本日の脳神経外科学会のシンポジウム1のタイトルだが,こんなことが学会のシンポジウムになるほど事態は深刻になってきているということなのだろう.学会のアンケートでは専門医の平均労働時間は現状では64.4時間だそうだが,厚生労働省が言うところの40時間労働で同じ業務をこなすには64.4×4430÷40=7132(人)が必要で,7132-4430=2702(人)不足ということになるそうだ.

 確かに現在の1.5倍の人数がいれば専門医は定時に帰宅できるようになるかもしれないが,そもそも脳外科医が今後増えるなんてことは期待できないし,高齢化に伴い患者が増加する一方で脳外科医は退職者が増えるわけだから,今と同じ業務を続けることはいずれ不可能になることだろう.人口動態からは2030年が患者数のピークになるそうだ.

 問題はこれをどう解決するかということだが,脳卒中患者を神経内科と脳外科にうまくふり分けたり,事務職や看護師などのパラメディカルスタッフを増員して脳外科医の仕事量を減らすということが考えられているようである.では,脳外科医を増やすにはどうすればいいのかというのもあるが,ドクターズフィーの導入は現実的ではなさそうだった.

 以前に医師を地方に計画配置すればいいと言っていた読売新聞の記者が今回は心臓外科関連学会の施設集約の例を引き合いに色々言っていたが,脳外科の現場のことがわかっているとは思われなかったし,わからない故に脳神経外科学会に今後の対策を説明するように求めているようだったが,施設を集約しても脳外科医の仕事量が減るわけでもないし,ひたすら安い医療費で世界最高レベルの医療を希望する国民に説明しても得られるものはなさそうで,発言が確かに患者目線だということが理解できただけだった.

 現場で救急患者を診ている脳外科医として言いたいことは色々あるが,特に有効な解決法も思い浮かばない私としては力尽きるまであるいは絶滅するまで脳外科医を続けるしかないが,2030年までは働いているに違いない.しかし,これから労働条件がまだ悪化するのかと思うとどうやって本当に脳外科医として必要な仕事以外から逃れるかを考えないと脳外科医としてやっていけなくなるような気がしてきた.

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