転倒して頭を床にぶつけてしばらくしてから意識障害になった脳梗塞の患者さんの手術をした.画像診断は「急性硬膜下血腫」.

急性硬膜下血腫では受傷時から意識障害があるものと理解している脳神経外科医もいるかもしれないが,脳挫傷などを伴わず脳の血管でも特に静脈損傷による出血の場合には経過が比較的ゆるやかで「急性硬膜外血腫」でみられるような意識清明期(lucid interval)がみられることもある.そして意識状態が悪化すると急速に昏睡状態になり,たとえ手術で血腫を除去しても障害が残ることが多いのである.

 最近では脳梗塞の予防薬として抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者さんが多いので,比較的軽微な頭部打撲でも頭蓋内出血を起こすことが多いのではないだろうか.「急性硬膜外血腫」や「急性硬膜下血腫」といった致命的なものではないにせよ,「慢性硬膜下血腫」の患者さんでこういった薬を服用しているケースは多くなったように思う.転倒した場合,特にこういう薬を服用しているときは,見た目で大丈夫そうだからなどという判断はしないほうがいいだろう.

 そして,当然ではあるが脳梗塞の後遺症で転倒しやすくなっている患者さんも増えているからこれからは頭部外傷による頭蓋内出血の患者さんも増えていくような気がする.救命が目的となる頭蓋内出血の手術は開頭血腫除去術しかないから手術のできる脳神経外科医は今後も必要で,血管内手術全盛となっても脳神経外科医たるもの基本的な開頭術くらいは一人でできないといけないだろう.

急性硬膜下血腫の詳細については以下でどうぞ.
http://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/305.html

コメント

梨 林
2014年11月23日21:25

お疲れ様です。明日は少しゆっくりできるといいですね。

ブログ脳外科医
2014年11月23日22:15

家にいても気をつかうので,明日は何事もない一日になればいいのですが…

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