『 脳しんとう:軽視禁物、学会が初のガイドライン

柔道などのスポーツによる青少年の頭部外傷が社会問題化する中で、脳神経外科医らでつくる「日本脳神経外傷学会」(事務局・東京都)が、医療従事者を対象にした初のガイドラインをまとめた。脳しんとうはスポーツの現場で軽く考えられがちだったが、重度の障害につながることもあるため、医師らに画像診断を推奨し、症状が続く時は競技復帰させないよう明記した。

 スポーツによる脳へのダメージは重度の障害や死に至るケースが少なくない。激しい接触を伴うボクシングやラグビーなどのほか、2012年度から中学校で武道が必修化され、柔道の危険性もクローズアップされた。

 名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)によると、1983年以降、中学・高校で起きた柔道による死亡事故は12年度までに118件、後遺症が残った事故は09年度までに275件に上る。中学校での事故死亡率は10万人当たり2・38人で、他のスポーツに比べ高いという。

 柔道では頭を畳に強打しなくても、投げ技で脳が激しく揺さぶられて血管が切れる「加速損傷」で重度の障害を負うことがある。一方で、スポーツが脳に与えるダメージの評価は医師の間でも判断が分かれており、学会は診断の指針を作ることにした。

 ガイドラインは、柔道関係者の間で「ありふれた症状」と考えられることもある脳しんとうについて、一時的な意識障害だけでなく、頭痛など幅広い症状を含むものと定義。詳しい状態を確認するため頭部の画像診断を勧めた。

 その上で、脳しんとうを起こした人が再びダメージを受けると、急性硬膜下血腫などを起こして重度障害や死亡に至ることがあると注意喚起。症状が続く時は復帰を許可しないことを明記している。

 作成に関わった同学会の野地雅人・神奈川県立足柄上病院医師は「医師の診断基準を統一することで、事故の予防につなげたい」と話している。』

 脳震盪とは,頭部に物理的な力が加わって脳が揺さぶられる事により頭痛,めまい,吐き気,意識障害などの症状はあるものの,頭部MRIなどの画像で明らかな異常がみとめられない状態をいう.しかし,画像上明らかな異常所見がないから脳に異常がないとは言い切れないし,少し時間が経ってから小さな出血などが見つかり脳震盪ではなく脳挫傷だったということもあるから恐ろしいのである.

 あたりまえのことであるが,頭痛,めまいなどの症状が続く場合は安静にして様子をみるべきで,自分の体と相談しながら徐々に日常生活や運動に復帰した方がいいに決まっている.意識障害がある場合などは当然経過観察入院になるが,受傷から時間が経っていて症状が軽い場合は自宅で経過をみてもらうこともあり,それでも症状がある場合はできるかぎり安静にしたほうがいいに決まっている.

 よく,「いつから運動できますか?」とか「明日,試合に出られますか?」と聞く大人がいるが,症状があるうちはやめておくようにと言うしかないのである.色々な都合があるのだろうが無理なものは無理なのであり,何と言われようと医学的に考えてダメな物はダメなのであるが,医師がいいと言えばなんとかなるとでも思っているのだろうか.

 参考:
『日本脳神経外科学会と日本脳神経外傷学会は12月16日、「スポーツによる脳損傷を予防するための提言」を共同で公表した。スポーツに起因する脳損傷について、国民が知っておくべき5つの必須項目をまとめた内容だ。スポーツで脳震盪を起こすと、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫の危険性があることから、ただちに競技・練習への参加を停止することなどを求めている。

 2012年度から中学校で柔道などの武道が必修化されたが、同時に重症頭部外傷事故が社会問題になっている。今回の提言の背景には、「的確な診療を行うには、国民の理解が不可欠」との認識がある。脳震盪は、意識障害を伴うと考えられがちだが、気分不良のみだけの場合もあり、その診断には注意を要するという。「一見、患者は元気に見えるので、誤った対応をしてしまいがちだ。5項目は、脳神経外科医にとっては常識だが、ぜひとも国民に理解してもらいたい」(日本脳神経外傷学会理事長の片山容一氏)。

 5項目は、(1)スポーツによる脳震盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある、(2)スポーツによる脳震盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある、(3)スポーツによる脳震盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある、(4)そのため、スポーツによる脳震盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止し、競技・練習への復帰は、脳震盪の症状が完全に消失してから徐々に行う、(5)脳損傷や硬膜下血腫が生じたときには、原則としてコンタクト・スポーツへの競技・練習に復帰すべきではない――だ。ただし、(5)は、「医師は患者ならびに関係者の行動を規制することはできない」との考えから、医学的には復帰すべきではないものの、最終的にはプロスポーツ選手などの復帰については、その競技団体や個人の判断になるというスタンスだという。

 今後、脳震盪の症状と定義、画像診断の使い方、競技への復帰などを盛り込んだ、脳神経外科医向けのスポーツ頭部外傷のガイドラインも作成する予定。』

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