『点滴後女性1人死亡 13人体調不良、感染症か 三重・伊賀の整形外科  

 三重県伊賀市の整形外科「谷本整形」で点滴などの治療を受けた患者14人が体調を崩し、うち女性1人が死亡したことが10日、県警などの調べで分かった。県警捜査1課と伊賀署が事件、事故の両面から捜査を始め、病院関係者から任意で事情を聴いている。女性の遺体を司法解剖して死因を調べる。患者が救急搬送された伊賀市の上野総合市民病院や県は、症状から感染症の可能性があるとしている。

 県警と県健康福祉部によると、いずれも谷本整形で5月23日から今月9日の間に、鎮痛剤「ノイロトロピン」とビタミン剤「メチコバール」などの点滴を受けた後、数時間のうちに発熱や嘔吐(おうと)などの症状を示し、具合が悪くなったという。白血球が急激に減少したり、高熱を出したケースもあった。

 死亡したのは伊賀市島ケ原の市川満智子(いちかわ・まちこ)さん(73)。9日に治療を終えた後、10日に自宅で死亡しているのを家族が見つけた。残りの13人は60代から80代の男女で、ほかの病院に入院したが、2人はすでに退院し、快方に向かっているという。

 最初に5月23日に谷本整形の患者3人が体調不良を訴えた。患者らが運ばれた上野総合市民病院が県に届け、発覚した。

 県によると、点滴液は鎮痛剤とビタミン剤を1アンプルずつ生理食塩水に混ぜて調合するタイプ。院長の処方に基づいて看護師が調合したとみられるが、濃度などを間違えることは考えにくいという。点滴の器具は使い捨てだった。

 県警は10日、谷本整形から提出された器具や薬剤などを分析。県も同日、診察の自粛を指導した。残っていた鎮痛剤などを調べるとともに、11日も引き続き同病院で関係者から事情を聴く。

 谷本整形はホームページによると、1994年、当時東京厚生年金病院整形外科医長だった谷本広道(たにもと・ひろみち)氏が父親の経営していた医院を引き継ぐ形で設立した整形外科専門病院。

▽ノイロトロピン

 ノイロトロピン 腰痛や肩関節周囲炎のほか、湿疹(しっしん)などの皮膚疾患やアレルギー性鼻炎などに用いられる薬。鎮痛、鎮静、抗アレルギーなどの作用がある。0・1-0・5%未満の確率で胃部不快感や嘔吐(おうと)などの副作用が起きるとされる。自律神経機能が低下している高齢者には、患者の状態を観察しながら慎重に投与する必要がある。

▽メチコバール

 メチコバール エーザイが販売するビタミン剤で、末梢(まっしょう)性神経障害に用いられる。5%未満の確率で食欲不振や嘔吐(おうと)、下痢、0・1%未満の確率で発疹(ほっしん)の副作用があるという。水銀やその化合物を取り扱う職業従事者への長期間の大量投与は避けることが望ましい。』

『「評判の良い医者で何が」 近所の住民、不安募らせる 
    
 「お年寄りに人気があって評判の良いお医者さんなのに...」。治療を受けた患者14人が体調を崩し、うち女性1人が死亡したことが10日、明らかになった三重県伊賀市上野車坂町の整形外科「谷本整形」。同病院内には三重県警の捜査員らが入り、近所の住民らは一様に不安げな表情を浮かべた。

 谷本整形では県警がロープの規制線を張り、近づけない状態。1階玄関の透明ガラスの向こうには「三重県警」と文字が入ったジャンパーを着た捜査員が、職員から事情を聴いたり、院内の写真を撮影。医師や職員らが慌ただしく行き交う中、段ボールなどを運び出した。11日未明、帰宅する谷本整形の職員とみられる十数人が一斉に院内から外に出てきたが、報道陣の問い掛けには一切応じずに無言で病院を後にした。

 近所の住民によると、谷本整形は地域の高齢者の予防医療などに力を入れ、院長は講演会を開いたこともあった。最新の医療機器や医療技術を取り入れ、多くの高齢者が連日、診察に列をなし予約がいっぱいの状態という。

 60代の主婦は「院長は明るい性格で、とても親切な方。病院の評判は良い。こんなことが起きて本当にびっくりしています」と話した。

 患者が搬送された上野総合市民病院(伊賀市四十九町)では10日深夜に病院長らが1階会議室で記者会見。多くの報道陣を前に険しい表情で質問に応じ、谷本整形の院長が「どうしてこうなったのか分からない」「原因を調べてください」と動揺した様子で話していたことを明らかにした。

 ほかの患者が運ばれた岡波総合病院(同市上野桑町)にも報道機関からの問い合わせが殺到したが、「詳しく分かる者がいないので...」と繰り返した。』

 外来患者さんがとても多くて,外来で点滴する患者さんもものすごく多いので待ち時間短縮のために点滴の作り置きをしていたら,その点滴が原因で敗血症にでもなったのだろうか.余った点滴を翌日にも使っていたというのだから,管理体制に問題があったと言われるのは当然の事だろう.

 「採血器具使い回し」の発覚も続いているなどこれだけ医療事故が問題になっている時代なのに院内感染対策の基本的な所に問題のある医療機関がこんなにあるとは信じられない話である.そして,院長のコメントが「知らなかった」とか「なぜこうなったのかわからない」というのだから本当に無知なのか故意だったのか聞いてるほうもわからなくなる.いずれにしてもマスコミの餌にされたわけだから危機管理能力が足りなかったのは事実だろう.

 ところで,マスコミで薬の名前が挙げられるとまたすぐこの薬のせいだと早とちりする人もいるだろうが,ノイロトロピンもメチコバールも非常によく使われる薬であるし,私は今までこれらによる副作用なんて経験した事がないので安全性については心配はしていない.もっとも,これらを注射して症状が著明に改善したということもないので,本当の効果についてはプラセボと同等くらいではないかと思っている.それでも,注射してみて患者さんの症状が良くなるなら別に文句はないのである.

 安全性は高くて,患者さんが注射をすれば良くなると言えば当然外来での注射の回数も増え,患者さんの言いなりに注射を続けて満足度が上がり「評判の良い医者」ということになって患者さんが増えるのは開業医的にはいいことだろうが,効率的に点滴するために作り置きして余ったら翌日も点滴をするというような状況だったとしたら,ひょっとして点滴の必要のない患者さんにも点滴をおすすめして感謝されてしまったりしたことはなかったのだろうかと思ってしまうのは私だけだろうか.

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