空白期間

2013年11月26日 医療の問題
『HIV感染血液 数人に輸血…「空白期間」に献血か?

 エイズウイルス(HIV)に感染した献血者の血液が日赤の安全検査をすり抜け、患者数人に輸血されていたことが25日、関係者への取材で分かった。厚生労働省と日赤が輸血を受けた患者の感染の有無を調べている。

 2003年に発覚した輸血によるHIV感染事例を受け、日赤が安全対策を強化して以降、感染者の血液が患者に輸血されたのは初めて。厚労省は26日に血液事業部会運営委員会を開き、対応を協議する。感染初期にはウイルス量が少なく、検査をしても感染が分からない「空白期間」がありこれがすり抜けの原因となった可能性が高い。』

 2003年ということはもう10年前の話だが,その時も「空白期間」が話題になっていた気がする.私も外科医であるので手術の際には必ず輸血を準備するのだが,最近は使わない事のほうが多いので輸血の準備量を最低限にしている.

 輸血は返品出来ないので使わなかった場合は,病院の不良在庫になるわけで大病院なら他に輸血が必要な人がいればそちらで消費してもらえるが,そうでない場合はもったいないが破棄するしかないものだ.

 輸血の可能性のある患者さんには,必ず血液製剤使用の同意書をもらうことになっているのでその際に肝炎やエイズウィルスなどの感染症のリスクの話は必ずするが,頻度は少ないとはいえ考えうることも考えもしないことも起こりうるのが医療の現場である.

 最近は,医療事故の話題も一時に比べればずいぶん減ったような気がするが,注意してみればほとんどは可能性として考えられることのように思われる.しかし,それを確実に避ける事ができるかと言えば,100%というのは不可能なことだろう.

 私もベテランと呼ばれるようになってずいぶん経つしそれなりの症例数もこなしてきたが,未だに経験していなかったような事態に突然巻き込まれて今日はひどい一日だったというようなことも1年に何回かはあるのだから,たとえ考えていてもいつ起きるわからないことを完全に避けるのは不可能だ.

 だが,全ての可能性にあらかじめ対処する事が出来ないとしても不安や恐れを抱いていては前に進むことが出来ない.だから今出来る事にベストを尽くすしかない.それを勇気というのかどうか私は知らない.自分の前にある道を進む事しかできないから,せめて立ち止まったり後戻りして自分に残された時間を無駄にしないようにするだけなのだ.

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