『V 高齢者脳卒中後てんかんの治療

成人(35 歳以上)がてんかんを新規発症した場合,最も多い原因 は脳卒中である 1).特に高齢者(65 歳以上の新規てんかん患者)に おける症候性てんかんの原因疾患では,脳卒中が最も多く 30 ~ 50 %を占める.脳腫瘍,頭部外傷,変性疾患(Alzheimer 病など)が これに次いで多い.また,脳卒中の後遺症としてのてんかん(post- stroke epilepsy)も,脳卒中罹患者の3~12%にみられ,脳卒中の 高い有病率から考えると決してまれな病態ではない.

その治療は抗てんかん薬の使用を中心として行われ,一般的なてんかん治療と変わるところはないが,脳卒中が高齢者に多いこと, 併存疾患や抗血栓薬をはじめとする服用薬剤との相互作用,けいれ ん発作の出現時期や原因疾患(脳梗塞か脳出血か)によるてんかん 移行率の違いなど,いくつか注意すべき点がある.

脳卒中後にみられるけいれん発作(convulsion)と脳卒中後てんかん(epilepsy)とは同義ではないが,歴史的に脳卒中患者にみら れるけいれん発作はpoststroke seizureとして研究されてきた経緯 があるため,poststroke seizureという用語で概説する.

1. 脳卒中後けいれん(poststroke seizure)の分類 脳卒中発症からの時期によってpoststroke seizureはearly-onset か late-onset に区別する.報告によって定義は様々であり,明確な 根拠があるわけではないが,脳卒中発症から 14 日以内に生じたも のをearly seizure,それ以後に発症するものをlate seizureとする ものが多い2).また,early seizureのうち発症24時間以内に(症例 によっては初発症候として)発症するものはonset seizureと呼称される場合もある 3).

a. Early seizure
脳卒中に起因する大脳皮質への刺激症状と考えられ,多くは発症 から1~2日に出現する.国際多施設共同前向き研究であるSei- zures After Stroke Study4)では,poststroke seizureの43%は24 時間以内に出現していた.
局所脳虚血による急速な代謝変化によって,細胞膜の脱分極,抑制性シナプス伝達の阻害,細胞外グルタミン酸の増加が生じ,けい れん閾値が低下すること.また,病巣近傍の細胞死を免れた,いわ ゆる虚血性ペナンブラ組織が高濃度のグルタミン酸に曝され,発作 の焦点となることも指摘されている.また,低灌流による低酸素性 脳症も原因の一つ(anoxic seizure)であり,重積発作をきたし致 命的になることもある.
脳出血やくも膜下出血では,血液分解産物が大脳皮質を直接刺激 すると推定されている 5).

b. Late seizure
脳卒中後の皮質の瘢痕化が原因と考えられている.健常な脳皮質 がグリオーシスや炎症細胞に置き換わることで,瘢痕組織がてんか ん原性焦点となる.脳卒中からけいれん発作初発までの期間が長い ほど,脳卒中後てんかんへ移行する可能性も高い 4).

神経治療 Vol. 29 No. 4(2012)より引用』

最後のLate seizureの発生頻度は文献によるが,大体4~6%と報告されているようだ.

 さてタイトルの「危ない患者」が,退院後に免許の書き換えがあり脳梗塞になったことを自己申告したら認知症とてんかんの診断書を書いてもらうように言われたと所定の用紙を持ってきたことがあったので,今後てんかん発作を起こす可能性があるという欄にチェックをつけてその理由も書いてあげたのだが,それを提出したらここにチェックがあると免許を返納してもらうと言われたという.

 まあ,それはそうだろうしそこまではよくある話なのだが,持ってきたその用紙はなんと半年ほど前に私が書いたものだった.そして,警察の人にはここを書き直してもらえと言われたかのように私に主張するのである.

 警官がそんなことをことを言うはずはないだろうが,それにしてもこの書類を受理して免許を返納させるのが警官の仕事だろうに半年ものあいだ何をしているのだろうか.まさかそのまま免許を更新して運転を続けさせているのだろうか.

 患者にはきっぱりと書類の書き直しはしないとお断りして帰ってもらったが,帰り際にじゃあ他の医者に書いてもらうことにするみたいなことを言っていたのも気になる.患者のいいなりに書類を書く医者がいるとは思いたくないが,私には確かめようもない.事故を起こして被害者が運ばれてこないことを祈るだけである.

 認知症の疑いやてんかん発作の可能性がある人には医師の診断が必要になったとは言え,運用がこのいい加減さではそのうちこれが原因の事故も起きるだろう.そうなってからでは遅すぎると思うのだがどうだろうか.起きる可能性のあることは必ず起こるというのが私の持論なので,ここに書いておこう.


 

コメント

マサムネ
2016年6月28日1:16

実は血の繋がっていない身内にてんかんの持病を持ってる人がいます。 仕事が忙しくて薬を飲み忘れていたらしく、疲労から来る発作?で軽い追突事故を起こしました。警察には病気のことを聞かれず、今でも車を運転しています(テグレトールを飲んでいるのはこっそり確認しました) けど、仕事先まで車で行かないと行けないので生活には自動車が必須なのです。 薬さえちゃんと飲んでいればめったに発作が起きないらしいですが、同居してないので少し気がかりです。社会的に立場がある人なのでもちろん病気のことは職場で公表していないようです。 病気とのつきあい方って難しいですね。

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