ジェネリック医薬品で問題が起きたら誰のせい?
2007年4月24日 医療の問題 コメント (3)『 抗てんかん薬のジェネリック薬への切り換えは医師と患者の同意なくしてありえない、とAANが表明
抗てんかん薬(AED)のジェネリック薬への切り換えは、治療する医師と患者の双方がきちんとした知識を備え同意をしていなければやってはならないという立場表明を、米国神経学会(AAN)が発表した。
『Neurology』4月17日号に掲載されたこの論文が扱った問題は、医療費削減の掛け声のもとにAEDをジェネリック薬に切り換えると、てんかん患者に抑制不能な発作のリスクを過度にもたらすのかどうかという、長い間未解決だった問題である。
AANの立場表明によれば、米国食品医薬品局(FDA)は先発薬とジェネリック薬との間に大きな違いがあることを許している。
しかしてんかん患者によっては、抗痙攣薬の成分の違いがわずかであっても、結果に大きな違いが出る可能性がある。
全てか無の現象
「てんかんはその他の疾患とは別物だ。発作が起きているかどうか、副作用が起きているかどうかが治療の成果を示す目安である。高血圧のような疾患では、薬剤の用量を変えた時には血圧を測定すれば、それが奏効しているかどうかを判定できる。しかし、てんかんでは全か無の現象になる。すなわち、発作が起きるか、完全に無くなるかである」と、AAN立場表明の著者の一人であるウェイン州立大学(ミシガン州デトロイト)のGregory Barkley, MDがMedscapeに対して語った。
「神経疾患を持つ人の生活、特にてんかん患者の生活を全般に向上させることを目的にした組織であるAANは、(ジェネリック抗てんかん薬に)切り換えられたために、それもしばしば本人が知らないで切り換えられたために問題が起きたことが判っている患者の側に立った発言をすることが重要だと考えている」。
Barkley博士はさらに、ジェネリック抗痙攣薬に切り換えた結果として、抑制不能な発作や有害事象が悪化する可能性があるとも指摘した。
「抑制不能な発作が起きるようになると、その患者は運転免許証や職を失ったり、自分自身や他者を傷つけたりする場合が考えられる。このことと、ジェネリック抗痙攣薬に切り換えることで節約できると考えられる経費とを比較検討しなければならない」。
有害事象の報告は過小?
関連する解説記事においてロチェスター大学医科歯科学部(ニューヨーク)のMichel Berg, MDが、ジェネリック薬と先発薬の同等性の問題についてFDAが説明してこなかった理由のひとつとして、FDAの任意の薬剤報告システムであるMedWatchに医師がそうした事象を報告していないことを挙げている。
Berg博士によれば、ジェネリックAEDは先発薬に必ずしも同等ではないと医師と患者の大部分が感じていることが、複数の調査で判明している。しかしそのことはMedWatchの症例報告には反映されていない。その理由の1つとして、MedWatchシステムに対する認識が医師に欠けていることを同博士は挙げている。
Barkley博士は、この種の事象の報告が過小であることの理由としてさらにもう一つ、患者がジェネリック薬に切り換えたことを医師が単に気づいていないという事例が多くあることを挙げている。
「錠剤の見た目が異なっていることや(ジェネリック薬に)切り換えたことを患者が医師に特に告げないうちは、医師は抑制不能な発作や副作用増加の原因を先発薬としてしまう」と同博士は述べる。
医師と患者の同意なしでジェネリック代替薬に切り換えることに反対する立場に加えて、AANは新世代の抗痙攣薬の使用を支持することを表明している。これら新世代薬は一般的に、有害事象の特性についてはずっと好ましいが高価である傾向がある。
「医師は、より安価な代替薬で患者が効果的に治療できるかを見極めるあらゆる努力をしなければならないとAANは考えている。しかし、治療方針の決定は処方する医師の裁量に任されなければならず、保険適用の有無で決められてはならない」と著者らは記している。
Barkley博士によれば、この種の薬剤は高価なので、保険業者の中には医師がこの種の薬剤を処方するのを防ぐために、面倒な精査を強いたり承認を遅らせたりすることで障害を設けようとする業者もいる。
そのため、AANの立場表明では、公的・私的処方集による事前承認の要求にも反対している。
Neurology. 2007;68:1249-1250 , 1245-1246.』
わが国の厚生労働省も医療費削減の掛け声のもとにジェネリック薬への切り換えを奨励しているが,この記事をみると少なくとも抗てんかん薬については考える必要がありそうだ.だが,たとえリスクを説明するにしても実際にどの程度のリスクなのかがよくわからない.それに,すでに院内の採用薬がジェネリックしかないものについては選択肢がなくなっているのが現実である.
細かいことを言えばジェネリック医薬品は主成分以外は先発薬と必ずしも同等であることを保証されていないわけだから,ジェネリックへの変更によって問題が起きる可能性は抗てんかん薬に限らないはずだが,厚生労働省はそんなことはひと言も言わずにジェネリック医薬品優先使用のための処方せん様式変更に動いている.そういうことを国民に説明する責任はジェネリックへの切り替えを奨励する厚生労働省にはないのだろうか.
いつもの如く,もしジェネリック医薬品で何か問題が起きれば,その責任は製薬会社と処方した医師に転嫁して終わりにするつもりなのではないだろうか.もしそうだとしたら,明日からはジェネリック医薬品の説明を少し変える必要があるかもしれない.『有効成分の主なものは同じで,先発品と類似の効果が期待でき,薬価も安く医療費削減に役立つが,その代わり新たな有害事象の起きるリスクがあるかも知れません.』なんて説明じゃ納得してもらえないだろうか.
抗てんかん薬(AED)のジェネリック薬への切り換えは、治療する医師と患者の双方がきちんとした知識を備え同意をしていなければやってはならないという立場表明を、米国神経学会(AAN)が発表した。
『Neurology』4月17日号に掲載されたこの論文が扱った問題は、医療費削減の掛け声のもとにAEDをジェネリック薬に切り換えると、てんかん患者に抑制不能な発作のリスクを過度にもたらすのかどうかという、長い間未解決だった問題である。
AANの立場表明によれば、米国食品医薬品局(FDA)は先発薬とジェネリック薬との間に大きな違いがあることを許している。
しかしてんかん患者によっては、抗痙攣薬の成分の違いがわずかであっても、結果に大きな違いが出る可能性がある。
全てか無の現象
「てんかんはその他の疾患とは別物だ。発作が起きているかどうか、副作用が起きているかどうかが治療の成果を示す目安である。高血圧のような疾患では、薬剤の用量を変えた時には血圧を測定すれば、それが奏効しているかどうかを判定できる。しかし、てんかんでは全か無の現象になる。すなわち、発作が起きるか、完全に無くなるかである」と、AAN立場表明の著者の一人であるウェイン州立大学(ミシガン州デトロイト)のGregory Barkley, MDがMedscapeに対して語った。
「神経疾患を持つ人の生活、特にてんかん患者の生活を全般に向上させることを目的にした組織であるAANは、(ジェネリック抗てんかん薬に)切り換えられたために、それもしばしば本人が知らないで切り換えられたために問題が起きたことが判っている患者の側に立った発言をすることが重要だと考えている」。
Barkley博士はさらに、ジェネリック抗痙攣薬に切り換えた結果として、抑制不能な発作や有害事象が悪化する可能性があるとも指摘した。
「抑制不能な発作が起きるようになると、その患者は運転免許証や職を失ったり、自分自身や他者を傷つけたりする場合が考えられる。このことと、ジェネリック抗痙攣薬に切り換えることで節約できると考えられる経費とを比較検討しなければならない」。
有害事象の報告は過小?
関連する解説記事においてロチェスター大学医科歯科学部(ニューヨーク)のMichel Berg, MDが、ジェネリック薬と先発薬の同等性の問題についてFDAが説明してこなかった理由のひとつとして、FDAの任意の薬剤報告システムであるMedWatchに医師がそうした事象を報告していないことを挙げている。
Berg博士によれば、ジェネリックAEDは先発薬に必ずしも同等ではないと医師と患者の大部分が感じていることが、複数の調査で判明している。しかしそのことはMedWatchの症例報告には反映されていない。その理由の1つとして、MedWatchシステムに対する認識が医師に欠けていることを同博士は挙げている。
Barkley博士は、この種の事象の報告が過小であることの理由としてさらにもう一つ、患者がジェネリック薬に切り換えたことを医師が単に気づいていないという事例が多くあることを挙げている。
「錠剤の見た目が異なっていることや(ジェネリック薬に)切り換えたことを患者が医師に特に告げないうちは、医師は抑制不能な発作や副作用増加の原因を先発薬としてしまう」と同博士は述べる。
医師と患者の同意なしでジェネリック代替薬に切り換えることに反対する立場に加えて、AANは新世代の抗痙攣薬の使用を支持することを表明している。これら新世代薬は一般的に、有害事象の特性についてはずっと好ましいが高価である傾向がある。
「医師は、より安価な代替薬で患者が効果的に治療できるかを見極めるあらゆる努力をしなければならないとAANは考えている。しかし、治療方針の決定は処方する医師の裁量に任されなければならず、保険適用の有無で決められてはならない」と著者らは記している。
Barkley博士によれば、この種の薬剤は高価なので、保険業者の中には医師がこの種の薬剤を処方するのを防ぐために、面倒な精査を強いたり承認を遅らせたりすることで障害を設けようとする業者もいる。
そのため、AANの立場表明では、公的・私的処方集による事前承認の要求にも反対している。
Neurology. 2007;68:1249-1250 , 1245-1246.』
わが国の厚生労働省も医療費削減の掛け声のもとにジェネリック薬への切り換えを奨励しているが,この記事をみると少なくとも抗てんかん薬については考える必要がありそうだ.だが,たとえリスクを説明するにしても実際にどの程度のリスクなのかがよくわからない.それに,すでに院内の採用薬がジェネリックしかないものについては選択肢がなくなっているのが現実である.
細かいことを言えばジェネリック医薬品は主成分以外は先発薬と必ずしも同等であることを保証されていないわけだから,ジェネリックへの変更によって問題が起きる可能性は抗てんかん薬に限らないはずだが,厚生労働省はそんなことはひと言も言わずにジェネリック医薬品優先使用のための処方せん様式変更に動いている.そういうことを国民に説明する責任はジェネリックへの切り替えを奨励する厚生労働省にはないのだろうか.
いつもの如く,もしジェネリック医薬品で何か問題が起きれば,その責任は製薬会社と処方した医師に転嫁して終わりにするつもりなのではないだろうか.もしそうだとしたら,明日からはジェネリック医薬品の説明を少し変える必要があるかもしれない.『有効成分の主なものは同じで,先発品と類似の効果が期待でき,薬価も安く医療費削減に役立つが,その代わり新たな有害事象の起きるリスクがあるかも知れません.』なんて説明じゃ納得してもらえないだろうか.
コメント
当然、医者のせい、って言うに決まってますよね、これ。
薬代を減らすなら、新薬の値段を下げりゃあ良いのに。
薬の値段を決めてるのは、厚労省なんだから。
厚生労働省!きちんと説明して周知徹底せんかい!
同じ物では有りません。