『多発性硬化症にヒトヘルペスウイルスが関与か HHV-6のバリアントを区別する方法を開発

国際医学短信2019年12月16日 (月)配信 一般内科疾患神経内科疾患眼科疾患感染症

 日常的に見られるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)のバリアント(変異体)であるHHV-6AとHHV-6Bの感染の既往を区別する新たな方法が開発され、それによりHHV-6Aが多発性硬化症(MS)の発症に関与している可能性が示された。この研究の詳細は、カロリンスカ研究所(スウェーデン)のAnna Fogdell-Hahn氏らにより、「Frontiers in Immunology」11月26日オンライン版に報告された。

 MSは中枢神経系を傷害する自己免疫疾患で、疲労や運動障害、振戦などの症状が出る。原因は明確になっていないが、一説には、ウイルス感染により、免疫系が本来攻撃しないはずの身体組織を攻撃するようになってしまうことが原因であるという。

 過去の研究において、HHV-6とMSとの関連が指摘されていたが、HHV-6AとHHV-6Bとが区別されていなかった。HHV-6Bが小児の突発性発疹など軽度の疾患を引き起こすことは判明していた一方で、HHV-6Aが何らかの疾患の原因となるのかについては明らかになっていなかった。また、2歳までに8割の人がHHV-6に感染すると推定されており、その多くが生涯にわたりHHV-6抗体を保有するとされている。ところが、これまで感染後にHHV-6AとHHV-6Bを区別することはできなかったため、どちらのバリアントがMSのリスク因子であるのかも不明のままであった。

 そこで、Fogdell-Hahn氏らは、MS患者約8,700人およびMSでない対照群7,200人強の血液サンプルを用いて今回の研究を実施。HHV-6AとHHV-6Bの間で最も大きな相違が見られる前初期蛋白(HHV-6AはIE1A、HHV-6BはIE1B)に対する血液中の抗体レベルを分析することで、両ウイルスを区別することに成功した。その結果、MS患者では対照群に比べ、IE1Aに対する抗体を持つ率が55%高いことが明らかになった。

 さらに、検査の後にMSを発症した500人弱をサブコホートとして分析した結果、HHV-6Aに感染した場合には、将来MSを発症するリスクが2倍以上となることも分かった。また、血液中に初めてウイルスが認められた年齢が若いほど、後にMSになるリスクが高くなることも示された。一方、HHV-6Bに関しては、MSとのこうした関連は認められなかった。

 Fogdell-Hahn氏は、「研究結果は、MS発症にHHV-6Aが関与していることを示すもので、MSとHHVのいずれの研究においても大きな発見である。まず、HHV-6AがMSの発症に寄与する因子であるとの仮説が裏付けられた。そして何よりも、2種類のHHV-6がどのくらい蔓延しているかが以前は分からなかったのに、この新たな手法を用いれば明らかにできる」と話している。

 その上で同氏は、「HHV-6AとHHV-6Bはいずれも脳細胞に感染し得るが、感染の仕方が微妙に異なる。今後の興味の対象は、これらのウイルスがMS発症にどのように絡むのか、細かく洗い出すことだ」と述べている。』

脳神経外科の外来でウィルス関連の疾患といえば末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)と三叉神経領域の帯状疱疹がほとんどだが、MSにもヘルペスウィルスが関与していたというのは知らなかった。

やはりギラン・バレー症候群のようにウィルス感染による自己免疫の異常によるということになるのだろう。

MSの発症の確率は感染の年齢が低いほど高いらしいから、やはり幼小児期の感染防御が大切ということなのだろう。


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