『認知症を注射で治療へ

 血管からの投与によるマウスの遺伝子治療実験

 長崎大と自治医科大、理化学研究所の共同研究チームが、中高年での発症が多く、記憶障害を伴う認知症「アルツハイマー病」について、治療遺伝子をマウスの血管から注射器で投与して症状を緩和させる実験に世界で初めて成功した。今後、アルツハイマー病の予防、治療法の確立に向け実用化を目指す。

 チームリーダーの一人、長崎大大学院医歯薬学総合研究科の岩田修永教授によると、アルツハイマー病はタンパク質「アミロイドβ(ベータ)ペプチド」が脳内に蓄積し、神経伝達を阻害することなどが原因とされ、確実な治療法はない。

 一方、脳内では「ネプリライシン」というアミロイドβペプチドを分解する酵素も作られている。加齢やアルツハイマー病の進行とともにネプリライシンの量は減少することから、研究チームはこの酵素を増強することで病気の症状を緩和しようと試みた。

 そこで、ネプリライシンを作る治療遺伝子(ネプリライシン遺伝子)を脳内に届ける"運び屋"となるウイルスを開発。末梢(まっしょう)血管に投与しても脳の神経細胞だけに作用する無害なウイルスで、長期間にわたって効果が保たれるという。これにネプリライシン遺伝子を組み込んだ。マウスに注射した結果、アミロイドβペプチドが減少し、学習・記憶能力も通常のマウスのレベルにまで回復したという。

 これまで脳疾患の遺伝子治療では、頭蓋(ずがい)骨に穴を開けて直接注入する方法しかなかった。今回の成果で、脳の広い範囲に作用し、かつ簡単に遺伝子治療をすることが可能になる。"運び屋"ウイルスに組み込む遺伝子を変えれば別の疾患にも応用できるという。

 今後、ウイルスの大量生産技術の開発や安全性といった問題を解決する必要はあるものの、岩田教授は「5、6年ほどで実用化できれば」としている。研究成果は、18日付の英国のオンライン科学雑誌にも掲載された。』

 最近は,脳神経外科の外来でも認知症の薬物療法のために通院する人が増えている.治療薬も種類が増えて選択肢が増えたために進行の度合いや症状に応じて使い方を工夫するようになってきてはいるが,はっきり言って効く人には効くが効かない人には効かないような印象である.

 私は脳血管障害が専門で認知症の専門家ではないし,今のところ脳へのアミロイドの沈着の度合いを画像で直接見る事もできないからHDS-Rの点数で評価しても良くなっている実感なんてわかないのが治療する側としては不満なのである.

 その点,この治療法が実用化されればこれだけでアルツハイマー病の予防と改善ができる可能性がありそうで期待している.

コメント

nassie
2013年3月21日2:45

失礼します。
急速に進むボケ。一日でも早く使えるようにしてもらいたいものですが、報道を見ると私には間に合いそうもありません。残念ですが。

ブログ脳外科医
2013年3月21日8:43

この注射はアミロイドβペプチドが減少し、学習・記憶能力も通常のマウスのレベルにまで回復というのですから,認知症が進んでからでも回復するという点が今までの薬とは違うので,少々遅くなっても効果は期待出来ると思いますよ.

nassie
2013年3月23日1:02

少し安心しました。有り難うございます。
ただボケの進行速度を少しでも遅らせる努力は不可欠ですね。
頑張ります。

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