『コラム:ぐらつくアベノミクス「3本の矢」
安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は消費・投資の喚起という鍵となる分野ではかばかしい成果を生み出しておらず、改革に向けた決意を揺るがせる恐れがある。
昨年10─12月期の日本の国内総生産(GDP)1次速報によると、前期比成長率は0.3%と予想の半分にも達しなかった。政府の意を酌んだ日銀が大規模な資産買い入れを進めてきたにもかかわらずだ。日銀は18日にも、銀行貸出支援や成長基盤強化支援などのための資金供給拡充を発表した。
こうした資産買い入れ、もしくはすさまじい信用創造は一定の領域では成功している。3年余りぶりの高成長を生み出し、物価をはっきりと上向かせた。
しかし日本の消費者や企業が当局による出血大サービスに乗っかり、自律的な成長と物価上昇が続く展開にはならなかった。簡単な言い方をすれば、消費者は十分にお金を使わず、企業も円安とそれに伴う有利な輸出環境があっても事業拡張に向けた大型の設備投資には総じて消極的に思われる。
個人消費と投資がそれなりの働きをしなければ、成長は勢いが弱まり、大いに必要とされている構造改革に今後取り組む上で政府の不安度が増していく。
ベレンベルク銀行のシニアエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は顧客向けノートで「日本の経済成長が落胆を誘う内容だったことは、構造改革が先送りや棚上げになったり、当局が目先の成長刺激のために金融政策や財政政策への依存度を一段と高めるというリスクを生み出す」と指摘した。
その上でシュルツ氏は「これによってアベノミクスが一時のあだ花に終わり、日本が長期的な成長見通しを改善できずに景気刺激策が終われば債務が積み上がるだけになる危険性が相当増大する。最悪のケースなら、インフレによる価値切り下げの連鎖という破滅的な事態が起こりかねない」とみている。
アベノミクスの金融緩和、財政出動に続く第3の矢として知られる構造改革は、財政負担の軽減や労働市場の流動化、起業しやすくする環境整備などが狙いだ。
しかし金融緩和や財政出動が喜ばれ、好意を持たれるのと違って、あいにく改革というものは例えば移民問題などのように、多くの人々の反感を招き、さまざまな意見対立を発生させてしまう。その改革を首尾良く実行するために安倍首相にとっては、第1と第2の矢でもっとましな成果を示す必要が出てくる。
<将来への信認>
アベノミクスは物価の押し上げには成功している。何十年もデフレと悪戦苦闘してきた日本でその実績は軽視できない。
とはいえ、物価が過去1年間で1.3%上がったのに対して、日本の労働者の総賃金は0.8%しか増えていない。さらに悪いことに、このうち所定内給与は賞与や残業代ほどの増え方をしていない。
だから多くの日本人が所得環境に厳しさや不安定さを感じているのも極めて当然といえる。日銀が先週公表した一般の人々に対する調査では、過去1年で所得が減ったと考えている人と、向こう1年で減少すると考える人の数がともに増加した。もっと注目されるのは、デフレにがんじがらめだったにもかかわらず、80%強の人々が物価上昇を「好ましくない」とみなしている。
これらの現象はすべて消費税率引き上げ前の話であり、4月の増税後は需要の伸びは一段と抑えられるだろう。
企業サイドをみると、投資は続けられているが、10─12月期の伸びは1.3%と通常の景気回復局面で想定されているよりもずっと低い。
円安によって輸出業者の競争力は増しているものの、そうした状況から持続的にプラス効果を享受するには、企業が反応速度を高めて設備を拡充し、新規に人を雇って前向きの循環を創出しなければならない。
10─12月期はそれが起きなかったように見受けられ、恐らく新興国市場の小型の危機が一因だが、一方で企業経営者の先行きに対する自信が欠けているからでもあるだろう。
モニュメント・セキュリティーズのスティーブン・ルイス氏は顧客向けノートで「各種企業調査でアベノミクスが強く肯定されているにもかかわらず、日本企業は国内での投資拡大に及び腰の様子が見える。その理由は国外により適切な投資場所を見出しているのかもしれない。あるいは単に将来を不確実と考え続けているかだ」と記した。
円安についても、低リスクで大規模な利益を稼ぐ短期的な機会とみられている可能性はあっても、より長い目でみた投資を促す要因ではない。
今後の日本は前向きの循環が働くか、悪循環に陥るかのどちらかになる。企業や個人が投資や消費を行えば、経済が成長して改革実行の余地が生まれ、さらなる投資や消費が正当化されるとともに、公的債務の伸びよりも高い成長が可能になる。
逆に企業投資や個人消費を欠けば改革は決して好まれず、その大部分は実行のチャンスを得られなくなる。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。』
確定申告を終えて思った事はサラリーマンの税金や保険料が確実に増えているということです.私でさえ買い控えをしようと思うくらいなのだから,消費税が導入されたら国民の購買意欲は低下し内需は急激に減少するのではないでしょうか.
その一方で,円安を誘導してもさほど輸出が改善しなければ日本の経済は以前より悪い状況になるだろうことは十分予想されることです.利益が上がっても賃金が上がらないのではやる気も失せますし,そんな企業の税金だけを優遇しても何もいいことはないように思うのですがどうなんでしょうか.
将来の事はわかりませんが,あとで読み返せるようにこのコラムを残しておくことにしました,
安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は消費・投資の喚起という鍵となる分野ではかばかしい成果を生み出しておらず、改革に向けた決意を揺るがせる恐れがある。
昨年10─12月期の日本の国内総生産(GDP)1次速報によると、前期比成長率は0.3%と予想の半分にも達しなかった。政府の意を酌んだ日銀が大規模な資産買い入れを進めてきたにもかかわらずだ。日銀は18日にも、銀行貸出支援や成長基盤強化支援などのための資金供給拡充を発表した。
こうした資産買い入れ、もしくはすさまじい信用創造は一定の領域では成功している。3年余りぶりの高成長を生み出し、物価をはっきりと上向かせた。
しかし日本の消費者や企業が当局による出血大サービスに乗っかり、自律的な成長と物価上昇が続く展開にはならなかった。簡単な言い方をすれば、消費者は十分にお金を使わず、企業も円安とそれに伴う有利な輸出環境があっても事業拡張に向けた大型の設備投資には総じて消極的に思われる。
個人消費と投資がそれなりの働きをしなければ、成長は勢いが弱まり、大いに必要とされている構造改革に今後取り組む上で政府の不安度が増していく。
ベレンベルク銀行のシニアエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は顧客向けノートで「日本の経済成長が落胆を誘う内容だったことは、構造改革が先送りや棚上げになったり、当局が目先の成長刺激のために金融政策や財政政策への依存度を一段と高めるというリスクを生み出す」と指摘した。
その上でシュルツ氏は「これによってアベノミクスが一時のあだ花に終わり、日本が長期的な成長見通しを改善できずに景気刺激策が終われば債務が積み上がるだけになる危険性が相当増大する。最悪のケースなら、インフレによる価値切り下げの連鎖という破滅的な事態が起こりかねない」とみている。
アベノミクスの金融緩和、財政出動に続く第3の矢として知られる構造改革は、財政負担の軽減や労働市場の流動化、起業しやすくする環境整備などが狙いだ。
しかし金融緩和や財政出動が喜ばれ、好意を持たれるのと違って、あいにく改革というものは例えば移民問題などのように、多くの人々の反感を招き、さまざまな意見対立を発生させてしまう。その改革を首尾良く実行するために安倍首相にとっては、第1と第2の矢でもっとましな成果を示す必要が出てくる。
<将来への信認>
アベノミクスは物価の押し上げには成功している。何十年もデフレと悪戦苦闘してきた日本でその実績は軽視できない。
とはいえ、物価が過去1年間で1.3%上がったのに対して、日本の労働者の総賃金は0.8%しか増えていない。さらに悪いことに、このうち所定内給与は賞与や残業代ほどの増え方をしていない。
だから多くの日本人が所得環境に厳しさや不安定さを感じているのも極めて当然といえる。日銀が先週公表した一般の人々に対する調査では、過去1年で所得が減ったと考えている人と、向こう1年で減少すると考える人の数がともに増加した。もっと注目されるのは、デフレにがんじがらめだったにもかかわらず、80%強の人々が物価上昇を「好ましくない」とみなしている。
これらの現象はすべて消費税率引き上げ前の話であり、4月の増税後は需要の伸びは一段と抑えられるだろう。
企業サイドをみると、投資は続けられているが、10─12月期の伸びは1.3%と通常の景気回復局面で想定されているよりもずっと低い。
円安によって輸出業者の競争力は増しているものの、そうした状況から持続的にプラス効果を享受するには、企業が反応速度を高めて設備を拡充し、新規に人を雇って前向きの循環を創出しなければならない。
10─12月期はそれが起きなかったように見受けられ、恐らく新興国市場の小型の危機が一因だが、一方で企業経営者の先行きに対する自信が欠けているからでもあるだろう。
モニュメント・セキュリティーズのスティーブン・ルイス氏は顧客向けノートで「各種企業調査でアベノミクスが強く肯定されているにもかかわらず、日本企業は国内での投資拡大に及び腰の様子が見える。その理由は国外により適切な投資場所を見出しているのかもしれない。あるいは単に将来を不確実と考え続けているかだ」と記した。
円安についても、低リスクで大規模な利益を稼ぐ短期的な機会とみられている可能性はあっても、より長い目でみた投資を促す要因ではない。
今後の日本は前向きの循環が働くか、悪循環に陥るかのどちらかになる。企業や個人が投資や消費を行えば、経済が成長して改革実行の余地が生まれ、さらなる投資や消費が正当化されるとともに、公的債務の伸びよりも高い成長が可能になる。
逆に企業投資や個人消費を欠けば改革は決して好まれず、その大部分は実行のチャンスを得られなくなる。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。』
確定申告を終えて思った事はサラリーマンの税金や保険料が確実に増えているということです.私でさえ買い控えをしようと思うくらいなのだから,消費税が導入されたら国民の購買意欲は低下し内需は急激に減少するのではないでしょうか.
その一方で,円安を誘導してもさほど輸出が改善しなければ日本の経済は以前より悪い状況になるだろうことは十分予想されることです.利益が上がっても賃金が上がらないのではやる気も失せますし,そんな企業の税金だけを優遇しても何もいいことはないように思うのですがどうなんでしょうか.
将来の事はわかりませんが,あとで読み返せるようにこのコラムを残しておくことにしました,
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