手術するにも見た目は大事
2006年6月26日 その他 以前に私の外来を受診した70歳くらいの男性患者さんとリハビリ室で話をしていたら,私が30代前半だと思っていたそうです.若くみられるのはまあいいのですが,若い医者だと思って私の言うことをあまり信用していなかったみたいです.例によって「テレビでこう言っていたのだが,わしは大丈夫かね.」みたいな話だったから害はないんだけれども,医者っていうのは若く見えるとそれだけ信用されないみたいで損しているような気分です.
ところで,外来の診察室で患者さんが私を見て経験豊富な医者かどうかみきわめる間に私も患者さんがどんな人か観察します.現病歴はもちろん既往歴を問診することは基本ですが,実は診察は診察室に患者さんが入ってくる時にすでに始まっているのです.脳神経外科専門医必読の教科書を書いた太田富雄先生の著書である『脳神経外科患者の診かた』という本の外来診察の手順の項にも,冒頭に「部屋に入り診察の椅子に座るまでの動作に,まず注意を払う.歩き方,表情,礼儀作法など重要な情報源である.」と書かれています.
できるだけ丁寧な言葉で時間をかけながら患者の人となりを念入りに観察するわけです.その際,カルテにある性別,住所,年齢,本人や家族の職業などが大変参考になることは言うまでもありません.喫煙や飲酒などは体臭でわかる場合もあります.性格や物の考え方もわかれば病状説明の時に役に立ちます.化粧や香水や華美な服装は感心しませんが性格を表しているのかもしれません.
とはいえ時間もないですから一回の診察でこれらがすべてわかるはずもありません.多くの場合,医師も患者もお互いを良く知らないまま画像診断に頼るということになります.しかし,コミュニケーションがうまくいかず,なんとなくぎくしゃくすることもあります.そして,その説明で満足できないと患者は不満をかかえ,医師もその不満顔に気づけばよいのでしょうが,気がつかなければなにか釈然としないまま診察を終えることになるのです.
上手な受診の仕方があるとすれば,まずは見た目をよくすることではないでしょうか.別にきれいな服装とか若くみえるということではなく,医師を信用して自分の困っていることを正直に伝える気持ちをもつことではないでしょうか.その際に自分の体におきた異変を時間にしたがって順番に話してもらえれば医師が病状を理解するうえで非常に有用で,医師もよく理解してくれることになると思います.最初からMRIを撮って欲しいなどという患者さんもいますが,これでは患者さん自ら医師とのコミュニケーションを放棄しているようなものではないでしょうか.
さて,話がちょっと表題から脱線してしまいましたが,手術をする時の見た目で私が一番大事ではないかと思っているのは実は見かけの年齢だったりします.先日も破裂脳動脈瘤の患者さんの手術をしました.実際の年齢は70歳なのに見かけは80歳くらいでした.手術の体位をとるにも背骨が曲がっていて横に転がりそうになるほどです.脳は萎縮していて動脈硬化で血管も黄色く硬くなっています.外気にさらしただけで脳が重力でつぶれて血管が閉塞して脳梗塞になるのではないかと心配になります.
どうにか手術が終わっても今度はなかなか麻酔から醒めません.呼吸も浅いので全身麻酔のために入れた挿管チューブを抜くことができません.脳幹梗塞にでもなったんじゃないかと明け方まで心配しました.心臓も弱っているので点滴の量にも細心の注意が必要です.熱がでると肺炎になったんじゃないかと心配になります.やっと挿管チューブを抜いても長時間の手術がこたえたのか元気がありません.
週が変わって今朝,回診したらとっても元気になっていました.熱も下がったようです.私も手術にはそれなりに自信があったとはいえ何が起こるかわからないのが術後ですから今回もずいぶん心配しました.やっぱり病気とはいえ患者さんは見た目だけでも若くて元気そうなほうが少しは安心できるというのが執刀医の本音ではないでしょうか.
ところで,外来の診察室で患者さんが私を見て経験豊富な医者かどうかみきわめる間に私も患者さんがどんな人か観察します.現病歴はもちろん既往歴を問診することは基本ですが,実は診察は診察室に患者さんが入ってくる時にすでに始まっているのです.脳神経外科専門医必読の教科書を書いた太田富雄先生の著書である『脳神経外科患者の診かた』という本の外来診察の手順の項にも,冒頭に「部屋に入り診察の椅子に座るまでの動作に,まず注意を払う.歩き方,表情,礼儀作法など重要な情報源である.」と書かれています.
できるだけ丁寧な言葉で時間をかけながら患者の人となりを念入りに観察するわけです.その際,カルテにある性別,住所,年齢,本人や家族の職業などが大変参考になることは言うまでもありません.喫煙や飲酒などは体臭でわかる場合もあります.性格や物の考え方もわかれば病状説明の時に役に立ちます.化粧や香水や華美な服装は感心しませんが性格を表しているのかもしれません.
とはいえ時間もないですから一回の診察でこれらがすべてわかるはずもありません.多くの場合,医師も患者もお互いを良く知らないまま画像診断に頼るということになります.しかし,コミュニケーションがうまくいかず,なんとなくぎくしゃくすることもあります.そして,その説明で満足できないと患者は不満をかかえ,医師もその不満顔に気づけばよいのでしょうが,気がつかなければなにか釈然としないまま診察を終えることになるのです.
上手な受診の仕方があるとすれば,まずは見た目をよくすることではないでしょうか.別にきれいな服装とか若くみえるということではなく,医師を信用して自分の困っていることを正直に伝える気持ちをもつことではないでしょうか.その際に自分の体におきた異変を時間にしたがって順番に話してもらえれば医師が病状を理解するうえで非常に有用で,医師もよく理解してくれることになると思います.最初からMRIを撮って欲しいなどという患者さんもいますが,これでは患者さん自ら医師とのコミュニケーションを放棄しているようなものではないでしょうか.
さて,話がちょっと表題から脱線してしまいましたが,手術をする時の見た目で私が一番大事ではないかと思っているのは実は見かけの年齢だったりします.先日も破裂脳動脈瘤の患者さんの手術をしました.実際の年齢は70歳なのに見かけは80歳くらいでした.手術の体位をとるにも背骨が曲がっていて横に転がりそうになるほどです.脳は萎縮していて動脈硬化で血管も黄色く硬くなっています.外気にさらしただけで脳が重力でつぶれて血管が閉塞して脳梗塞になるのではないかと心配になります.
どうにか手術が終わっても今度はなかなか麻酔から醒めません.呼吸も浅いので全身麻酔のために入れた挿管チューブを抜くことができません.脳幹梗塞にでもなったんじゃないかと明け方まで心配しました.心臓も弱っているので点滴の量にも細心の注意が必要です.熱がでると肺炎になったんじゃないかと心配になります.やっと挿管チューブを抜いても長時間の手術がこたえたのか元気がありません.
週が変わって今朝,回診したらとっても元気になっていました.熱も下がったようです.私も手術にはそれなりに自信があったとはいえ何が起こるかわからないのが術後ですから今回もずいぶん心配しました.やっぱり病気とはいえ患者さんは見た目だけでも若くて元気そうなほうが少しは安心できるというのが執刀医の本音ではないでしょうか.
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