やれやれ

2015年9月1日 社会の問題
『 【会見詳報】五輪エンブレム、使用中止に

- リエージュのロゴとは違う

 2020年東京五輪の公式エンブレムがベルギーのリエージュ劇場のロゴと酷似していると指摘された問題で、東京五輪・パラリンピック組織委員会は2015年9月1日、佐野研二郎氏デザインの公式エンブレムの使用を中止することを決めた。新しいエンブレムは改めて公募して選ぶ方針。

 記者会見で組織委の武藤敏郎事務総長は、佐野氏本人から「デザインは模倣ではないが、五輪のイメージに悪影響があるため、原作者として提案を取り下げたい」との申し出があったことを明らかにした。

 武藤事務総長が行った記者会見の主な内容は以下の通り。

武藤氏 東京2020のエンブレムについては、8月28日にここで会見をした。その時申し上げた通り、ベルギーのリエージュの劇場のロゴと東京大会のエンブレムの違いについて、われわれはいろいろご説明してきたが、そもそも佐野さんの作られたものは、リエージュのロゴとははっきり違うと申し上げるために、最初の佐野さんの当初案、審査委員会で1等となった案を皆さんに発表した。

 それがいろいろな観点から、国際オリンピック委員会(IOC)の通常の手続き、世界中の商標登録と問題ないかチェックにかけられた結果、似たようなロゴがある、このままでは適当でない、何らかの対処をすべきとの話があった。われわれはこれを修正する、ということにした。第1次修正案を組織委員会がチェックして、さらに最終案にした。それが皆さんにご覧いただいたオリンピックのロゴだった。それでお分かりかと思うが、リエージュのロゴとはコンセプトも違うし、もちろん子細に見れば似ているところもあるが、似ていないところもたくさんある、違うものとお話しし、ご理解を得たと承知している。8月28日まで、ベルギーのロゴとの関係においては、全く問題ないと申し上げてきた。

- 新たな事態が起こったと認識

 翌土曜日(8月29日)、一部佐野さんの案の展開例、展開性を説明するための写真に、流用されたものではないかという指摘がなされた。それから翌日曜日(8月30日)、そもそも一番最初の佐野さんの案によく似たロゴがある、と。ヤン・チヒョルトさんというドイツのタイポグラファーの展覧会でよく似たものがある、という指摘があった。私どももそれを見て、全く新たな事態が起こったと認識した。まず、佐野さんご本人からお話しを聞く必要があると昨日(8月31日)判断した。

 同時に、審査委員会、佐野さんを一等として選んだ皆さんにも意見を聞いた。現実にお集まりいただいたのは永井(一正)委員長だけだが、きょう午前中、佐野さん、永井さん、私どもで話し合いの機会を持った。佐野さんからは、展開例に使った写真は、もともと応募した時に、審査委員会の内部資料のために作ったんだと。ところが同じ物が7月24日に公式エンブレムが発表された時に使われたわけだが、審査委員会のクローズドな場では、デザイナーとしてはよくある話なのだそうだが、公になるときは権利者の了解を得ることが当然のルールだが、これを怠った、不注意だった、と。

 24日にそういうことだったので、8月28日の会見でも、いったん公開されたものなのでそれは当然使えるだろうと使われた、と。組織委としても重々ご注意申し上げるべきだったと反省するが、そういうことだった。佐野さんは、権利者に事後的ではあるが、どうしたらいいかとお話ししているという説明だった。

 ヤン・チヒョルト展におけるポスター、バナーについては、佐野さんは確かに見に行きましたが、ポスター、バナーはどういうものだったか記憶にない、と。自分は独自にあのデザインを作った、と。今見てみると、確かに丸い円がTの字の右下にあるが、ポスターの方はT.(ドット)。佐野さんのは日の丸であるとか、鼓動であるとか、情熱であるとかいったもの、もろもろをイメージしながら、Tの隣接して付けたものであり、色も違うと。これは模倣ではない、全く模倣はしていない、自分のオリジナルであると思っているということだった。

- 一般国民には分かりにくい

 永井審査委員長の考えを聞いたところ、デザイン界の理解としては、そのように、佐野さんの9分割されたデザインの基本、それはピリオドとは全く違うものと十分認識でき、佐野さんの言う通りオリジナルと認識されると思う、と。デザイン委員会としてはそういう理解だということだった。が、同時に、ここまでいろんな形で問題になったときに、一般の国民の方々が今のような説明で納得するかは、現状、問題があるかもしれないというのが、永井さんご自身のお話だった。残念ながら、自分の説明、佐野さんの説明は専門家の間では分かり合えるが、一般国民には分かりにくいですね、と。

 佐野さんの原案が模倣でない、ということに対する専門的な説明は、私どもは専門家ではありませんので、そういうことに対する判断する立場にはなく、専門家の説明を諒として判断した。しかし、一般国民の判断はなかなか得られない、ということは、われわれも共有する懸念である、大変難しいのではないか、とお話しした。

 その後、意見交換、協議をした。佐野さんは、デザインが模倣だから取り下げるということはできない。しかし、模倣ではないが、昼夜を問わず、佐野さん本人、家族に、彼の言葉によれば誹謗(ひぼう)中傷がなされることが続いている。第2に、デザイナーとして五輪に関わることが夢であったが、今や一般国民から受け入れられない、むしろオリンピックのイメージに悪影響が及ぶとなると。法律的な問題だが、原作者・佐野さんのあのエンブレムは当選と同時に組織委員会の所有物になっている。所有者としてでなく、原作者として提案を取り下げたいという話があった。

 佐野さんは、所有権は今は自分にないので取り下げるのは難しいと言っていたようだが、原作者として取り下げたいというお話しがあった。われわれもそれを聞いて、取り下げた方がいいのではないか、永井さんも取り下げた方がいいのではないか、と三者が一致した。

- 手続きは慎重に運んできた発表された

 審査委員会は8名で、あとの7名には電話で連絡を取った。盗用と思わない、臆することなく続けるべきだという方が1名いた。残りの方々は取り下げやむなし、あるいは永井委員長に対応を一任するということだった。審査委、組織委は佐野さんの意見を尊重して、新たなエンブレムの開発に向けてスタートを切ることが、事態の解決にふさわしい選択ではないか、と判断するに至った。

 本日午後4時から調整会議、オリンピック、パラリンピックに関する最高責任者の集まる、遠藤利明五輪担当相、森喜朗会長、舛添要一都知事がお集まりの6者会合ですが、そこに報告して、取り下げることについての了承を得た。このような事態になったことに対して、国民の皆さんに大変ご心配をお掛けし、関係する東京都、政府、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)、IOC、国際パラリンピック委員会(IPC)の関係者に大変申し訳ない。エンブレムを積極的にご使用いただいてご支援いただいているスポンサー各社の皆さまに大変なご迷惑をお掛けした。スポンサーの皆さまには、文書のほか、個別にご報告し、理解を得たい。

 ―エンブレムを選んだ組織委の責任、最初に問題が発覚してからここまで引きずった責任は。

 最初に申し上げた通り、このエンブレムがリエージュのエンブレムに似ているといった話には、これは明らかに違う、という確信を持っていた。8月28日の会見も、確信を理解してもらうためだった。新たな局面を迎えたのは、先週末の土曜と日曜。この問題に関しては、われわれは無視できない、と、直ちに行動を起こして取り下げの決断をした。国民に理解されるような次の新しいエンブレムの作成にまい進していきたい。誤解のないように申し上げるが、これを選んだのは審査委。審査委で専門家が厳正な判断をした。われわれはそれを受け取った。審査委に責任を押しつけるつもりはない。組織委はそれを活用するという形で、責任はある。ただ、審査委も、ロゴの内容が、どちらが優れているか判定されたと思う。

 そもそも応募要領には、どこかの剽窃ではない、独創的なもの、オリジナルを応募してほしいと明記されている。応募者は、独自なものを応募してくる責任がある。佐野さんはオリジナルなものだ、ということなので、手続きは慎重に運んできたと思う。ここまで国民の皆さまからいろいろな意見が出てきて、支持を得られないとなって、佐野さんが取り下げる判断をしたのは、そういう形で責任を自ら果たしたと考えている。

- 佐野さんは責任を果たした

エンブレムについて記者会見する制作者の佐野研二郎氏。盗用との指摘に「全くの事実無根。これまでの知識、経験の集大成として仕上げた」と強調、「こちらはTと円がベース。デザインの考え方が全く違う」と訴えた=2015年8月5日【時事通信社】
 ―佐野さんへのギャランティーは支払われるのか。再選考は公募ということだが、佐野さんに資格はあるか。

 1等には100万円、名誉なので多額なものは必要ないと考えていた。支払いの手続き中だった。支払わないことにしたい。佐野さんに資格があるかは、新しい公募手続きを詰めていないので、具体的にお答えするまでは至っていない。佐野さんがどうされるか、ご自身で判断されると思う。

 ―状況を説明されたが、誰に責任があるのか。責任をどういう形で取るのか。国際的に信用を失墜させていることについてはどう考えるか。

 この問題は、関係者、三者三様にそれぞれ責任があると思う。われわれは、事態の状況を見極めた上できちっと対処して、新しい物をつくることが責任と思っている。佐野さんは、ご自身は盗用したことはない、模倣したことはないと明言しており、デザイナーとしての立場を理解する。その上で取り下げる決断をされたことをもって、佐野さんは佐野さんの責任を果たされたのではないかと思う。審査委員会は佐野さんのエンブレムを、優れたものとして推奨していただいた。最終的には、取り下げることはやむを得ない、デザインとしての問題に加えて、五輪エンブレムが国民に愛されるものでなくてはいけないという形で判断をいただいたと思う。

 国際的信用を失墜したのではないかという点については、もちろん、この問題が国際的にある程度影響していると思うが、これを長く続けていくことの方がもはや適切でない、国際的信用を失墜してしまう、新たなものをつくることで信用を得たい、IOCもそれはサポートしてくれるということだ。

- 国立問題とは関連ない

 ―一般国民の理解と言うが、誰のことを指しているのか。組織委としてアンケート調査をしたのか、報道機関の世論調査か。

 メディアの皆さんも、国民がどうとかいう言葉を使われるし、政治家も使うが、それは誰なのかと言っても答えはない。問題は、さまざまなメディアを通じ、それ以外のものを通じて出てきた意見を総合的に判断するということしか答えは出ないのではないか。

 ―新国立競技場に続いて、エンブレムの問題も出た。立て続けにこういう問題が出ていることについて組織委はどう考えるか。

 国立競技場とエンブレムを並べて議論する考えも分からなくないが、あちらは国がつくる施設、こちらは組織委が作るエンブレム。考え方としては、国立競技場と関連して考えたことはない。一般の人たちはオリンピックに二つの問題が起こったと考えるかもしれないが、私どもの判断は、私どものエンブレムについてきちっと考える。』

『 佐野氏「模倣での取り下げはできない」

 東京五輪・パラリンピック組織委員会は1日、都内で会見を開き、佐野研二郎氏がデザインした東京五輪のエンブレムの使用停止を発表した。大会組織委員会の武藤敏郎事務総長はこの日午前、佐野氏と直接会って話し合いを持ち、佐野氏から取り下げの申し出があったことなどを明かした。佐野氏は、盗用での取り下げは否定し、あくまで誹謗中傷などで五輪イメージに悪影響を与えるとの判断での取り下げと主張したという。

 佐野氏との話し合いの席には、五輪エンブレム審査委員長の永井一正氏も同席。佐野氏は「デザインが模倣であるということで、取り下げることはできない」と主張。一方で「昼夜問わず、誹謗中傷が続いている」こと、「(このままでは)一般国民に受け入れられず、オリンピックのイメージに悪影響を及ぼす」ことを理由に、「取り下げたい」と申し出たという。

 永井氏も賛同し、ほかの7人の審査委員については電話などで連絡。うち1人が「デザイナーとしては盗用とは思わない」と異論を述べたが、ほかの意見は「やむなし」「永井さんに一任」だった。

 同エンブレムはアートディレクターの佐野研二郎氏がデザインしたが、7月24日の発表から“盗用疑惑”が浮上。決定的となったのは、8月28日に組織委員会が行った会見で、公表された佐野氏の原案、そして佐野氏側が制作したエンブレムの展開例として活用した風景デザインにも“パクリ疑惑”が浮上したことだった。

 原案は13年に東京・銀座で開かれたタイポグラフィの巨匠「ヤン・チヒェルト」の展覧会で使用されたロゴに酷似。展開例で使用した羽田空港や渋谷の背景は別の個人のサイトで公開された写真と酷似していた。これについて、組織委員会は佐野氏側に説明を求めていた。』

 佐野氏の態度は一貫している.データから見て明らかにコピーとわかるものについては盗用をみとめ,グレーなものについては自分のオリジナル作品だと言い張る.ただそれだけである.かなり手の込んだコピペもあるが,結局それはコピーにすぎない.デザイン界の理解としては模倣ではないなどと言っても,見る人が模倣だと思えば作品としての意味がないだろう.

 組織委員会のほうは自分たちの責任にならないように躍起になっているようにしか見えない.国立競技場の問題を取り上げるまでもなく,国民の理解を得られないから使用中止というなら組織委員会も同様に国民の理解を得られないだろうから審査に関わった人たちは全員辞任するしかないだろう.

 白紙に戻った国立競技場と同様にケチがついた五輪エンブレムも白紙に戻ったことだから,組織委員会の人選からやり直すか,もう一歩戻って将来の日本経済への悪影響が懸念される五輪の開催そのものをもう一度考え直したほうがいいのかもしれない.

長くて読むだけでやれやれで申し訳ありません.

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