掛け持ちが当たり前で..
2011年1月18日 医療の問題 コメント (4)『医師、過失で書類送検 麻酔科医ら負担増も
◇「長時間手術室を離れた」
神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)で08年に手術中に酸素を送る管が抜けて女性患者(47)が意識不明となった医療事故を巡り、県警捜査1課と旭署が12日、担当した麻酔科医(41)と執刀外科医(37)の男性医師2人を業務上過失傷害容疑で書類送検した。県警は「患者の全身管理の必要があるのに長時間手術室を離れた」(幹部)ことなどを過失と判断した。ただ、現場からは、麻酔手術の増加など構造的な問題も浮かび上がる。
送検容疑は08年4月16日、患者の乳房部分を切除する際、麻酔科医は麻酔を施した後、引き継ぎをせず退室。執刀医は麻酔器から酸素の管が外れたことに気付かず、酸素供給が止まったため患者に脳機能障害を負わせたとしている。センターによると、患者は、現在は意識を回復してリハビリ中という。
日本麻酔科学会は「現場に麻酔を担当する医師がいて、絶え間なく看視すること」との指針を制定する。だが、同会指導医で横浜市立大学大学院の後藤隆久教授は「経験ある麻酔科医は、患者は短時間で容体が急変することを知っているが、やむを得ない場合もあるだろう」と指摘する。背景にあるのは、医師の負担増だ。厚生労働省の調査では、08年9月の月間全身麻酔手術件数は18万7097件で96年の同期に比べ約6万件増加している。
一方で、実施施設は96年から約700減り、08年は3652施設に。1施設当たりの手術件数は平均29・5件から51件に増えている。理由として、高齢化や外科技術の発達などが考えられ、「現場は医師数が手術件数に追いついていない状態」(後藤教授)という。
◇08年4月16日手術の流れ
8:19 麻酔科医が麻酔器の始業点検。麻酔回路の空気漏れなし
8:45 患者入室
8:55 静脈麻酔剤で麻酔導入を開始
9:00ごろ 気道確保用チューブを挿入し、麻酔回路に接続(換気開始)
9:08ごろ 麻酔科医が退室
時刻不明 誰かが手術台を操作
9:15ごろ 執刀外科医が手術開始宣言
9:16ごろ 麻酔器から管外れる
9:17 麻酔器モニターの一部の値が、計測不能を表示。アラームを聞いた者はいない
9:33 看護師がモニター異常表示を確認。PHSで麻酔科医を呼び出す
9:34~35 麻酔科医が戻り管再接続。換気を再開
9:36 患者が心停止
9:52 心拍数が正常に戻る
10:40 主治医から患者の夫に事情説明
11:30 ICU室で人工呼吸器装着 』
忙しい病院では並列で手術を行うのが当たり前だが、麻酔科医の数が手術室の数だけ揃っている病院なんてあるのだろうか.少なくとも私の知っている病院で数が足りていたのは大学病院くらいなものだ.
その大学病院でさえ手術室で実際に麻酔をかけている専門医や指導医の人数は足りていないだろう.大学病院ではスーパーバイザーを置いて研修医や掛け持ちによるトラブルを避けていたようだが,それで不足が完全に補えるわけでもないことは執刀したことがある外科医なら誰でも知っていることだろう.
がんセンターなどは手術件数が多い上に,麻酔科医はもともと不足しているからどこでも掛け持ちが当たり前の状態だろう.ひとつ麻酔の導入が終わったら隣の手術室でまた導入をして2つの手術室を行ったり来たりしながら並行して2つの手術の麻酔をするなんてことは日常茶飯事なはずである.
患者が意識を回復してリハビリ中だというのがせめてもの救いだが,事故の直接的原因の責任を医師に求めるのは仕方がないとしても,麻酔科医がひとつの手術に集中できないような体制を容認している病院に管理責任はないのだろうか.事故にかかわった医師だけを罰して,その事故の潜在的な原因を放置してきた病院に処分がないのはおかしくないだろうか.
もう一つ気になるのは,この麻酔科医(41)と執刀外科医(37)の男性医師2人の勤務状態はどのようなものだったかということだ.この年代は中堅で働きざかりだから医療業界の常識ならきっと当直明けも通常業務をこなしていることだろう.この手術の前の勤務に過労状態になるようなことはなかったのだろうか.
医師も人間だからミスはするだろうし,医療事故というと事故を起こした医師のみに責任を追求したくなる人がいるのもわかるが,医療業界には事故防止委員会というものがありながら,事故を誘発するような労働環境に関しては人手不足を理由にいっこうに改善しようとする気配さえもないのだ.
いつもお世話になっている麻酔科に先生のためにあえて言わせてもらえば,「当直明けに休みなしで掛け持ち麻酔なんかさせるんじゃない.それで事故が起きたら病院のせいなんじゃないの.」ということだ.患者さんのために言えば,医師の労働環境を改善することが医療事故の防止につながるということだ.
自分が手術を受けている最中に担当の麻酔科医が隣の手術室に麻酔をかけに行っているなんて誰も想像したくもないのではないだろうか.
◇「長時間手術室を離れた」
神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)で08年に手術中に酸素を送る管が抜けて女性患者(47)が意識不明となった医療事故を巡り、県警捜査1課と旭署が12日、担当した麻酔科医(41)と執刀外科医(37)の男性医師2人を業務上過失傷害容疑で書類送検した。県警は「患者の全身管理の必要があるのに長時間手術室を離れた」(幹部)ことなどを過失と判断した。ただ、現場からは、麻酔手術の増加など構造的な問題も浮かび上がる。
送検容疑は08年4月16日、患者の乳房部分を切除する際、麻酔科医は麻酔を施した後、引き継ぎをせず退室。執刀医は麻酔器から酸素の管が外れたことに気付かず、酸素供給が止まったため患者に脳機能障害を負わせたとしている。センターによると、患者は、現在は意識を回復してリハビリ中という。
日本麻酔科学会は「現場に麻酔を担当する医師がいて、絶え間なく看視すること」との指針を制定する。だが、同会指導医で横浜市立大学大学院の後藤隆久教授は「経験ある麻酔科医は、患者は短時間で容体が急変することを知っているが、やむを得ない場合もあるだろう」と指摘する。背景にあるのは、医師の負担増だ。厚生労働省の調査では、08年9月の月間全身麻酔手術件数は18万7097件で96年の同期に比べ約6万件増加している。
一方で、実施施設は96年から約700減り、08年は3652施設に。1施設当たりの手術件数は平均29・5件から51件に増えている。理由として、高齢化や外科技術の発達などが考えられ、「現場は医師数が手術件数に追いついていない状態」(後藤教授)という。
◇08年4月16日手術の流れ
8:19 麻酔科医が麻酔器の始業点検。麻酔回路の空気漏れなし
8:45 患者入室
8:55 静脈麻酔剤で麻酔導入を開始
9:00ごろ 気道確保用チューブを挿入し、麻酔回路に接続(換気開始)
9:08ごろ 麻酔科医が退室
時刻不明 誰かが手術台を操作
9:15ごろ 執刀外科医が手術開始宣言
9:16ごろ 麻酔器から管外れる
9:17 麻酔器モニターの一部の値が、計測不能を表示。アラームを聞いた者はいない
9:33 看護師がモニター異常表示を確認。PHSで麻酔科医を呼び出す
9:34~35 麻酔科医が戻り管再接続。換気を再開
9:36 患者が心停止
9:52 心拍数が正常に戻る
10:40 主治医から患者の夫に事情説明
11:30 ICU室で人工呼吸器装着 』
忙しい病院では並列で手術を行うのが当たり前だが、麻酔科医の数が手術室の数だけ揃っている病院なんてあるのだろうか.少なくとも私の知っている病院で数が足りていたのは大学病院くらいなものだ.
その大学病院でさえ手術室で実際に麻酔をかけている専門医や指導医の人数は足りていないだろう.大学病院ではスーパーバイザーを置いて研修医や掛け持ちによるトラブルを避けていたようだが,それで不足が完全に補えるわけでもないことは執刀したことがある外科医なら誰でも知っていることだろう.
がんセンターなどは手術件数が多い上に,麻酔科医はもともと不足しているからどこでも掛け持ちが当たり前の状態だろう.ひとつ麻酔の導入が終わったら隣の手術室でまた導入をして2つの手術室を行ったり来たりしながら並行して2つの手術の麻酔をするなんてことは日常茶飯事なはずである.
患者が意識を回復してリハビリ中だというのがせめてもの救いだが,事故の直接的原因の責任を医師に求めるのは仕方がないとしても,麻酔科医がひとつの手術に集中できないような体制を容認している病院に管理責任はないのだろうか.事故にかかわった医師だけを罰して,その事故の潜在的な原因を放置してきた病院に処分がないのはおかしくないだろうか.
もう一つ気になるのは,この麻酔科医(41)と執刀外科医(37)の男性医師2人の勤務状態はどのようなものだったかということだ.この年代は中堅で働きざかりだから医療業界の常識ならきっと当直明けも通常業務をこなしていることだろう.この手術の前の勤務に過労状態になるようなことはなかったのだろうか.
医師も人間だからミスはするだろうし,医療事故というと事故を起こした医師のみに責任を追求したくなる人がいるのもわかるが,医療業界には事故防止委員会というものがありながら,事故を誘発するような労働環境に関しては人手不足を理由にいっこうに改善しようとする気配さえもないのだ.
いつもお世話になっている麻酔科に先生のためにあえて言わせてもらえば,「当直明けに休みなしで掛け持ち麻酔なんかさせるんじゃない.それで事故が起きたら病院のせいなんじゃないの.」ということだ.患者さんのために言えば,医師の労働環境を改善することが医療事故の防止につながるということだ.
自分が手術を受けている最中に担当の麻酔科医が隣の手術室に麻酔をかけに行っているなんて誰も想像したくもないのではないだろうか.
コメント
いくつもの手術を掛け持ちしなきゃならないほど、麻酔科医が足りないと
いうことは異常だと思います。
産婦人科、小児科の医師の不足がクローズアップされているのだから、
麻酔科医も同様に「絶対数が足りないんだぞ!」と声を上げてもいいのでは
ないのでしょうか。
このあたりを厚労省はどう考えているのでしょうかね.