『 療養病床の削減計画策定へ 厚労省方針受け、都道府県

 厚生労働省が、療養病床の削減について高齢化の進展など地域の実情を踏まえるとの方針案を示したことで、今後は都道府県レベルで削減目標数などを盛り込んだ「医療適正化計画」の策定作業が本格化する。

 計画は2008年度から5年間。今秋には、各都道府県から報告を受け、療養病床の再編が終わる11年3月末までの全体の削減目標が決まる。

 削減に伴い退院患者の受け入れ先となる老人保健施設など介護サービス量の見込みなども併せて示される。当面、75歳以上の後期高齢者が膨らむことや独居世帯が増えることを想定すると、どうサービスを増やすかという考え方が中心となりそうだ。

 ただ20年ごろには65歳以上の高齢者の増加が横ばいに転じることになり、中長期的な視点が必要との指摘も。高齢者が減少する地域も少なくなく、施設が過剰に転じる可能性があるためだ。

 02年の都道府県別の将来人口推計によると、新潟、香川は20年以降、高齢者人口が減少。北海道や熊本などでも25年には減少傾向に転じる。首都圏や関西圏など大都市圏では比較的に年齢層がまだ若く、高齢者の増加傾向が続くとみられている。

 また、介護保険制度がなかった10年ほど前に、高齢化社会を見据えて国が療養病床を奨励。多くの病院が借金してまで転換を図った経緯があり、「はしごを外された」(病院経営者)との声などへの配慮が必要となる。

 団塊世代の高齢者層入りを控え、国は在宅医療、在宅介護の推進をますます強める見通しだが、医療や介護サービスが質・量ともに確保できるかが問われている。』

『 新型老健施設は終末期も対応 厚労省、療養病床転換促す

 厚生労働省は14日、慢性疾患を抱えるお年寄り向けの療養病床を減らすため、療養病床から老人保健施設に転換した場合、終末期のお年寄りのみとりや夜間看護などを充実させた新しいタイプの老健施設とすることを認める方針を固めた。削減で療養病床に入れなくなるお年寄りの受け皿とし、転換を促す狙いがある。09年の介護報酬改定で、療養病床から新型の老健施設に移行した施設への報酬を手厚くする。

 厚労相の諮問機関である「介護施設等の在り方に関する委員会」で検討し、6月をめどに具体的な対応をまとめる。

 療養病床には現在、医療保険を使って入院するベッド25万床と、介護保険を使う12万床がある。だが、療養病床の患者の半数は「医師の対応がほとんど必要ない」とされる。こうした社会的入院を解消し、医療費を抑えるため、厚労省は療養病床を12年度末までに15万床超に減らす方針だ。

 療養病床に入れないお年寄りは、老健施設や有料老人ホーム、自宅療養に移ることを想定している。しかし現実には、病状が安定していても、チューブによる栄養補給や、機械でのたんの吸引が必要な患者もいる。退院後に自宅へ戻るまでのリハビリなどを行ってきた現在の老健施設では受け入れが難しい場合があり、どの施設も受け入れてくれない「介護難民」が発生する恐れがある。

 療養病床を抱える医療機関の多くも、必要な医療を提供できなくなるなどとして老健施設への転換に難色を示している。厚労省は、療養病床で提供している比較的軽度な医療行為を、療養病床から転換した後の老健施設でも対応できるようにすることで、療養病床の削減を進めたい考えだ。

 また、現行の老健施設では「入所者100人につき看護師・准看護師9人」としている基準よりも看護師を多く配置。日常の看護や終末期のみとり、身体機能を維持するためのリハビリを充実させる。

 従来の老健施設に対する介護報酬とは別に、療養病床から新型の老健施設に転換したところに限り、介護報酬を上乗せする方針。みとりやリハビリの看護を提供した場合は、さらに加算することも検討する。

 これまでの老健施設は病院と自宅との「橋渡し」が中心で、施設で死を迎える人は入居者の2%にとどまる。自宅で亡くなるまで過ごすのが難しいお年寄りも多いため、新型老健施設では、長期的なケアや終末期医療にも対応できる「ついのすみか」の面ももたせる。

 厚労省は、療養病床の削減で医療保険給付は12年度時点で年4000億円減る一方、介護保険は1000億円増え、差し引き3000億円の給付抑制につながるとしている。新型老健施設で介護報酬を手厚くすれば、給付の抑制幅は小さくなる可能性がある。 』

 医療保険を使って入院するベッド25万床と介護保険を使う12万床の計37万床を15万床にした場合,その差は22万床.これを介護保険の増加の1000億円でみると1床あたりで年45万円の計算になる.

 1ヶ月では,わずか3万7500円.療養病床から新型の老健施設に転換したところに限り、介護報酬を上乗せするといってもせいぜい月1万円もいかないだろうから,10年経っても病床転換による設備投資の元が採れるかどうかも疑わしいのではないだろうか.

 10年前の療養型病床の時も最初はおいしそうに見えたが,すぐに話が変わって痛い目にあったのはつい最近のことだから,病院もこんな話に飛びつくわけにはいかないだろう.だから病床転換するよりも廃院してしまうところが多いのではないだろうか.

 だが,そんなことは厚労省は十分承知しているのだろう.結局,療養病床で提供する軽度な医療行為や終末期への対応は開業医にやらせるつもりのようで,最近はこんなことも言っているのである.

『 「大病院、一般外来なし」 役割分担促す 厚労省方針

 厚生労働省は13日、今後の医療政策の方向性として、大病院や専門病院は一般的な診察はせずに入院と専門的な外来に特化する一方、開業医に対しては休日・夜間の診療や患者の自宅を訪れる訪問診療を求める報告書をまとめた。病院と開業医の役割分担を明示することで、勤務医の過度な負担を軽減するとともに、在宅医療への移行をはかるのが狙いだ。今後、診療報酬の見直しなどを通じて実現を目指す。

 柳沢厚労相を本部長とする「医療構造改革推進本部」が報告書を作成。都道府県の担当者を集めた17日の会議で提示する。

 報告書では、日本の医療の問題点として、大病院、中小の病院、開業医の役割分担が明確ではない結果、「拠点となる大病院などに外来患者が集中し、勤務医に過度の負担がかかっている」と指摘。大病院は「質の高い入院治療が24時間提供されるよう、原則として入院治療と専門的な外来のみを基本とする」と明記した。

 また、中小の病院は軽い病気の入院治療や脳卒中などの回復期のリハビリテーションなどを担当することが妥当とした。

 一方、「夜間や休日などの治療に不安がある」とする患者のニーズに対応するため、開業医の果たすべき役割として(1)休日夜間急患センターに交代で参加する(2)時間外でも携帯電話で連絡がとれる(3)午前中は外来、午後は往診・訪問診療という経営モデルをつくる、などを挙げた。

 開業医はこれまで以上に広範な対応や知識が求められるため、開業医のチーム化や研修を充実させ、「看(み)取りも含め24時間体制での連絡や相談機能を果たすことのできる体制を検討する必要がある」としている。

 長期療養が必要なお年寄りについては、患者を継続的に診る「在宅主治医」の重要性に言及。患者自らが主治医を選び、医師間や病院との調整を担ってもらうことで、ケアの質を上げる。

 こうした方向性に基づいて、厚労省は地域の医療計画を策定するよう、各都道府県に要請。開業医の訪問・夜間診察の診療報酬の引き上げや、総合的な医師の養成などに取り組む考えだ。 』

 勤務医の負担を軽減というと聞こえはいいが,結局は開業医からの夜間・救急診療の依頼が増えるだけで,勤務医のストレスが減ることにはならないだろう.むしろ,夜間呼び出しがないのだけが救いだった開業医も巻き込んで,さらに医療は荒廃していくのではないだろうか.

 厚生労働省の朝令暮改は今に始まったことではないのだろうが,最近の医療行政は臨床医の私には理解できないことだらけである.政府の本当の狙いは病院経営自体を企業の支配下に置くことではないかと思うのだが,その意味では目的を達成しつつあるのだろうか.10年後の医療がどうなっているのかまったく想像もできないのは,きっと私だけではないだろう.

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