『「初めてのライフル」で妹を射殺、相次ぐ悲劇に揺れる米社会

 5歳の男児が2歳の妹を誤ってライフルで射殺した事故は、米国でこれまで幾度となく繰り返されてきた銃についての議論を再燃させた。
 
 米ケンタッキー(Kentucky)州カンバーランド(Cumberland)郡で4月30日に起きたこの事故を引き起こした22口径ライフルは、「マイ・ファースト・ライフル」のキャッチコピーで子ども向けに販売されていた「クリケット(Crickett)」というブランドだった。この銃は事故当時、兄妹の自宅の部屋の片隅に、弾丸一発が装填された状態で置かれていた。
 
 今回が他の似たような事故と異なるのは、銃が男児のものであったという点だ。ライフルは昨年、プレゼントとして買い与えられていた。
 
「常軌を逸した事故の一つにすぎない」。カンバーランド郡検視官のゲイリー・ホワイト(Gary White)氏は、地元紙レキシントン・ヘラルドリーダー(Lexington Herald-Leader)にこう語った。「子ども向けの小型ライフルだった…男児は、この小さな銃を撃つことに慣れていた」

 クリケットのメーカー側は、この件について今のところコメントを出していない。この銃はグリーンとブルーの他、女の子向けとしてピンク色のモデルも販売されている。

 コネティカット(Connecticut)州ニュータウン(Newtown)のサンディフック小学校(Sandy Hook Elementary School)で子ども20人と大人6人が犠牲になった銃乱射事件の衝撃にいまだ揺れる米国で、今回の事故は新たな怒りの声を生み出した。

 銃規制を呼びかけるロビー団体「Americans for the Protection of Children(子どもを守る米国人)」は、「クリケット、全米ライフル協会(National Rifle Association、NRA)とその支持者らが、われわれの子どもたちに向けて銃を販売するのを阻止する」ためのオンライン請願運動を立ち上げた。

 一方、NRAはテキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)での年次総会に合わせ、子ども向け銃のメーカー各社を招いて「若者の日」を5日に開催する予定だ。請願運動はこれを「恐ろしいことだ」と批判している。

 年間6万丁販売される子ども向けライフル

 2日の時点ですでにアクセス不可能となっているクリケットのウェブサイトには、ライフルを扱う子どもたちの写真、数十枚が掲載されていた。中には迷彩柄のロンパースを着て、膝に置かれた銃をしっかりとつかむ赤ちゃんの写真もあった。

 クリケットの製造元でペンシルバニア(Pennsylvania)州に本社を置くキーストーン・スポーティング・アームズ(Keystone Sporting Arms)は、同ブランドのライフルを販売初年の1996年に4000丁、2008年には約6万丁を販売したとしている。

 同社は「銃を使う若者たちに安全性に対する意識を植え付け、狩猟や射撃に必要かつふさわしい知識と敬意を身に着けるよう奨励する」ことを目指しているとうたう。

 重さわずか1.1キログラムで銃身40センチメートル、全長が76センチのクリケットは、一度に一発しか撃つことができない単発式で、引き金はロックすることができる。モデルごとに異なる価格は110~140ドル(約1万1000~1万4000円)で、大手小売店ウォルマート(Walmart)で簡単に購入できる。

 銃に関する意見交換サイト「ファイアリング・ライン(The Firing Line)」には、わが子にライフルを買い与えた親たちが集まり、その経験について熱のこもった書き込みをしている。中には、3歳の子に銃を与えた親もいる。

「息子が私と一緒に銃声を聞きたがるのでワクワクしている。息子が何を撃とうが構わない。今の時点では、何でも『大当たり』だ」。ユーザー名「Saltydog235」さんは4歳の息子について、2010年にこう書き込んだ。「息子には今、銃の安全性と扱い方について教えている。今の時点では、正確さよりもその方が重要だ」

 子どもは「新たな顧客層」

 非営利組織(NPO)「バイオレンス・ポリシー・センター(Violence Policy Center)」のジョシュ・シュガーマン(Josh Sugarmann)事務局長は、米国には「さまざまな種類の」銃が幼い子ども向けに販売されていると指摘。米ABCニュース(ABC News)に対し、「ここ数十年にわたり銃の所有者数は減り、銃器産業は衰退を続けている。たばこ(産業)と同じように、銃産業には新たな顧客層が必要なのだ」と説明した。「子どもたちを将来の銃の消費者として取り入れるには、幼いうちが最も効果的だ」

 米国児童青年精神医学会(American Academy of Child and Adolescent Psychiatry)によると、米国では年間、10代の若者と子ども合わせて3000人以上が銃により死亡し、1万5000人以上が負傷している。これはつまり、イラク戦争があった約9年間において、米兵の死者数を上回る子どもたちが犠牲になったということだ。

 今年4月初めには、ニュージャージー(New Jersey)州で4歳の男児が一緒に遊んでいた6歳の男児の頭部を撃つ事件が、その2日前には、テネシー(Tennessee)州で家族とバーベキューをしていた4歳児が女性を撃ち死亡させる事件が起きている。』

『子供が手にした銃による死傷事故相次ぐ、米国

 米ニュージャージー(New Jersey)州トムズリバー(Toms River)で9日、4歳の男児が手にしていた銃から弾丸が発射されて6歳の男児に当たった。地元警察が発表した。

 警察によると、2人が遊んでいたところ、4歳の男児が持っていた22口径のライフル銃から何らかの理由で弾丸が発射され、14メートルほど離れた場所にいた6歳の男児の頭部に当たった。6歳の男児は入院し、重体だという。

 この日はテネシー(Tennessee)州でも、4歳児が手にした拳銃から発射された弾丸が当たった女性が死亡した。拳銃は、死亡した女性の夫である地元の保安官代理が所有するものだった。同州ウィルソン(Wilson)郡のロバート・ブライアン(Robert Bryan)保安官は米紙USAトゥデイ(USA Today)に、「悲劇的な事故だと思う」と語った。

 米国では年間3万1000人以上が銃により死亡している。その大半は事故か自殺で、殺人は3分の1程度とされている。』

 武器商人にとっては自分が売った武器で何人死のうが関係ない.武器は自分の身を守るために必要と信じる人たちも,自分以外の人が何人死のうが関係ない.自分の家族が自分の銃で死んでしまった人たちは,それでも自分の身を守るために銃が必要だと言い続けるのだろうか,

 米国ならではのニュースだが,注目すべきなのは「イラク戦争があった約9年間において、米兵の死者数を上回る子どもたちが犠牲になった」のと,「年間3万1000人以上が銃により死亡している。その大半は事故か自殺で、殺人は3分の1程度」という点だ.

 合理的な米国人ならこんな事態はおかしいと気付いて当然だろうが,これでも銃の所持が禁止にならないのはどういうわけなのだろう.ボストンマラソンのテロ事件で全米が大騒ぎになって犯人探しに躍起になったのは記憶に新しいが,テロの犠牲者など問題にならないほど多数の子供達が傷付いている事実をどう考えるのだろうか.

 米国人の正義や合理主義というのもこう考えると眉つばものだと思うのは私だけだろうか.

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