じゃあ技術料は成功報酬にしたらどうだ
2006年10月3日 医療の問題 コメント (1)『 -- 死亡率:手術多い病院ほど低い傾向 診療報酬論議に影響----心臓、食道・肺がん手術 -- 胸部外科学会調査
心臓手術と食道がん、肺がんの手術では、手術件数が多い病院ほど死亡率が低い傾向があるとのデータを1日、日本胸部外科学会(松田暉理事長)が発表した。厚生労働省は今春、手術件数の多い病院に高い診療報酬を与える制度を「根拠が薄い」と廃止し、再び同様の基準を設けるべきかについて検討会で議論中だ。同学会は「件数は少なくても死亡率が低い病院があり、一律の規制は適当でない」と説明するが、今回の結果は議論に影響するとみられる。
同学会は00-04年に全国の計約700病院で心臓、食道がん、肺がんの手術を受けた患者計約30万人について、病院ごとの死亡率と手術件数との関係を分析した。病院名を公表しない約束で、各病院からデータを集めた。
その結果、心臓の「大動脈置換術」では、年平均20件以上を実施した病院で、手術後30日以内の死亡率が7・9%だったのに、同5件未満の病院では18・5%と2倍以上高くなった。後天性心臓病の手術全体でも、年100件以上の75病院の平均死亡率2・3%に対し、年25件未満の90病院では同4・8%だった。
食道がんでは、年75件以上の6病院で、在院死亡率が平均1・6%だったが、25件未満の716病院では平均6・5%と4倍の差があった。25件未満では、死亡率が20%を超える病院もあった。
肺がんでは、年150件以上の病院で死亡率0・3%、10件未満では1・6%だった。
◇治療成績の公表を----佐野俊二・岡山大医学部教授(心臓血管外科)の話
手術件数が多いほど死亡率が下がるのは、プロの大工が日曜大工よりうまいのと同じで、ごく当然だ。手術が年25件未満、つまり月1、2件では明らかに足りない。心臓外科医はプロとして治療成績を公表すべきだ。その代わり優秀な医師は高い報酬が得られる制度にしてほしい。』
腕に自信のある外科医の本音は「手術成績の優秀な医師には高い報酬を」だろうが,厚生労働省の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度の本音は要するに医療費削減であって,優秀な医師が高い報酬が得られる制度ではなかった.厚生労働省が優秀な医師の待遇改善をするなんていう話は聞いた事がないし,そもそも手術の技術料はもともとどう考えたって安すぎると私は思う.私の専門の脳神経外科にしても一つの技術料が100万円を超える手術なんて皆無である.自由診療の美容外科と比べてみれば健康保健診療での技術料がいかに低く抑えられているかわかるだろう.
前回の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度では,この安い技術料を手術数の少ない病院ではさらに削っただけである.これでは小規模病院では外科は不採算になる.要するに外科を大規模病院に集約する方向に向かわせたのだと思うが,これだと個人病院はもちろん,市立病院などのもともと経営の厳しい地域の基幹病院でさえも外科はやってられなくなる.地域の救急医療では手術を受ける機会がなくなればそれはすなわち患者の死を意味する.手術を受けられずに死亡した場合は手術の死亡率にはならないが,救命が目的であればこれでは本末転倒だろう.
そんなに手術成績と診療報酬を連動させたいのであれば,一例ごとに技術料を成功報酬にしたらどうだろうか.これなら外科医は納得できるのではないだろうか.もっともその場合,成功した場合の報酬は今の2倍以上にはしてもらわないと「優秀な医師は高い報酬」なんてことにはならないだろう.どうせ医療費削減が目的なんだろうからそんなことになるはずはないと思うのは私だけだろうか.
心臓手術と食道がん、肺がんの手術では、手術件数が多い病院ほど死亡率が低い傾向があるとのデータを1日、日本胸部外科学会(松田暉理事長)が発表した。厚生労働省は今春、手術件数の多い病院に高い診療報酬を与える制度を「根拠が薄い」と廃止し、再び同様の基準を設けるべきかについて検討会で議論中だ。同学会は「件数は少なくても死亡率が低い病院があり、一律の規制は適当でない」と説明するが、今回の結果は議論に影響するとみられる。
同学会は00-04年に全国の計約700病院で心臓、食道がん、肺がんの手術を受けた患者計約30万人について、病院ごとの死亡率と手術件数との関係を分析した。病院名を公表しない約束で、各病院からデータを集めた。
その結果、心臓の「大動脈置換術」では、年平均20件以上を実施した病院で、手術後30日以内の死亡率が7・9%だったのに、同5件未満の病院では18・5%と2倍以上高くなった。後天性心臓病の手術全体でも、年100件以上の75病院の平均死亡率2・3%に対し、年25件未満の90病院では同4・8%だった。
食道がんでは、年75件以上の6病院で、在院死亡率が平均1・6%だったが、25件未満の716病院では平均6・5%と4倍の差があった。25件未満では、死亡率が20%を超える病院もあった。
肺がんでは、年150件以上の病院で死亡率0・3%、10件未満では1・6%だった。
◇治療成績の公表を----佐野俊二・岡山大医学部教授(心臓血管外科)の話
手術件数が多いほど死亡率が下がるのは、プロの大工が日曜大工よりうまいのと同じで、ごく当然だ。手術が年25件未満、つまり月1、2件では明らかに足りない。心臓外科医はプロとして治療成績を公表すべきだ。その代わり優秀な医師は高い報酬が得られる制度にしてほしい。』
腕に自信のある外科医の本音は「手術成績の優秀な医師には高い報酬を」だろうが,厚生労働省の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度の本音は要するに医療費削減であって,優秀な医師が高い報酬が得られる制度ではなかった.厚生労働省が優秀な医師の待遇改善をするなんていう話は聞いた事がないし,そもそも手術の技術料はもともとどう考えたって安すぎると私は思う.私の専門の脳神経外科にしても一つの技術料が100万円を超える手術なんて皆無である.自由診療の美容外科と比べてみれば健康保健診療での技術料がいかに低く抑えられているかわかるだろう.
前回の「手術件数の多い病院に高い診療報酬」という制度では,この安い技術料を手術数の少ない病院ではさらに削っただけである.これでは小規模病院では外科は不採算になる.要するに外科を大規模病院に集約する方向に向かわせたのだと思うが,これだと個人病院はもちろん,市立病院などのもともと経営の厳しい地域の基幹病院でさえも外科はやってられなくなる.地域の救急医療では手術を受ける機会がなくなればそれはすなわち患者の死を意味する.手術を受けられずに死亡した場合は手術の死亡率にはならないが,救命が目的であればこれでは本末転倒だろう.
そんなに手術成績と診療報酬を連動させたいのであれば,一例ごとに技術料を成功報酬にしたらどうだろうか.これなら外科医は納得できるのではないだろうか.もっともその場合,成功した場合の報酬は今の2倍以上にはしてもらわないと「優秀な医師は高い報酬」なんてことにはならないだろう.どうせ医療費削減が目的なんだろうからそんなことになるはずはないと思うのは私だけだろうか.
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