医師の心が折れたから医療が崩壊したのでは?
2010年3月7日 医療の問題
『ネットで医師暴走、医療被害者に暴言・中傷
医療事故の被害者や支援者への個人攻撃、品位のない中傷、カルテの無断転載など、インターネット上で発信する医師たちの“暴走”が目立ち、遺族が精神的な二次被害を受ける例も相次いでいる。
状況を憂慮した日本医師会(日医)の生命倫理懇談会(座長、高久史麿・日本医学会会長)は2月、こうしたネット上の加害行為を「専門職として不適切だ」と、強く戒める報告書をまとめた。
ネット上の攻撃的発言は数年前から激しくなった。
2006年に奈良県の妊婦が19病院に転院を断られた末、搬送先で死亡した問題では、カルテの内容が医師専用掲示板に勝手に書き込まれ、医師らの公開ブログにも転載された。警察が捜査を始めると、書いた医師が遺族に謝罪した。同じ掲示板に「脳出血を生じた母体も助かって当然、と思っている夫に妻を妊娠させる資格はない」と投稿した横浜市の医師は、侮辱罪で略式命令を受けた。
同じ年に産婦人科医が逮捕された福島県立大野病院の出産事故(無罪確定)では、遺族の自宅を調べるよう呼びかける書き込みや、「2人目はだめだと言われていたのに産んだ」と亡くなった妊婦を非難する言葉が掲示板やブログに出た。
この事故について冷静な検証を求める発言をした金沢大医学部の講師は、2ちゃんねる掲示板で「日本の全(すべ)ての医師の敵。日本中の医師からリンチを浴びながら生きて行くだろう。命を大事にしろよ」と脅迫され、医師専用掲示板では「こういう万年講師が掃きだめにいる」と書かれた。
割りばしがのどに刺さって男児が死亡した事故では、診察した東京・杏林大病院の医師の無罪が08年に確定した後、「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」などと両親を非難する書き込みが相次いだ。
ほかにも、遺族らを「モンスター」「自称被害者のクレーマー」などと呼んだり、「責任をなすりつけた上で病院から金をせしめたいのかな」などと、おとしめる投稿は今も多い。
誰でも書けるネット上の百科事典「ウィキペディア」では、市民団体の活動が、医療崩壊の原因の一つとして記述されている。
奈良の遺族は「『産科医療を崩壊させた』という中傷も相次ぎ、深く傷ついた」、割りばし事故の母親は「発言することが恐ろしくなった」という。
日医の懇談会は「高度情報化社会における生命倫理」の報告書で、ネット上の言動について「特に医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者などへの個人攻撃は、医師の社会的信頼を損なう」と強調した。
匿名の掲示板でも、違法性があれば投稿者の情報は開示され、刑事・民事の責任を問われる、と安易な書き込みに注意を喚起。「専門職である医師は実名での情報発信が望ましい」とし、医師専用の掲示板は原則実名の運営に改めるべきだとした。ウィキペディアの記事の一方的書き換えも「荒らし」の一種だと断じ、公人でない個人の記事を作るのも慎むべきだとした。
報告の内容は、日医が定めた「医師の職業倫理指針」に盛り込まれる可能性もある。その場合、違反すると再教育の対象になりうる。』
開業医の利益を守ることが大切な医師会のこの見解は,クレーマー患者の矛先が医師会へ向くのをかわすのには効果的かもしれないが,同時に,匿名性を否定することによって勤務医による医師会への批判も押さえ込もうという意図はないのだろうか.
問題にされていると思われる医師専用掲示板の利用規約には,
『第1条(サービスについて)
Doctors Community(以下「掲示板」といいます)は、エムスリー株式会社(以下「弊社」といいます)が、「エムスリーサービス」の会員のうち日本の免許を有する医師および弊社が認める医師のみ(以下「会員」といいます)に提供するサービスのひとつです。
第3条(掲示板の内容に関する著作権の帰属・転載の禁止)
会員は、掲示板に投稿をする場合には、当該投稿に関する著作権(著作権法第27条および第28条に定める権利を含む)を弊社に譲渡したとみなされることに同意するものとします。
会員は、掲示板になされた投稿に関し、弊社の許諾を得ずに、掲示板外に転載し、または第三者に開示しないものとします。』
とあるので,この規約に違反するものがいなければ本来は会員以外の医師が知り得ないことであるし,たとえマスコミが知り得ても掲示板外に転載したり,第三者に開示できないはずなのに,その内容についてニュースになっているのはどういう訳なのだろうか.
ユーザーが限定されている掲示板で何を発言しても,その掲示板の会員間の問題であって,会員資格のない者が外部でそれについて発言するのはおかしな話である.だから,この記事の中で医師専用掲示板に関する部分は削除されるべきだろう.
市民団体の活動が,医療崩壊の原因の一つだったりする可能性は否定できないし,奈良の遺族が『産科医療を崩壊させた』とか,割りばし事故の両親が「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」のが事実かどうかは知らないが,これらの事件に関してマスコミの書いた記事を読んで,心が折れた医師が現場を離れていくことが医療崩壊を招いていることは事実ではないだろうか.
ネットの使い方にもルールやマナーがあるのは当然のことだが,私的な利用というのも当然あるわけで,利用自体が違法な手段によるのでなければ別に問題はないだろう.
「医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者などへの個人攻撃」が違法であれば,それは掲示板の内容を転載したり,個人を中傷する発言をした医師個人の問題で,だからといって「医師専用の掲示板は原則実名の運営に改めるべきだ」というのは論理に飛躍がありすぎるだろう.なぜなら「医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者」と同様にたとえ「専門職である医師」であっても発言に対する個人攻撃や中傷からは身を守る必要性があるからである.
医師だから何を言っても許されると思っている人がいないのと同様に,医師も他の職種の人と同様の権利を持っているのである.裁判で有罪となったわけでもないのに実名で報道され,医師として働けなくなった人たちに医師会やマスコミが一体何をしてくれたというのであろうか.自分の身を守るために自由な発言が出来ないというのは一種の言論弾圧にはならないのだろうか.
この記事のように判決で医師の過失はないとされた事件を引き合いに出しておきながら,いまだに可哀想なのは患者側で悪いのは医師側という立場のマスコミでは被害者意識を持ち続け医師に恨みを持つような一部のモンスター市民には受けるかもしれないが,まじめに働いている医師や地域の病院を信頼している良識ある市民には医療崩壊の片棒をかつぐものとして迷惑がられるだけではないだろうか.
医療はあくまでも患者があってこそ成り立つものだし,多くの医師は患者の生命を救うという崇高な精神で働いていると思うが,患者から信頼されたり感謝されないだけでなく結果が気にくわなければ刑事訴訟までされるというのでは,産科や救急などの過酷な労働環境でモチベーションを維持することができなくなるのも当然だろう.
医療ミスではないのに逆恨みする家族や,それに乗じて現場の医師の心を傷つけるような報道をするマスコミこそ“暴走”していると思えるのだがどうだろうか.
医療事故の被害者や支援者への個人攻撃、品位のない中傷、カルテの無断転載など、インターネット上で発信する医師たちの“暴走”が目立ち、遺族が精神的な二次被害を受ける例も相次いでいる。
状況を憂慮した日本医師会(日医)の生命倫理懇談会(座長、高久史麿・日本医学会会長)は2月、こうしたネット上の加害行為を「専門職として不適切だ」と、強く戒める報告書をまとめた。
ネット上の攻撃的発言は数年前から激しくなった。
2006年に奈良県の妊婦が19病院に転院を断られた末、搬送先で死亡した問題では、カルテの内容が医師専用掲示板に勝手に書き込まれ、医師らの公開ブログにも転載された。警察が捜査を始めると、書いた医師が遺族に謝罪した。同じ掲示板に「脳出血を生じた母体も助かって当然、と思っている夫に妻を妊娠させる資格はない」と投稿した横浜市の医師は、侮辱罪で略式命令を受けた。
同じ年に産婦人科医が逮捕された福島県立大野病院の出産事故(無罪確定)では、遺族の自宅を調べるよう呼びかける書き込みや、「2人目はだめだと言われていたのに産んだ」と亡くなった妊婦を非難する言葉が掲示板やブログに出た。
この事故について冷静な検証を求める発言をした金沢大医学部の講師は、2ちゃんねる掲示板で「日本の全(すべ)ての医師の敵。日本中の医師からリンチを浴びながら生きて行くだろう。命を大事にしろよ」と脅迫され、医師専用掲示板では「こういう万年講師が掃きだめにいる」と書かれた。
割りばしがのどに刺さって男児が死亡した事故では、診察した東京・杏林大病院の医師の無罪が08年に確定した後、「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」などと両親を非難する書き込みが相次いだ。
ほかにも、遺族らを「モンスター」「自称被害者のクレーマー」などと呼んだり、「責任をなすりつけた上で病院から金をせしめたいのかな」などと、おとしめる投稿は今も多い。
誰でも書けるネット上の百科事典「ウィキペディア」では、市民団体の活動が、医療崩壊の原因の一つとして記述されている。
奈良の遺族は「『産科医療を崩壊させた』という中傷も相次ぎ、深く傷ついた」、割りばし事故の母親は「発言することが恐ろしくなった」という。
日医の懇談会は「高度情報化社会における生命倫理」の報告書で、ネット上の言動について「特に医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者などへの個人攻撃は、医師の社会的信頼を損なう」と強調した。
匿名の掲示板でも、違法性があれば投稿者の情報は開示され、刑事・民事の責任を問われる、と安易な書き込みに注意を喚起。「専門職である医師は実名での情報発信が望ましい」とし、医師専用の掲示板は原則実名の運営に改めるべきだとした。ウィキペディアの記事の一方的書き換えも「荒らし」の一種だと断じ、公人でない個人の記事を作るのも慎むべきだとした。
報告の内容は、日医が定めた「医師の職業倫理指針」に盛り込まれる可能性もある。その場合、違反すると再教育の対象になりうる。』
開業医の利益を守ることが大切な医師会のこの見解は,クレーマー患者の矛先が医師会へ向くのをかわすのには効果的かもしれないが,同時に,匿名性を否定することによって勤務医による医師会への批判も押さえ込もうという意図はないのだろうか.
問題にされていると思われる医師専用掲示板の利用規約には,
『第1条(サービスについて)
Doctors Community(以下「掲示板」といいます)は、エムスリー株式会社(以下「弊社」といいます)が、「エムスリーサービス」の会員のうち日本の免許を有する医師および弊社が認める医師のみ(以下「会員」といいます)に提供するサービスのひとつです。
第3条(掲示板の内容に関する著作権の帰属・転載の禁止)
会員は、掲示板に投稿をする場合には、当該投稿に関する著作権(著作権法第27条および第28条に定める権利を含む)を弊社に譲渡したとみなされることに同意するものとします。
会員は、掲示板になされた投稿に関し、弊社の許諾を得ずに、掲示板外に転載し、または第三者に開示しないものとします。』
とあるので,この規約に違反するものがいなければ本来は会員以外の医師が知り得ないことであるし,たとえマスコミが知り得ても掲示板外に転載したり,第三者に開示できないはずなのに,その内容についてニュースになっているのはどういう訳なのだろうか.
ユーザーが限定されている掲示板で何を発言しても,その掲示板の会員間の問題であって,会員資格のない者が外部でそれについて発言するのはおかしな話である.だから,この記事の中で医師専用掲示板に関する部分は削除されるべきだろう.
市民団体の活動が,医療崩壊の原因の一つだったりする可能性は否定できないし,奈良の遺族が『産科医療を崩壊させた』とか,割りばし事故の両親が「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」のが事実かどうかは知らないが,これらの事件に関してマスコミの書いた記事を読んで,心が折れた医師が現場を離れていくことが医療崩壊を招いていることは事実ではないだろうか.
ネットの使い方にもルールやマナーがあるのは当然のことだが,私的な利用というのも当然あるわけで,利用自体が違法な手段によるのでなければ別に問題はないだろう.
「医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者などへの個人攻撃」が違法であれば,それは掲示板の内容を転載したり,個人を中傷する発言をした医師個人の問題で,だからといって「医師専用の掲示板は原則実名の運営に改めるべきだ」というのは論理に飛躍がありすぎるだろう.なぜなら「医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者」と同様にたとえ「専門職である医師」であっても発言に対する個人攻撃や中傷からは身を守る必要性があるからである.
医師だから何を言っても許されると思っている人がいないのと同様に,医師も他の職種の人と同様の権利を持っているのである.裁判で有罪となったわけでもないのに実名で報道され,医師として働けなくなった人たちに医師会やマスコミが一体何をしてくれたというのであろうか.自分の身を守るために自由な発言が出来ないというのは一種の言論弾圧にはならないのだろうか.
この記事のように判決で医師の過失はないとされた事件を引き合いに出しておきながら,いまだに可哀想なのは患者側で悪いのは医師側という立場のマスコミでは被害者意識を持ち続け医師に恨みを持つような一部のモンスター市民には受けるかもしれないが,まじめに働いている医師や地域の病院を信頼している良識ある市民には医療崩壊の片棒をかつぐものとして迷惑がられるだけではないだろうか.
医療はあくまでも患者があってこそ成り立つものだし,多くの医師は患者の生命を救うという崇高な精神で働いていると思うが,患者から信頼されたり感謝されないだけでなく結果が気にくわなければ刑事訴訟までされるというのでは,産科や救急などの過酷な労働環境でモチベーションを維持することができなくなるのも当然だろう.
医療ミスではないのに逆恨みする家族や,それに乗じて現場の医師の心を傷つけるような報道をするマスコミこそ“暴走”していると思えるのだがどうだろうか.
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