『「ビデオは秘密か」法適用めぐり専門家二分

 沖縄・尖閣(せんかく)諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、「流出」を告白した海上保安官(43)は、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で取り調べを受けたが、同法適用をめぐり専門家の意見が分かれている。国会議員にも一部公開されたビデオが法律上の「秘密」に当たるか。映像の公開を求める国民の声が多かった背景もあり、捜査側は難しい判断を迫られそうだ。

 ■判例は「実質秘説」

 最高裁は1977年、国家公務員法違反に問われた税務署職員の裁判で、漏らした情報が(1)公になっていない(2)秘密として保護すべき-の2つの条件を満たす場合に、守秘義務の対象になるという判断を示した。

 さらに、日米の沖縄返還協定に関する外交機密を不当に入手したとして、元毎日新聞記者の西山太吉さんが同法違反に問われた刑事裁判で、最高裁は78年「実質的にも秘密として保護するに値するもの」かどうかで守秘義務の対象が決まると判示した。

 つまり、行政機関が形式的に秘密として扱っていただけでは、仮に漏らしても罪に問えないという考え方だ。甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「以前はマル秘の判子が押してある書類は全部秘密という『形式秘説』という考え方だったが、近年は『実質秘説』が主流になっている」と話す。

 ■国会議員視聴は?

 今回の映像については政府が存在を認めている上、国会議員も約6分50秒に編集した映像を見ている。

 こうした点から、「実質秘」にあたらないと主張する専門家もいる。

 情報公開に詳しい清水勉弁護士は「本当に守秘義務がかかるものならば国会議員にも見せないはずで、守秘義務違反に問うのは無理だろう」と話し、「国会議員は視聴後の取材に、図を書いたりして中身を説明している。実質秘ならば、このように報道に対して明らかにすることも許されないはずだ」と主張する。

 一方、園田教授は「微妙な問題だが、ビデオは実質秘にも形式秘にもあたる」との考えだ。園田教授は「ビデオを見れば中国漁船が故意に当たってきたことは一目瞭然。中国への従来の主張への反論になり、日本にとっては重要な外交カードだった」と指摘。その上で、「国会議員にも守秘義務はあり、守秘義務のある人的範囲内で見せたに過ぎず、(議員への公開後も)ビデオの秘密性は保たれているのでは」と話す。

 ■「起訴は難しい選択」

 法務・検察内では「ビデオは秘密に当たる」という見方が大半だ。

 法務省幹部は「海保として公開を考えて編集していた段階と、国会で取り扱いが議論になった段階とでは『秘密性』の程度も違ってくる。内容がある程度外部に説明されたら秘密にあたらないという解釈がされると、何でも秘密でなくなってしまう」と話す。

 一方で、海上保安官の動機や入出経路次第では「刑事責任の追及は難しい」(検察幹部)との声もある。そもそも同法違反には「職務上知り得たもの」という構成要件があるためだ。

 また、体を張って領海の安全を守っている海上保安官が「国民に真実を知ってほしい」などと「国民の知る権利」を主張した場合、「起訴しても、公判で議論となる余地はあるだろう」(法務省幹部)という意見もある。

 検察幹部は「起訴するかは難しい選択」と明かし、「ビデオ公開は大半の国民から支持されている。世論に反して起訴したら検察も批判され民主党も持たないのではないか」と話した。』

『【映像流出】中国政府 日本政府批判の表現避ける

 尖閣諸島沖の衝突ビデオが流出した事件について、11日午後、中国側が「日中関係に悪い影響を与えることは希望しない」と初めてコメントしました。

 外務省・洪磊副報道局長:「我々は、ビデオ問題が日中関係に悪影響をもたらさないよう希望する」

 中国外務省の報道官は、不快感は示したものの、胡錦涛国家主席の訪日を前に日本政府を直接、批判する表現は避けました。また、日中首脳会談について、菅総理大臣が「中国側がやるかどうかを判断することだ」と見解を示し、中国側に国際的な共通ルールのなかで責任を果たしていくことを求めたことについて、中国は平和路線を重視する国だと主張しました。

 外務省・洪磊副報道局長:「中国は国際社会に責任を持つ国だ。中国は必ずや平和の道を歩んでいく」』

 トランプに例えるなら菅首相が切り札だと思い込んでいた手持ちのカードを後ろにいた海上保安官が読み上げてその場にいるみんなに教えたようなものだからルールの上ではなんらかのペナルティがあっていいだろう.

 しかし,その後の中国の対応を見ればこのカードは実は切り札でもなんでもなかったのではないだろうか.いや,もしかすると海上保安官が流出させたからこそ中国も日本政府と正面きって戦うことが出来なくなったのかも知れず,対中国という点では結果的にこの事件が菅首相やわが国にとって有利に働いた可能性は否定出来ないだろう.

 いずれにしても海上保安官の動機が自分の職を賭してまでも「国民に真実を知ってほしい」ということであったのならば,情状酌量の余地は十分にあるのではないかと私は思う.

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