実際とは違う
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実際とは違う
『 意識なく、治る見込みない場合、7割が人工呼吸器等による延命望まず

 「高齢社会をよくする女性の会」は3月10日に、「人生最期の医療に関する調査」結果を発表した。

 この調査は、市民や医療・介護従事者が「人生最期の医療のあり方」をどう捉えているのかを調べるもの。調査時期は、2012年12月~2013年2月(p2参照)。

 調査対象は、全国の10~90歳代の4744人(女性3485人・男性1259人)で、60歳以上が約半数を占める(p2参照)(p4参照)(p6参照)(p28参照)。回答者の職業は、多い順から「会社員、公務員等」35.2%、「無職」32.4%、「介護関連」22.3%、「看護」6.5%、「医師」3.7%(p5参照)(p7~p8参照)(p28参照)。看取り経験については、「ある」と答えた人が6割で(p5参照)、60歳以上は7割台となっている(p9参照)。

 調査結果を眺めてみよう。

 まず、意思表示が不可能な状態で、治る見込みがなく、全身の状態が極めて悪化した場合に「鎮痛剤使用を望むか」について、「使ってほしい」が約7割(69.5%)(p10参照)にのぼるが、80歳以上ではやや少ない(53.3%)(p11参照)。

 同様の場合に「心肺蘇生(心臓マッサージ等)を行ってほしいか」については、「してほしくない」とする人が7割強(71.2%)で、「延命措置(人工呼吸器の装着)」については9割弱(86.4%)が望んでいない(p13参照)。

 看取り経験別に見ると、「心肺蘇生をしてほしくない」との回答は、看取り未経験者に比べて、経験者が10.1ポイント多く、「人工呼吸器」でも同様に7.5ポイントの差があった(p17参照)。

 また、同様の場合に「延命のための栄養補給を望むか」に関しては、9割弱が「してほしくない」と回答。具体的には、「胃ろう」で85.0%、「鼻チューブ」で86.6%の人が「してほしくない」と答えている(p18参照)。看取り経験別では、「胃ろう・鼻チューブ」ともに「してほしくない」との回答は、経験者が未経験者より若干多い(p22参照)。

 一方、「最期の医療の意志表示」について見てみると、60~70歳代の4割弱が「自分が望む医療を伝えてある」と回答しているものの、他の年齢層では、ほとんどが「話し合っていない」状況(p25参照)。看取り経験別に見ると、「伝えてある」との回答は、経験者が未経験者より12.7ポイント多く、「これから書面にしたい」との回答では、同様に14.7ポイントの差があった(p27参照)。また、「書面にしている」のは、他の年齢に比べて70~80歳代が多いとはいえ、1割程度にとどまっている(p25参照)。』

資料へのリンク
http://www7.ocn.ne.jp/~wabas/enq_201303_2.pdf

 意思表示が不可能な状態と意識がない状態というのは同じではないのだが,この場合は意識がなくて意思表示が不可能な状態と考えることにしよう.

 それで,私自身だったらどうして欲しいかという結論から言うと,たとえ一時的に延命もしくは蘇生出来ても回復の見込みがない場合には,人工呼吸器も心配蘇生も必要ないし,痛み刺激でも開眼しない遷延性意識障害になった場合は6ヶ月経過をみて回復傾向にない場合は経管栄養を中止して欲しいということだ.

 このようなアンケートでは終末期の延命治療はいらないと答えるのは簡単だが,実際の現場では患者さんの状態が終末期なのか回復の可能性がわずかでもあるのかを正確に答えられる場合ばかりでもないし,たとえうまく説明出来たとしても家族が本当にそのことを理解しているのかを確認するのも難しいことである.

 癌などの悪性腫瘍の終末期は比較的理解が得られやすいが,脳梗塞などでは急性期には助かりそうもないように見えても回復する事も多いから,治療のために人工呼吸器を装着したり経管栄養することは珍しいことではないし,これを単純に意思表示が不可能で回復が見込めない状態と混同されると大変困ったことになるのだ.

 そういうことにならないように患者さん現状と治療での今後の回復の見込みを家族に話し,人工呼吸器の装着なり経管栄養や胃瘻の必要性をその都度説明することになるのだが,その際に気付くのは本人の意思の確認も家族の意志の統一も今までされていない場合がほとんどだということだ.

 そういう場合には家族で相談するように促すのだが,結論がでないままに患者さんの状態は悪化し,気がつけば人工呼吸器も中心静脈栄養もはたまた昇圧剤まで投与され延命された挙げ句にすっかり変わり果てた姿で息を引き取るというのが現実だ.

 私自身は尊厳を保った死を迎えたいし,患者さんもそのようにあるべきだと考えるが,結局は家族がそういう意志をはっきりと示さない限りは延命治療が行われるのが今の日本の医療だろう.そこに問題があることはわかるが,自分や家族が病気になるまでそれを考えたこともない人たちがほとんどである限り解決は難しいだろう.


コメント

ケスイダ
2013年3月25日19:59

そのような事柄は
「臓器提供意思表示カード」
に付随して欲しいですね

実際孤独な自分としては
誰に伝えて良いのか
わからない現状です

ブログ脳外科医
2013年3月25日22:11

いいアイデアだと思いますが,家族が反対すると本人の意思表示がカードに書いてあったとしても延命中止は難しいことだと思います.

nassie
2013年3月26日14:14

祖母が意識不明の状態がかなり長期にわたりましたが、叔父(次男、医師)のカンフル注射が最後のきっかけで息を引き取りました。その時の叔父のしょげ返った顔が忘れられません。私は書面で意思表示をしておこう思いますが、未だ未だと思ってやっていませんが、早めに用意したいと思っています。でも子供たちにも伝えておかないといけませんね。

マサムネ
2013年3月26日17:06

妻の祖父は自宅で息を引き取りましたが、亡くなるその日の朝まで飲み食いをして(とろみがついたものだったけど)文字通り呼吸が止まり亡くなりました。生き物として自発呼吸が出来なければその後の死は必然というか当然なのですが、人間はそうもいかない人もいるようです。 生き方も難しいですけど、自らの命の終焉のあり方というのは思い通りになりにくのでしょうね。

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