『値上げ後も進まぬ禁煙 たばこ増税額「中途半端」

 たばこ離れは、昨秋の値上げ以降もあまり進んでいない。増税に伴う上げ幅は過去最大だったが、国がもくろんだ健康増進策としては増税額が中途半端だったと専門家はみる。予防医学を推進するのなら、さらなるたばこ増税に踏み込まなければならない。

日本たばこ産業(JT)は今月7日、2011年3月期の業績予想を上方修正した。昨年10月の値上げに伴う販売減が予想よりも少なくなりそうで、今期の国内たばこの販売本数は前期比12%減にとどまる見通しだ。

 ジョンソン・エンド・ジョンソンが昨年11月実施したインターネット調査からも、禁煙があまり広がっていない状況がうかがえる。喫煙者の4割が値上げをきっかけに禁煙に挑んだが、うち6割が1カ月足らずで再び吸い始めたという。

 今回の増税は1本あたり3.5円で、値上げ分も含めると多くの銘柄で3~4割高くなった。例えば、マイルドセブンは1箱300円から410円に。それでも欧州に比べ100~400円ほど安い。健康増進を最優先して値段が決まったわけではない。

 年間2兆円超になるたばこ税は消費税1%に相当する安定財源だ。大幅増税にはいつも「極端な販売減となり税収減を招きかねない」との声が出て、ブレーキがかかる。

 ただ、公衆衛生や医療経済の専門家の間では「1箱1000円までなら、たばこ税の税収は増大する」との見方が有力になりつつある。

予防医学の観点からたばこの値段を議論するには、どれだけ喫煙率が下がるかをきちんと調べる必要がある。東京大学の五十嵐中・特任助教(医薬政策学)が試算したところ、1箱700円で、男性喫煙率(09年で38.2%)は25%まで下がるという。

 国民医療費は08年度、過去最高の約34兆8千億円になった。今後も毎年1兆円ずつ増えていく見通し。膨らむ医療費は先進国共通の悩みで、抑制を狙ってこの10年、予防医学の推進が趨勢(すうせい)になっている。

 国内でもメタボ対策、国民の健康増進活動である「健康日本21」などが進められたが、どれもうまくいっていない。東京大学の森臨太郎・准教授(国際保健政策学)は「(運動や肥満解消といった)人に行動の変化をお願いするだけの予防医学は効果が期待できない」と指摘する。

 予防医学が本当に医療費の減額につながるかは世界的にもまだ試行錯誤の段階だ。ただ、費用対効果を考えると、禁煙がワクチンと並んで最も有力な手段とされる。

 喫煙は様々な生活習慣病の元凶で、男性なら、がん死亡の40%がたばこが原因という。国民医療費のうち、1兆3000億円前後が喫煙による損失とのデータもある。

 国民皆保険制度ができて今年でちょうど50年。保険証さえあれば、だれもが必要な時に必要な医療を受けられ、日本の医療は世界的にも評価が高い。医療費が増大し、同制度の存続を危ぶむ声すら出始めるなか、喫煙対策の本気度が試される。』


『職場の受動喫煙、罰則規定見送り 厚労省分科会

 厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会は6日、職場での受動喫煙対策として、事業者に全面禁煙か喫煙室設置を義務付ける一方、実施しなかった場合の罰則規定を盛り込まないことを決めた。負担が大きいとする事業者に配慮した。最終報告書を年内に厚労相に提出、早ければ来年の通常国会に労働安全衛生法の改正案を提出する。

 この日の分科会では、労働者側が神奈川県の受動喫煙防止条例に罰則規定があることを指摘し「義務化の実効性担保のためにも、罰則は必要」との声が上がったが、事業者側の「罰則まで設けるのは厳しすぎる」との意見に配慮し、見送りを決めた。』


 たばこ税が消費税1%に相当するのだったら税金を倍にすれば消費税2%に相当するのだし,「1箱1000円までなら、たばこ税の税収は増大する」との見方が有力なのだったら1箱1000円でいいのではないだろうか.「喫煙者の4割が値上げをきっかけに禁煙に挑んだが、うち6割が1カ月足らずで再び吸い始めた」というのならきっと1000円でも同じだろう.

 たとえ脳梗塞や心筋梗塞になっても止められないのだから,喫煙者のうち半分以上の人はたとえ1000円になっても一時的な禁煙しかできないのではないかと思う.「喉元すぐれば熱さを忘れる」とはよく言ったものだ.

 もちろん私は脳外科医だから患者さんには入院中に禁煙を強くすすめるが,外来通院の喫煙者には3回言ってダメならそれ以上は禁煙については言わないことにしている.

 それ以上言っても脳梗塞が再発するまでに禁煙できた人はいないし,あまりしつこく言うと通院さえもしなくなってしまうからだ.通院せず薬も飲まなくなったら逆効果だろう.

 もっとも,たとえ全員が禁煙できたとしても医療費の減額効果がでるのはずっと先だろうし,私の仕事が減るわけでもないから禁煙しようがしまいが大した問題ではないのかもしれない.だから誰も本気じゃないのではないだろうか.

 それでも受動喫煙は迷惑な話だから,タバコを吸わない人を煙に巻くようなことだけはやめてもらいたいものだ.

コメント

権之助
2011年2月23日22:26

私もかつては喫煙者でしたが、就職活動のときの健康診断でTBが発見されたときに禁煙し、それ以来××年禁煙が続いております。今や、熱心な嫌煙権者でありまして、数メートル離れたところからでもたばこの匂いがすると不愉快な気分になります。
当時かかっていたKO病院の先生に、「たばこは百害あって一利なしだから吸わない方がいいね」と言われて、禁煙を決意しました。
値上げくらいでは、喫煙者は禁煙しないでしょうね。まさに政府の思うつぼになって、納税を続けてくれるんでしょう。ありがたいことです。喫煙者が早死にしてくれれば、社会的費用が削減されてご同慶の至りというものです。

梨 林
2011年2月24日6:39

医師の喫煙もまだまだ多い気がします。敷地内禁煙の病院が多くなって減ってはいるようですが。
研修医時代(外科ローテ)、指導医の喫煙タイムにdutyで昼休み等に付き合わされるのが苦痛でした。

ブログ脳外科医
2011年2月24日11:13

大学で研修医だった頃,教授が喫煙者かどうかで医局員の喫煙の意識はずいぶん変わるというのを経験しました.カンファレンス室が煙で霞んでいたのが,教授が禁煙した途端に医局員の病院内での喫煙が激減し,カンファレンス中も禁煙になりました.
現在の病院も敷地内禁煙なのですが,駐車場の車の中で隠れて吸っている職員はいるみたいです.戻ってくると匂いですぐにわかるのに,そこまでしても吸いたいのでしょうね.注意しても無駄なので無視していますが...

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