医療職は不人気になる?
2007年3月17日 医療の問題 コメント (11)『「注射1人で出来ない」看護師学校の過半数で8割超す
新人看護師の看護技術低下が深刻化している。
日本看護協会の調査では、人工呼吸、心臓マッサージ、止血など救急救命術や注射などを「1人でできる卒業生が20%未満」という看護学校が半分を超えた。
新人看護師による医療事故も少なくない。事態を重く見た厚生労働省の検討会は来週、病院実習を大幅に増やすなど、看護教育カリキュラムの10年ぶりの見直しを議論する。
「点滴を付けた患者の寝間着やシーツを1人で替えられない」「患者の搬送時、ストレッチャーを真っすぐ押せない」。毎年4月になると、東大付属病院の榮木実枝看護部長のもとに新人看護師を巡るトラブル報告が相次ぐ。「ここ5、6年、シーツ交換など『これだけはできてほしい』ということができない人が増えた」と言う。』
今までにあわせて4期ほど看護学校で解剖学と脳神経外科疾患について教えた事がある.最後には翌年の講師の依頼をお断りさせていただいたのだが,その理由というのはあまりにも学生の質が悪くなったということだった.
もともと人に教えるなどということは好きではないが,教える以上はこちらもなるべく新しくて興味が持てるような資料を毎回色々準備して講義に臨んでいるのである.講義中居眠りしている学生はまあ許せたとしても,試験の採点の時に全員があまりに勉強していないのがわかり,正直言って驚いたのと同時に失望させられたのである.
基本的に留年はさせないように学校側から頼まれるので,試験問題はまったく教科書の範囲内だけにとどめて難易度も毎回変わらないようにしているのだが,最近の看護学生は昔の学生に比べて真剣に勉強していないことが試験の結果をみれば一目瞭然だったのである.それで私も休日を潰してまで資料を準備をして教える気を失ってしまったのだ.
だが,これが勉強しないのではなくやってもできない,つまり看護師を希望する学生の質が落ちているのだとしたら問題はより深刻だ.政府は医療費抑制のために厚生労働省に詳細な年次目標計画を提出させて,医療コストのさらなる圧縮を計ろうとしているようだが,それはすなわち医療職の人件費抑制ということにつながっていくに違いない.そんな状況で,今後,医師や看護師に優秀な人材が確保できるのだろうか.
医学部はまだ人気が高いとは言っても,研修医の動向をみてもわかるように一部の診療科はすでに職業としての魅力を失っているようであるし,地方医療の荒廃ぶりをみれば高い倫理感や医師としての使命感などを期待されてもそれに応える医師が増えるわけがないのも明らかだ.今や医師が業務上過失致死で逮捕されるのであるから,せっかく苦労して医師になっても得る物がないのでは人材が先細りになるのではないかと心配になる.
看護師も同様ではないだろうか,いくら呼び名が看護婦から看護師になっても社会的地位が向上し勤務が楽になって給与が増えたわけではない.診療報酬改訂のためにいろんな特典付きで勧誘されても,それは看護専門職としての技術やキャリアを買われたわけではなく頭数をそろえるのに必要とされただけの話である.こんな状況では,日頃から自分の仕事に対する学習意欲がわかないのも無理はないのではないだろうか.
最近は,どこの病院でも研修会や各種の委員会を通じて看護師の知識と技術の向上に努めてはいるのであるが,やはり肝心なのは新人看護師さん達の資質だろうと思う.しかし,医療コストを下げることばかり考えているといずれ看護師さんの大部分は賃金の安い外国からの人たちになってしまうのではないかと心配しているのは私だけだろうか.
新人看護師の看護技術低下が深刻化している。
日本看護協会の調査では、人工呼吸、心臓マッサージ、止血など救急救命術や注射などを「1人でできる卒業生が20%未満」という看護学校が半分を超えた。
新人看護師による医療事故も少なくない。事態を重く見た厚生労働省の検討会は来週、病院実習を大幅に増やすなど、看護教育カリキュラムの10年ぶりの見直しを議論する。
「点滴を付けた患者の寝間着やシーツを1人で替えられない」「患者の搬送時、ストレッチャーを真っすぐ押せない」。毎年4月になると、東大付属病院の榮木実枝看護部長のもとに新人看護師を巡るトラブル報告が相次ぐ。「ここ5、6年、シーツ交換など『これだけはできてほしい』ということができない人が増えた」と言う。』
今までにあわせて4期ほど看護学校で解剖学と脳神経外科疾患について教えた事がある.最後には翌年の講師の依頼をお断りさせていただいたのだが,その理由というのはあまりにも学生の質が悪くなったということだった.
もともと人に教えるなどということは好きではないが,教える以上はこちらもなるべく新しくて興味が持てるような資料を毎回色々準備して講義に臨んでいるのである.講義中居眠りしている学生はまあ許せたとしても,試験の採点の時に全員があまりに勉強していないのがわかり,正直言って驚いたのと同時に失望させられたのである.
基本的に留年はさせないように学校側から頼まれるので,試験問題はまったく教科書の範囲内だけにとどめて難易度も毎回変わらないようにしているのだが,最近の看護学生は昔の学生に比べて真剣に勉強していないことが試験の結果をみれば一目瞭然だったのである.それで私も休日を潰してまで資料を準備をして教える気を失ってしまったのだ.
だが,これが勉強しないのではなくやってもできない,つまり看護師を希望する学生の質が落ちているのだとしたら問題はより深刻だ.政府は医療費抑制のために厚生労働省に詳細な年次目標計画を提出させて,医療コストのさらなる圧縮を計ろうとしているようだが,それはすなわち医療職の人件費抑制ということにつながっていくに違いない.そんな状況で,今後,医師や看護師に優秀な人材が確保できるのだろうか.
医学部はまだ人気が高いとは言っても,研修医の動向をみてもわかるように一部の診療科はすでに職業としての魅力を失っているようであるし,地方医療の荒廃ぶりをみれば高い倫理感や医師としての使命感などを期待されてもそれに応える医師が増えるわけがないのも明らかだ.今や医師が業務上過失致死で逮捕されるのであるから,せっかく苦労して医師になっても得る物がないのでは人材が先細りになるのではないかと心配になる.
看護師も同様ではないだろうか,いくら呼び名が看護婦から看護師になっても社会的地位が向上し勤務が楽になって給与が増えたわけではない.診療報酬改訂のためにいろんな特典付きで勧誘されても,それは看護専門職としての技術やキャリアを買われたわけではなく頭数をそろえるのに必要とされただけの話である.こんな状況では,日頃から自分の仕事に対する学習意欲がわかないのも無理はないのではないだろうか.
最近は,どこの病院でも研修会や各種の委員会を通じて看護師の知識と技術の向上に努めてはいるのであるが,やはり肝心なのは新人看護師さん達の資質だろうと思う.しかし,医療コストを下げることばかり考えているといずれ看護師さんの大部分は賃金の安い外国からの人たちになってしまうのではないかと心配しているのは私だけだろうか.
コメント
何故この仕事を選んだか。一生続けられる食いっぱぐれの無い仕事だからだそうです。そう答える人が多かったです。おそらく現場が要求する「最低限これくらいの事はできてほしい」というレベルを、こなすことは難しいでしょう。高校レベルの「これくらいは・・・」でさえ、・・・無理でしたから。卒業生が看護学校を卒業できず、中途退学も珍しくありません。「看護師を希望する学生の質が落ちている」のは、教育現場では悲しい事実です。(この生徒には看護されたくないという学生が増えました・・・)もう、何年も前の話ですが。
なぜなら大まかに30代以下はラクして大きく儲けるような人(例えばホリエモン)がスターだと考える世代ですから。地味だったり大変だったり危険だったりするとすぐ倦厭する癖があるように思います。
私の上司(50代)はホリエモンを怠け者として馬鹿にするためにマスコミで騒がれてると思っているのとは対照的です。
医療分野と同様に、原子力の分野でも質の低下があるそうですね。
かつては原子力発電所の現場では工学部卒でもトップクラスの生徒が占めていたのに今や、原子力の人気低迷で専門学校卒業生を含めた未熟な技術者で占められていると聞きます。
こうした流れは世間に必要とされることより今を楽しむことを重視した世代の誕生ということと理解しています。
時代的必然というか・・・。
数十年後には危機的状況の医療のそばで育った子供達がコトの重大さに気づいた世代として使命感を持った素晴らしい医療の担い手になるのかなー、と思うのは楽観的すぎますかね?
時代は繰り返すといいますが・・・。
確かにこのニュースには震撼とさせられました。
しかしです。10年前の看護婦や準看学校で
学びながら、現場に立っている子がいたのですが
「私全然できへんのにほったらかしやねん。
たまに口利いてもらったら、怒鳴られてばっかりやねん。」
と聞きました。
30年前に、看護師になった人から
「看護師はね、ただ単に注射を打てばいいものではないの。
医療は怖いこともあるから、手が震えたりもするし
対応能力がまだないこともあるから、卒後教育という
のがあったの。
昔は、手さばきさえ良ければ、頭を使わない子でも
いいし、医療ミスしても、医師や先輩看護師がかばったけれ
ど今は、国家資格剥奪されることもあるから
今の子は大変。」
とおっしゃってました。
いかがでしょう。
フィリピンなどは海外へ行く為に相当レベルの高い事を行っています。意欲が違います。それに海外の労働力と簡単に言いますが、日本での受け入れ基準が厳しく日本は不人気です。
日本も色々な意味で考えを改めるべきでしょう。