『東電の口利きで電気料金格安になると大企業の関係者証言

 東京電力は4月1日から契約電力50キロワット以上の企業を対象に、平均17%に及ぶ一斉値上げを発表した。しかし、解せないのは、電気料金値上げで最も大きな打撃を受けるはずの大企業が、東電の値上げについて批判せずダンマリを決めこんでいることだ。経団連のトップである米倉弘昌・会長に至っては、「今の段階では(値上げは)やむをえない」と容認の姿勢まで見せてしまっている。

 そこには秘密がある。1990年代の電力自由化によって、大口事業者向けは「自由化部門」とされ、電気料金は電力会社と顧客企業との相対契約となった。問題は、東電と各企業との契約である。その内容はまったく公にされていないが、東電と“親密な関係”にある大手企業だけが優遇され、電気料金も格安になっているというのである。

 大手企業は一般家庭の30~40%程度の料金で電気を使用しているとの試算もある。
 東電と企業との“特殊事情”で値引きされるケースもあるという。

 米倉経団連会長は東電の経営問題について、「経営陣の経営態度が悪かったのではなく、大災害が原因」だとし、原発事故の補償については「国が全額賠償負担すべき」との考えを貫いている。

 露骨な東電擁護だが、その裏には米倉氏が会長を務める住友化学と東電の間の“特殊事情”があると見られている。住友化学関係者が明かす。

「化学業界は電力を大量に使うので、東電とは浅からぬ付き合いがある。東電は電力業界の中心にいるので、管内でなくともその影響力は及ぶ。ウチの場合、岡山県倉敷市にある主力工場の電気料金は、東電さんの計らいでうんと安くしてもらえている」
 岡山県倉敷市は中国電力の管内だが、電力業界の“盟主”である東電の口利きで、電気料金を安くしてもらっているというのだ。

 この疑問を住友化学にぶつけると、次のような回答があった。

「個別な契約なので詳細についてはお答えできない。岡山プラントは中国電力から電気を購入しており、東電の口添えという事実はない。千葉工場は大半の電力を自家発電で賄っているが、賄いきれない時間、時期は東電から調達している。大口契約の割引は受けているが、特別安いかどうかは判断できない」(コーポレートコミュニケーション部)

 東電にも同じ問いをぶつけた。すると、中国電力に対する「口利き」を否定した上で「東京電力と関係が深いという理由で電気料金に特別な便宜をはかるという事実はまったくありません」(総務部広報グループ)と回答した。また、東電管内における住友化学との契約についても尋ねたが、「個別の契約内容については回答を控える」として詳細を明かさなかった。

 しかし、ある経団連関係者はこっそり打ち明ける。

「米倉氏は2004年に経団連副会長に就任したが、当時の経団連は前評議員会議長だった那須翔氏や旧経団連元会長の平岩外四氏ら東電出身者の威光がまだまだ強く、いろいろ世話になったといっていた。もともと東電は常に経団連のなかで中枢的な地位を占めてきた。経団連に加盟している大企業と東電の間には、多かれ少なかれ“特殊事情”がある。東電批判が聞かれないのも当然だ」

 東電は経団連のライフラインを握ることで、実質的に日本経済を牛耳ってきたのである。』

 「電力自由化」というのは電力会社による実効的な経済支配だったということでしょうか.そして,そこにまた財務省や経産省の官僚が多数天下りするスペースを作り出すという何か最近よく聞く話ですが,日本はずーっとこういう事を国策としてやり経済成長してきたのですね.

 だが,今までの方法では財政破綻が目立って来たので,そこは国民の税金で埋め合わせようというのでしょう.経団連の大企業も電気を原子力に頼れなくなった埋め合わせを国民に負担してもらい,自分たちだけは東電と割引契約を継続したいというわけでしょいうか.

 それにしても,私が思うのは米倉弘昌経団連会長の「今の段階では(値上げは)やむをえない」なんてよく言えるなということです.企業は利益を追求するものだから当然なのかもしれませんが,その企業の製品を買うのは私たちです.とりあえず住友化学とキャノンの製品を思い切り買い控えしてやろうかと思います.
『再稼働への新基準了承

 野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら三閣僚は五日夜、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題を協議し、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえた新しい安全基準(骨子)をおおむね了承した。緊急安全対策によって一定の安全性が保たれ、電力会社が格納容器のベント(排気)時に放射性物質を取り除くフィルターの設置を確約すれば、設置が間に合わなくても再稼働を認める方針。再稼働を優先する政府の姿勢が鮮明になった。 

 首相らは六日に再度協議し、基準に照らして大飯原発に不足している部分を検討する。関電にフィルター設置や放射線対策を施した免震施設の建設など中期的対策の計画を示すよう指示する。計画に具体性があると認められれば、枝野氏が福井県に出向き、再稼働への理解を求める。

 福島事故を受け、既に多くの原発で、非常用電源車の配備や建屋の浸水対策、冷却機能の喪失に備えた消防ポンプ車の配備など緊急対策が取られた。これらが機能し、福島事故と同じような津波に襲われても、耐えられると確認できることが再稼働を認める基本条件となる。

 フィルターの設置などは数年かかるため、政府は電力会社などに確実に設置すると確約させることで、再稼働を認める方針だ。

 緊急対策により、原発の安全性は確かに向上した。だが、これで事故が確実に防げるわけではない。原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長らがこれらの緊急安全対策はあくまで「緊急避難的な措置」と指摘している。

 福島事故が起きるまでは、原発の安全神話に縛られ、ベントをするような事態は起きないとされてきた。そのため、欧州の原発では標準的なフィルターはなく、作業員を守る免震施設はあっても被ばく対策は不十分という状況が続いてきた。

 今回、政府が示した基準は、こうした状況はできる限り早く解消するよう電力事業者に求める。ただし、フィルターなどが整備されない段階でも再稼働は認められる。事故は起きないから、数年のうちに整備すればよい-。これでは安全神話が少し形を変えただけとも言える。

 大飯原発の再稼働議論が本格化した四月初旬、政府・与党内では「班目問題」という言葉が飛び交った。

 「安全評価(ストレステスト)の一次評価だけでは安全性は分からない」と発言し続ける班目委員長が、再稼働のじゃまになるという意味だ。

 判断基準には「事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、不断に実施していく事業姿勢が明確化されていること」という項目が入った。

 班目氏の批判にきちんと対応している姿勢を示す狙いもありそうだが、本当に実行されるかどうかは、これからの政府の行動にかかっている。』


『東日本大震災:福島第1原発事故 2号機の格納容器は地震で損傷?

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、2号機の原子炉格納容器が地震で壊れたかどうかが論争になっている。2号機からは事故5日目の昨年3月15日朝に大量の放射性物質が放出され、福島県飯舘村などに落ちて土壌汚染が広がった可能性が高い。原因解明は再発防止に欠かせない。先月に福井市で開かれた日本原子力学会での議論を紹介する。

 ◇原子力学会で議論

 原子炉は、原子炉圧力容器を収めた格納容器と、その下部のドーナツ状で水が蓄えられた「圧力抑制室」で構成される。高圧になった格納容器や圧力容器の内部の蒸気を抑制室に逃がして冷やし、圧力を下げる。

 東電は事故当初、燃料が空だきのために900度以上になって溶融し、水素が発生。水素爆発によって抑制室が損傷したとみていた。昨年3月15日午前6時過ぎ、付近で爆発音が聞こえ、抑制室の圧力計は0気圧を計測。直後から敷地周辺の放射線量が急に上昇したからだ。

 ◇東電が見解を修正

 しかし、東電は昨年12月、地震計データから損傷時に伴う揺れは4号機の水素爆発に由来すると修正。抑制室の圧力計は「故障の可能性が高い」と判断した。高温に弱い格納容器上部の一部が溶けて損傷し、放射性物質が漏れたと推測した。実際、3月15日午前7時20分に7.3気圧だった格納容器内の圧力は約4時間で1.5気圧に降下。敷地周辺の放射線量も上昇していた。

 これに対し、元日本原子力研究開発機構上級研究主席の田辺文也さん(66)は「格納容器上部の接続部の溶融だけでは説明できない現象がある」と主張。その象徴が、炉心溶融後の15日午前1時過ぎからの5時間で、圧力容器から格納容器に溶け落ちた燃料の影響で、放射線量が2.1倍に上昇した一方で、抑制室では逆に線量は4割下がっていることだ。

 そこで、田辺さんは「抑制室が地震で損傷していると仮定すれば、抑制室の線量が下がった理由を説明できる」と解説する。抑制室には水が蓄えられているので、格納容器のようには高温になりにくく溶融による損傷は考えにくいという。

 東電は、抑制室の状況について、「軽微な損傷はあるかもしれないが、大規模に壊れていたら、15日朝まで7.3気圧を保てない」としている。』

 政府は2号機の格納容器が地震で損傷した可能性が原子力学会で議論されていたということを知っているのかそれとも知らないふりをしているのか.東電は,あくまで事故は津波によるものということにしないと原子炉の耐震基準そのものが変わることになるから見解を修正したのではないだろうか.政府内で「班目問題」などと言っているようでは,はじめに再稼働ありきと思われても仕方ないだろう.

 ベント(排気)時に放射性物質を取り除くフィルターを設置したところで格納容器につながる抑制室(抑制プール)が地震で壊れたのでは何の意味もないから,班目春樹委員長らがこれらの緊急安全対策はあくまで「緊急避難的な措置」と指摘するのはもっともな話でこれを無視するような安全基準はまったくでたら目だ.もし,原子炉の耐震基準そのものに問題があるならば全国の原発はもう使い物にならないだろう.

 おまけに判断基準に「事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、不断に実施していく事業姿勢が明確化されていること」という項目が入ったところで,データのねつ造を平気でするような電力会社が自らコスト増大を招くようなことを自主的にするなんて到底信じられないから,せいぜい事故が起きた時に政府がその責任を電力会社に転嫁する程度の役にしか立たないのではないだろうか.
 

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