『 「医療機関の責任に転嫁」 妊婦死亡で町が争う姿勢

 奈良県大淀町立大淀病院で出産時に意識不明となり、約20の病院に転院を断られた後に死亡した高崎実香(たかさき・みか)さん=当時(32)=の夫晋輔(しんすけ)さん(25)らが大淀町と担当医に約8800万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が25日、大阪地裁(大島真一(おおしま・しんいち)裁判長)で開かれ、町側は争う姿勢を示した。

 町側代理人は「(遺族は)診療体制の問題点を特定の医師、医療機関の責任に転嫁しようとしており、到底許容できない」と主張。提訴を「正当な批判を超えたバッシング」と批判し「結果として病院は周産期医療から撤退、県南部は産科医療の崩壊に至っている」と述べた。

 遺族側の訴えについては「脳内出血は当初から大量で、処置にかかわらず救命し得なかった」と反論した。

 これに先立ち意見陳述した晋輔さんは、転院先の医師から「あまりに時間がたちすぎた」と伝えられたことを明かし、おえつしながら「もう少し早ければ助かったということ。それが頭から離れません」と訴えた。

 閉廷後、晋輔さんは記者会見し「病院側は(周産期医療を)続けようと何か努力したのか。逃げたとしか思えない」と反論した。

 訴状などによると、実香さんは昨年8月8日未明、分娩(ぶんべん)のため入院していた大淀病院で意識不明となり、約20の病院から受け入れを断られた後、転送先の医療機関で男児を出産したが、16日に死亡した。大淀病院の担当医は、晋輔さんらが脳内出血の可能性を指摘したのに適切な処置をしなかったという。』

 転院先の医師の「あまりに時間がたちすぎた」というのは,単に手遅れという意味だったのではないかとも考えられるが,前医の対応を非難するようなニュアンスがあったとしたらちょっと問題になるだろう.もし証人として出廷したらそのあたりを説明してもらいたいものだ.患者や家族が医師の話の一部だけを自分たちに都合のいいように解釈することはよくあることだろうから,転送先の医師が名医と呼ばれるためにはこういった誤解を招かないような話の仕方が大切ということなのだろう.

 一般的に脳出血は,発症してすぐに救急車で運ばれてきたような場合でもすでに救命も不可能なものもあることぐらい脳外科医なら当然知っているだろうから,もう少し早ければ助かったという意味だったとは思えない.頭部CTにしても状況が許せば撮ったほうがその時点での診断はできただろうが,脳内出血に対する適切な処置とはこの場合は開頭血腫除去しかなかっただろうし,結果的には脳外科も産科もある病院に転送されたわけだからそれが直接予後に影響したとも思えない.

 大淀病院の医師は,自分のところで対応不能と判断したから転院先を探したのであって,それ自体は非難されることでもない.速やかに転院先が見つからなかったのは地域の診療体制の問題であって病院や担当医の責任ではないだろう.

 しかし,地域の診療体制を問題にしたのでは損害賠償の請求先に困るし,やはり病院や担当医への怨恨があるのではないだろうか.この記事では転院先の医師の何気ない一言が家族の復讐心に火をつけたようにも読める.その代償が,個人的には8800万円なのかもしれないが,この事件が産科医療全体に及ぼした影響を考えると社会的な損失は一体いくらに相当するのだろうか.そして,それは誰の責任になるのだろうか.

 「口は災いの元」と言うが,こんなことで訴えられるとは,明日は我が身かと思うとまったく恐ろしい話である.

コメント

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れい
2007年6月27日16:44

何かの意図を持って報道したとしか思えない某報道機関に責任があるんではないでしょうか。

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なみだ
2007年7月3日1:50

>こんなことで訴えられるとは

お立場は分かりますが「こんなことで・・・」って。。。

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みやこ
2007年7月12日9:12

大淀病院には少々不信感を抱いている者です。
適切な処置をすぐにしてもらえなかったため
赤ちゃんは障害をもつことになってしまった
という事実があったから。
出産時にいろいろな事情があったのかもしれませんが…。

私は「問題が起こるべくして起こった」と思っています。

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