『ノバルティス社「製薬会社丸抱えも過言でない」

 大手製薬会社ノバルティスファーマの社員が、会社が販売する白血病の薬の臨床研究に関与していた問題で、ノバルティスが設置した専門家による調査委員会が報告書を公表し、社員の研究への関与は全般にわたり深いとしたうえで、「製薬会社丸抱えの研究と言っても過言ではない」と厳しく批判しました。

 この問題は、ノバルティスファーマが販売する白血病の治療薬「タシグナ」の副作用について、東京大学病院などの医療機関が客観的な立場から調べる臨床研究に、ノバルティスの社員が社内のルールなどに違反し関わっていたものです。

 ノバルティスは問題を指摘するNHKの報道を受けて、関与を認めたうえで謝罪し、外部の専門家による調査委員会を設置して詳しく調べてきました。

 調査委員会が2日公表した報告書によりますと、東大病院を担当する営業社員が中心となり、複数の社員が研究の立案からデータの解析まで研究全般に深く関与していたということです。さらにNHKの取材を知った去年12月には、関係書類を廃棄するなど証拠隠滅をしていたことも明らかになったということです。

 こうした背景には、他社とのシェア競争で苦戦していたため、研究を利用して薬の販売を促進する意図があったと指摘しています。

 また社員は、営業活動に利用するため医師から受け取った患者のデータを社内で保存しており、個人情報保護法に違反する可能性が高いほか、一部の医療機関では医師の研究を継続的に手伝っており、景品表示法に違反する状態だと指摘しています。

 さらに、こうした社員の研究への深い関与について、社内では認める風土があり、上司の営業部長らの監督責任は重いとしています。

 調査委員会の委員長を務める原田國男弁護士は「調査を進めるにしたがい、問題行為の範囲や規模は拡大し、その実態はたじろぐほどだった。医師は、製薬会社の支援を期待していたとすら言え、製薬会社丸抱えの臨床研究と言っても言い過ぎではない」と厳しく批判しました。』

『ディオバン検討委  報告書案を提示、ノ社の「組織的関与」と判断( 2014年3月28日)
 ノバルティス ファーマのARB「ディオバン」の臨床試験問題を受け、厚生労働省の「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会(ディオバン検討委)」は27日、ディオバン問題への対応・再発防止策に関する報告書案を提示した。問題となった臨床試験に対する奨学寄付金や労務の提供はノ社の業務の一環だったとし、組織ぐるみで今回の問題に関与したと結論付けた。』

 ノバルティスファーマ社が関与している臨床研究はこれらだけではないから,当然ほかの薬についても信頼性を疑ってかかるべきだろう.製薬会社も企業であるから製品を売るために必死なのはわかるが,人の命にかかわる薬で倫理に反するような行為をすればそれ相応のペナルティを払うべきだろう.

 最近は,薬を売るには臨床データを示さなければ医師に信じてもらえないからどうしても自社に都合のいいデータが必要になるので,都合のいいデータが作れる大学や医療機関にお金と引き換えにデータ提供の協力を求めることになるわけだ.

 データの公平性を求めるために第三者企業に契約でデータの管理や集計を求めるのが最近では一般的だろうが,ノバルティスファーマ社は社員がそういったことに深く関わって自社に都合の良いデータを捏造していたということなのだろう.まったくとんでもない会社だ.

 関与した大学関係者もそのようなことを知っていたのかどうかは知らないが,結果的にディオバンを使っていた私も知らずに騙されていたわけだ.もっともディオバンが売れた理由は臨床データのせいだけでなく,薬価と仕入れ値の差額が大きくて病院や薬局の利ざやが大きい事が理由だったのではないかとも考えられる.

 もっとも血圧を下げる薬としては切れ味は悪いもののそれなりの効果はあるようだから,あわてて他の薬に換える必要もないが,ノバルティスファーマ社が気に入らないという人は主治医に相談して他の薬に換えてもらえばいいだろう.

 最近は,脳梗塞の予防薬である抗血小板薬や抗凝固薬という種類の薬の臨床試験の依頼がよく来るようになった.対象になりそうな患者さんがいると治験を請け負った会社の人から患者さんに試験への参加をお願いするように頼まれる事もある.

 病院は治験を請け負った会社と契約した人数分の契約料をもらっているので,患者さんにお願いすることになるのだが,試験に参加すると薬代や検査代が無料になることもあるためか治験薬へ変更してもらえることが多い.だが,治験薬として渡された薬が実薬であればまだ良いが,プラセボだった場合は薬効はないのである.

 それがプラセボかどうかは試験をコントロールしている人にしかわからないから,治験に参加したせいかどうかはわからないが,治験中に脳梗塞が再発する人も当然ながらいるのである.それが自分の患者だったことはないのだが,もしそうだったらきっと厭な気分になったのではないかと思う.

 臨床試験は薬の効果や投与量を決定するのに必要なものであるが,その陰には結果的に薬が効かなかったり副作用で死亡する人がいるのだ.だから臨床試験のデータを恣意的に操作するなどという事はあってはならないことなのである.たとえ今は関係なくとも血圧の薬や抗がん剤は高齢になれば誰でも投与が必要になる薬である.

 食材の産地偽造であれだけ騒ぐのに,薬の臨床試験のデータ捏造には健康な人はあまり関心がないようだが,明日は我が身ということを知っておいたほうがいいのではないだろうか.

コメント

スミぱん@国会を見よう
2014年4月4日20:11

「いい薬だから」という医師の言葉には疑ってかかることにしています。そんなにいいなら
のんでみれば?とも思っちゃいますが。(^^;)

ブログ脳外科医
2014年4月4日21:50

「いい薬だから」なんて言ったことは一度もないです.
調子のいいことを言う人は医師に限らず疑うべきです.

スミぱん@国会を見よう
2014年4月4日22:00

いやー、ウチがかかりつけにしているクリニックの医師が言うんですわ。
内視鏡の腕はいいのにねぇ。

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