JASRACは不当だ!
2011年10月15日 コンピュータ『 アップルと音楽業界「攻防」再び 舞台は「iCloud」
価格決定巡り深い溝
米アップルが12日に全世界で始めた「iCloud」。ところが売り物であるはずの新たな音楽配信機能が日本では利用できない事態になっている。新サービスを使えばクラウドを通じて購入した楽曲をパソコンや音楽プレーヤーなど複数の端末に自動配信できるが、この仕組みについての契約を巡り、アップルと日本の音楽業界が合意に至っていないのが原因だ。同社は音楽のネット配信サービス「iTunes Store」でも、日本進出が米国より2年遅れた過去を持つ。背景にはアップルが楽曲の値決めをする「価格決定ポリシー」と、それに反発する音楽業界との深い溝がある。
そのデバイス(端末)で買った曲が一瞬であなたのほかのデバイスにもダウンロードされます――。今回問題になっている「iTunes in the Cloud」は、アップルがウェブサイトのiCloud紹介動画の冒頭でも登場する「目玉」のサービスだ。同社のコンテンツ配信サービス「iTunes Store」で音楽を購入すると、煩雑な操作なしで利用者の別の端末にもオンラインで自動的に楽曲が配信される。
ユーザーにとってiCloudサービス開始の意味は大きい。これまでパソコンに入っている音楽ソフトをタブレット端末「iPad」や音楽プレーヤー「iPod」、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)「iPhone」などに移すには、各端末とパソコンをケーブルでつなぐ必要があった。クラウドを使えば複数端末間のデータ共有をケーブル接続なしで自動的に行える。
外出中などに携帯端末を使って聴くことの多い音楽データの共有は、まさにクラウドの特徴を最大限に生かした機能といえる。
ところが米国以外の一部の国では、この機能が使えない。レーベル側との配信契約が進まず、配信できる楽曲を集められていないためだ。ウェブサイトや動画にも小さな文字で「音楽機能は、現在一部の国ではご利用いただけません」という表示が添えられている。その「一部の国」の代表格が日本だ。
アップルの音楽動画管理ソフト「iTunes」でも米国版にある「Music」に相当する項目が日本版にはない。
「我々が価格決定権を持てないお店に安い価格で商品を出したくない。それが音楽業界の気持ちです」。音楽ライセンスの管理を担う日本音楽著作権協会(JASRAC)の担当者は業界の反応をこう説明する。
アップルは「iTunes Store」で音楽データを1曲あたり150円、200円といった統一的な価格を設定するなど、コンテンツを自社の「価格テーブル」に乗せて販売している。一方、日本の音楽業界ではCDやDVDなどディスクの販売比率が依然高く、携帯電話向けにより高い価格帯で「着うた」などを提供している。低価格なうえ、売り方の制約が多いアップル向けに供給するには、条件面で折り合いがつかないのだ。
音楽配信する際には、著作権を持つ側が配信を許諾し、一定の著作権料が支払われることが必要だ。従来のiTunesストアの仕組みでは、利用者がデータ配信を受けるのは1つの端末に対して1度のみだった。一方、「iTunes in the Cloud」では、アップルは複数の端末に対し配信することになる。この仕組みで配信を始めるには、配信方法を著作権者側が受け入れることが欠かせないが、それには金銭面や権利保護を含め諸条件に同意することが大前提になる。
アップルと日本の音楽業界との「すれ違い」は過去にもあった。
日本で「iTunes Store」(開始当時は「iTunes Music Store」)を始めた時も同様の問題に直面した。「配信価格などを巡り、レコード会社が受け入れに消極的だった」(業界関係者)こともあり、十分な楽曲数を集めるのに苦戦。2003年の米国向けサービス開始やその後の欧州展開に遅れて、ようやく05年に日本進出を果たした。
アップルのコンテンツ配信価格を巡っては今年7月、為替変動に対応する形で、日本などのアプリ配信サイト「アップストア」の価格表を改定したことも問題になった。事前に改訂の知らせを受けなかった出品者の間で、少なからず反発や混乱が生じたのだ。音楽業界でも「そうしたアップルの手法や枠組みに乗ることへの抵抗は根強い」との声がある。
配信事業者のアップルとコンテンツ業界の対立構図について、知的財産権やコンテンツ産業に詳しい福井健策弁護士(日大芸術学部客員教授)は「適正な収益」と「自由な流通形態」の最適なバランスが見いだせていないことが背景にあると分析する。
「配信事業者は、ユーザーが望む価格が安く、自由で便利な買い方ができるサービスを追求する。一方、音楽を提供する側は適正な収益を確保しなければ永続的な事業モデルを構築できない。ネットが普及した中でこれらを両立させる仕組みが確立できていないことが根底にあるのではないか」。福井弁護士はこう指摘する。
ただし「コンテンツを持つ側も、配信側も、音楽作品を広く流通させたいという理念では一致している」(福井弁護士)。だとすれば、落としどころは、どこにあるのだろうか。
アップルが今回始めたクラウドサービスはあくまで、著作権を侵害しない「正規」の枠組み。JASRACの担当者も「アップルがユーザーにとって利便性が高いサービスを法律にのっとって展開しようとしているのはわかる」と理解を示す。アップル側は「日本でのサービス開始は時期を含めて何とも言えない」(日本法人の竹林賢広報部長)という。しかし、見通しが立たないながらも、「音楽業界とはパートナーとして丁寧に話し合っていきたい」(同部長)との考えだ。
クラウド型の音楽配信にはアップルだけでなく、米アマゾンや米グーグルなどのほか、複数のベンチャー企業も乗り出している。アップルは米国で、年24.99ドルを払えば、CDなどからパソコンに取り込んだ楽曲でも、追加料金なしにクラウドを通じて別の端末に「配信」することができるサービスも始める。利用者にとっての魅力を高めつつ、日本を含む海外の音楽業界を納得させる仕組みをどう整えていくか。
5日に死去したスティーブ・ジョブズ氏が道筋をつけた同サービスで、アップルが競合他社に対抗して事業を優位に展開できるかどうかは、米国流を押しつけるのではなく、各国の事情を勘案した提案をできるかどうかにかかっている。』
iCloudの仕組みはiPhoneやiPadの所有権をより個人と強く結びつけるためのものである.PC上のiTuneで購入した楽曲やApp.を自分のiPhoneやiPadと共有して使用する権利はユーザーにあるはずであり,これを制限するJASRACのやり方は,販売した商品の正規の使い方に制限をかけるものではないだろうか.
iCloudを用いなくともすでにUSB経由でiTuneと同期できるのに,LAN経由での同期を妨げるのはユーザーへの不当な行為である.自分たちの権利を主張するばかりでなくユーザーの権利を尊重することこそ正しい権利保護の姿勢ではないだろうか.
アップルが自分たちのルールで価格決定をすることとiCloudでユーザーが購入したものを共有することは別の次元の問題であり,これを利用して自分たちの権益を拡大しようとする姿勢はユーザーを人質にしているようなもので許されるものではないのではないかと思う.
価格決定巡り深い溝
米アップルが12日に全世界で始めた「iCloud」。ところが売り物であるはずの新たな音楽配信機能が日本では利用できない事態になっている。新サービスを使えばクラウドを通じて購入した楽曲をパソコンや音楽プレーヤーなど複数の端末に自動配信できるが、この仕組みについての契約を巡り、アップルと日本の音楽業界が合意に至っていないのが原因だ。同社は音楽のネット配信サービス「iTunes Store」でも、日本進出が米国より2年遅れた過去を持つ。背景にはアップルが楽曲の値決めをする「価格決定ポリシー」と、それに反発する音楽業界との深い溝がある。
そのデバイス(端末)で買った曲が一瞬であなたのほかのデバイスにもダウンロードされます――。今回問題になっている「iTunes in the Cloud」は、アップルがウェブサイトのiCloud紹介動画の冒頭でも登場する「目玉」のサービスだ。同社のコンテンツ配信サービス「iTunes Store」で音楽を購入すると、煩雑な操作なしで利用者の別の端末にもオンラインで自動的に楽曲が配信される。
ユーザーにとってiCloudサービス開始の意味は大きい。これまでパソコンに入っている音楽ソフトをタブレット端末「iPad」や音楽プレーヤー「iPod」、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)「iPhone」などに移すには、各端末とパソコンをケーブルでつなぐ必要があった。クラウドを使えば複数端末間のデータ共有をケーブル接続なしで自動的に行える。
外出中などに携帯端末を使って聴くことの多い音楽データの共有は、まさにクラウドの特徴を最大限に生かした機能といえる。
ところが米国以外の一部の国では、この機能が使えない。レーベル側との配信契約が進まず、配信できる楽曲を集められていないためだ。ウェブサイトや動画にも小さな文字で「音楽機能は、現在一部の国ではご利用いただけません」という表示が添えられている。その「一部の国」の代表格が日本だ。
アップルの音楽動画管理ソフト「iTunes」でも米国版にある「Music」に相当する項目が日本版にはない。
「我々が価格決定権を持てないお店に安い価格で商品を出したくない。それが音楽業界の気持ちです」。音楽ライセンスの管理を担う日本音楽著作権協会(JASRAC)の担当者は業界の反応をこう説明する。
アップルは「iTunes Store」で音楽データを1曲あたり150円、200円といった統一的な価格を設定するなど、コンテンツを自社の「価格テーブル」に乗せて販売している。一方、日本の音楽業界ではCDやDVDなどディスクの販売比率が依然高く、携帯電話向けにより高い価格帯で「着うた」などを提供している。低価格なうえ、売り方の制約が多いアップル向けに供給するには、条件面で折り合いがつかないのだ。
音楽配信する際には、著作権を持つ側が配信を許諾し、一定の著作権料が支払われることが必要だ。従来のiTunesストアの仕組みでは、利用者がデータ配信を受けるのは1つの端末に対して1度のみだった。一方、「iTunes in the Cloud」では、アップルは複数の端末に対し配信することになる。この仕組みで配信を始めるには、配信方法を著作権者側が受け入れることが欠かせないが、それには金銭面や権利保護を含め諸条件に同意することが大前提になる。
アップルと日本の音楽業界との「すれ違い」は過去にもあった。
日本で「iTunes Store」(開始当時は「iTunes Music Store」)を始めた時も同様の問題に直面した。「配信価格などを巡り、レコード会社が受け入れに消極的だった」(業界関係者)こともあり、十分な楽曲数を集めるのに苦戦。2003年の米国向けサービス開始やその後の欧州展開に遅れて、ようやく05年に日本進出を果たした。
アップルのコンテンツ配信価格を巡っては今年7月、為替変動に対応する形で、日本などのアプリ配信サイト「アップストア」の価格表を改定したことも問題になった。事前に改訂の知らせを受けなかった出品者の間で、少なからず反発や混乱が生じたのだ。音楽業界でも「そうしたアップルの手法や枠組みに乗ることへの抵抗は根強い」との声がある。
配信事業者のアップルとコンテンツ業界の対立構図について、知的財産権やコンテンツ産業に詳しい福井健策弁護士(日大芸術学部客員教授)は「適正な収益」と「自由な流通形態」の最適なバランスが見いだせていないことが背景にあると分析する。
「配信事業者は、ユーザーが望む価格が安く、自由で便利な買い方ができるサービスを追求する。一方、音楽を提供する側は適正な収益を確保しなければ永続的な事業モデルを構築できない。ネットが普及した中でこれらを両立させる仕組みが確立できていないことが根底にあるのではないか」。福井弁護士はこう指摘する。
ただし「コンテンツを持つ側も、配信側も、音楽作品を広く流通させたいという理念では一致している」(福井弁護士)。だとすれば、落としどころは、どこにあるのだろうか。
アップルが今回始めたクラウドサービスはあくまで、著作権を侵害しない「正規」の枠組み。JASRACの担当者も「アップルがユーザーにとって利便性が高いサービスを法律にのっとって展開しようとしているのはわかる」と理解を示す。アップル側は「日本でのサービス開始は時期を含めて何とも言えない」(日本法人の竹林賢広報部長)という。しかし、見通しが立たないながらも、「音楽業界とはパートナーとして丁寧に話し合っていきたい」(同部長)との考えだ。
クラウド型の音楽配信にはアップルだけでなく、米アマゾンや米グーグルなどのほか、複数のベンチャー企業も乗り出している。アップルは米国で、年24.99ドルを払えば、CDなどからパソコンに取り込んだ楽曲でも、追加料金なしにクラウドを通じて別の端末に「配信」することができるサービスも始める。利用者にとっての魅力を高めつつ、日本を含む海外の音楽業界を納得させる仕組みをどう整えていくか。
5日に死去したスティーブ・ジョブズ氏が道筋をつけた同サービスで、アップルが競合他社に対抗して事業を優位に展開できるかどうかは、米国流を押しつけるのではなく、各国の事情を勘案した提案をできるかどうかにかかっている。』
iCloudの仕組みはiPhoneやiPadの所有権をより個人と強く結びつけるためのものである.PC上のiTuneで購入した楽曲やApp.を自分のiPhoneやiPadと共有して使用する権利はユーザーにあるはずであり,これを制限するJASRACのやり方は,販売した商品の正規の使い方に制限をかけるものではないだろうか.
iCloudを用いなくともすでにUSB経由でiTuneと同期できるのに,LAN経由での同期を妨げるのはユーザーへの不当な行為である.自分たちの権利を主張するばかりでなくユーザーの権利を尊重することこそ正しい権利保護の姿勢ではないだろうか.
アップルが自分たちのルールで価格決定をすることとiCloudでユーザーが購入したものを共有することは別の次元の問題であり,これを利用して自分たちの権益を拡大しようとする姿勢はユーザーを人質にしているようなもので許されるものではないのではないかと思う.
コメント