健康保険医療は配給制になるのか?
2006年10月6日 医療の問題『 -- 高齢者医療の定額化検討 厚労省、年度内に方針 --
厚生労働省は5日、社会保障審議会に設置した後期高齢者医療の在り方に関する特別部会(糠谷真平(ぬかや・しんぺい)部会長)の初会合を開き、2008年4月に始まる75歳以上を対象とした医療制度での診療報酬体系などをめぐる検討を始めた。
厚労省は、高齢者医療費の抑制や患者負担の軽減を図るため、病気の種類や治療方法ごとに報酬を定める「定額制」(包括払い)を導入する方針を固めており、定額制や終末期医療の対応をどう評価するかなどが検討の焦点となる。来年3月に基本的な方針をまとめる。
この日の会合で委員側から、財政面への配慮から高齢者医療費を削ることに反対する意見や、終末期医療で家族の合意の在り方について議論を求める声もあった。
今後は、自宅での日常的な医学管理から、最期のみとりまで一貫して対応できる主治医の普及のほか、医師、看護師、ケアマネジャーらの連携による医療・介護サービス、入院によるホスピスケアの普及などをテーマに協議を進めていく。』
定額制の話になると必ず「患者負担の軽減」というお決まりの言葉がつくのだが,本当に患者負担が軽減されるだろうか.疾患ごとに定額ということは医療サービスの内容にかかわらず料金が同じということである.これでは配給券を持って病院へ行くようなものではないだろうか.最初からサービスの範囲が診療報酬で限定されている医療で病状に応じて必要十分な治療が受けられるのだろうか.
同じ病名でも軽症な患者さんでは治療の割に高額な負担をすることになったり,重症の患者さんでは治療の割に負担が軽くなる可能性があるとはいえ,病院側の都合で必要十分な治療が受けられないことはないのだろうか.病気が治らなければ退院できず病院側も困るからそんなことはないというのだろうか.
厚生労働省が定額制を導入したがっているのは,病院が過剰な診療を行い医療費の増大を招いていると考えているからなのかもしれないが,理由はどうあれやることは高齢者医療費の支出抑制であるから医療サービスの総量は確実に減少するわけである.問題は,それが適切に減少するのかどうかである.
ここで私が思い出すのは,以前に介護保険制度が導入され病院の在宅医療サービスが減少した時のことである.これは健康保険医療で提供されたサービスを介護保険制度を創設することにより医療費から切り離したわけだが,はたして介護保険で提供されるサービスは低コストで高品質だっただろうか.そして,その後どうなったのかは最近のニュースを見れば明らかだろう.
結局,介護保険も現在は支出抑制のために介護度の見直しと制限事項の増加のため実質的な患者負担は増加しているのが現実である.厚生労働省がやった最近の医療改革を検証すればひたすら健康保険で受けられるサービス量を低下させてきただけであることがわかるだろう.医療費削減だけが目的で財政難を理由に医療を配給制にするような定額制の導入はわが国の健康保険制度が終末期になっていることを示していると考えるのは私だけだろうか.
厚生労働省は5日、社会保障審議会に設置した後期高齢者医療の在り方に関する特別部会(糠谷真平(ぬかや・しんぺい)部会長)の初会合を開き、2008年4月に始まる75歳以上を対象とした医療制度での診療報酬体系などをめぐる検討を始めた。
厚労省は、高齢者医療費の抑制や患者負担の軽減を図るため、病気の種類や治療方法ごとに報酬を定める「定額制」(包括払い)を導入する方針を固めており、定額制や終末期医療の対応をどう評価するかなどが検討の焦点となる。来年3月に基本的な方針をまとめる。
この日の会合で委員側から、財政面への配慮から高齢者医療費を削ることに反対する意見や、終末期医療で家族の合意の在り方について議論を求める声もあった。
今後は、自宅での日常的な医学管理から、最期のみとりまで一貫して対応できる主治医の普及のほか、医師、看護師、ケアマネジャーらの連携による医療・介護サービス、入院によるホスピスケアの普及などをテーマに協議を進めていく。』
定額制の話になると必ず「患者負担の軽減」というお決まりの言葉がつくのだが,本当に患者負担が軽減されるだろうか.疾患ごとに定額ということは医療サービスの内容にかかわらず料金が同じということである.これでは配給券を持って病院へ行くようなものではないだろうか.最初からサービスの範囲が診療報酬で限定されている医療で病状に応じて必要十分な治療が受けられるのだろうか.
同じ病名でも軽症な患者さんでは治療の割に高額な負担をすることになったり,重症の患者さんでは治療の割に負担が軽くなる可能性があるとはいえ,病院側の都合で必要十分な治療が受けられないことはないのだろうか.病気が治らなければ退院できず病院側も困るからそんなことはないというのだろうか.
厚生労働省が定額制を導入したがっているのは,病院が過剰な診療を行い医療費の増大を招いていると考えているからなのかもしれないが,理由はどうあれやることは高齢者医療費の支出抑制であるから医療サービスの総量は確実に減少するわけである.問題は,それが適切に減少するのかどうかである.
ここで私が思い出すのは,以前に介護保険制度が導入され病院の在宅医療サービスが減少した時のことである.これは健康保険医療で提供されたサービスを介護保険制度を創設することにより医療費から切り離したわけだが,はたして介護保険で提供されるサービスは低コストで高品質だっただろうか.そして,その後どうなったのかは最近のニュースを見れば明らかだろう.
結局,介護保険も現在は支出抑制のために介護度の見直しと制限事項の増加のため実質的な患者負担は増加しているのが現実である.厚生労働省がやった最近の医療改革を検証すればひたすら健康保険で受けられるサービス量を低下させてきただけであることがわかるだろう.医療費削減だけが目的で財政難を理由に医療を配給制にするような定額制の導入はわが国の健康保険制度が終末期になっていることを示していると考えるのは私だけだろうか.
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