『産科医の当直を「労働時間」認定 大阪高裁も、奈良病院訴訟

 病院の当直勤務は割増賃金が支払われる「時間外労働」に当たる、として、県立奈良病院の産科医2人が県に対象額の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は16日、計約1500万円の支払いを命じた一審奈良地裁判決と同様に「当直は労働時間」と認定。双方の控訴を棄却した。

 判決理由で紙浦健二裁判長は「入院患者の正常分娩や手術を含む異常分娩への対処など、当直医に要請されるのは通常業務そのもので、労働基準法上の労働時間と言うべきだ。勤務時間全部について割増賃金を支払う義務がある」と指摘した。

 一方、応援要請に備えて自宅などで待機する「宅直勤務」については「医師らの自主的な取り組みで業務命令に基づくものとは認められず、労働時間には当たらない」と判断した。

 判決によると、奈良病院の産婦人科には医師5人がおり、夜間や休日の当直勤務は1人が担当。産科医2人は2004~05年に各約210回、当直勤務に就いた。分娩に立ち会うことも多く、十分な睡眠時間が取りづらい勤務環境だったが、一回につき2万円の手当が支給されるだけで、時間外労働の割増賃金は支払われなかった。』


「当直医に要請されるのは通常業務そのもので、労働基準法上の労働時間と言うべきだ。」と言えば私の当直もまったく同じである.救急当番でなくても時間外に来る患者は通常の外来と同じに診察するし,救急車からの要請があればベッドがある限りは受け入れる.もちろん当直であるから入院患者さんの急変にも対応する.

 しかるに今まで勤務した病院で当直時間内に来院した患者さんに通常業務と同じだけの診察や処置や緊急手術をしても当直料を上回る手当が支給された記憶はない.言うなれば医師の時間外勤務は当直料が上限ということだ.救急当番でなくとも救急患者が病院に運ばれていることは周知の事実なのに,厚生労働省は医師の給与が適切に支払われているかを監査したりはしないのである.

 おそらく他の業種についてもそうなんだろうが,労働条件を監督するのも,その監督が適切に行われているかを監査するのも同じ厚生労働省だからどうにでもなるのだろう.もっとも,労働に見合っただけの報酬をちゃんと払っていたら今の診療報酬では病院経営が成り立たなくなるだろうから公的病院の勤務医でもない限りこんな訴訟をすることはできないだろう.

 情報の豊富な最近の若い医師はこんな状況にはとっくに気がついているのだろうが,自分ではどうにもならないから我慢して働いているのだろう.当直の時間帯に一生懸命働いても医師も病院も報われないのだったら救急医療は今後ますます荒廃していくことだろう.

コメント

nassie
2010年11月16日18:48

門外漢のコメントで恐縮です。
医師配置の過剰と過疎、地域連携を射程に入れた適正な医療施設の配置計画の欠如と開業医優先政策。相変わらず風邪薬を貰いに地域の中核病院にいく患者。政権交代があったのに何にも変わりません。
むしろなんだか却って悪くなっているような気がします。

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