『 - 治療中に呼吸停止 ミスで男児寝たきり 北九州市立医療センター -
 医療事故:ミスで男児寝たきり 治療中に呼吸停止----北九州市立医療センター /福岡

 ◇水頭症治療中に

 北九州市は25日、市立医療センター(小倉北区)で今年1月、脳室が肥大する水頭症の治療を受けていた市内の男児(2)が小児科当直医の治療ミスで呼吸が止まり、意識不明となる医療事故があったと発表した。

 市病院局によると男児は04年、脳せき髄液を逃がすためのシリコン製チューブを頭部から腹部に渡す治療を受けた。今年1月、おう吐やけいれんの症状を訴え、同病院で胃腸炎と診断され入院した。当直医は、けいれんが続いたことなどからチューブが詰まるか外れるなどの異状を疑ったが、担当医を呼んで確認することをしなかった。2時間後に男児は呼吸停止に陥り、脳神経外科医が所見などからチューブ不全と診断した。男児は今も同病院で人工呼吸器をつけ、寝たきりの状態。

 また市は、昨年4月に定めた医療事故の公表基準に基づき、比較的軽微なものも含め市立病院の医療事故を発表した。05年度は4件あり、内訳は医療センター1件、八幡病院3件。タンの吸引びんを誤って患者の額に落とすなど病院側のミスで患者計4人に最長1カ月のけがを負わせた。医療事故は今後も定期的に公表する。』

こんないいかげんな記事で医療不信が増大するのかと思うと情けなくなる.何も知らない国民はまた医療ミスかと思うだけだろうが,これを読んだ小児科医や脳外科医はどう思うのだろうか.

「小児科当直医の治療ミスで呼吸が止まり」と書いてあるが,これはどういう意味なのだろうか.「男児は04年、脳せき髄液を逃がすためのシリコン製チューブを頭部から腹部に渡す治療を受けた」とあるのは脳室-腹腔シャントのことだろうが,だとすれば水頭症治療は脳神経外科の仕事であり小児科医の仕事ではない.

嘔吐による誤嚥からの窒息,痙攣重積発作,閉塞性水頭症などはどれも呼吸停止の原因となりうると思うのだがいったい呼吸停止の本当の原因は何だったのだろうか.「脳神経外科医が所見などからチューブ不全と診断した」とあるが,これは水頭症が原因で呼吸停止したと脳外科医が診断したという意味なのだろうか.

私は小児科当直医が脳神経外科の担当医を呼んで水頭症の悪化を確認したとしても呼吸停止を予見することはできなかった可能性があると思うし,予見できたとしても2歳の子供にすぐに挿管して人工呼吸器を装着したとも思えないのである.つまり,問題は呼吸停止を予見して処置できる可能性があったかどうかであって,水頭症の治療ミスで呼吸停止という言い方は明らかにおかしいだろうと思う.

だからこの市立医療センター(小倉北区)の医療事故の発表にも問題があると思う.医療ミスかどうかの判断はできるかぎり厳密に行うべきであり,少なくとも専門医がみて疑問の余地を残すような報道をされるようでは,世間の無用な不安を煽るだけで意味がないどころか,ますます地方の市立病院を避ける医師が増えるだけだということがわからないのだろうか.

医療事故の結果が悪いと医療ミスと呼んで医師の責任を追及するだけでは医療の質は向上するどころかむしろ低下するということにマスコミも国民もそろそろ気づくべきだと思うのだがどうだろうか.

コメント

nophoto
@むーむー
2006年8月31日15:10

書いている記事、取り上げ方。テレビでもそうです。うんざりです。もうちょっと調べてから書けよ。放映しろよ。というものばかりだと思います。こんなことで、医師のなり手が減ったり、あるいは医師のモチベーションが下がっていったら、困るのは患者です。まったく・・・

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