『新型インフル、49歳男性死亡

 北九州市は1日、新型インフルエンザに感染した同市八幡東区の男性(49)が死亡したと発表した。男性には基礎疾患がなく、直接の死因は多臓器不全だった。インフルエンザの治療薬は投与されていなかったという。厚生労働省によると、新型への感染が確認されたか、疑われた患者の死亡は全国で20人目。

 市によると、男性は9月中旬から呼吸が苦しいなどの不調があり、同月21日、発熱で出張先の福岡県外の医療機関を受診。39度7分の熱で肺炎を発症していた。インフルエンザの簡易検査では陰性だった。入院を断って北九州市に戻り、22日未明に市内で受診した際には肝・腎機能障害を併発していた。集中治療室で治療を受けたが30日朝、死亡したという。遺伝子検査で翌1日に、新型インフルエンザの陽性が確認された。

 北九州で診察した医師は簡易検査で陰性だったと聞き、腎障害など発熱以外の症状もあったため、インフルエンザとは考えず、再度の検査やタミフルなど治療薬の投与はしなかったという。遺伝子検査の検体は25日に採取したが、「遺伝子変異がないかを確認するためで、緊急性はない」と伝えていたため、結果が出たのは6日後だったという。』

『新型インフル感染40歳代女性が死亡

 堺市は6日、新型インフルエンザに感染した市内の40歳代の女性が4日午後に死亡したと発表した。新型インフルに感染した、または感染が疑われる患者の死亡は全国で21人目。直接の死因は、致死性が強い劇症型A群溶連菌感染症による多臓器不全で、新型インフル感染との関係は不明という。女性には高血圧症の基礎疾患があった。

 市によると、9月29日からのどの痛みやせき、発熱などの症状があり、今月2日に入院。3日からタミフルを服用していた。インフルの簡易検査で3度、陰性だったが、死後の遺伝子検査で新型インフルの感染が確認された。』

『新型インフルエンザ重症例で目立つ発症初期の「簡易検査A型陰性」

 これまで確認された新型インフルエンザ感染者の死亡例の経緯をみると、発症初期に「簡易検査でA型陰性」だった事例が5例ほど確認できた。

 1例目の50代男性(心筋梗塞の既往、慢性腎不全で透析)の場合、8月9日に咽頭通や咳の症状があり、10日に受診したが、その時点で37℃台で、簡易検査ではA型陰性だった。12日に簡易検査でA型陽性となり、タミフルによる治療を受けていた。

 2例目の70代男性(肺気腫、糖尿病、高血圧の基礎疾患。糖尿病による腎不全で週に3日、腎透析)の場合は、8月16日に38℃の発熱、倦怠感、軽い咳、息苦しさがあった。17日午前に市内の医療機関を受診した際、迅速診断キットの結果はA型陰性だった。そこでは「肺炎疑い」と診断されたが、状態不良のため、精査目的で市内の病院を紹介された。

 その後、同日午後に、紹介先の病院へ入院。急性気管支炎による肺気腫の悪化と診断された。発熱、呼吸困難、全身倦怠感の症状があり、再度、迅速診断キットを実施したところ、A型陽性となったため、タミフルを投与し、抗生剤を点滴された。

 4例目の新型インフルエンザ疑い例(70代女性)の場合は、8月24日に38.5℃の発熱。しかし、簡易検査ではA型もB型も陰性だった。この時点で胸部X線検査を実施したが、肺炎の所見はなかった。25日に呼吸困難、40.4℃の発熱があり、この段階で簡易検査でA型陽性となった。酸素吸入に入るが同日午前10時23分に死亡した。

 5例目の30代男性(慢性心不全 糖尿病 気管支喘息 アトピー性皮膚炎)の場合は、8月20日に咳、水様性下痢、食欲低下があった。8月23日に発熱(37.9℃)があり、市内医療機関受診。症状が改善しなかったため、25日に自宅近くのかかりつけの医療機関を受診。市内医療機関を紹介され、再度、同医療機関を受診したところ、慢性心不全と肺炎のため入院となった。この時点で、インフルエンザ迅速簡易検査ではA型陰性だった。

 26日朝に状態が悪化したため、人工呼吸器を装着しICUで治療が開始された。この時点でも、インフルエンザ迅速簡易検査ではA型陰性だった。

 6例目の60代女性(消化器がん術後)の場合も、27日に発熱(38℃)、咽頭痛、咳、鼻汁があった。28日に近医を受診、そこでは迅速診断でA型もB型も「陰性」だった。入院し人工呼吸器の装着となったが、29日未明に死亡した。なお、28日にPCR検査により、新型インフルエンザ陽性を確認している。

 このほか死亡には至っていない重症例においても、たとえば沖縄県で確認された重症化例の中には、病初期における簡易キット検査でA型陰性と判定され、その後の検査でA型陽性に転じた例が報告されている。このため、沖縄県は重症例の発生に伴い、医療機関に対して、インフルエンザ症状のある患者で新型インフルエンザが疑われる場合は、簡易検査の結果にかかわらず、抗インフルエンザ薬による治療を検討するよう求めた。また、状況によっては再検査の必要性についても留意するよう求めていもいる。

 日本臨床内科医会のインフルエンザ研究班のメンバーである原土井病院臨床研究部部長の池松秀之氏は、特にハイリスク群と言われる人では、「発症初期にインフルエンザ診断を簡易検査に頼るのは危険だ」とし、「症状優先」で取り組むべきと指摘している。』

『Q 新型インフルエンザの特徴は?

 A 季節性インフルエンザと同様、突然の熱やせき、鼻水、関節痛などの症状が出ます。海外のデータでは症状が重くならない弱毒性で、熱がほとんどない患者もいます。早期発見し、タミフルやリレンザなどで治療すれば、重症化は避けられます。

しかし、タミフルやリレンザは、発症してから48時間以内に服用しないと、効果を発揮しませんので、発熱などの症状がでましたら、すぐに発熱相談*に電話し、指示を仰ぎ診察を受けてください。(*注:現在は発熱相談に電話の必要性はないようです.受診予定の病院に電話して相談したほうがいいかもしれません.)

今の新型インフルエンザの特徴として分かってきているのは、下痢や腹痛などの症状が多く、必ずしも高熱がでるわけではない場合もあるそうです。なので、下痢や腹痛がある場合、熱がなくても新型インフルエンザを疑ったほうがいいかもしれません。

そして、慢性疾患を抱える患者さんや、妊婦の方、糖尿病の人はその症状が重症化する恐れがありますので、細心の注意が必要です。』

 シルバーウィークの影響で病院の受診者数が減ってるとはいえ,私の周囲でもスタッフに陽性者がすでに出ているし,娘の小学校でもついに学級閉鎖が始まっているから流行しているということなのだろう.相変わらず内科の外来には簡易検査を求めて受診する人が多いようである.

 私自身も高熱などの症状がなければ簡易検査でさえ受けようなどとは思わないが,下痢や腹痛だけで熱がない場合もあるなんて言われるともうどうしてよいかわからない.感染していて入院中でも簡易検査では陰性なのが21%もあるというデータもあるそうだし,ハイリスク群で簡易検査陰性の場合は治療開始が遅れて重症化することが多いようだ.

 結局のところ簡易検査に頼らず症状優先で治療するというのであれば,簡易検査はタミフルなどの治療薬を投与するかどうかを決める目安になるだけということになるのだろうか.ハイリスク患者であれば症状だけで治療薬を投与するべきだろうが,特に既往歴が無く簡易検査陰性であれば48時間以上経過して重症化してしまってからでは治療薬も効果がないわけで,臓器障害への対症療法しかないのだろう.

 こうなると頼りはやはりワクチンだが,いまだに具体的な接種予定についての連絡がない.やっぱり間に合わないような気がするのだがどうなることやら...

コメント

la vie en rose
la vie en rose
2009年10月7日15:27

ブログ脳外科医さま^^

いつも拝見させて頂いています。
私の周囲ではまだ新型インフルエンザに罹った人がいないのですが
頭痛があったり咳が続いている人を見ると気にかかって・・。
↑とても参考になりました。

ありがとうございました。

ミク
2009年10月7日16:39

こんにちは、初めまして
コメントありがとうございました。
ワクチンはまだなんですね
これからもっと広がりそうで心配です

wood
wood
2009年10月8日0:30

こわいですよね
インフルエンザ
息子が検査を受けて陰性だったので安心していたのですが・・
熱が下がったり上がったりを繰り返していて
便のほうも緩くなってるみたい。。
陽性でも陰性の反応がそんなにでるんですね
参考になりました。

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