柔道に何の意味がある?
2012年3月16日 社会の問題 コメント (1)『来月から中学武道必修化 柔道の安全確保は?
四月から中学校で始まる武道必修化を前に、柔道での事故に不安の声が上がっている。これまで頭部損傷による死亡事故が多発、強打しなくても頭を急激に揺さぶられて「加速損傷」が起き、頭の中の血管が切れる事例も報告されており、医師らが注意を呼び掛けている。
滋賀県愛荘町で二〇〇九年七月、中学一年生の村川康嗣君(12)=当時=が柔道部の練習中に意識不明となり、一カ月後に急性硬膜下血腫で亡くなった。柔道初心者で、上級生との乱取りを続けた後、顧問の教師に投げられた。遺族によると顧問は「頭は打っていません」と説明したという。
村川君の主治医だった彦根市立病院脳神経外科の金子隆昭医師が開頭したところ、静脈から血が噴き出していた。頭を急激に揺さぶられて起きる「加速損傷」が原因で頭蓋骨と脳の間にずれが生じ、頭の中の血管が切れたと判断した。
神奈川県のたま日吉台病院脳神経外科の張智為医師も七年前、外傷はないのに頭の中で出血した柔道部の中三男子生徒(15)=当時=の手術を担当。生徒は一命をとりとめたが重い障害が残った。「自分も柔道経験があり、投げ技などによる加速損傷かと思った」と話す。加速損傷はバイクの転倒事故でよく見られるが、頭を打っている場合がほとんど。外傷がないケースは非常に珍しく、柔道が原因と思われる例は初めてだったという。
この生徒らが横浜市などを相手に起こした民事訴訟で昨年、裁判所は加速損傷と脳障害の因果関係を認定。生徒の母親で「全国柔道事故被害者の会」の小林恵子さん(62)は「今まで柔道事故の裁判は原因が曖昧だった。最近やっと加速損傷が認知され始めた」と話す。
なぜ注目されなかったのか。「誰も事故原因を分析してこなかった結果」。学校でのスポーツ事故を調査している名古屋大学大学院の内田良准教授は指摘する。
内田准教授が、文部科学省所管の独立行政法人「日本スポーツ振興センター」のスポーツ事故への見舞金支払いデータを基に調べると、二〇一〇年度までの二十八年間で百十四人の中高生が柔道の部活や体育授業で死亡していた。「この実態を文科省は把握してこなかった」と同准教授。
これに対し文科省は「見舞金はスポーツ振興センターに専門的にお願いしていた。各都道府県からの死亡に関する報告義務は平成二年に廃止された」(スポーツ・青少年局)という。詳細な死因は分析されず、安全対策が取られないまま、四年前に武道必修化が決定した。
死亡事故の実態を知らなかったのは全日本柔道連盟も同様だ。柔道経験者の医師らで作る同連盟医科学委員会は、二年前に脳神経外科医を迎え、頭部損傷の事故分析を始めたところだ。
そんな中、文科省は今月九日、都道府県教委に対し、各学校で柔道の授業の指導計画や事故が発生した場合の対応策を再点検するよう要請。準備が整わない場合は、四月からの授業開始を遅らせるよう通知した。中学教員向けの指導の手引に、加速損傷の危険性についても盛り込んだ。
新学期目前のドタバタ劇。二年前に中学一年生の長男(12)=当時=を頭部の柔道事故で亡くした小川智恵美さん(41)=静岡県沼津市=は「教師も保護者も不安だらけの中、子どもたちにこわごわ柔道をさせることに何の意味があるのか。必修化は中止すべきだ」と主張している。
武道必修化 学習指導要領の改訂で、4月から中学1、2年の男女全員が武道を学ぶ。自民党政権時代に子どもの体力低下やモラル欠如をただす理由で提唱された。各校は柔道、剣道、相撲の中から選択するが、設備面などから柔道を選ぶケースが多い。年間の授業時間は13時間程度。』
私は小学生の頃に剣道を習っていたし,高校では柔道と剣道が必修だったが,今では中学で武道どころか体育を必修にするのもどうかと思っている.もちろんスポーツは健康にいいし,適度な運動による刺激は成長期の子供にも必要だとは思うが,そもそも,運動能力は先天的な能力差がはっきりしているし,運動能力と学力には相関なんてないだろうから学校で体育の実技で成績をつける意味なんてないだろう.
ましてや必修で武道なんて教える必要がどこにあるのだろうか.将来,自衛隊員や警察官になるなら必要かもしれないが,普通の人にとっては護身術にもならないだろう.まさか武道で精神を鍛えるなんていうつもりだったら,それこそ時代錯誤も甚だしい.柔道の指導者にだって非常識な人がいることは今や誰でも知っていることである.武道と精神力ましてやモラルなんて何の相関もないだろう.
その一方で,格闘技による脳の外傷は深刻な問題である.柔道では受け身があるとは言っても,それさえもちゃんと身につけるには13時間ではとても足りないだろう.誰が言い出したのかは知らないが,くだらない思いつきに付き合わされる教師や生徒もかわいそうだし,授業で頭や体を打撲する度に病院にやってくるのが現実になりそうで,脳外科医としても武道必修化の弊害に付き合わされるのはご免である.
子どもの体力低下やモラル欠如は確かに問題だが,だからと言って頭部外傷のリスクが高い武道を選択する意味はないと思う.頭の古い人達は問題解決の方法を思いつかなかったり考えるのが面倒になると,何かと精神論で片付けたがるようだがそういう考え方こそ社会のリスクを高めるということにそろそろ気付くべきである.十分な根拠のない安全性を盲信した結果が,今の日本の惨状を招いたということを忘れるべきではないだろう.
四月から中学校で始まる武道必修化を前に、柔道での事故に不安の声が上がっている。これまで頭部損傷による死亡事故が多発、強打しなくても頭を急激に揺さぶられて「加速損傷」が起き、頭の中の血管が切れる事例も報告されており、医師らが注意を呼び掛けている。
滋賀県愛荘町で二〇〇九年七月、中学一年生の村川康嗣君(12)=当時=が柔道部の練習中に意識不明となり、一カ月後に急性硬膜下血腫で亡くなった。柔道初心者で、上級生との乱取りを続けた後、顧問の教師に投げられた。遺族によると顧問は「頭は打っていません」と説明したという。
村川君の主治医だった彦根市立病院脳神経外科の金子隆昭医師が開頭したところ、静脈から血が噴き出していた。頭を急激に揺さぶられて起きる「加速損傷」が原因で頭蓋骨と脳の間にずれが生じ、頭の中の血管が切れたと判断した。
神奈川県のたま日吉台病院脳神経外科の張智為医師も七年前、外傷はないのに頭の中で出血した柔道部の中三男子生徒(15)=当時=の手術を担当。生徒は一命をとりとめたが重い障害が残った。「自分も柔道経験があり、投げ技などによる加速損傷かと思った」と話す。加速損傷はバイクの転倒事故でよく見られるが、頭を打っている場合がほとんど。外傷がないケースは非常に珍しく、柔道が原因と思われる例は初めてだったという。
この生徒らが横浜市などを相手に起こした民事訴訟で昨年、裁判所は加速損傷と脳障害の因果関係を認定。生徒の母親で「全国柔道事故被害者の会」の小林恵子さん(62)は「今まで柔道事故の裁判は原因が曖昧だった。最近やっと加速損傷が認知され始めた」と話す。
なぜ注目されなかったのか。「誰も事故原因を分析してこなかった結果」。学校でのスポーツ事故を調査している名古屋大学大学院の内田良准教授は指摘する。
内田准教授が、文部科学省所管の独立行政法人「日本スポーツ振興センター」のスポーツ事故への見舞金支払いデータを基に調べると、二〇一〇年度までの二十八年間で百十四人の中高生が柔道の部活や体育授業で死亡していた。「この実態を文科省は把握してこなかった」と同准教授。
これに対し文科省は「見舞金はスポーツ振興センターに専門的にお願いしていた。各都道府県からの死亡に関する報告義務は平成二年に廃止された」(スポーツ・青少年局)という。詳細な死因は分析されず、安全対策が取られないまま、四年前に武道必修化が決定した。
死亡事故の実態を知らなかったのは全日本柔道連盟も同様だ。柔道経験者の医師らで作る同連盟医科学委員会は、二年前に脳神経外科医を迎え、頭部損傷の事故分析を始めたところだ。
そんな中、文科省は今月九日、都道府県教委に対し、各学校で柔道の授業の指導計画や事故が発生した場合の対応策を再点検するよう要請。準備が整わない場合は、四月からの授業開始を遅らせるよう通知した。中学教員向けの指導の手引に、加速損傷の危険性についても盛り込んだ。
新学期目前のドタバタ劇。二年前に中学一年生の長男(12)=当時=を頭部の柔道事故で亡くした小川智恵美さん(41)=静岡県沼津市=は「教師も保護者も不安だらけの中、子どもたちにこわごわ柔道をさせることに何の意味があるのか。必修化は中止すべきだ」と主張している。
武道必修化 学習指導要領の改訂で、4月から中学1、2年の男女全員が武道を学ぶ。自民党政権時代に子どもの体力低下やモラル欠如をただす理由で提唱された。各校は柔道、剣道、相撲の中から選択するが、設備面などから柔道を選ぶケースが多い。年間の授業時間は13時間程度。』
私は小学生の頃に剣道を習っていたし,高校では柔道と剣道が必修だったが,今では中学で武道どころか体育を必修にするのもどうかと思っている.もちろんスポーツは健康にいいし,適度な運動による刺激は成長期の子供にも必要だとは思うが,そもそも,運動能力は先天的な能力差がはっきりしているし,運動能力と学力には相関なんてないだろうから学校で体育の実技で成績をつける意味なんてないだろう.
ましてや必修で武道なんて教える必要がどこにあるのだろうか.将来,自衛隊員や警察官になるなら必要かもしれないが,普通の人にとっては護身術にもならないだろう.まさか武道で精神を鍛えるなんていうつもりだったら,それこそ時代錯誤も甚だしい.柔道の指導者にだって非常識な人がいることは今や誰でも知っていることである.武道と精神力ましてやモラルなんて何の相関もないだろう.
その一方で,格闘技による脳の外傷は深刻な問題である.柔道では受け身があるとは言っても,それさえもちゃんと身につけるには13時間ではとても足りないだろう.誰が言い出したのかは知らないが,くだらない思いつきに付き合わされる教師や生徒もかわいそうだし,授業で頭や体を打撲する度に病院にやってくるのが現実になりそうで,脳外科医としても武道必修化の弊害に付き合わされるのはご免である.
子どもの体力低下やモラル欠如は確かに問題だが,だからと言って頭部外傷のリスクが高い武道を選択する意味はないと思う.頭の古い人達は問題解決の方法を思いつかなかったり考えるのが面倒になると,何かと精神論で片付けたがるようだがそういう考え方こそ社会のリスクを高めるということにそろそろ気付くべきである.十分な根拠のない安全性を盲信した結果が,今の日本の惨状を招いたということを忘れるべきではないだろう.
コメント
まだ体が未発達の子ども達の体の成長を考慮しない過酷な練習、絞め落とすことで脳が受けるダメージに対する無知、脳震盪は気を失うことと勘違いしている指導者。
脳損傷の多くが急性硬膜下血腫。
そしてびまん性軸索損傷を発症し、高次脳機能障害が深刻です。
赤ちゃんの揺さぶられ症候群と一緒です。
先日の札幌地裁での柔道裁判の被害者も、高次脳機能障害者です。
脳神経外科医の世界からも、学会などで是非警鐘を発して、子ども達の命と脳を守って下さい。