『1時間の運動は8時間の座位を帳消しにする

One Hour of Activity Offsets Risks From 8 Hours of Sitting
Zosia Chustecka / Medscape 2016/07/27

座り過ぎは危険だということを聞いたことがない人はいないと思うが、デスクワークをする人にとって良い知らせがある。1時間の中強度の身体活動は、8時間の座位による健康リスクを帳消しにするというものだ。

これは対象者100万人超のメタ解析から得られた結論で、Lancet誌オンライン版7月27日号に掲載された。間近に迫ったオリンピックに合わせて、身体活動をテーマにした特別連載の1つだ。

Lancet誌がこういったシリーズを掲載するのはこれが2度目だ。運動不足は命取りになる、というのが4年前、前回のオリンピック時の主なメッセージであった。運動不足により1年間に世界全体で530万人が早期に死亡しており、これは喫煙による死亡数と同規模であり、肥満関連死の2倍に相当する。この所見により「座り過ぎは新しい喫煙だ」、「長時間の座位は命取りになる」といった注意喚起の公衆衛生キャンペーンが促進された。

今回の新しいメッセージは、「十分に活動的であるなら、スポーツを始めたりジムに通ったりしなくても、これらのリスクは低減でき、完全に取り除くことさえ可能ということだ」と、メタ解析の筆頭著者である Norwegian School of Sports Sciences(オスロ)およびケンブリッジ大学(英国)のUlf Ekelund氏は述べた。

研究では、1日8時間の座位による健康リスクは、早歩き(5.6km/h)や楽しみとしてのサイクリング(16km/h)といった中強度の活動を1時間行うことによって帳消しにできることがわかった。この研究の参加者の4分の1は、このレベルの身体活動を行っていた。

しかし研究者たちは、活動時間がもっと短くても(公衆衛生ガイドラインでしばしば推奨されているのは1日約25分)、長時間の座位に関連した死亡率が低減したことに気付いた。

「オフィス・ベースの仕事のために通勤する多くの人にとって、長時間の座位から逃れる方法はない」とEkelund氏は声明で述べた。「とりわけこういった人たちには運動が重要で、ランチタイムの散歩、朝のジョギング、仕事場への自転車通勤など、何でもよいからとにかく運動することだ。1時間の身体活動が理想的だが、それが無理なら少なくとも毎日少し運動をすることでリスクは低減できる」と彼は述べた。

「世界は身体活動について真剣に考える必要がある」。Lancet誌の編集者は付随論説で述べている。Ekelund氏らの研究が示したのは「定期的な身体活動が、いかに長時間の座位による死亡リスクを低減できるかということ。また、現在は座位時間の縮小だけが焦点となっているが、定期的な身体活動にも重点を置いた焦点へのシフトを支援すべきだということである」と彼らは付け加えた。

百万人を超える対象者のデータ

これは座位時間と身体活動レベルの異なる人々の死亡率を、調和的アプローチを用いて直接比較した初のメタ解析だと研究者たちはコメントした。彼らは米国、ヨーロッパ、オーストラリアにおける16件の研究から、100万5,791例(45歳超)のデータを使用した。

研究チームは長時間の座位は、全死因死亡率の増加と関連するという所見を確認した。これらの死亡の約75%は心血管疾患およびがん(乳、結腸、結腸直腸)によるものだったとEkelund氏はコメントした。

参加者個人の1日当たりの座位時間を考慮するとともに、研究者たちは報告された身体活動の時間によって、参加者たちを同等サイズの4グループに分割した。最も非活動的なグループの活動量は5分/日未満であり、25~35分/日、50~65分/日と続き、最も活動的なグループの活動量は60~75分/日だった。

「最も活動的なグループでは、座位時間と死亡率の有意な関連が認められず、これは高い身体活動レベルが、長時間の座位による死亡率増加を帳消しにしたことを示唆している」と研究者たちは述べた。

しかし身体活動量が減少するにつれ、早期死亡リスクは増加した。
「全死因死亡リスクは、座位時間の増加と低い身体活動レベルの組み合わせによりほぼ曲線的に増加し、明らかな用量依存的関連性が認められた」と研究者たちはコメントした。

最も活動的なグループは分析の参照群として用いた(ハザード比[HR]:1)。
最もリスクが高かったのは、1日当たりの座位時間が長くなくても最も少ない活動量を報告した人たちだった。最も非活動的(5分/日未満)だが座位時間が最も短い(4時間/日未満)グループにおいて、早期死亡のHRは1.27だった。

これは最も活動的(身体活動60~75分/日)だが、最も長時間座っている(8時間/日超)と報告した人と比べても有意に高かった(p<0.0001)。その場合の早期死亡のHRは1.04であった。

このHRは参照群との比較においては有意差が認められないことから、1時間の身体活動が8時間の座位を帳消しにできるという主な結論が導かれた。

この所見は、1日当たりの座位時間に関係なく身体活動の重要性を示唆するものだ、と研究者たちは強調した。

ロンドンで行われたLancet誌の記者会見でEkelund氏は記者に対し、これらの所見の背後にある生物学的メカニズムは不明だが、運動不足とある種のホルモン産生減少の関連性が、動物研究から示唆されていると話した。

また同氏は「もっと動こう」というメッセージを強調し、人々はできる限り歩くようにすべきであり、長く座っていなければならない人は、1時間ごとに5分歩くなどの短い身体活動を繰り返すことで座位時間を分散させるべきだと提案した。

Medscape Medical Newsに、自身も提唱するような活動を実践しているのかと問われると、長身で引き締まった体型のEkelund氏は笑い、「実践している。私は最も活動的なグループの1人だ」と答えた。彼は熱心なクロスカントリー・スキーヤーで毎週5~7時間の運動をしている。

The authors have disclosed no relevant financial relationships.
Lancet. Published online July 27, 2016. Abstract Editorial 』

運動が健康に良いという話は最近いろいろなところで科学的データとして示されているが,「十分に活動的であるなら、スポーツを始めたりジムに通ったりしなくても、これらのリスクは低減でき、完全に取り除くことさえ可能ということだ」というのはつまりジョギンギやサイクリングやスポーツジムでなくとも十分に健康を保つ事ができるという事だろう.

早歩き(5.6km/h)や楽しみとしてのサイクリング(16km/h)とあるが,これは通勤時の歩行速度やママチャリで流す程度の速度だから誰にでも可能な事で,多くの人は通勤時間でこれくらいの運動はしている事だろう.

運動と筋力維持について言えば,最近の研究では5分くらいの運動をこま切れにやっても一時間やれば持続してやったのと同じ効果が出るらしいし,運動強度を上げてもあまり上げなくても運動時間が必要十分にあれば筋力増強効果は同じだという話もある.

こうなると,要は毎日トータルで30分くらいの適度な運動をしていれば健康と筋力の維持には十分で,さらに認知機能の低下も予防できるという話になる.必要以上の有酸素運動はフリーラジカルが発生して動脈硬化の原因になるかもしれないだろう.

結局,食事も運動も7分目くらいにしておくのがいいということなのかもしれない.

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