても自分の都合で日中は受診せずに夜間に救急車をタクシー代わりにするような患者が深夜営業のコンビニに行くような感覚でやってくるのでは救急当番医のストレスは増すばかりだろう.救急医療自体が不幸な転帰をとってしまうのではないかと心配しているのは私だけだろうか.
横浜市救急医療センター(同市中区)の診察ミスが原因で長男(10)の全身にまひが残ったとして、両親らが約2億1800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は29日、市と小児科医に1億円と介護費用などとして月々30万-50万円を今後支払うよう命じた。
小林正(こばやし・ただし)裁判長は判決理由で「小児科医は気道閉塞(へいそく)を起こす恐れがある急性喉頭蓋(こうとうがい)炎に気付き、適切な対応を取るべきだったのに怠った」と診察ミスを認めた。
判決によると、長男は4歳だった1999年3月「のどが苦しい」と訴え受診。長男は急性喉頭蓋炎の疑いがあったが、小児科医は見過ごし、薬を処方して診察を終えた。長男は翌日未明、一時呼吸停止となり病院に運ばれ、全身まひの後遺症を負った。
横浜市医療政策課は「判決をよく読み、対応を決めたい」としている。』
『--救急医療センターの深夜診療を廃止--
横浜市は十五日、同市中区の市救急医療センター(桜木町夜間急病センター)で午前零時〜翌朝六時までの深夜帯における診療をとりやめる方針を明らかにした。一方で、市内の方面別に毎日の深夜帯に患者を受け入れる「基幹病院」を整備し救急医療の充実を図るとしている。小児救急のあり方が問われる中、同日の市会定例会では議員から同センターの方向性や、初期救急のあり方をめぐり質問が相次いだ。
一九八一年に開設した同センターは、深夜帯に初期救急患者を受け入れる市内唯一の施設。午後八時から翌朝六時まで、内科・小児科の患者を受け付ける夜間救急の要だ。
しかし入院設備がないことから、午前零時以降に入院・転送が必要な重症患者の割合が高くなる実態に、対応しきれない状況があった。さらに近年では小児科専門医の確保が困難な状況で、乳幼児を持つ親のニーズに応えられないことも課題だった。
同市は重症者に迅速・的確な対応を図るため、小児救急拠点病院を中心に、深夜帯の内科・小児科の初期救急を担当する「基幹病院」構想を提案。市内の方面別に六カ所以上整備する。市民への周知期間を設け、来年四月からの実施を目指すという。
同日の定例会では指定管理者の導入に先立ち診療時間を変更すると提案。質問に立った議員からは「関係団体や各病院の合意形成はできているのか」「複数の基幹病院で対応することで運営経費はどうなるのか」「深夜帯診療の廃止で市民サービスの低下を招かないか」など市民生活に直結した救急医療の方向性を探る質問が相次いだ。 』
夜間救急で内科・小児科をやっている医師の本音は小児の夜間診療はお断りということだろう.急性喉頭蓋炎で今にも窒息というのを見逃したのならわかるが,急変して気道閉塞を起こす恐れに対する適切な処置とは何であろうか.念のため耳鼻科に紹介しておけばよかったなどというのなら「のどが苦しい」だけですべて転送するのがいいのだろうか.
結果的に不幸な転帰をとったので診察した医師を訴えるという訴訟が増える中で,医師側がこのようなトラブルに巻き込まれたくなければもっとも単純な答えは「夜間救急患者お断り」ということであろう.病院としても救急医療などは人手が要る割りに診療報酬が低く割が合わないのでやめたいのが本音だろう.
救急医療を充実させるといっても自分の都合で日中は受診せずに夜間に救急車をタクシー代わりにするような患者が深夜営業のコンビニに行くような感覚でやってくるのでは救急当番医のストレスは増すばかりだろう.救急医療自体が不幸な転帰をとってしまうのではないかと心配しているのは私だけだろうか.
懲りない(無責任な?)人々
2005年9月23日 医療の問題『--手術数による報酬加算廃止 生存率向上と因果関係なし 厚労省、来年4月から--
厚生労働省は21日、来年4月の診療報酬改定で、一定数以上の手術件数を満たした病院に対する報酬加算を廃止する方針を固めた。同制度は医療の質を高めることを狙って導入されたが、手術件数と患者の生存率向上など治療成績との因果関係が見られないとする調査結果が発表され、制度の存在意義が薄れたと判断した。
制度は2002年4月、1年間に実施された手術数が一定数に満たない病院の手術料を3割減額する仕組みとしてスタート。しかし「手術数の少ない過疎地の病院などで必要な手術ができなくなる」などの声を受け、04年度からは、患者への積極的な情報提供などの条件を満たせば、減額をしないことにし、このほか、一定の手術数を満たした場合には報酬を5%加算する仕組みに変更した。
こうした中、今年6月、外科手術に関連した学会でつくる外科系学会社会保険委員会連合が723施設、22万件のデータを分析し、手術件数と治療結果との因果関係が相関しているとは言えないとする調査結果を発表した。
同省はこの結果を受けた形で廃止を検討。「制度導入時は、手術数と治療成績は関係があるとの米国の研究結果を参考にしたが、それに反論する研究まで確認できていなかった。根拠がない以上、制度を続けられない」(保険局)としている。
ただ、医師個人では技量と手術件数の関連はあるとみられ、同省は難易度や時間、技術力を踏まえた新たな評価方式を検討する方針だ。』
手術数をクリアするために適応の無い手術をひたすらやるしかなければ事故も当然増加するだろう.手術数の少ない地方の病院の外科医はやる気をなくすか,症例数の多い病院へすでに移ってしまっている.脳外科志望の学生はほとんどいないだろう.
大学からの派遣の場合も手術数の多い病院を希望する研修医が多いために手術数の少ない病院に経験のある専門医が多く,救急などで症例数の多い病院には手術をたくさんしたい研修医が多いというのが現実だから症例数が多いほうが事故のリスクは高いとみるのが専門家だろう.
『手術数と治療成績は関係があるとの米国の研究結果を参考にした』とは責任逃れの言い訳にしか聞こえない.そもそも米国とは医療の事情が違うことはわかっていたはずであるから制度の導入時にちゃんと検討しなかったではすまされない.いかにも官僚的な無責任な発言に怒りを感じる外科医は私だけではないだろう.
それでもまだ懲りないのか『ただ、医師個人では技量と手術件数の関連はあるとみられ、同省は難易度や時間、技術力を踏まえた新たな評価方式を検討する方針だ。』などと言っているのにはあきれるだけだ.これは長時間勉強した人ほど点数がいいと言っているようなもので学習曲線というものがわかっていないようである.医療は結果で評価されるものであって,結果が同じなら報酬も同じであるべきで,技量や時間は直接関係ないだろう.
そして診療報酬は手術の難易度で決定されるべきであるのは当然のことであるが,技術を習得するのにかかる時間も難易度に組み入れて欲しいものだ.脳外科医は一人前になるのに10年はかかる(10年やっても一人前にならない人もいる)のであるから難易度に技術の習得にかかる時間も考慮に入れてくれるのでなければ脳外科医不足は解消されないだろう.
厚生労働省は21日、来年4月の診療報酬改定で、一定数以上の手術件数を満たした病院に対する報酬加算を廃止する方針を固めた。同制度は医療の質を高めることを狙って導入されたが、手術件数と患者の生存率向上など治療成績との因果関係が見られないとする調査結果が発表され、制度の存在意義が薄れたと判断した。
制度は2002年4月、1年間に実施された手術数が一定数に満たない病院の手術料を3割減額する仕組みとしてスタート。しかし「手術数の少ない過疎地の病院などで必要な手術ができなくなる」などの声を受け、04年度からは、患者への積極的な情報提供などの条件を満たせば、減額をしないことにし、このほか、一定の手術数を満たした場合には報酬を5%加算する仕組みに変更した。
こうした中、今年6月、外科手術に関連した学会でつくる外科系学会社会保険委員会連合が723施設、22万件のデータを分析し、手術件数と治療結果との因果関係が相関しているとは言えないとする調査結果を発表した。
同省はこの結果を受けた形で廃止を検討。「制度導入時は、手術数と治療成績は関係があるとの米国の研究結果を参考にしたが、それに反論する研究まで確認できていなかった。根拠がない以上、制度を続けられない」(保険局)としている。
ただ、医師個人では技量と手術件数の関連はあるとみられ、同省は難易度や時間、技術力を踏まえた新たな評価方式を検討する方針だ。』
手術数をクリアするために適応の無い手術をひたすらやるしかなければ事故も当然増加するだろう.手術数の少ない地方の病院の外科医はやる気をなくすか,症例数の多い病院へすでに移ってしまっている.脳外科志望の学生はほとんどいないだろう.
大学からの派遣の場合も手術数の多い病院を希望する研修医が多いために手術数の少ない病院に経験のある専門医が多く,救急などで症例数の多い病院には手術をたくさんしたい研修医が多いというのが現実だから症例数が多いほうが事故のリスクは高いとみるのが専門家だろう.
『手術数と治療成績は関係があるとの米国の研究結果を参考にした』とは責任逃れの言い訳にしか聞こえない.そもそも米国とは医療の事情が違うことはわかっていたはずであるから制度の導入時にちゃんと検討しなかったではすまされない.いかにも官僚的な無責任な発言に怒りを感じる外科医は私だけではないだろう.
それでもまだ懲りないのか『ただ、医師個人では技量と手術件数の関連はあるとみられ、同省は難易度や時間、技術力を踏まえた新たな評価方式を検討する方針だ。』などと言っているのにはあきれるだけだ.これは長時間勉強した人ほど点数がいいと言っているようなもので学習曲線というものがわかっていないようである.医療は結果で評価されるものであって,結果が同じなら報酬も同じであるべきで,技量や時間は直接関係ないだろう.
そして診療報酬は手術の難易度で決定されるべきであるのは当然のことであるが,技術を習得するのにかかる時間も難易度に組み入れて欲しいものだ.脳外科医は一人前になるのに10年はかかる(10年やっても一人前にならない人もいる)のであるから難易度に技術の習得にかかる時間も考慮に入れてくれるのでなければ脳外科医不足は解消されないだろう.
『--手術ミスで死亡と遺族提訴 山口大に約4800万円請求--
山口大病院(山口県宇部市)で、鼻の内視鏡手術を受けた同市の無職男性=当時(77)=がくも膜下出血で死亡したのは、頭蓋(ずがい)底に誤って穴を開けられたためだとして、広島市在住の男性の長男ら遺族が15日までに、山口大に計約4800万円の損害賠償を求め、広島地裁に提訴した。
広島地裁(橋本良成(はしもと・よしなり)裁判長)で同日、開かれた第1回口頭弁論で、山口大側は「過失はない」と争う姿勢を示した。
訴えによると、男性は2003年3月4日、副鼻腔(びくう)にできた腫瘍(しゅよう)を除去するため内視鏡手術を受けた。男性は大量に出血し、手術後、嘔吐(おうと)したため検査すると、頭蓋底に穴が開いており、くも膜下出血を発症していることが判明。男性は意識が戻らないまま、同27日に死亡した。
原告側は「内視鏡手術を選択したのは無謀。手術中に頭蓋底に穴が開いたのは間違いなく、病院に過失がある」と主張している。』
くも膜下出血が手術操作で生じたかどうかが争点になるのだろう.手術中に偶然にもともとあった未破裂脳動脈瘤が破裂したということなら過失は問えないだろう.
前頭蓋底の骨がもともと欠損していて髄液漏になる高齢者もいるくらいだから手術前に穴がなかったことを確認していたのでなければ手術中に頭蓋底に穴が開いたという主張も難しいだろう.
ほかにも腫瘍で頭蓋底の骨が脆弱になっていたなど色々な可能性が考えられるが,副鼻腔の腫瘍を内視鏡手術すること自体はよくあることだと思う.だから悪い結果が出てから「内視鏡手術を選択したのは無謀」と主張するのなら,なぜ手術に同意したのかという疑問が残るのではないだろうか.
手術前にすべての可能性について言及することは現実的でないし,手術する側とされる側で互いにリスクについて理解し同意することが前提である.この信頼関係を崩すくらいなら手術はやらないほうがいいだろう.
山口大病院(山口県宇部市)で、鼻の内視鏡手術を受けた同市の無職男性=当時(77)=がくも膜下出血で死亡したのは、頭蓋(ずがい)底に誤って穴を開けられたためだとして、広島市在住の男性の長男ら遺族が15日までに、山口大に計約4800万円の損害賠償を求め、広島地裁に提訴した。
広島地裁(橋本良成(はしもと・よしなり)裁判長)で同日、開かれた第1回口頭弁論で、山口大側は「過失はない」と争う姿勢を示した。
訴えによると、男性は2003年3月4日、副鼻腔(びくう)にできた腫瘍(しゅよう)を除去するため内視鏡手術を受けた。男性は大量に出血し、手術後、嘔吐(おうと)したため検査すると、頭蓋底に穴が開いており、くも膜下出血を発症していることが判明。男性は意識が戻らないまま、同27日に死亡した。
原告側は「内視鏡手術を選択したのは無謀。手術中に頭蓋底に穴が開いたのは間違いなく、病院に過失がある」と主張している。』
くも膜下出血が手術操作で生じたかどうかが争点になるのだろう.手術中に偶然にもともとあった未破裂脳動脈瘤が破裂したということなら過失は問えないだろう.
前頭蓋底の骨がもともと欠損していて髄液漏になる高齢者もいるくらいだから手術前に穴がなかったことを確認していたのでなければ手術中に頭蓋底に穴が開いたという主張も難しいだろう.
ほかにも腫瘍で頭蓋底の骨が脆弱になっていたなど色々な可能性が考えられるが,副鼻腔の腫瘍を内視鏡手術すること自体はよくあることだと思う.だから悪い結果が出てから「内視鏡手術を選択したのは無謀」と主張するのなら,なぜ手術に同意したのかという疑問が残るのではないだろうか.
手術前にすべての可能性について言及することは現実的でないし,手術する側とされる側で互いにリスクについて理解し同意することが前提である.この信頼関係を崩すくらいなら手術はやらないほうがいいだろう.
相応の自己負担は当然だろう
2005年9月10日 医療の問題『--救急車代行、タクシー搬送 東京消防庁が新制度--
東京消防庁は「救急の日」の9日、緊急度の低い患者はタクシーが病院まで搬送する「サポート・キャブ」制度を全国で初めてスタートさせた。タクシー代は自己負担。119番で病院紹介を求めてきた人らに利用してもらう。
従来はこうした人たちも救急車で搬送することが多く、同庁の救急出動件数は年々増加。新制度は緊急性の高い患者の救急搬送を優先するのが狙いで、将来的には救急車を要請する119番についても、内容によってサポート・キャブを利用してもらうことを検討したい考えだ。
サポート・キャブは、GPSカーナビによる配車システムを持つ上、運転手の3割以上が救急講習を受講しているなどの条件を満たすタクシー会社と、東京消防庁が提携。
病院紹介を求める119番は、同庁外郭団体が開設する「東京民間救急コールセンター」にかけ直してもらい、同センターがタクシー会社に連絡。同庁のデータに基づいて搬送先病院も指定する。タクシー会社は救急講習受講済みの運転手を手配する。
東京消防庁の救急出動件数は、今年上半期だけで35万件を突破。今年1年間では、過去最多だった昨年の約67万8000件を上回る勢いだ。
東京民間救急コールセンターは、電話0570(039)099。24時間受け付けで年中無休。』
救急車をタクシー代わりに使う人たちへの対策として大変有効な制度だと思う.医療費についても軽症で入院にならない程度のものについては時間外で割り増しになった分を自己負担とすればもっと良いだろう.そうすれば時間外診療が減って救急外来も本来の救急対応がやりやすくなるし,小児科の夜間診療も減って小児科医の負担も減るに違いないだろうから.
東京消防庁は「救急の日」の9日、緊急度の低い患者はタクシーが病院まで搬送する「サポート・キャブ」制度を全国で初めてスタートさせた。タクシー代は自己負担。119番で病院紹介を求めてきた人らに利用してもらう。
従来はこうした人たちも救急車で搬送することが多く、同庁の救急出動件数は年々増加。新制度は緊急性の高い患者の救急搬送を優先するのが狙いで、将来的には救急車を要請する119番についても、内容によってサポート・キャブを利用してもらうことを検討したい考えだ。
サポート・キャブは、GPSカーナビによる配車システムを持つ上、運転手の3割以上が救急講習を受講しているなどの条件を満たすタクシー会社と、東京消防庁が提携。
病院紹介を求める119番は、同庁外郭団体が開設する「東京民間救急コールセンター」にかけ直してもらい、同センターがタクシー会社に連絡。同庁のデータに基づいて搬送先病院も指定する。タクシー会社は救急講習受講済みの運転手を手配する。
東京消防庁の救急出動件数は、今年上半期だけで35万件を突破。今年1年間では、過去最多だった昨年の約67万8000件を上回る勢いだ。
東京民間救急コールセンターは、電話0570(039)099。24時間受け付けで年中無休。』
救急車をタクシー代わりに使う人たちへの対策として大変有効な制度だと思う.医療費についても軽症で入院にならない程度のものについては時間外で割り増しになった分を自己負担とすればもっと良いだろう.そうすれば時間外診療が減って救急外来も本来の救急対応がやりやすくなるし,小児科の夜間診療も減って小児科医の負担も減るに違いないだろうから.
福祉は今でも最低なのに
2005年9月6日 医療の問題『-- 衆院選、かすむ医療政策 各党、負担増示さず --
今年の社会保障制度改革の焦点となる医療制度改革論議が衆院選では、かすんでいる。患者の負担増や新たな保険料徴収などが検討され、厚生労働省は10月には改革案をまとめる方針だが、各党とも負担増は示さず、選挙戦ではほとんど取り上げられていない。
自民党はマニフェスト(政権公約)で、2003年3月に政府が75歳以上を対象に独立した高齢者医療制度創設の基本方針を閣議決定していることを踏まえ、改革法案を次期通常国会に提出するとしている。
患者の自己負担については、閣議決定当時、同党の医療基本問題調査会が「65歳未満は3割、65-74歳は2割、75歳以上は1割に統一すべき」と提案したが、今回のマニフェストには盛り込まなかった。
現在、厚労省の審議会が基本方針に沿って議論を進めているが、だれが新制度を運営するのかや、対象者を65歳以上とすべきとの意見も出るなど制度の前提部分で意見が大きく割れており、ましてや保険料率や自己負担などは明記できる状況ではないためとみられる。
公明党も治療中心から予防重視へ転換し、医療費の増大を抑制するとしているが、自民同様、新高齢者医療制度の具体策には触れていない。
一方、民主党も新たな高齢者医療制度の創設を掲げたものの、自己負担などの記載はない。ただ与党が触れなかったカルテ開示と医療費明細書の発行を義務付ける法案を次期通常国会に提出する、とした。
患者負担の軽減を目指すとしている共産、社民両党は、財源には直接触れていない。共産は薬価の見直し、高額医療機器の価格を引き下げるとしているものの、具体的な額は示していない。
国民新党は医療には直接触れず、年金・福祉政策の確立を訴え、新党日本は、田中康夫代表が長野県知事として、福祉・医療、教育、環境などに予算を傾注投資していることを紹介、党の方針としている。
高齢化の進展で増え続けている医療給付費は、04年度は26兆円。これが、厚労省の推計によると、25年度には2.3倍の59兆円にまで膨らみ、1.4倍の64兆円にとどまる年金とほぼ肩を並べる。
医療費問題は、日本より早く高齢社会に入った欧州先進国でも悩みの種だ。スウェーデンをはじめ、ドイツ、フランスも財政難に陥り、英国では財政が破たんしかけるなど、往年の福祉国家の面影はすでにない。
日本は医療費のほとんどを公的医療保険に頼っているが、こうした路線を続けることは、もはや無理との指摘もある。病気の種類も感染症などから、運動不足やストレスなど現代人に特徴的な生活習慣病へと変化している。医療制度はこうした状況にも対応できるよう再構築していく必要があるが、これまでのところ各党間で議論は見られない。
政府の審議会報告などを常日ごろからチェックしている都内のある男性会社員(47)は「各党に期待するのは、具体的な将来像を明確に示し、避けられない負担増について率直に語ること。与野党とも踏み込み不足が目立つ」と指摘している。』
もともと日本で福祉と言えば健康保険と年金だけが取りざたされて児童福祉や障害者福祉などは先進国とは比べるべくもないレベルだった.その医療費でさえGDP比で言えば先進国中最低である.身障者福祉なんかは欧米と比べると今でも福祉と言えないレベルであるらしいが,今度はもっと悪くなるようだ.
本当のところ,社会福祉をまじめに論じると悲壮感が漂って選挙にならないから話題にできないのだろう.これは物づくりに資本をつぎこんで人間を消費してきたツケかもしれない.あるいは医療費を病気を治すほうにばかりつぎ込んできたせいもあるだろう.生活習慣病なんていうのもそもそも高度経済成長時代からの仕事中心の生活が原因だとも言えるのではないだろうか.
ここらで日本の価値観をもう一度変えなければいけないだろうということをなんとなく感じる.どのように変えていくのがいいのかということを本当は政治をやる人に考えてもらい政策としてかかげてもらいたいのだが,やはりそれは無理なのだろうか.
郵政改革でゆうちょの資金を回して景気を回復したら今までのツケが返せるのだろうか.返せるとしたらそれは安易でいい方法かもしれないが,もっと根本的なところを変えないともっと大きなツケが回ってくるような気がするのは私だけだろうか.
もうすぐ選挙だが,これから税負担がますます増えそうな私としては投票権を10倍くらいにして欲しいくらいだ.まあ,そうはいかないだろうからせめて1票だけはちゃんと投票しようと思っている.
今年の社会保障制度改革の焦点となる医療制度改革論議が衆院選では、かすんでいる。患者の負担増や新たな保険料徴収などが検討され、厚生労働省は10月には改革案をまとめる方針だが、各党とも負担増は示さず、選挙戦ではほとんど取り上げられていない。
自民党はマニフェスト(政権公約)で、2003年3月に政府が75歳以上を対象に独立した高齢者医療制度創設の基本方針を閣議決定していることを踏まえ、改革法案を次期通常国会に提出するとしている。
患者の自己負担については、閣議決定当時、同党の医療基本問題調査会が「65歳未満は3割、65-74歳は2割、75歳以上は1割に統一すべき」と提案したが、今回のマニフェストには盛り込まなかった。
現在、厚労省の審議会が基本方針に沿って議論を進めているが、だれが新制度を運営するのかや、対象者を65歳以上とすべきとの意見も出るなど制度の前提部分で意見が大きく割れており、ましてや保険料率や自己負担などは明記できる状況ではないためとみられる。
公明党も治療中心から予防重視へ転換し、医療費の増大を抑制するとしているが、自民同様、新高齢者医療制度の具体策には触れていない。
一方、民主党も新たな高齢者医療制度の創設を掲げたものの、自己負担などの記載はない。ただ与党が触れなかったカルテ開示と医療費明細書の発行を義務付ける法案を次期通常国会に提出する、とした。
患者負担の軽減を目指すとしている共産、社民両党は、財源には直接触れていない。共産は薬価の見直し、高額医療機器の価格を引き下げるとしているものの、具体的な額は示していない。
国民新党は医療には直接触れず、年金・福祉政策の確立を訴え、新党日本は、田中康夫代表が長野県知事として、福祉・医療、教育、環境などに予算を傾注投資していることを紹介、党の方針としている。
高齢化の進展で増え続けている医療給付費は、04年度は26兆円。これが、厚労省の推計によると、25年度には2.3倍の59兆円にまで膨らみ、1.4倍の64兆円にとどまる年金とほぼ肩を並べる。
医療費問題は、日本より早く高齢社会に入った欧州先進国でも悩みの種だ。スウェーデンをはじめ、ドイツ、フランスも財政難に陥り、英国では財政が破たんしかけるなど、往年の福祉国家の面影はすでにない。
日本は医療費のほとんどを公的医療保険に頼っているが、こうした路線を続けることは、もはや無理との指摘もある。病気の種類も感染症などから、運動不足やストレスなど現代人に特徴的な生活習慣病へと変化している。医療制度はこうした状況にも対応できるよう再構築していく必要があるが、これまでのところ各党間で議論は見られない。
政府の審議会報告などを常日ごろからチェックしている都内のある男性会社員(47)は「各党に期待するのは、具体的な将来像を明確に示し、避けられない負担増について率直に語ること。与野党とも踏み込み不足が目立つ」と指摘している。』
もともと日本で福祉と言えば健康保険と年金だけが取りざたされて児童福祉や障害者福祉などは先進国とは比べるべくもないレベルだった.その医療費でさえGDP比で言えば先進国中最低である.身障者福祉なんかは欧米と比べると今でも福祉と言えないレベルであるらしいが,今度はもっと悪くなるようだ.
本当のところ,社会福祉をまじめに論じると悲壮感が漂って選挙にならないから話題にできないのだろう.これは物づくりに資本をつぎこんで人間を消費してきたツケかもしれない.あるいは医療費を病気を治すほうにばかりつぎ込んできたせいもあるだろう.生活習慣病なんていうのもそもそも高度経済成長時代からの仕事中心の生活が原因だとも言えるのではないだろうか.
ここらで日本の価値観をもう一度変えなければいけないだろうということをなんとなく感じる.どのように変えていくのがいいのかということを本当は政治をやる人に考えてもらい政策としてかかげてもらいたいのだが,やはりそれは無理なのだろうか.
郵政改革でゆうちょの資金を回して景気を回復したら今までのツケが返せるのだろうか.返せるとしたらそれは安易でいい方法かもしれないが,もっと根本的なところを変えないともっと大きなツケが回ってくるような気がするのは私だけだろうか.
もうすぐ選挙だが,これから税負担がますます増えそうな私としては投票権を10倍くらいにして欲しいくらいだ.まあ,そうはいかないだろうからせめて1票だけはちゃんと投票しようと思っている.
『--家族の負担などが課題 厚労省、在宅死4割目指す--
厚生労働省は終末期医療の在り方を見直し、自宅で死亡する割合を現在の2割から4割に増やすことを目指しているが、在宅医療体制の整備や家族の負担増などの課題も多い。
2003年に厚労省が国民5000人を対象に実施した調査によると、痛みを伴う末期状態になった場合、「必要になれば病院に入院したい」人を含めると「終末期を自宅で療養したい」人が回答者の59%だった。
ただ、「最期まで自宅」を望む人は11%にとどまり、自宅で死を迎えるのが難しい理由として「家族の介護負担が大きい」「急変した時の対応に不安がある」などを挙げる人が多かった。
東京都足立区を中心に在宅医療に取り組んでいる柳原診療所の増子忠道(ましこ・ただみち)所長は、治療法がなくなったがん患者が大学病院などから退院させられるケースも目立ち、在宅医療のニーズは高いと指摘。同時に「末期状態になった時に家族がいなくても自宅での生活を支援する24時間介護が受けられる体制作りが先」と語る。
また、「高齢になるほど医師に依存する傾向もみられ、本人や家族が希望しない場合は在宅死を進めるべきではない」(日本福祉大の近藤克則(こんどう・かつのり)教授)との見方もある。
在宅死を4割まで増やせば、2015年には約2000億円、25年には約5000億円の医療費削減の効果が見込めるといい、厚労省は、訪問診療に対応できる医師の確保や訪問看護サービスの普及、介護付き賃貸住宅など高齢者の多様な居住の場の整備などを通じ、在宅での死亡を増やすことを計画している。』
終末期を自宅で迎えたいという国民のニーズを強調したいのだろうが,厚労省の本音はあくまでも医療費削減であって健康保険を使わせないということだけだろう.終末期医療全体で見れば国民の考えているような自宅で迎える穏やかな最期を実現してもかかるコストが減るわけではないだろう.
むしろ自宅に戻ることにより介護保険や家族の負担は確実に増え社会的なコストは増大するに違いない.これは形を変えて自己負担が増大することを意味するのである.これは果たしていいことなのであろうか.医療費は削減できて終末期を自宅で迎えられるということでいいことだと思う人は中国の故事「朝三暮四」を思い出すべきである.
http://www3.kcn.ne.jp/~jarry/koji/kj021.htm
社会的入院を減らし医療費を削減するためにできた介護保険制度であるが,さて医療費の削減と介護保険の増大を差し引きするとどうなっているのであろうか.病院などの療養型施設はある意味でもっとも低コストで介護ができるはずであり,医療資源を有効に使うにはもっとも適しているところである.同じレベルの管理を在宅で行おうと思えばコストは増大するのは当然だ.
医療費削減という言葉につられず,今こそ国民は自分の希望する医療サービスとは何かについてよく考えるべきだろうと思うのだが,どうだろうか.
厚生労働省は終末期医療の在り方を見直し、自宅で死亡する割合を現在の2割から4割に増やすことを目指しているが、在宅医療体制の整備や家族の負担増などの課題も多い。
2003年に厚労省が国民5000人を対象に実施した調査によると、痛みを伴う末期状態になった場合、「必要になれば病院に入院したい」人を含めると「終末期を自宅で療養したい」人が回答者の59%だった。
ただ、「最期まで自宅」を望む人は11%にとどまり、自宅で死を迎えるのが難しい理由として「家族の介護負担が大きい」「急変した時の対応に不安がある」などを挙げる人が多かった。
東京都足立区を中心に在宅医療に取り組んでいる柳原診療所の増子忠道(ましこ・ただみち)所長は、治療法がなくなったがん患者が大学病院などから退院させられるケースも目立ち、在宅医療のニーズは高いと指摘。同時に「末期状態になった時に家族がいなくても自宅での生活を支援する24時間介護が受けられる体制作りが先」と語る。
また、「高齢になるほど医師に依存する傾向もみられ、本人や家族が希望しない場合は在宅死を進めるべきではない」(日本福祉大の近藤克則(こんどう・かつのり)教授)との見方もある。
在宅死を4割まで増やせば、2015年には約2000億円、25年には約5000億円の医療費削減の効果が見込めるといい、厚労省は、訪問診療に対応できる医師の確保や訪問看護サービスの普及、介護付き賃貸住宅など高齢者の多様な居住の場の整備などを通じ、在宅での死亡を増やすことを計画している。』
終末期を自宅で迎えたいという国民のニーズを強調したいのだろうが,厚労省の本音はあくまでも医療費削減であって健康保険を使わせないということだけだろう.終末期医療全体で見れば国民の考えているような自宅で迎える穏やかな最期を実現してもかかるコストが減るわけではないだろう.
むしろ自宅に戻ることにより介護保険や家族の負担は確実に増え社会的なコストは増大するに違いない.これは形を変えて自己負担が増大することを意味するのである.これは果たしていいことなのであろうか.医療費は削減できて終末期を自宅で迎えられるということでいいことだと思う人は中国の故事「朝三暮四」を思い出すべきである.
http://www3.kcn.ne.jp/~jarry/koji/kj021.htm
社会的入院を減らし医療費を削減するためにできた介護保険制度であるが,さて医療費の削減と介護保険の増大を差し引きするとどうなっているのであろうか.病院などの療養型施設はある意味でもっとも低コストで介護ができるはずであり,医療資源を有効に使うにはもっとも適しているところである.同じレベルの管理を在宅で行おうと思えばコストは増大するのは当然だ.
医療費削減という言葉につられず,今こそ国民は自分の希望する医療サービスとは何かについてよく考えるべきだろうと思うのだが,どうだろうか.
『--心肺停止の男性を救命 関空でAED、初成功--
関西空港旅客ターミナルで突然倒れて心肺停止状態になった大阪市の男性(33)に12日、救命のため設置されている自動体外式除細動器(AED)が初めて使われ、男性の救命に成功した。
関西国際空港会社によると、国内の空港でAEDによる救命が成功したのは初めて。
AEDは心停止した人に電気ショックを与えて救命する装置で、旅客ターミナル内に25台設置されている。
同社によると、同日午前9時ごろ、旅客ターミナル4階の保安検査場近くで出国のため並んでいた男性が突然倒れた。
偶然同じ列にいた医師が、男性の心臓マッサージを開始。近くにいた同空港の防災部員がAEDを準備し、到着した救急隊が作動させた。
男性は救急搬送中に息を吹き返し、病院で治療を受けているという。
同社は「素早い対応の結果、男性が助かったのは素晴らしい。今回の成功でAEDの普及に弾みがつけばいい」と話している。』
物事がうまくいく時というのはこんなものだろう.AEDがなければ除細動ができないからもちろん蘇生する確率は低いが,あるから助かるというものでもないわけで所詮は器械にすぎない.
偶然同じ列に医師が居合わせて心臓マッサージを開始したり,近くにいた同空港の防災部員がAEDを準備したり、到着した救急隊が作動させるという流れがいいタイミングでつながったことがやはり最も重要な点だろう。
私も仕事で心肺停止状態で病院に運ばれてきた人を蘇生させたことはあるが,病院内で発生した心原性ショックを除けば救急外来で救命できる人のほとんどは不整脈の患者さんである.それも救急隊到着までの時間が早いほど予後がいい.心肺蘇生法の開始のタイミングがいかに重要かということだろう.
一般人でも救命救急士の講習会などで救急蘇生法の実習などを受けていれば心臓マッサージや人工呼吸法くらいはできるものである.自分の家族や友人だっていつ心臓発作で倒れるかもしれないのだからAEDが公共施設に配備されることは救急蘇生法に関心をもつのにちょうど良いタイミングではないだろうか.
関西空港旅客ターミナルで突然倒れて心肺停止状態になった大阪市の男性(33)に12日、救命のため設置されている自動体外式除細動器(AED)が初めて使われ、男性の救命に成功した。
関西国際空港会社によると、国内の空港でAEDによる救命が成功したのは初めて。
AEDは心停止した人に電気ショックを与えて救命する装置で、旅客ターミナル内に25台設置されている。
同社によると、同日午前9時ごろ、旅客ターミナル4階の保安検査場近くで出国のため並んでいた男性が突然倒れた。
偶然同じ列にいた医師が、男性の心臓マッサージを開始。近くにいた同空港の防災部員がAEDを準備し、到着した救急隊が作動させた。
男性は救急搬送中に息を吹き返し、病院で治療を受けているという。
同社は「素早い対応の結果、男性が助かったのは素晴らしい。今回の成功でAEDの普及に弾みがつけばいい」と話している。』
物事がうまくいく時というのはこんなものだろう.AEDがなければ除細動ができないからもちろん蘇生する確率は低いが,あるから助かるというものでもないわけで所詮は器械にすぎない.
偶然同じ列に医師が居合わせて心臓マッサージを開始したり,近くにいた同空港の防災部員がAEDを準備したり、到着した救急隊が作動させるという流れがいいタイミングでつながったことがやはり最も重要な点だろう。
私も仕事で心肺停止状態で病院に運ばれてきた人を蘇生させたことはあるが,病院内で発生した心原性ショックを除けば救急外来で救命できる人のほとんどは不整脈の患者さんである.それも救急隊到着までの時間が早いほど予後がいい.心肺蘇生法の開始のタイミングがいかに重要かということだろう.
一般人でも救命救急士の講習会などで救急蘇生法の実習などを受けていれば心臓マッサージや人工呼吸法くらいはできるものである.自分の家族や友人だっていつ心臓発作で倒れるかもしれないのだからAEDが公共施設に配備されることは救急蘇生法に関心をもつのにちょうど良いタイミングではないだろうか.
やっぱり手術のせいなのか?
2005年8月17日 医療の問題『--頭部手術ミスで死亡と提訴 --
埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)で頭部の手術を受けた同県吉見町の男性会社員=当時(34)=が死亡したのは執刀ミスとして、男性の妻らが15日までに、医大側に約1億4900万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こした。
訴状によると、男性は2003年1月29日、三叉(さんさ)神経痛治療のため左後頭部を切開、神経を圧迫していた血管と神経の間に特殊な綿を挿入する手術を受けたが、くも膜下出血を起こし13日後に死亡した。
原告側は「執刀医が誤って血管を傷付け、十分な止血をしなかった」と主張。同医療センターは「診療はベストを尽くし、過失はなかった」としている』
2年以上も前のことだが当時の手術ビデオなどは残っているだろうか.三叉神経の神経血管減圧術だろうがこの手術で大きな出血の原因となる血管としては上小脳動脈と前下小脳動脈,そして脳底動脈のほか錐体静脈などがあるのだが,いったいどこからの出血だったのだろうか.
「過失はなかった」というのが事実なら,動脈瘤が偶然存在して破裂したという可能性も考えなければならないのだろうか.ただ,神経血管減圧術の合併症としてくも膜下出血による死亡というのを説明していたとは考えられないから,たとえ過失がなくとも例によって説明不足という理由で責任を問われることは十分考えられる.
最近の判決の傾向として結果が期待されているものより悪ければまず間違いなく損害賠償になり,死亡すれば業務上過失致死罪になるようだ.これがひどくなれば米国の脳外科医のように高額な損害賠償保険料を払うか手術をやめるかの選択をしなければならなくなるのだろうか.
好きでやっているつもりなので私は脳外科医でいいのだが,ただでさえ人手不足なのにこんなニュースをみて脳外科志望の研修医が減るのではないかと心配している.なんら責任ある仕事をさせてもらえない研修医にしてみれば,手術時間が短くて,夜中に緊急手術の少ないほうがやはり魅力的でしょうか.
埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)で頭部の手術を受けた同県吉見町の男性会社員=当時(34)=が死亡したのは執刀ミスとして、男性の妻らが15日までに、医大側に約1億4900万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こした。
訴状によると、男性は2003年1月29日、三叉(さんさ)神経痛治療のため左後頭部を切開、神経を圧迫していた血管と神経の間に特殊な綿を挿入する手術を受けたが、くも膜下出血を起こし13日後に死亡した。
原告側は「執刀医が誤って血管を傷付け、十分な止血をしなかった」と主張。同医療センターは「診療はベストを尽くし、過失はなかった」としている』
2年以上も前のことだが当時の手術ビデオなどは残っているだろうか.三叉神経の神経血管減圧術だろうがこの手術で大きな出血の原因となる血管としては上小脳動脈と前下小脳動脈,そして脳底動脈のほか錐体静脈などがあるのだが,いったいどこからの出血だったのだろうか.
「過失はなかった」というのが事実なら,動脈瘤が偶然存在して破裂したという可能性も考えなければならないのだろうか.ただ,神経血管減圧術の合併症としてくも膜下出血による死亡というのを説明していたとは考えられないから,たとえ過失がなくとも例によって説明不足という理由で責任を問われることは十分考えられる.
最近の判決の傾向として結果が期待されているものより悪ければまず間違いなく損害賠償になり,死亡すれば業務上過失致死罪になるようだ.これがひどくなれば米国の脳外科医のように高額な損害賠償保険料を払うか手術をやめるかの選択をしなければならなくなるのだろうか.
好きでやっているつもりなので私は脳外科医でいいのだが,ただでさえ人手不足なのにこんなニュースをみて脳外科志望の研修医が減るのではないかと心配している.なんら責任ある仕事をさせてもらえない研修医にしてみれば,手術時間が短くて,夜中に緊急手術の少ないほうがやはり魅力的でしょうか.
そんなに保険を使わせたくないなら...
2005年8月6日 医療の問題『--在宅の終末医療後押し 診療報酬の加算を検討 厚労省、06年度にも--
厚生労働省は4日、患者が終末期を自宅や地域で迎えるため、医師や看護師、薬剤師など医療関係者とケアマネジャーら介護スタッフが連携する「在宅医療チーム」の体制づくりに乗り出す方針を固めた。自宅などで亡くなる人の割合を現在の約2割から4割にすることを目指す。
終末期の患者が安心して退院できるよう、入院していた病院の担当者と、患者が住む地域の医療・介護スタッフが「診療計画(連携パス)」を策定し医療に取り組むことを報酬面で後押しする。
早ければ診療報酬と介護報酬が初めて同時に見直される2006年度改定に「地域連携パス加算」(仮称)を盛り込みたい考えだ。今後、社会保障制度審議会などで検討する。
自宅だけでなく地域での患者の受け皿を用意するため、ケアハウス(軽費老人ホーム)や少人数で共同生活するグループホーム、小規模な多機能型施設などに医療スタッフが出向いていく仕組みも検討。特別養護老人ホームで訪問看護を受けることが可能になるような制度の変更も目指す。
厚労省は、住み慣れた場所で最期を迎えたいという終末期の患者の希望に沿うと同時に、自宅での医療に比べ高額となる入院医療費の抑制効果も期待できるとしている。
患者の治療は1つの医療機関で完結することが難しく、通常は急性期の病院から回復・慢性期の病院、さらに介護施設などを経て在宅療養に移行するとされる。
しかし、入院先の病院担当者と地域の開業医や看護師、介護施設の間での情報の共有が少ない上、患者の容体が急変した際の受け入れ態勢なども整っておらず、終末期を自宅で迎えることは難しい現実がある。』
こんなことをやっても喜ぶのは開業内科医ぐらいだろう.患者の容体が急変したらせいぜい電話一本で救急病院へ送るだけでいいのだから.「診療計画(連携パス)」なんていうものを書くだけで診療報酬がもらえるのだったらこんなうまい話はないだろう.介護保険の業者と開業内科医そして調剤薬局が手を組んで一般病院の診療報酬をうまくかすめとる良い方法だ.
だが,診療や介護のレベルが入院中より上がることはないだろうし,家族の負担も増えるわけだから,健康保険料の支払いが少なくなった分以上にサービスが低下することは確実である.まあ,介護保険の時と同じで病院から患者を引き離して保険料を節約し,家族の経済的,肉体的自己負担を増やすことに変わりはない.
そんなに終末期の患者に健康保険を使わせるのがいやなら終末期医療にも自由診療を取り入れて患者や家族に選択させるべきだろう.療養型の入院もいずれ食費や光熱費は自己負担させるようだから,これに保険の効く医療行為と自由診療を合わせて自由診療分は患者に選択させればいいだろう.
厚生労働省は4日、患者が終末期を自宅や地域で迎えるため、医師や看護師、薬剤師など医療関係者とケアマネジャーら介護スタッフが連携する「在宅医療チーム」の体制づくりに乗り出す方針を固めた。自宅などで亡くなる人の割合を現在の約2割から4割にすることを目指す。
終末期の患者が安心して退院できるよう、入院していた病院の担当者と、患者が住む地域の医療・介護スタッフが「診療計画(連携パス)」を策定し医療に取り組むことを報酬面で後押しする。
早ければ診療報酬と介護報酬が初めて同時に見直される2006年度改定に「地域連携パス加算」(仮称)を盛り込みたい考えだ。今後、社会保障制度審議会などで検討する。
自宅だけでなく地域での患者の受け皿を用意するため、ケアハウス(軽費老人ホーム)や少人数で共同生活するグループホーム、小規模な多機能型施設などに医療スタッフが出向いていく仕組みも検討。特別養護老人ホームで訪問看護を受けることが可能になるような制度の変更も目指す。
厚労省は、住み慣れた場所で最期を迎えたいという終末期の患者の希望に沿うと同時に、自宅での医療に比べ高額となる入院医療費の抑制効果も期待できるとしている。
患者の治療は1つの医療機関で完結することが難しく、通常は急性期の病院から回復・慢性期の病院、さらに介護施設などを経て在宅療養に移行するとされる。
しかし、入院先の病院担当者と地域の開業医や看護師、介護施設の間での情報の共有が少ない上、患者の容体が急変した際の受け入れ態勢なども整っておらず、終末期を自宅で迎えることは難しい現実がある。』
こんなことをやっても喜ぶのは開業内科医ぐらいだろう.患者の容体が急変したらせいぜい電話一本で救急病院へ送るだけでいいのだから.「診療計画(連携パス)」なんていうものを書くだけで診療報酬がもらえるのだったらこんなうまい話はないだろう.介護保険の業者と開業内科医そして調剤薬局が手を組んで一般病院の診療報酬をうまくかすめとる良い方法だ.
だが,診療や介護のレベルが入院中より上がることはないだろうし,家族の負担も増えるわけだから,健康保険料の支払いが少なくなった分以上にサービスが低下することは確実である.まあ,介護保険の時と同じで病院から患者を引き離して保険料を節約し,家族の経済的,肉体的自己負担を増やすことに変わりはない.
そんなに終末期の患者に健康保険を使わせるのがいやなら終末期医療にも自由診療を取り入れて患者や家族に選択させるべきだろう.療養型の入院もいずれ食費や光熱費は自己負担させるようだから,これに保険の効く医療行為と自由診療を合わせて自由診療分は患者に選択させればいいだろう.
医療費抑制の解決法(にはならないかも?)
2005年7月31日 医療の問題『--基本方針に異論続出 避けられない医療費抑制--
増え続ける高齢者の医療費を抑制するための新たな制度の対象者は、75歳以上か65歳以上か。高齢者の本人負担は1割か2割か-。
2003年に閣議決定された政府の基本方針は、75歳以上を対象にした独立型の高齢者医療制度の創設が柱だが、いまなお議論は平行線をたどっているのが実態だ。
▽思惑絡み対立
来年の医療制度改革を議論している社会保障審議会の医療保険部会。
厚生労働省の「75歳から外来が減って入院が増える。外来で済んでいた病気が変化していく分岐点」という説明に、日本医師会と日本薬剤師会は賛成したものの、日本経団連や健康保険組合連合会は65歳以上を主張する。
「年金や介護は原則65歳以上。医療もこの年齢が分かりやすい。疾病の特性からみても75歳以上で変わるというのは明確ではない」
高齢者の窓口負担の割合についても対立は深い。厚労省は現在の1割負担を維持する方針だが、世代間の不公平を解消するため健保連は2割(高所得者は3割)、日本経団連は外来3割(入院2割)を提案。負担増による受診抑制を懸念する日本医師会は1割の堅持を主張して譲らない。
今年9月には部会としての意見を取りまとめる予定だが、調整は難航が予想されている。
▽適正化は必要だが...
医療費の抑制は政府の構造改革の中でも大きな課題に浮上している。「どんな歳出も経済の規模を超えて伸び続けることは不可能」と経済財政諮問会議の民間議員は、経済成長率に連動した抑制目標を提案した。
少子高齢化で急増する社会保障費のうち年金は昨年改正で経済事情を反映して給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が導入された。介護保険も今年の改正で将来の給付費が約2割抑制された。残るは医療費というわけだ。
これに対し、厚労省は「給付の適正化は必要」としながらも「医療費の伸びは、経済の成長とは連動しない部分が多い。病気になっても病院にいくなとは言えない」と猛反発している。
厚労省は経済とは直接関係のない生活習慣病対策などの個別の抑制策を積み上げていく方針だが、具体的な抑制策については年末の予算編成まで持ち越された形。財政難の中で医療費抑制圧力は強まるばかりだ。』
厚労省は「医療費の伸びは、経済の成長とは連動しない部分が多い。病気になっても病院にいくなとは言えない」と猛反発というが,では「病気じゃないのに病院にいくな」とは言えるのだろうか?
病気でもないのに病院に来る人は年齢に比例して増えているようにも思えるが,これは医療費の無駄だろう.病気じゃない人に健康保険を使うのは気が引けるから,病気かどうかを調べる検査費用は自己負担の割合を高くするというのはどうだろうか.
また,老人であっても検査費用の本人負担は若年者と同じでいいと思われる.本当に病気で高額の医療費負担が増えるような場合のみ1割負担にしたり,年齢にかかわらず高収入な人には負担の割合を増やし,その代わり混合診療も認めるといった柔軟な料金体系があってもいいと思う.
お金が無い人は結局は生活保護という形で税金による保障を受け取るわけだから年齢だけを基準に医療費の自己負担割合を議論するのはもうやめたほうがいいような気がするのだが,議論をする人たちの頭に柔軟性がないようだから期待するのが無理なのかも知れない.
増え続ける高齢者の医療費を抑制するための新たな制度の対象者は、75歳以上か65歳以上か。高齢者の本人負担は1割か2割か-。
2003年に閣議決定された政府の基本方針は、75歳以上を対象にした独立型の高齢者医療制度の創設が柱だが、いまなお議論は平行線をたどっているのが実態だ。
▽思惑絡み対立
来年の医療制度改革を議論している社会保障審議会の医療保険部会。
厚生労働省の「75歳から外来が減って入院が増える。外来で済んでいた病気が変化していく分岐点」という説明に、日本医師会と日本薬剤師会は賛成したものの、日本経団連や健康保険組合連合会は65歳以上を主張する。
「年金や介護は原則65歳以上。医療もこの年齢が分かりやすい。疾病の特性からみても75歳以上で変わるというのは明確ではない」
高齢者の窓口負担の割合についても対立は深い。厚労省は現在の1割負担を維持する方針だが、世代間の不公平を解消するため健保連は2割(高所得者は3割)、日本経団連は外来3割(入院2割)を提案。負担増による受診抑制を懸念する日本医師会は1割の堅持を主張して譲らない。
今年9月には部会としての意見を取りまとめる予定だが、調整は難航が予想されている。
▽適正化は必要だが...
医療費の抑制は政府の構造改革の中でも大きな課題に浮上している。「どんな歳出も経済の規模を超えて伸び続けることは不可能」と経済財政諮問会議の民間議員は、経済成長率に連動した抑制目標を提案した。
少子高齢化で急増する社会保障費のうち年金は昨年改正で経済事情を反映して給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が導入された。介護保険も今年の改正で将来の給付費が約2割抑制された。残るは医療費というわけだ。
これに対し、厚労省は「給付の適正化は必要」としながらも「医療費の伸びは、経済の成長とは連動しない部分が多い。病気になっても病院にいくなとは言えない」と猛反発している。
厚労省は経済とは直接関係のない生活習慣病対策などの個別の抑制策を積み上げていく方針だが、具体的な抑制策については年末の予算編成まで持ち越された形。財政難の中で医療費抑制圧力は強まるばかりだ。』
厚労省は「医療費の伸びは、経済の成長とは連動しない部分が多い。病気になっても病院にいくなとは言えない」と猛反発というが,では「病気じゃないのに病院にいくな」とは言えるのだろうか?
病気でもないのに病院に来る人は年齢に比例して増えているようにも思えるが,これは医療費の無駄だろう.病気じゃない人に健康保険を使うのは気が引けるから,病気かどうかを調べる検査費用は自己負担の割合を高くするというのはどうだろうか.
また,老人であっても検査費用の本人負担は若年者と同じでいいと思われる.本当に病気で高額の医療費負担が増えるような場合のみ1割負担にしたり,年齢にかかわらず高収入な人には負担の割合を増やし,その代わり混合診療も認めるといった柔軟な料金体系があってもいいと思う.
お金が無い人は結局は生活保護という形で税金による保障を受け取るわけだから年齢だけを基準に医療費の自己負担割合を議論するのはもうやめたほうがいいような気がするのだが,議論をする人たちの頭に柔軟性がないようだから期待するのが無理なのかも知れない.
日本医師会が医師の代表?
2005年7月22日 医療の問題 コメント (1)『「机上の議論」などと反発 中医協改革案に日医や自民
中央社会保険医療協議会(中医協)の改革案をまとめた厚生労働相主宰の「中医協の在り方に関する有識者会議」の報告書について、21日、日本医師会が「机上の議論」などとする談話を発表、自民党厚生労働部会では「党内で了承されていない」と異論が出るなど反発が広がった。
有識者会議は、中医協の委員構成を開業医の発言力が大きい日医の影響力を薄めるため、医師代表5人のうち、病院代表を現在の1人から2人に増やすなどとした改革案を20日に報告。尾辻秀久厚労相は、厚労相が病院団体に委員2人の推薦を求め、この2人を含む5人を日医が推薦すべきだとの見解を示した。
これに対し、日医は「有識者会議の委員は中医協の会議を一度も見ず、現場を理解しないまま机上の議論に終始」などと批判。
自民党厚生労働部会では「事前に内容を聞いていない」「党内手続きが不十分だ」と異論が噴出。同部会で関連法の改正案を審議する際などにも議論になりそうだ。
一方、11の病院団体でつくる日本病院団体協議会は21日、報告書を「大いに評価する」と歓迎する談話を発表した。』
医師がすべて日本医師会に属していると一般人は思われるかもしれないがそれは間違いである.公立病院や大学病院の医師のほとんどは医師会には属していない.だから日医を医師の代表と考えるにはもともと無理があったといえるだろう.
日医は明らかに開業医の利益を代表する団体である.それは医師が開業するにあたっては地元の医師会に属さねばならない事実が示すところであるから異論はないだろう.そして,診療報酬改定はいつも開業医が,もっと言えば開業内科医の利益が守られるように改定されてきたと言っても過言ではないだろう.
今回の「中医協の在り方に関する有識者会議」の報告書に対する日医の反発は自分たちの利益を守るために当然であろう.そして同様に反発した自民党厚生労働部会の議員もまた日医に有利な診療報酬改定から利益を受けていたということなのだろう.
脳外科医の立場から言わせてもらえば,現在の診療報酬は外科と内科の診療報酬もリスクを含めて考えれば外科に不利なものである.外科手術に比べて患者へのリスクや侵襲が低いにもかかわらず点数が高いものがあるのは開業内科医に有利である.楽な検査と外来で利益を上げ,休日前や患者の状態が悪くなると総合病院へ転送する開業内科医がどこに行ってもいるものだが,真面目に患者さんを診ている医師には目障りなだけである.
足りない医療費を有効に使うためにも診療コストやリスクに見合った診療報酬体系にしてもらいたい勤務医は私だけではないだろう.
中央社会保険医療協議会(中医協)の改革案をまとめた厚生労働相主宰の「中医協の在り方に関する有識者会議」の報告書について、21日、日本医師会が「机上の議論」などとする談話を発表、自民党厚生労働部会では「党内で了承されていない」と異論が出るなど反発が広がった。
有識者会議は、中医協の委員構成を開業医の発言力が大きい日医の影響力を薄めるため、医師代表5人のうち、病院代表を現在の1人から2人に増やすなどとした改革案を20日に報告。尾辻秀久厚労相は、厚労相が病院団体に委員2人の推薦を求め、この2人を含む5人を日医が推薦すべきだとの見解を示した。
これに対し、日医は「有識者会議の委員は中医協の会議を一度も見ず、現場を理解しないまま机上の議論に終始」などと批判。
自民党厚生労働部会では「事前に内容を聞いていない」「党内手続きが不十分だ」と異論が噴出。同部会で関連法の改正案を審議する際などにも議論になりそうだ。
一方、11の病院団体でつくる日本病院団体協議会は21日、報告書を「大いに評価する」と歓迎する談話を発表した。』
医師がすべて日本医師会に属していると一般人は思われるかもしれないがそれは間違いである.公立病院や大学病院の医師のほとんどは医師会には属していない.だから日医を医師の代表と考えるにはもともと無理があったといえるだろう.
日医は明らかに開業医の利益を代表する団体である.それは医師が開業するにあたっては地元の医師会に属さねばならない事実が示すところであるから異論はないだろう.そして,診療報酬改定はいつも開業医が,もっと言えば開業内科医の利益が守られるように改定されてきたと言っても過言ではないだろう.
今回の「中医協の在り方に関する有識者会議」の報告書に対する日医の反発は自分たちの利益を守るために当然であろう.そして同様に反発した自民党厚生労働部会の議員もまた日医に有利な診療報酬改定から利益を受けていたということなのだろう.
脳外科医の立場から言わせてもらえば,現在の診療報酬は外科と内科の診療報酬もリスクを含めて考えれば外科に不利なものである.外科手術に比べて患者へのリスクや侵襲が低いにもかかわらず点数が高いものがあるのは開業内科医に有利である.楽な検査と外来で利益を上げ,休日前や患者の状態が悪くなると総合病院へ転送する開業内科医がどこに行ってもいるものだが,真面目に患者さんを診ている医師には目障りなだけである.
足りない医療費を有効に使うためにも診療コストやリスクに見合った診療報酬体系にしてもらいたい勤務医は私だけではないだろう.
私立医大はブランド志向?
2005年7月22日 医療の問題『金沢大教授が病院科長就任 東京医大の心臓外科刷新
心臓手術の名医として知られる金沢大医学部の渡辺剛(わたなべ・ごう)教授が、心臓手術で患者4人が死亡した東京医大の兼任教授と、新設の心臓外科科長に就任したことが20日、分かった。
就任は6月1日付。東京医大は「手術体制を再生させるための取り組み。9月から手術を再開させたい」としている。
東京医大によると、渡辺教授は国内で約2000例の執刀経験があり、2003年から同大の客員教授と非常勤講師として手術も担当していた。今回は付属病院の科長に就任、同大に月2回通い、執刀の指導をする。
心臓外科は9月に、従来の第2外科から分離して正式に発足。ほかの診療科と兼任だった麻酔医と看護師を専任にするなど安全に配慮した体制になるという。』
本当に人材不足なのか,そうでなければイメージダウンがよほど深刻だったのか,あるいはその両方か,いずれにしても外部の名医を移入して再生を計らなければならない事態ということだろう.
これで患者が戻ってくればいいが,心臓外科は術後管理が非常に大切なはず.手術が終わって教授が帰った後が一番危険なような気がするのは私だけだろうか.
心臓手術の名医として知られる金沢大医学部の渡辺剛(わたなべ・ごう)教授が、心臓手術で患者4人が死亡した東京医大の兼任教授と、新設の心臓外科科長に就任したことが20日、分かった。
就任は6月1日付。東京医大は「手術体制を再生させるための取り組み。9月から手術を再開させたい」としている。
東京医大によると、渡辺教授は国内で約2000例の執刀経験があり、2003年から同大の客員教授と非常勤講師として手術も担当していた。今回は付属病院の科長に就任、同大に月2回通い、執刀の指導をする。
心臓外科は9月に、従来の第2外科から分離して正式に発足。ほかの診療科と兼任だった麻酔医と看護師を専任にするなど安全に配慮した体制になるという。』
本当に人材不足なのか,そうでなければイメージダウンがよほど深刻だったのか,あるいはその両方か,いずれにしても外部の名医を移入して再生を計らなければならない事態ということだろう.
これで患者が戻ってくればいいが,心臓外科は術後管理が非常に大切なはず.手術が終わって教授が帰った後が一番危険なような気がするのは私だけだろうか.
『--障害者の費用負担1割に 自立支援法案を可決 衆院厚生労働委員会--
障害者への福祉サービスを一元化し、同時に障害者に費用の1割負担を求める障害者自立支援法案が13日、衆院厚生労働委員会で自民、公明両党の賛成多数で可決された。週内にも開かれる衆院本会議で可決、参院に送付される。参院の審議が順調に進めば今国会で成立する見通し。来年1月から順次施行される。
負担増との批判を受けた与党が一部修正し、精神障害者通院費の1割負担への引き上げ(現行は5%負担)などの実施時期は、今年10月から来年1月に延期された。
同法案は、これまで身体、知的、精神の障害種別ごとに分かれていたサービス体系を一元化。市町村が運営する在宅サービスに対する国の財政負担を義務化し財政の安定を図る。また、障害者に原則1割、最高で月額4万200円を上限とする自己負担を求め、施設・通所サービスでの食費、光熱水費は実費負担とする。低所得者については負担軽減策をとる。
一元化で、現在は福祉サービスの対象外となっている精神障害者も在宅サービスの対象となる。一方、公費補助を受けていた人工透析患者など現在の「更生医療」対象者、障害児など「育成医療」対象者の医療費が来年1月から1割に引き上げられる。
自己負担分を障害者本人が払えない場合は、配偶者や親、きょうだい、子どもなど同一世帯の家族が負担。ただ、配偶者以外は(1)障害者を扶養することによる所得控除を受けていない(2)障害者を家族の公的医療保険の被扶養者としていない?場合などには負担を免除する。
同法案はまた、市町村や都道府県に対して障害者福祉計画を策定することを義務付けている。通所施設の規制を緩和し、社会福祉法人に加え特定非営利活動法人(NPO法人)の参入も認める。
障害者が一般就労に移行するための支援事業も創設。付則に、障害者の所得保障を検討することが盛り込まれた。』
障害者に費用の1割負担を求めることのどこが自立支援なのだろうか,最近の制度はまず負担増ありきで,その後に食費、光熱水費は実費負担と続き,最期に支援だの低所得者の負担軽減と続くのが決まりのようだ.支援事業が軌道にのってから負担増をお願いするのが筋ではないだろうか.順序がちがうと感じるのは私だけだろうか.
現在は福祉サービスの対象外となっている精神障害者も在宅サービスの対象となるというのもいいように聞こえるが,市町村が運営する在宅サービスが今後も地域住民の負担増なしに可能という試算は聞いたことが無い.これなどは国がまったくやってこなかった精神障害者福祉をこの機に地方に負担させただけだろう.
今後は弱小な地方自治体は在宅サービスの負担増で破綻する可能性があるがこれを国の財政負担を義務化し財政の安定を図ることで本当にふせげるのかどうか疑問である.東京都のような大都市部では可能かもしれないが,過疎地域ではサービスの低下は避けられないと思われる.
医師の引き上げで医療格差が拡大するだけでなく在宅サービスの格差も生じるのであれば過疎地域は福祉政策のしわ寄せをまともに受けることになるのだろう.財政破綻のつけは国民に確実にはね返っているように感じる.障害者も例外ではないということでいいのだろうか.
障害者への福祉サービスを一元化し、同時に障害者に費用の1割負担を求める障害者自立支援法案が13日、衆院厚生労働委員会で自民、公明両党の賛成多数で可決された。週内にも開かれる衆院本会議で可決、参院に送付される。参院の審議が順調に進めば今国会で成立する見通し。来年1月から順次施行される。
負担増との批判を受けた与党が一部修正し、精神障害者通院費の1割負担への引き上げ(現行は5%負担)などの実施時期は、今年10月から来年1月に延期された。
同法案は、これまで身体、知的、精神の障害種別ごとに分かれていたサービス体系を一元化。市町村が運営する在宅サービスに対する国の財政負担を義務化し財政の安定を図る。また、障害者に原則1割、最高で月額4万200円を上限とする自己負担を求め、施設・通所サービスでの食費、光熱水費は実費負担とする。低所得者については負担軽減策をとる。
一元化で、現在は福祉サービスの対象外となっている精神障害者も在宅サービスの対象となる。一方、公費補助を受けていた人工透析患者など現在の「更生医療」対象者、障害児など「育成医療」対象者の医療費が来年1月から1割に引き上げられる。
自己負担分を障害者本人が払えない場合は、配偶者や親、きょうだい、子どもなど同一世帯の家族が負担。ただ、配偶者以外は(1)障害者を扶養することによる所得控除を受けていない(2)障害者を家族の公的医療保険の被扶養者としていない?場合などには負担を免除する。
同法案はまた、市町村や都道府県に対して障害者福祉計画を策定することを義務付けている。通所施設の規制を緩和し、社会福祉法人に加え特定非営利活動法人(NPO法人)の参入も認める。
障害者が一般就労に移行するための支援事業も創設。付則に、障害者の所得保障を検討することが盛り込まれた。』
障害者に費用の1割負担を求めることのどこが自立支援なのだろうか,最近の制度はまず負担増ありきで,その後に食費、光熱水費は実費負担と続き,最期に支援だの低所得者の負担軽減と続くのが決まりのようだ.支援事業が軌道にのってから負担増をお願いするのが筋ではないだろうか.順序がちがうと感じるのは私だけだろうか.
現在は福祉サービスの対象外となっている精神障害者も在宅サービスの対象となるというのもいいように聞こえるが,市町村が運営する在宅サービスが今後も地域住民の負担増なしに可能という試算は聞いたことが無い.これなどは国がまったくやってこなかった精神障害者福祉をこの機に地方に負担させただけだろう.
今後は弱小な地方自治体は在宅サービスの負担増で破綻する可能性があるがこれを国の財政負担を義務化し財政の安定を図ることで本当にふせげるのかどうか疑問である.東京都のような大都市部では可能かもしれないが,過疎地域ではサービスの低下は避けられないと思われる.
医師の引き上げで医療格差が拡大するだけでなく在宅サービスの格差も生じるのであれば過疎地域は福祉政策のしわ寄せをまともに受けることになるのだろう.財政破綻のつけは国民に確実にはね返っているように感じる.障害者も例外ではないということでいいのだろうか.
麻酔科医不足の影響?
2005年7月12日 医療の問題『--医療ミスで医師ら書類送検 呼吸器外れ女性患者死亡--
愛知県稲沢市の尾西(びさい)病院(大野恒夫(おおの・つねお)院長)で昨年10月下旬、女性患者=当時(33)=が手術中に人工呼吸器の管が外れて死亡した事故があり、稲沢署は12日、業務上過失致死の疑いで、担当した男性医師(55)=三重県桑名市=と女性看護師(33)=稲沢市=を書類送検した。
調べでは、2人は昨年10月28日午後、女性に全身麻酔をかけて卵巣のう腫(しゅ)などの手術をした際、麻酔器の設定や女性の容体を十分に見ることを怠り、麻酔を兼ねた呼吸器の人工鼻と気管チューブが外れていたのに気付くのが遅れ、死亡させた疑い。
医師らが女性の容体の変化に気付いたのは、人工鼻と気管チューブが外れてから約四十分後だった。異常を知らせるアラームのスイッチを入れておらず、発見が遅れたという。
女性は低酸素で意識不明の重体となり、同年11月14日に死亡した。』
昨年10月というから最近の話である.全国的に麻酔科医が不足しているから俗に言う術者が麻酔をかける自前麻酔での手術だったのだろうか.麻酔科医というのはある意味で高度に専門的な領域で手術のときに患者さんの全身状態を管理してくれるいわば命の守備の専門家である.野球で言えば術者が投手で麻酔科医は捕手という感じだろうか.
術者が麻酔をかける自前手術は実は病院にとって二つのメリットがあるのだ.ひとつは人手不足で麻酔科医を確保できず大学からの出張派遣もしてもらえない場合の解決策という側面で,もうひとつは麻酔管理料という健康保険診療の報酬を麻酔科医に払わずに病院の収益にできることだろう.不思議なことに麻酔専門医や指導医という資格があってもなくても診療報酬上は差がないのである.これでは,お金のために自前で麻酔をかけることを外科医に強制する病院が現れても不思議はない.
このニュースが事実だとすると麻酔器に附属する各種のモニターが適切に設定あるいは使用されていなかったようでもあり,自前麻酔をするにしてもあまりに管理がずさんだったように思われる.確かに自前でも麻酔は安全にかけられる外科医は多いだろうが,私の場合は麻酔を気にしながら手術をするのは術野に集中できないし,出血がひどい場合などには止血操作で精一杯でとても麻酔や全身状態まで気配りできる状態でない場合もあり得るので麻酔科医がいなければ手術する気にはなれない.
危機管理という面から考えたら自前麻酔の患者側のメリットは皆無であることに異議のある外科医はいないであろう.だが,現実には麻酔科医は不足しているのである.大学病院では麻酔科医が足りないために自前ではないが,麻酔科医が複数の患者を同時にかけ持ちで麻酔をかけているところもあるらしい.これでも事故が起きたらきっと麻酔科医が責められるのであろうか.地方の病院では医師不足のために自前麻酔を余儀なくされ,大学ではかけ持ち麻酔をするように指示された挙句に事故が起きたらやったものの責任というのではあまりに無責任ではないだろうか.
愛知県稲沢市の尾西(びさい)病院(大野恒夫(おおの・つねお)院長)で昨年10月下旬、女性患者=当時(33)=が手術中に人工呼吸器の管が外れて死亡した事故があり、稲沢署は12日、業務上過失致死の疑いで、担当した男性医師(55)=三重県桑名市=と女性看護師(33)=稲沢市=を書類送検した。
調べでは、2人は昨年10月28日午後、女性に全身麻酔をかけて卵巣のう腫(しゅ)などの手術をした際、麻酔器の設定や女性の容体を十分に見ることを怠り、麻酔を兼ねた呼吸器の人工鼻と気管チューブが外れていたのに気付くのが遅れ、死亡させた疑い。
医師らが女性の容体の変化に気付いたのは、人工鼻と気管チューブが外れてから約四十分後だった。異常を知らせるアラームのスイッチを入れておらず、発見が遅れたという。
女性は低酸素で意識不明の重体となり、同年11月14日に死亡した。』
昨年10月というから最近の話である.全国的に麻酔科医が不足しているから俗に言う術者が麻酔をかける自前麻酔での手術だったのだろうか.麻酔科医というのはある意味で高度に専門的な領域で手術のときに患者さんの全身状態を管理してくれるいわば命の守備の専門家である.野球で言えば術者が投手で麻酔科医は捕手という感じだろうか.
術者が麻酔をかける自前手術は実は病院にとって二つのメリットがあるのだ.ひとつは人手不足で麻酔科医を確保できず大学からの出張派遣もしてもらえない場合の解決策という側面で,もうひとつは麻酔管理料という健康保険診療の報酬を麻酔科医に払わずに病院の収益にできることだろう.不思議なことに麻酔専門医や指導医という資格があってもなくても診療報酬上は差がないのである.これでは,お金のために自前で麻酔をかけることを外科医に強制する病院が現れても不思議はない.
このニュースが事実だとすると麻酔器に附属する各種のモニターが適切に設定あるいは使用されていなかったようでもあり,自前麻酔をするにしてもあまりに管理がずさんだったように思われる.確かに自前でも麻酔は安全にかけられる外科医は多いだろうが,私の場合は麻酔を気にしながら手術をするのは術野に集中できないし,出血がひどい場合などには止血操作で精一杯でとても麻酔や全身状態まで気配りできる状態でない場合もあり得るので麻酔科医がいなければ手術する気にはなれない.
危機管理という面から考えたら自前麻酔の患者側のメリットは皆無であることに異議のある外科医はいないであろう.だが,現実には麻酔科医は不足しているのである.大学病院では麻酔科医が足りないために自前ではないが,麻酔科医が複数の患者を同時にかけ持ちで麻酔をかけているところもあるらしい.これでも事故が起きたらきっと麻酔科医が責められるのであろうか.地方の病院では医師不足のために自前麻酔を余儀なくされ,大学ではかけ持ち麻酔をするように指示された挙句に事故が起きたらやったものの責任というのではあまりに無責任ではないだろうか.
脳血管内手術での出血は事故か?
2005年7月6日 医療の問題『--手術ミスで女性が意識不明 杏林大病院、警視庁が捜査--
杏林(きょうりん)大病院(東京都三鷹市)で6月、脳血管手術を受けた東京都内の70代の女性患者が、手術後にくも膜下出血で意識不明になっていることが6日、分かった。病院側は「手術中のカテーテルの操作ミスで血管を傷つけた可能性がある」と家族らに謝罪し、警視庁三鷹署に届けた。同署は業務上過失傷害容疑で捜査を始めた。
病院は外部の専門医を含む調査委員会を設け、原因の究明を進めており、石井良章(いしい・よしあき)病院長は「結果を重く受け止め、再発防止に努めたい」としている。
病院側によると、女性は4月から歩行障害やめまいの症状があり6月20日、脳浮腫などで同病院に入院。脳硬膜の静脈に異常が見つかり、6月30日に閉塞(へいそく)した血管を再開通する手術を受けた。
手術は午前9時40分ごろに始まったが、女性が吐き気などを訴えたため約3時間で中止。女性は同日午後4時20分ごろ、くも膜下出血で昏睡(こんすい)状態となり呼吸も停止、集中治療室(ICU)で意識不明の状態が続いている。
手術は50代の助教授、40代の非常勤講師、30代の助手の3人が担当。当初は助手がカテーテルを操作したが、操作が困難になるなどして途中で助教授に交代した。3人とも手術の経験は豊富という。』
脳血管内手術中のくも膜下出血はたしかに医療事故なのかもしれないが,脳外科医からみれば治療によって起こりうる合併症のひとつであり再発防止にとりくんでもこれを0にすることは今の器具と手技ではおそらく不可能と思われる.そして出血すればほとんどの場合は致命的であるというのが現状だろう.それゆえ脳外科医の私としては直達手術が安全に行えるものまで血管内手術をするのには賛成できない.というかたとえ頭にキズが残っても血管内手術で偶発的に死ぬのだけはお断りである.
専門医とは十分なトレーニングを受けて血管内治療学会の認定を受けた医師であるが,だからといってすべての合併症を避けれるわけではないということを患者や家族も理解しておく必要があるだろう.そもそも手術を行わずに造影剤を使って脳の血管の検査をする脳血管撮影だけでさえ合併症のリスクは1%程度はあるといわれており,最近では治療に不必要な血管撮影は避ける傾向にあるぐらいなのである.
とはいえ血管内手術は直達手術より生体侵襲が少ないため高齢者の場合や,直達手術のリスクが非常に高い場合,あるいは塞栓術のように血管内からしか行い得ない場合には第一選択となる治療法であることも事実である.むしろ問題はリスクを犯しても手術をする必要があったのかとか,患者側にこういったリスクが十分に説明されて納得されていたのかということだろう.
そもそもこういった事故はミスだったのか不可避なものだったのかも術者しかわからない場合もあり結果だけで判断されるのには問題があるだろう.最近の傾向として死亡事故になると専門医であっても業務上過失致死に問われたりするので血管内治療をやる医師のストレスはかなりのものだろうと思われる.
予期し得ない,あるいは予防し得ないトラブルは臨床には付き物であり,これは初心者のミスとはちがって症例をたくさんやっていればいつかは経験する可能性のあるものである.外科医をやっていてよく思うことは「運も実力のうち」ということである.これから医師になろうと思う人は日頃から運を味方につける生活態度を心がけたほうがいいだろう.悪運が強い人は気にならないかもしれないが,気の小さい私などは最近では運に見放されないように清く正しい生活を心がけている次第なのである.
杏林(きょうりん)大病院(東京都三鷹市)で6月、脳血管手術を受けた東京都内の70代の女性患者が、手術後にくも膜下出血で意識不明になっていることが6日、分かった。病院側は「手術中のカテーテルの操作ミスで血管を傷つけた可能性がある」と家族らに謝罪し、警視庁三鷹署に届けた。同署は業務上過失傷害容疑で捜査を始めた。
病院は外部の専門医を含む調査委員会を設け、原因の究明を進めており、石井良章(いしい・よしあき)病院長は「結果を重く受け止め、再発防止に努めたい」としている。
病院側によると、女性は4月から歩行障害やめまいの症状があり6月20日、脳浮腫などで同病院に入院。脳硬膜の静脈に異常が見つかり、6月30日に閉塞(へいそく)した血管を再開通する手術を受けた。
手術は午前9時40分ごろに始まったが、女性が吐き気などを訴えたため約3時間で中止。女性は同日午後4時20分ごろ、くも膜下出血で昏睡(こんすい)状態となり呼吸も停止、集中治療室(ICU)で意識不明の状態が続いている。
手術は50代の助教授、40代の非常勤講師、30代の助手の3人が担当。当初は助手がカテーテルを操作したが、操作が困難になるなどして途中で助教授に交代した。3人とも手術の経験は豊富という。』
脳血管内手術中のくも膜下出血はたしかに医療事故なのかもしれないが,脳外科医からみれば治療によって起こりうる合併症のひとつであり再発防止にとりくんでもこれを0にすることは今の器具と手技ではおそらく不可能と思われる.そして出血すればほとんどの場合は致命的であるというのが現状だろう.それゆえ脳外科医の私としては直達手術が安全に行えるものまで血管内手術をするのには賛成できない.というかたとえ頭にキズが残っても血管内手術で偶発的に死ぬのだけはお断りである.
専門医とは十分なトレーニングを受けて血管内治療学会の認定を受けた医師であるが,だからといってすべての合併症を避けれるわけではないということを患者や家族も理解しておく必要があるだろう.そもそも手術を行わずに造影剤を使って脳の血管の検査をする脳血管撮影だけでさえ合併症のリスクは1%程度はあるといわれており,最近では治療に不必要な血管撮影は避ける傾向にあるぐらいなのである.
とはいえ血管内手術は直達手術より生体侵襲が少ないため高齢者の場合や,直達手術のリスクが非常に高い場合,あるいは塞栓術のように血管内からしか行い得ない場合には第一選択となる治療法であることも事実である.むしろ問題はリスクを犯しても手術をする必要があったのかとか,患者側にこういったリスクが十分に説明されて納得されていたのかということだろう.
そもそもこういった事故はミスだったのか不可避なものだったのかも術者しかわからない場合もあり結果だけで判断されるのには問題があるだろう.最近の傾向として死亡事故になると専門医であっても業務上過失致死に問われたりするので血管内治療をやる医師のストレスはかなりのものだろうと思われる.
予期し得ない,あるいは予防し得ないトラブルは臨床には付き物であり,これは初心者のミスとはちがって症例をたくさんやっていればいつかは経験する可能性のあるものである.外科医をやっていてよく思うことは「運も実力のうち」ということである.これから医師になろうと思う人は日頃から運を味方につける生活態度を心がけたほうがいいだろう.悪運が強い人は気にならないかもしれないが,気の小さい私などは最近では運に見放されないように清く正しい生活を心がけている次第なのである.
『--除細動器使用で書類送検 救命士、医師しか使えず--
秋田県警大館署は4日、医師しか使用してはいけない除細動器を使ったとして、医師法違反の疑いで同市消防署勤務の30代の男性救急救命士を書類送検した。
調べによると、救命士は3月25日、心室細動を起こした男性患者を同市の病院へ搬送した際、独断で手動式の除細動器を男性に使用した疑い。
手動式除細動器の使用は医療行為に当たり、医師以外は使用できないが、病院の当直医が別の患者の救命措置中だったため、救命士は違法行為と知っていて使用した。
その後、当直医も使い、男性は一時心拍を再開したが、間もなく死亡した。』
AED(自動体外式除細動器)機能がついていてそれを使用していれば独断で使用しても問題なかったということになっていたかも知れない.たとえ手動式であっても医師の指示のもとで適切に使用されたのであれば問題ないのだろうが,違法行為と知っていながらやったということであれば書類送検もやむをえないだろう.
最近では空港などの公共施設に自動体外式除細動器が置かれているようで職員が研修を受けているらしい.これだけで救命できるとは限らないが,準備されているだけでも救命の確率は上がるし医師がいなくてもいいわけだから大歓迎である.ついでに人工呼吸法や心臓マッサージの方法などももっと広めてもらいたいものだ.消防署などで救命救急士が市民対象の講習会をやっているはずである.スクーバダイビングの講習でもレスキューでやったことがある人もいるだろう.
もっともこういうニュースを見ると救命がうまくいかなかった時になにか責任を問われるのではないかと感じて腰が引けてしまう人もいるだろう.実際それは大部分の医師もおそらくそう思っているはずである.飛行機や船で旅行中に「どなたかお医者様はいらっしゃいませんか.」なんていう放送が聞こえると脈が速くなってしまうのは私だけではないだろう.
市立病院で行われている救命救急士の研修での出来事だったのであろうが,病院側の研修体制にも問題はなかったのであろうか.救命救急士の医療行為についてはもっと規制を緩和すべきだと思う.法的な問題を含めこんなことで救命救急士のやる気をそがないように是非配慮してもらいたいと思う.
秋田県警大館署は4日、医師しか使用してはいけない除細動器を使ったとして、医師法違反の疑いで同市消防署勤務の30代の男性救急救命士を書類送検した。
調べによると、救命士は3月25日、心室細動を起こした男性患者を同市の病院へ搬送した際、独断で手動式の除細動器を男性に使用した疑い。
手動式除細動器の使用は医療行為に当たり、医師以外は使用できないが、病院の当直医が別の患者の救命措置中だったため、救命士は違法行為と知っていて使用した。
その後、当直医も使い、男性は一時心拍を再開したが、間もなく死亡した。』
AED(自動体外式除細動器)機能がついていてそれを使用していれば独断で使用しても問題なかったということになっていたかも知れない.たとえ手動式であっても医師の指示のもとで適切に使用されたのであれば問題ないのだろうが,違法行為と知っていながらやったということであれば書類送検もやむをえないだろう.
最近では空港などの公共施設に自動体外式除細動器が置かれているようで職員が研修を受けているらしい.これだけで救命できるとは限らないが,準備されているだけでも救命の確率は上がるし医師がいなくてもいいわけだから大歓迎である.ついでに人工呼吸法や心臓マッサージの方法などももっと広めてもらいたいものだ.消防署などで救命救急士が市民対象の講習会をやっているはずである.スクーバダイビングの講習でもレスキューでやったことがある人もいるだろう.
もっともこういうニュースを見ると救命がうまくいかなかった時になにか責任を問われるのではないかと感じて腰が引けてしまう人もいるだろう.実際それは大部分の医師もおそらくそう思っているはずである.飛行機や船で旅行中に「どなたかお医者様はいらっしゃいませんか.」なんていう放送が聞こえると脈が速くなってしまうのは私だけではないだろう.
市立病院で行われている救命救急士の研修での出来事だったのであろうが,病院側の研修体制にも問題はなかったのであろうか.救命救急士の医療行為についてはもっと規制を緩和すべきだと思う.法的な問題を含めこんなことで救命救急士のやる気をそがないように是非配慮してもらいたいと思う.
『 --自衛隊医官をへき地に派遣 臨床経験積ませる狙いも--
へき地の医師不足対策を話し合う厚生労働省の検討会は1日、自衛隊の医官を一般病院に派遣するという提案を盛り込んだ報告書をまとめた。
医官が診療するのは基本的に自衛官だけで「自衛官は元気なため、症例が足りない」(防衛庁の担当者)のが実情。臨床経験不足が指摘される医官の診療技術を向上させたい防衛庁も提案に前向きで、早ければ来年度にも実施される見通し。
地方の病院では、救急医療のような過重労働を伴う医療分野で医師が減少したり、大学病院が派遣していた医師を引き揚げたりして、医師不足が深刻化している。
報告書などによると、医官の派遣先は、専門的な研修を受けられる地域の中核病院などが対象で、病院の地域医療支援などを通じ、へき地の医師不足解消に貢献できるという。具体的な派遣方法は今後検討する。
防衛庁によると、自衛隊の医官は906人(昨年11月末現在)で、全国16の自衛隊病院、防衛医大病院、各部隊に勤務。一部は一般人も診療しているが、臨床経験が少ないことを理由に早期退職する医官が増加し、2001年度ごろから退官者が任官者を上回る傾向が続いている。』
命令されれば戦地にも赴く医官であれば地方の中核病院にも赴任させることは可能だろう.だが,906人中何人を回せるのであろうか.自衛隊の医官で卒後数年の医師であれば経験症例数を増やすため喜んで働く可能性もあるからいいのかも知れない.だが,一方で収入のためにアルバイトをしている医官がいるのも現実である.
実際にやってみればわかることであるが,同じ医師免許でありながら症例数も収入も少ないことに我慢をしていた医官が一般病院での勤務に慣れてしまえばよほど自衛隊の階級制度が好きなものでもなければ自衛隊には残らないだろう.「臨床経験が少ないことを理由に早期退職する医官が増加し、2001年度ごろから退官者が任官者を上回る傾向が続いている。」とあるが,それだけが理由とは思えないのは私だけだろうか.
へき地の医師不足対策を話し合う厚生労働省の検討会は1日、自衛隊の医官を一般病院に派遣するという提案を盛り込んだ報告書をまとめた。
医官が診療するのは基本的に自衛官だけで「自衛官は元気なため、症例が足りない」(防衛庁の担当者)のが実情。臨床経験不足が指摘される医官の診療技術を向上させたい防衛庁も提案に前向きで、早ければ来年度にも実施される見通し。
地方の病院では、救急医療のような過重労働を伴う医療分野で医師が減少したり、大学病院が派遣していた医師を引き揚げたりして、医師不足が深刻化している。
報告書などによると、医官の派遣先は、専門的な研修を受けられる地域の中核病院などが対象で、病院の地域医療支援などを通じ、へき地の医師不足解消に貢献できるという。具体的な派遣方法は今後検討する。
防衛庁によると、自衛隊の医官は906人(昨年11月末現在)で、全国16の自衛隊病院、防衛医大病院、各部隊に勤務。一部は一般人も診療しているが、臨床経験が少ないことを理由に早期退職する医官が増加し、2001年度ごろから退官者が任官者を上回る傾向が続いている。』
命令されれば戦地にも赴く医官であれば地方の中核病院にも赴任させることは可能だろう.だが,906人中何人を回せるのであろうか.自衛隊の医官で卒後数年の医師であれば経験症例数を増やすため喜んで働く可能性もあるからいいのかも知れない.だが,一方で収入のためにアルバイトをしている医官がいるのも現実である.
実際にやってみればわかることであるが,同じ医師免許でありながら症例数も収入も少ないことに我慢をしていた医官が一般病院での勤務に慣れてしまえばよほど自衛隊の階級制度が好きなものでもなければ自衛隊には残らないだろう.「臨床経験が少ないことを理由に早期退職する医官が増加し、2001年度ごろから退官者が任官者を上回る傾向が続いている。」とあるが,それだけが理由とは思えないのは私だけだろうか.
『--終末期の医療も自宅で 厚労省が中間まとめ--
厚生労働省は29日、社会保障審議会医療部会を開き、患者が終末期を含めて住み慣れた自宅や地域で治療を受けることを可能にする在宅医療の推進など、新たな医療提供体制に関する中間まとめ案を提示した。年内に部会の意見として集約。医療制度改革の一環として、来年の通常国会に関連法案を提出する見通し。
中間まとめ案では在宅医療について、介護保険制度と役割分担しながら「患者・家族が希望する場合の選択肢となり得る体制を、地域において整備することが重要」と指摘。主治医に加え訪問看護によるサービスの充実、薬局・薬剤師の積極的な関与など、医療関係者の協力体制を整備すべきだとした。
さらに終末期の検討課題として、(1)かかりつけの医師と容体が急変した際の受け入れ病院の確保(2)主治医以外がみとった場合の死亡診断書の扱いや自宅での麻薬の取り扱い?などを挙げた。
同省は今回の制度改革で、都道府県が策定する医療計画の内容を見直し、地域の医療機関の役割分担・連携を強化する。入院から在宅療養まで「切れ目のない医療の流れを作り、患者が早く自宅に戻れるようにする」方針で、在宅医療は新たな医療提供体制の中で重要な役割を担う。
患者の生活の質(QOL)を高め、同時に不必要な入院日数を減らすことにより医療費の適正化も狙う。』
いい話のように聞こえるのだが,在宅医療はすでに病院にとっては不採算部門になっている.診療報酬改定で在宅診療自体の単価が引き下げられたこともあるが,ただでさえ足りない医師を在宅に回すよりは病院で外来でもやったほうが効率がいいということもあるだろう.
在宅医療専門医なんていうのを作ったらいいのではないだろうか.ついでに僻地診療専門医なんていうのもいいかも知れない.もちろん在宅診療や僻地診療に限定した医師免許という意味である.そんな医師を希望する人には是非なってもらいたいものだ.
自分自身でも在宅診療に関わっていたこともあるし,神経難病の患者さんを自宅で療養できるようにしてみたこともあるが,はっきり言って開業内科医の在宅診療に嫌気がさしたので患者さんの家族に最近は在宅診療を勧める気がしないのである.
終末期に限っていうと家族の方の簡単なお世話だけで在宅療養ができる患者さんがそれほど多くないということもある.仮に可能そうであっても実際には常時付き添いが必要で労力もそれなりに必要なので共働きの家庭にはほとんど無理な話であることが多い.
保育の問題もそうであるが,何かあると妻が仕事を辞めて家庭の面倒を引き受けなければならないというのでは誰も患者を退院させようなどとは思わない.制度をつくるのは勝手だが社会的なインフラを整備してからでないと絵にかいた餅が増えるだけである.そもそも家で面倒みきれない患者(老人?)が病院に集まるようになったのもそこが始まりだったのではないだろうか.まさに社会的対応の不備による入院と言う意味での社会的入院である.
厚生労働省は29日、社会保障審議会医療部会を開き、患者が終末期を含めて住み慣れた自宅や地域で治療を受けることを可能にする在宅医療の推進など、新たな医療提供体制に関する中間まとめ案を提示した。年内に部会の意見として集約。医療制度改革の一環として、来年の通常国会に関連法案を提出する見通し。
中間まとめ案では在宅医療について、介護保険制度と役割分担しながら「患者・家族が希望する場合の選択肢となり得る体制を、地域において整備することが重要」と指摘。主治医に加え訪問看護によるサービスの充実、薬局・薬剤師の積極的な関与など、医療関係者の協力体制を整備すべきだとした。
さらに終末期の検討課題として、(1)かかりつけの医師と容体が急変した際の受け入れ病院の確保(2)主治医以外がみとった場合の死亡診断書の扱いや自宅での麻薬の取り扱い?などを挙げた。
同省は今回の制度改革で、都道府県が策定する医療計画の内容を見直し、地域の医療機関の役割分担・連携を強化する。入院から在宅療養まで「切れ目のない医療の流れを作り、患者が早く自宅に戻れるようにする」方針で、在宅医療は新たな医療提供体制の中で重要な役割を担う。
患者の生活の質(QOL)を高め、同時に不必要な入院日数を減らすことにより医療費の適正化も狙う。』
いい話のように聞こえるのだが,在宅医療はすでに病院にとっては不採算部門になっている.診療報酬改定で在宅診療自体の単価が引き下げられたこともあるが,ただでさえ足りない医師を在宅に回すよりは病院で外来でもやったほうが効率がいいということもあるだろう.
在宅医療専門医なんていうのを作ったらいいのではないだろうか.ついでに僻地診療専門医なんていうのもいいかも知れない.もちろん在宅診療や僻地診療に限定した医師免許という意味である.そんな医師を希望する人には是非なってもらいたいものだ.
自分自身でも在宅診療に関わっていたこともあるし,神経難病の患者さんを自宅で療養できるようにしてみたこともあるが,はっきり言って開業内科医の在宅診療に嫌気がさしたので患者さんの家族に最近は在宅診療を勧める気がしないのである.
終末期に限っていうと家族の方の簡単なお世話だけで在宅療養ができる患者さんがそれほど多くないということもある.仮に可能そうであっても実際には常時付き添いが必要で労力もそれなりに必要なので共働きの家庭にはほとんど無理な話であることが多い.
保育の問題もそうであるが,何かあると妻が仕事を辞めて家庭の面倒を引き受けなければならないというのでは誰も患者を退院させようなどとは思わない.制度をつくるのは勝手だが社会的なインフラを整備してからでないと絵にかいた餅が増えるだけである.そもそも家で面倒みきれない患者(老人?)が病院に集まるようになったのもそこが始まりだったのではないだろうか.まさに社会的対応の不備による入院と言う意味での社会的入院である.
『 --医師定員の一律規制緩和へ へき地で知事裁量認める 48年の法施行以来初 厚労省、地域事情を考慮--
厚生労働省は25日までに、医療機関の患者数に応じて必要な医師や看護師などの人数を示す全国一律の「配置標準」を一部緩和し、人員確保が難しいへき地などでは都道府県知事が地域の実情に合わせて決めることができるよう制度を見直す方針を固めた。
全国一律の原則を変えるのは1948年の医療法施行以来初めて。来年の医療制度改革の一環として、29日の社会保障審議会医療部会に示す中間まとめ案に方向性を盛り込む。
一律の規制は、大学病院の医師らが実際に勤務していない病院から報酬を受ける「名義貸し」の背景とされている。
厚労省によると、国は引き続き目安として配置標準を示すが、都道府県が策定する医療計画の中で、必要な医療提供体制が整備されている地域は知事の裁量で緩和を認めることを検討する。
緩和条件として、病院間の支援体制充実やテレビ電話を使う遠隔医療導入などが考えられる。医療機関には人員配置数の情報公開を促し、患者が十分な情報から施設を選択できる体制が整えば、将来的に配置標準の廃止も検討するという。
現行制度では、医師や看護師の配置数が標準を大幅に下回る医療機関は診療報酬の支払いが減額されたりする。
規制を免れるため北海道や東北では大学病院の医師の「名義貸し」が問題化。医療部会でも「必要な医師数は地域で違うのに一律規制は難しい」との意見があった。
厚労省の集計では、2003年度に立ち入り検査した全国の病院のうち、医師配置が標準に満たない病院は約5分の1。04年度に始まった医師臨床研修制度の影響で、大学病院が医師を派遣先の病院から引き揚げるケースも相次ぎ、医師不足は深刻化している。』
名義貸しが北海道から発覚したせいか道内の病院に対する監査は非常に厳しく全国と比べて北海道は特に処分が多かったような印象がある.さらに問題と思われるのは北海道医師会と社会保険庁が情報交換をして医師会にとって都合の悪い病院をこの機に乗じて処分したと思われることである.単なる噂というのは簡単だが,あとで問題になることがないように監督官庁である厚生労働省には道内の病院に対する監査と処分が公平かつ適正に行われたかどうかを再確認してもらいたいものだ.
以前に道知事が要望していた医師定数に関する知事の権限を認められたという点では評価できると思う.ただ,これで僻地の病院の医師の定数は減少することはあっても増加することはないであろう.そうなると医師の労働量という点からはあまり歓迎すべき事態ではない.過労死するほど忙しいというのを私はまだ経験したことはないが,拘束時間が多いことは医師になった時からであるし2日間くらい家に帰れないことはざらにある.こんな状況が続くのも医師が足りないからなのであるが,問題はただ医師数が少ないからだけではない.
医師の世界も年功序列である.中には大学教授や大病院の院長でありながら月に数回は当直もするなどという人格者もいるが99%そんなことはない.ところが,地方の小さな病院では院長が週に1回当直してもまったく当直要員が足りなくて困っているところが多いのが実情だ.労働基準法では医師の週当りの労働時間は44時間でそれによると当直業務は週1回のはずであるがそんなことが守られている病院はおそらくほとんどないのではないだろうか.
知事が地域の実情に合わせて決めることができるよう制度を見直した結果,さらに僻地の医師数が減れば当直や急患の対応などで個々の医師の負担はさらに増加することを私は危惧している.その結果として医療事故などもきっと増加するだろう.これでは意味がないだろう.そこで私は厚生労働省が医師の定数を管理するのではなく医師の勤務実態をよく把握して医師の過労を防ぐことで適正な医師の配置数を確保するように求めたい.
勤務医というのは病院経営者からみれば単なる労働者にすぎないのである.最近は医療事故を起したら医師個人がその責任を自分で負うという念書みたいなものを書かせる病院まであるようだ.不当に長い勤務による過労から判断力が低下して事故を起した揚げ句に責任をとらされたり,責任感で働き続けて過労死するというのではあんまりではないだろうか.こう考えると医師という職業は今やハイリスクな職業になったと言えるだろう.
今回の規制緩和で医療行政に関する権限が増大した知事にはこの際よりよい医療サービスを提供するのには医師の必要数をどう決定するのかよく考えていただきたいものだ.
厚生労働省は25日までに、医療機関の患者数に応じて必要な医師や看護師などの人数を示す全国一律の「配置標準」を一部緩和し、人員確保が難しいへき地などでは都道府県知事が地域の実情に合わせて決めることができるよう制度を見直す方針を固めた。
全国一律の原則を変えるのは1948年の医療法施行以来初めて。来年の医療制度改革の一環として、29日の社会保障審議会医療部会に示す中間まとめ案に方向性を盛り込む。
一律の規制は、大学病院の医師らが実際に勤務していない病院から報酬を受ける「名義貸し」の背景とされている。
厚労省によると、国は引き続き目安として配置標準を示すが、都道府県が策定する医療計画の中で、必要な医療提供体制が整備されている地域は知事の裁量で緩和を認めることを検討する。
緩和条件として、病院間の支援体制充実やテレビ電話を使う遠隔医療導入などが考えられる。医療機関には人員配置数の情報公開を促し、患者が十分な情報から施設を選択できる体制が整えば、将来的に配置標準の廃止も検討するという。
現行制度では、医師や看護師の配置数が標準を大幅に下回る医療機関は診療報酬の支払いが減額されたりする。
規制を免れるため北海道や東北では大学病院の医師の「名義貸し」が問題化。医療部会でも「必要な医師数は地域で違うのに一律規制は難しい」との意見があった。
厚労省の集計では、2003年度に立ち入り検査した全国の病院のうち、医師配置が標準に満たない病院は約5分の1。04年度に始まった医師臨床研修制度の影響で、大学病院が医師を派遣先の病院から引き揚げるケースも相次ぎ、医師不足は深刻化している。』
名義貸しが北海道から発覚したせいか道内の病院に対する監査は非常に厳しく全国と比べて北海道は特に処分が多かったような印象がある.さらに問題と思われるのは北海道医師会と社会保険庁が情報交換をして医師会にとって都合の悪い病院をこの機に乗じて処分したと思われることである.単なる噂というのは簡単だが,あとで問題になることがないように監督官庁である厚生労働省には道内の病院に対する監査と処分が公平かつ適正に行われたかどうかを再確認してもらいたいものだ.
以前に道知事が要望していた医師定数に関する知事の権限を認められたという点では評価できると思う.ただ,これで僻地の病院の医師の定数は減少することはあっても増加することはないであろう.そうなると医師の労働量という点からはあまり歓迎すべき事態ではない.過労死するほど忙しいというのを私はまだ経験したことはないが,拘束時間が多いことは医師になった時からであるし2日間くらい家に帰れないことはざらにある.こんな状況が続くのも医師が足りないからなのであるが,問題はただ医師数が少ないからだけではない.
医師の世界も年功序列である.中には大学教授や大病院の院長でありながら月に数回は当直もするなどという人格者もいるが99%そんなことはない.ところが,地方の小さな病院では院長が週に1回当直してもまったく当直要員が足りなくて困っているところが多いのが実情だ.労働基準法では医師の週当りの労働時間は44時間でそれによると当直業務は週1回のはずであるがそんなことが守られている病院はおそらくほとんどないのではないだろうか.
知事が地域の実情に合わせて決めることができるよう制度を見直した結果,さらに僻地の医師数が減れば当直や急患の対応などで個々の医師の負担はさらに増加することを私は危惧している.その結果として医療事故などもきっと増加するだろう.これでは意味がないだろう.そこで私は厚生労働省が医師の定数を管理するのではなく医師の勤務実態をよく把握して医師の過労を防ぐことで適正な医師の配置数を確保するように求めたい.
勤務医というのは病院経営者からみれば単なる労働者にすぎないのである.最近は医療事故を起したら医師個人がその責任を自分で負うという念書みたいなものを書かせる病院まであるようだ.不当に長い勤務による過労から判断力が低下して事故を起した揚げ句に責任をとらされたり,責任感で働き続けて過労死するというのではあんまりではないだろうか.こう考えると医師という職業は今やハイリスクな職業になったと言えるだろう.
今回の規制緩和で医療行政に関する権限が増大した知事にはこの際よりよい医療サービスを提供するのには医師の必要数をどう決定するのかよく考えていただきたいものだ.