『厚労省の「ワクチン接種システム」がお粗末過ぎる 河野大臣のイライラは募るばかり
米製薬大手ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンが、2月12日、ついに成田空港に到着した。接種の日程が決まり次第、保管されている超低温冷凍庫から冷凍状態で各地に配送されるというが、問題は山積みだ。
「ワクチン接種が、完全に地方自治体任せになっていることに驚かれていました」
河野太郎行革担当相がワクチン接種担当大臣に指名され、「現状把握」した様子を見ていた官邸のスタッフのひとりはこう語る。コロナの感染拡大が収まらないなか、ワクチン接種がいつ始まり、全国民が接種し終わるのにどれぐらいの時間がかかるのかは、国民的関心事と言っていい。
ところが昨年4~5月の緊急事態宣言以降、ワクチン接種の準備を進めてきたはずの厚生労働省の「計画」があまりにも「のんびり」していて、この先どうなるか分からない。
「ワクチン接種を何とか始められたとしても、いつ終わるのか、皆目見当が付かない状況です」
と、河野大臣に近い若手自民党議員も言う。
菅義偉首相は2月2日に首相官邸で行われた記者会見で、なぜ他の先進国に比べて接種開始が遅れているのかと問われ、「ワクチンの確保は、日本は早かったと思います。全量を確保することについては早かったと思います」と、必死に“成果”を強調していた。
実は、菅首相の答えはある意味では正しい。厚労省の「関心事」はワクチンを確保して自治体に分配するところまでで、そこから先、実際に住民に接種するのは「自治体の責任」というのが厚労省つまり国のスタンスだからだ。
冒頭の官邸スタッフが語る。
「厚労省は昨年夏からワクチンを届けるためのシステム開発に乗り出していました。『ワクチン接種円滑化システム』というもので、略称で『V-SYS(ブイシス)』と呼ばれています。しかし、このシステムはワクチンの需給に合わせて自治体に配送することだけを管理するもので、誰にいつどこで打ったかを記録する仕組みがないことが昨年末に分かり、官邸で大騒ぎになりました。
1月に急遽、河野氏がワクチン担当に任命された背景には、厚労省の言いなりになっている田村憲久厚労相には任せておけない、という菅首相の判断もあったようです」
しかも、自治体に配送するのは、「国」ではない。羽田空港に到着したワクチンを冷凍庫に入れて自衛隊のトラックに積み込み、全国に向けて続々と運び出されていくというような「有事」の光景を想像していたが、どうもそうではないらしい。
「V-SYSを通じて自治体への配分を厚労省が行い、システム上、“注文”を受けたワクチンメーカーが自治体の基幹医療施設や集団接種会場に運びます。その運搬は、いつもインフルエンザワクチンなどを病院に届けている“医薬品卸会社”の仕事になります」(同)
結局、厚労省は今までと同じ「平時」の対応を行うつもりだ。
「しかし、未曽有のコロナ禍に対応できるような人員や車両を、医薬品卸会社が確保しているのか、はなはだ疑問です」(同)
さらに基幹医療施設から先は完全に自治体任せだという。そこでも同じ問題が持ち上がっている。首都圏の中核自治体の担当者は言う。
「病院や医院、老人保健施設などにどうやって運ぶのか。民間の宅配便会社に委託するのか、市の職員が運ぶのか今、急いで検討していますが、人手や車が確保できるかが最大のポイントです。
ファイザー社のワクチンはマイナス75度以下で保管する必要があり、それ以上の温度の場合、3~4時間で使い切る必要があるんです。そうでなくても足りるかどうか分からないワクチンを、無駄を出さずに接種できるかどうか、現状ではまだわかりません。
誰にいつワクチンを打ったか、誰がまだ打っていないかといった接種情報の把握も自治体任せにされているのですが、厚労省は幼児の予防接種などを記録する自治体の『予防接種台帳』を使って管理して欲しいということのようです」
いまだに紙で
これにも問題がある。ほとんどの自治体は予防接種台帳のデジタル化を進めているものの、全住民の接種把握に使ったことはない。しかも、接種した医院などから送られる接種情報と料金請求はいまだに紙を使用しており、月末締めの翌月提出といった流れになっている。自治体の多くは集まってきた大量の紙の接種情報や請求書を、委託業者に回してシステムに入力している有り様だ。
実情を知って、河野大臣らのチームは青ざめた。
「欧米ではビジネスなどで海外渡航する際に、ワクチンを接種した証明書を出すことが検討されているのですが、日本のやり方だと、接種証明を出すのに数ヵ月かかってしまいます。これではビジネスマンには役に立ちません」(前出の河野大臣に近い政治家)
そこで河野大臣は急遽、ワクチン接種の情報システムを独自に国が立ち上げることを決めたわけだが、まさに時間との勝負になっている。開発したシステムをないがしろにされ、メンツが潰れた形になった厚労省の官僚は、記者クラブの記者に、
「予防接種台帳でできるのに、別のシステムを作って自治体の仕事を増やそうとしている」
と説明している。人材も豊富で、経費も使える自治体では先行して情報システムの独自開発に動き出しているところもあり、二重投資になる可能性もあるというのだ。
「菅内閣の支持率が急落している中、ワクチン接種でもトラブれば、菅内閣の命運は尽きてしまう。菅首相としては国はやることはやっている、自治体が悪いと言いたいのだろうが、それは通りません。河野大臣も成功して当たり前、失敗したら将来の総理の目が消えるから必死でしょう」
と、ベテラン議員はみる。河野大臣の厚労省へのイライラは募るばかりのようだ。』
厚労省のお役所仕事はいつものことなので驚かないが、歴代の厚労省担当大臣は何をやっていたのだろうか。
もっとも、日本はITと騒ぐ割には技術者数がぜんぜん足りてないし、そもそも義務教育で将来のIT技術者が育つような教育もしていない。
私が医学部で情報処理の講義を受けたときはまだ数式処理のFORTRAN言語をちょっとやっただけだったが、当時すでにBASIC言語が普及していたのにPCを使える学生さえわずかで、臨床に出てからノート型PCを使っていたら、病棟医長に事務屋になるつもりかと怒られたものだ。
厚労省の役人だってPCは使えるだろうが、データベースシステムに明るい人はそんなにはいないだろうし、国会議員に至ってはせいぜいエクセルでお金の計算したりプレゼンの資料を見るくらいしか興味もないだろう。
現状、ほとんど役に立たないマイナンバーカードシステムを作った財務省は、カード普及のために躍起になっているようだが、マイナンバーカードに紐付けるデータがせいぜい運転免許証や健康保険証の身元証明のデータ程度しかないのである。
厚労省の仕事は、いつも問題が起きてからの対応だから後手にまわる。将来起き得ることへの準備という発想がそもそもないのだろう。年金、健康保険がいい例でどちらも破綻寸前だ。
河野大臣は急遽、ワクチン接種の情報システムを独自に国が立ち上げることを決めたそうだが、時間がなくてどうせやっつけ仕事になるだろうからセキュリティに穴がある出来損ないになるんじゃないだろうかと心配だ。
どうせ今回は間に合わないだろうから、自治体に全てを任せて政府は経費を補償した方が確実にワクチン接種が進むような気がするが、どうなんだろうか。
米製薬大手ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンが、2月12日、ついに成田空港に到着した。接種の日程が決まり次第、保管されている超低温冷凍庫から冷凍状態で各地に配送されるというが、問題は山積みだ。
「ワクチン接種が、完全に地方自治体任せになっていることに驚かれていました」
河野太郎行革担当相がワクチン接種担当大臣に指名され、「現状把握」した様子を見ていた官邸のスタッフのひとりはこう語る。コロナの感染拡大が収まらないなか、ワクチン接種がいつ始まり、全国民が接種し終わるのにどれぐらいの時間がかかるのかは、国民的関心事と言っていい。
ところが昨年4~5月の緊急事態宣言以降、ワクチン接種の準備を進めてきたはずの厚生労働省の「計画」があまりにも「のんびり」していて、この先どうなるか分からない。
「ワクチン接種を何とか始められたとしても、いつ終わるのか、皆目見当が付かない状況です」
と、河野大臣に近い若手自民党議員も言う。
菅義偉首相は2月2日に首相官邸で行われた記者会見で、なぜ他の先進国に比べて接種開始が遅れているのかと問われ、「ワクチンの確保は、日本は早かったと思います。全量を確保することについては早かったと思います」と、必死に“成果”を強調していた。
実は、菅首相の答えはある意味では正しい。厚労省の「関心事」はワクチンを確保して自治体に分配するところまでで、そこから先、実際に住民に接種するのは「自治体の責任」というのが厚労省つまり国のスタンスだからだ。
冒頭の官邸スタッフが語る。
「厚労省は昨年夏からワクチンを届けるためのシステム開発に乗り出していました。『ワクチン接種円滑化システム』というもので、略称で『V-SYS(ブイシス)』と呼ばれています。しかし、このシステムはワクチンの需給に合わせて自治体に配送することだけを管理するもので、誰にいつどこで打ったかを記録する仕組みがないことが昨年末に分かり、官邸で大騒ぎになりました。
1月に急遽、河野氏がワクチン担当に任命された背景には、厚労省の言いなりになっている田村憲久厚労相には任せておけない、という菅首相の判断もあったようです」
しかも、自治体に配送するのは、「国」ではない。羽田空港に到着したワクチンを冷凍庫に入れて自衛隊のトラックに積み込み、全国に向けて続々と運び出されていくというような「有事」の光景を想像していたが、どうもそうではないらしい。
「V-SYSを通じて自治体への配分を厚労省が行い、システム上、“注文”を受けたワクチンメーカーが自治体の基幹医療施設や集団接種会場に運びます。その運搬は、いつもインフルエンザワクチンなどを病院に届けている“医薬品卸会社”の仕事になります」(同)
結局、厚労省は今までと同じ「平時」の対応を行うつもりだ。
「しかし、未曽有のコロナ禍に対応できるような人員や車両を、医薬品卸会社が確保しているのか、はなはだ疑問です」(同)
さらに基幹医療施設から先は完全に自治体任せだという。そこでも同じ問題が持ち上がっている。首都圏の中核自治体の担当者は言う。
「病院や医院、老人保健施設などにどうやって運ぶのか。民間の宅配便会社に委託するのか、市の職員が運ぶのか今、急いで検討していますが、人手や車が確保できるかが最大のポイントです。
ファイザー社のワクチンはマイナス75度以下で保管する必要があり、それ以上の温度の場合、3~4時間で使い切る必要があるんです。そうでなくても足りるかどうか分からないワクチンを、無駄を出さずに接種できるかどうか、現状ではまだわかりません。
誰にいつワクチンを打ったか、誰がまだ打っていないかといった接種情報の把握も自治体任せにされているのですが、厚労省は幼児の予防接種などを記録する自治体の『予防接種台帳』を使って管理して欲しいということのようです」
いまだに紙で
これにも問題がある。ほとんどの自治体は予防接種台帳のデジタル化を進めているものの、全住民の接種把握に使ったことはない。しかも、接種した医院などから送られる接種情報と料金請求はいまだに紙を使用しており、月末締めの翌月提出といった流れになっている。自治体の多くは集まってきた大量の紙の接種情報や請求書を、委託業者に回してシステムに入力している有り様だ。
実情を知って、河野大臣らのチームは青ざめた。
「欧米ではビジネスなどで海外渡航する際に、ワクチンを接種した証明書を出すことが検討されているのですが、日本のやり方だと、接種証明を出すのに数ヵ月かかってしまいます。これではビジネスマンには役に立ちません」(前出の河野大臣に近い政治家)
そこで河野大臣は急遽、ワクチン接種の情報システムを独自に国が立ち上げることを決めたわけだが、まさに時間との勝負になっている。開発したシステムをないがしろにされ、メンツが潰れた形になった厚労省の官僚は、記者クラブの記者に、
「予防接種台帳でできるのに、別のシステムを作って自治体の仕事を増やそうとしている」
と説明している。人材も豊富で、経費も使える自治体では先行して情報システムの独自開発に動き出しているところもあり、二重投資になる可能性もあるというのだ。
「菅内閣の支持率が急落している中、ワクチン接種でもトラブれば、菅内閣の命運は尽きてしまう。菅首相としては国はやることはやっている、自治体が悪いと言いたいのだろうが、それは通りません。河野大臣も成功して当たり前、失敗したら将来の総理の目が消えるから必死でしょう」
と、ベテラン議員はみる。河野大臣の厚労省へのイライラは募るばかりのようだ。』
厚労省のお役所仕事はいつものことなので驚かないが、歴代の厚労省担当大臣は何をやっていたのだろうか。
もっとも、日本はITと騒ぐ割には技術者数がぜんぜん足りてないし、そもそも義務教育で将来のIT技術者が育つような教育もしていない。
私が医学部で情報処理の講義を受けたときはまだ数式処理のFORTRAN言語をちょっとやっただけだったが、当時すでにBASIC言語が普及していたのにPCを使える学生さえわずかで、臨床に出てからノート型PCを使っていたら、病棟医長に事務屋になるつもりかと怒られたものだ。
厚労省の役人だってPCは使えるだろうが、データベースシステムに明るい人はそんなにはいないだろうし、国会議員に至ってはせいぜいエクセルでお金の計算したりプレゼンの資料を見るくらいしか興味もないだろう。
現状、ほとんど役に立たないマイナンバーカードシステムを作った財務省は、カード普及のために躍起になっているようだが、マイナンバーカードに紐付けるデータがせいぜい運転免許証や健康保険証の身元証明のデータ程度しかないのである。
厚労省の仕事は、いつも問題が起きてからの対応だから後手にまわる。将来起き得ることへの準備という発想がそもそもないのだろう。年金、健康保険がいい例でどちらも破綻寸前だ。
河野大臣は急遽、ワクチン接種の情報システムを独自に国が立ち上げることを決めたそうだが、時間がなくてどうせやっつけ仕事になるだろうからセキュリティに穴がある出来損ないになるんじゃないだろうかと心配だ。
どうせ今回は間に合わないだろうから、自治体に全てを任せて政府は経費を補償した方が確実にワクチン接種が進むような気がするが、どうなんだろうか。
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