『医療事故 研修医が起こす 入院中の男性患者死亡 静岡・焼津市立総合病院

 焼津市立総合病院(焼津市道原)は14日、30代の男性研修医が入院中の男性患者(88)に呼吸器具を挿入しようとした際、医療事故を起こしたと発表した。この患者は同日、死亡した。県警は15日、遺体を司法解剖し、医療事故との因果関係を調べる方針。太田信隆院長は記者会見で「事故は全面的に病院の過失だ。遺族に深くおわびしたい」と謝罪した。

 同病院によると、この研修医は今月7日、患者の喉に装着してある呼吸器具(気管カニューレ)を取り換え、その3分後、様子を見に戻ったところ、呼吸停止状態になっていた。研修医は器具を取り付けやすくする内筒を抜き忘れていたことに気付き、取り外したが、患者は意識不明のまま14日、死亡した。

 同病院によると、患者は焼津市在住。慢性腎不全などで昨年11月15日、救急搬送され、そのまま入院。12月2日、気管切開手術を受けていた。同病院の説明によると、院内規定では、研修医については、こうした治療は他の医師の監督下で行うと定めているが、当時、研修医が1人で呼吸器具を交換したという。

 同病院は事故の再発防止のため、外部の有識者による医療事故調査委員会を近く設け、事故の起きた経緯を調べる方針を示した。』

ちょうど死亡した男性が入院した3日後の昨年11月18日には以下のようなニュースがあった.

『90歳患者窒息死、医療過誤の27歳女医送検

 医療過誤で患者を窒息死させたとして、石川県警金沢中署は18日、金沢赤十字病院(金沢市三馬、岩田章院長)の内科の女性医師(27)を、業務上過失致死の疑いで金沢地検に書類送検した。

 発表によると、医師は5月17日午後1時頃、入院していた同県白山市、無職女性患者(90)ののどに装着していた気道確保の器具を交換した際、対応を誤り気道閉塞で窒息死させた疑い。この器具は外筒と内筒の2重構造で、内筒を引き抜かないと空気が通らない仕組みだが、医師は内筒を外し忘れたという。一緒に作業していた看護師2人もミスに気づかなかった。

 同1時45分頃に別の看護師が女性の異変に気づき、救命措置を施したが、間もなく死亡した。病院は女性の家族に経緯を説明し、同署へ届け出た。医師は「どうして(取り外し)忘れたのかわからない」と話しているという。』

この女性医師も研修医だったらしい.

気管切開術というのは何らかの原因で呼吸状態が悪くて慢性的な気道確保が必要な際に行われるもので,これ自体はベッドサイドで30分もあれば出来る手術であるが簡単な手術とは言え当然リスクはある.

この時に,頚部の皮膚から気管内へ通じる瘻孔に挿入して気道を確保する器具が気管カニューレと呼ばれるものである.これには空気を入れるカフという風船状の袋が付いたものと付いていないものがあり,カフが付いたものには気管内への挿入を容易にするためのスタイレットがあらかじめカニューレ内にセットされている.

カフはカニューレの外壁と気管の内壁の間で風船状に膨らんでカニューレ外の空気の漏れを防ぐためのものであるから,カフを膨らませた状態でスタイレットを入れたままだと空気の流れるところはないので窒息してしまうことになる.

だから,上記の2つの事故はカフ付きカニューレを研修医が交換し,交換後にスタイレットを抜き忘れたという単純なミスなのだろう.しかし,私はこのような事例を今まで一度も聞いた事がなかったので昨年11月ニュースには驚いた.しかし,それから3ヶ月でまた同様の事故がニュースになるとは思いもしなかった.

考えられるミスはすべて起きるというのが私の持論だが,スタイレットを抜き忘れるなんてことは考えたこともなかった.研修医が起こした事故なのだから当然に病院の管理責任は問われることだろう.しかし,もし指導医が研修医ひとりで処置することを認めていたとしたら指導医にも責任が及ぶのだろうか.

現実問題としてカニューレ交換を毎回医師が2人がかりでやるなんてことは不可能なのではないだろうか.もし,そんな必要があるのだとしたらなんらかのリスクがある処置は研修医にやらせないほうがいいということになるのではないだろうか.

研修中にこんな初歩的なミスがたて続けに起きるのは研修医制度に問題があるような気がするし,カニューレ交換にまで指導医がつかなければならないような研修をやってるようでは研修後に現場に出てもやはりそのままでは通用しないような気がするのは私だけだろうか.

コメント

スミぱん@国会を見よう
2011年2月20日17:08

なんでもかんでも指導医がついていないとできない、と言うのも困ったもんですが、
せめて習熟するまでは1人ではさせない方がいいのかもしれないですね。
でもそんなこと言ってたら、研修期間過ぎてしまいますか。(^^;)

ウチの勤務先では、新人さんが作業に習熟するまでは、ダブルチェックといって、
指導者あるいはベテランの作業者が必ずチェックすることになってます。

ブログ脳外科医
2011年2月20日17:15

問題は研修指定病院とて医師が十分に足りているわけではないということではないでしょうか.研修医の相手をまともにしていたら自分の仕事が終わらないという状態では十分に目が届かなくても仕方がないというのが現実ではないでしょうか.そして,事故が起きたら病院は研修医と指導医の責任にするという仕組みなのでしょう.

うらら
うらら
2011年2月21日1:31

こんばんわ。
この、内容には、少し、驚きましたし、
職場でも、話題になりました。
気切のカニューレ交換で、
「研修医が一人で、看護師がついていて、」
という状況は、おそらく、よく、よく
ある状況だと思います。
でも、こういうミスは、考えたこともなかった、です。
しかも、この状況の場合ですが、
看護師は、2名、ついていたとのこと。。。
驚きました。。。

患者さんのご冥福をお祈りいたします。

nophoto
わん
2011年7月17日22:14

本当にお気の毒です。
僕の父も気管切開しております。
カフ付なんで、発声できないのに、家族に了解なしに
半年間、研修医が取り替えていたみたいです。
意識はしっかりしてるので、そんな主治医が指導しながらって
きっと不安でしかたなかったと思うと家族としては嫌悪感で一杯。


研修医の今後が心配になります。指導医の資質、家族に伝達不足。
何よりも、指導医と病院の管理に問題が大きいと思います。

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