メリットとデメリット
2016年7月25日 医療の問題 コメント (2)『薬16倍投与、女性死亡
東京女子医科大病院(東京都新宿区)で2014年、脳腫瘍の女性が添付文書に書かれた量の16倍の抗てんかん薬を投与され、その後に重い副作用を起こし死亡していたことが分かった。病院の依頼で調査した第三者機関は、薬の投与を「標準的な医療と言えない」と指摘したが、病院側は「患者側の希望を考慮して決めた」と過失を否定。遺族は「副作用の説明は全くなかった」と反論している。
病院側は過失を否定
同病院では、この約半年前にも原則禁止の鎮静剤投与で幼児が死亡する事故が起き、特定機能病院の承認取り消しにつながった。院内で医薬品の不適正使用が問題化していた中で、用法・用量を逸脱した処方が行われていたことになる。
亡くなったのは、川崎市の長浜裕美さん(当時43歳)。14年7月に同病院で脳腫瘍の再発の疑いと診断され、手術のための入院前の8月、けいれん発作を起こして錠剤の抗てんかん薬「ラミクタール」(一般名ラモトリギン)を処方された。その結果、全身の皮膚に障害が起こる中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)を発症し、投与開始約3週間後に肺出血などを併発して死亡した。
ラミクタールの添付文書では、別の薬も飲んでいた今回のようなケースの投与量を「2週目まで25ミリグラムを1日おき」(1日当たり12.5ミリグラム)と定め、用法・用量を超えた投与は皮膚障害が出やすくなると注意している。しかし、医療関連死の調査モデル事業としてこの件を調べた「日本医療安全調査機構」の報告書によると、担当医は16倍に当たる1日200ミリグラムを連日投与。院外薬局から量が正しいのか照会があったが、見直さなかった。
報告書はラミクタールによるTEN発症が死因とした上で、今回の処方を「最良の選択肢とは言い難く、あえて選択するなら必要性やリスクを本人や家族に十分に説明して同意を得るのが望ましい」と指摘した。
病院側は「患者が手術前に趣味のサンバ大会への参加を望んだため、確実な効果を期待した。リスクは話している」と主張し、代理人を通して遺族に「法的非難を受ける理由はない」との見解を伝えた。
これに対し、遺族側代理人の安東宏三弁護士は「副作用の説明はなく、あれば処方を受けなかった」と訴える。報告書はこの点の結論を出していない。同大広報室は毎日新聞の取材に「弁護士で折衝中の事案で、コメントは控える」と回答した。』
『用法及び用量に関連する使用上の注意
1.
発疹等の皮膚障害の発現率は、定められた用法・用量を超えて投与した場合に高いことが示されているので、併用する薬剤の組み合わせに留意して、「用法・用量」を遵守すること。なお、体重換算等により調節した用量に一致する錠剤の組み合わせがない場合には、調節した用量に最も近く、かつ超えない用量になるよう錠剤を組み合わせて投与すること(「警告」、「重要な基本的注意」、「副作用」及び「臨床成績」の項参照)。』
『重大な副作用
1.
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明注))及び皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.5%)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発熱、眼充血、顔面の腫脹、口唇・口腔粘膜や陰部のびらん、皮膚や粘膜の水疱、紅斑、咽頭痛、そう痒、全身けん怠感等の異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと(「警告」、「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」及び「臨床成績」の項参照)。』
『安全性速報
ラミクタール® 錠小児用 2mg、5mg、 ラミクタール® 錠 25mg、100mg による
重篤な皮膚障害について
2014 年 9 月~2014 年 12 月までの約 4 ヵ月の間に、本剤との因果関係が否定できない重篤な皮膚障害が発現 し、死亡に至った症例が 4 例報告されました。これら 4 例はいずれも用法・用量が守られていない症例であり、 皮膚障害の発現後、重篤化するまで本剤の投与が中止されていない症例でした。そこで、更なる適正使用の徹 底を図るべく、本剤の「使用上の注意」の「警告」を改訂することに致しました。
なお、これらの症例を含めて、2008 年 12 月 12 日の販売開始以降、2015 年 1 月 26 日までの間に、本剤の投 与により、重篤な皮膚障害が発現し死亡に至った症例が 16 例報告されております(推定使用患者約 376,000 人注)。
注)推定使用患者数は販売開始から 2014 年 12 月 31 日まで』
どんな薬にも作用と副作用があるが,副作用の頻度が高かったり重症化する副作用のある薬は使いにくい.ラミクタール(ラモトリギン)は私にとっては使いにくい薬の一つである.
登場初期は,催奇形性が低いらしいということで妊娠可能性のある女性には使いやすいかもと私も期待していたのだが,同僚が使うのを横目で見ながら様子を見ていたところ間もなく結構ひどい薬疹が出てあまり使いたくない薬だなあと思っていた.
それから間もなく上記の緊急安全性速報が出て第一選択で使う気がなくなり,他の薬で効果が期待できない場合や妊娠希望でどうしてもこれ以外にないという時くらいしか使うつもりもなくなった.
私の考えでは重篤な副作用の頻度が0.5%程度のものを主治医が患者の家族に大きなリスクとして説明することはないだろうし,患者の家族がもし説明を聞いていたとしてもその程度のリスクで投与を拒否するとは思えない.患者の希望を叶えるつもりが,例によって結果が悪かったからリスクの説明をした,しないの話になっただけだろう.
問題はむしろそこではなくて投与法の方ではないだろうか.この薬の面倒臭いところは副作用を確認しながら徐々に投与量を増やしたり,他の抗痙攣剤との相互作用で投与量が指定されているなど投与が安定するまで手間と時間がかかることだ.
そして,裁判でリスクの説明の有無がどう判断されるのかも気になるところだが,「患者が手術前に趣味のサンバ大会への参加を望んだため、確実な効果を期待した。」と患者の希望を優先したのはどう評価されるのかも聞いてみたいところだ.
東京女子医科大病院(東京都新宿区)で2014年、脳腫瘍の女性が添付文書に書かれた量の16倍の抗てんかん薬を投与され、その後に重い副作用を起こし死亡していたことが分かった。病院の依頼で調査した第三者機関は、薬の投与を「標準的な医療と言えない」と指摘したが、病院側は「患者側の希望を考慮して決めた」と過失を否定。遺族は「副作用の説明は全くなかった」と反論している。
病院側は過失を否定
同病院では、この約半年前にも原則禁止の鎮静剤投与で幼児が死亡する事故が起き、特定機能病院の承認取り消しにつながった。院内で医薬品の不適正使用が問題化していた中で、用法・用量を逸脱した処方が行われていたことになる。
亡くなったのは、川崎市の長浜裕美さん(当時43歳)。14年7月に同病院で脳腫瘍の再発の疑いと診断され、手術のための入院前の8月、けいれん発作を起こして錠剤の抗てんかん薬「ラミクタール」(一般名ラモトリギン)を処方された。その結果、全身の皮膚に障害が起こる中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)を発症し、投与開始約3週間後に肺出血などを併発して死亡した。
ラミクタールの添付文書では、別の薬も飲んでいた今回のようなケースの投与量を「2週目まで25ミリグラムを1日おき」(1日当たり12.5ミリグラム)と定め、用法・用量を超えた投与は皮膚障害が出やすくなると注意している。しかし、医療関連死の調査モデル事業としてこの件を調べた「日本医療安全調査機構」の報告書によると、担当医は16倍に当たる1日200ミリグラムを連日投与。院外薬局から量が正しいのか照会があったが、見直さなかった。
報告書はラミクタールによるTEN発症が死因とした上で、今回の処方を「最良の選択肢とは言い難く、あえて選択するなら必要性やリスクを本人や家族に十分に説明して同意を得るのが望ましい」と指摘した。
病院側は「患者が手術前に趣味のサンバ大会への参加を望んだため、確実な効果を期待した。リスクは話している」と主張し、代理人を通して遺族に「法的非難を受ける理由はない」との見解を伝えた。
これに対し、遺族側代理人の安東宏三弁護士は「副作用の説明はなく、あれば処方を受けなかった」と訴える。報告書はこの点の結論を出していない。同大広報室は毎日新聞の取材に「弁護士で折衝中の事案で、コメントは控える」と回答した。』
『用法及び用量に関連する使用上の注意
1.
発疹等の皮膚障害の発現率は、定められた用法・用量を超えて投与した場合に高いことが示されているので、併用する薬剤の組み合わせに留意して、「用法・用量」を遵守すること。なお、体重換算等により調節した用量に一致する錠剤の組み合わせがない場合には、調節した用量に最も近く、かつ超えない用量になるよう錠剤を組み合わせて投与すること(「警告」、「重要な基本的注意」、「副作用」及び「臨床成績」の項参照)。』
『重大な副作用
1.
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明注))及び皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.5%)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発熱、眼充血、顔面の腫脹、口唇・口腔粘膜や陰部のびらん、皮膚や粘膜の水疱、紅斑、咽頭痛、そう痒、全身けん怠感等の異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと(「警告」、「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」及び「臨床成績」の項参照)。』
『安全性速報
ラミクタール® 錠小児用 2mg、5mg、 ラミクタール® 錠 25mg、100mg による
重篤な皮膚障害について
2014 年 9 月~2014 年 12 月までの約 4 ヵ月の間に、本剤との因果関係が否定できない重篤な皮膚障害が発現 し、死亡に至った症例が 4 例報告されました。これら 4 例はいずれも用法・用量が守られていない症例であり、 皮膚障害の発現後、重篤化するまで本剤の投与が中止されていない症例でした。そこで、更なる適正使用の徹 底を図るべく、本剤の「使用上の注意」の「警告」を改訂することに致しました。
なお、これらの症例を含めて、2008 年 12 月 12 日の販売開始以降、2015 年 1 月 26 日までの間に、本剤の投 与により、重篤な皮膚障害が発現し死亡に至った症例が 16 例報告されております(推定使用患者約 376,000 人注)。
注)推定使用患者数は販売開始から 2014 年 12 月 31 日まで』
どんな薬にも作用と副作用があるが,副作用の頻度が高かったり重症化する副作用のある薬は使いにくい.ラミクタール(ラモトリギン)は私にとっては使いにくい薬の一つである.
登場初期は,催奇形性が低いらしいということで妊娠可能性のある女性には使いやすいかもと私も期待していたのだが,同僚が使うのを横目で見ながら様子を見ていたところ間もなく結構ひどい薬疹が出てあまり使いたくない薬だなあと思っていた.
それから間もなく上記の緊急安全性速報が出て第一選択で使う気がなくなり,他の薬で効果が期待できない場合や妊娠希望でどうしてもこれ以外にないという時くらいしか使うつもりもなくなった.
私の考えでは重篤な副作用の頻度が0.5%程度のものを主治医が患者の家族に大きなリスクとして説明することはないだろうし,患者の家族がもし説明を聞いていたとしてもその程度のリスクで投与を拒否するとは思えない.患者の希望を叶えるつもりが,例によって結果が悪かったからリスクの説明をした,しないの話になっただけだろう.
問題はむしろそこではなくて投与法の方ではないだろうか.この薬の面倒臭いところは副作用を確認しながら徐々に投与量を増やしたり,他の抗痙攣剤との相互作用で投与量が指定されているなど投与が安定するまで手間と時間がかかることだ.
そして,裁判でリスクの説明の有無がどう判断されるのかも気になるところだが,「患者が手術前に趣味のサンバ大会への参加を望んだため、確実な効果を期待した。」と患者の希望を優先したのはどう評価されるのかも聞いてみたいところだ.
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