『 -- 産科医師を書類送検 奈良、出産の女性死亡 --

 奈良県大和高田市の市立病院で出産時の処置にミスがあり女性を死なせたとして、高田署が業務上過失致死の疑いで30代の男性医師を今年3月に書類送検していたことが6日、分かった。

 同署などによると、2004年10月、30代の女性が出産中、心拍数が上昇するなど容体が急変。医師は心拍数を安定させる投薬をした。子どもは無事に生まれたが、女性は多量に出血して死亡した。

 同署は、医師が容体悪化の原因を特定せず心拍数などを下げる投薬だけを行い、適切に処置する注意義務を怠った疑いがあると判断した。

 同病院の内海敏行(うつみ・としゆき)事務局長は「出血や死亡の原因が解明されておらず、ミスとは考えていない」と話している。

 同病院は、周辺市の病院で産科の休診が相次いで今年4月ごろから患者が急増。医師3人に対し5月は105件の分娩(ぶんべん)があるなど負担が大きくなったため、今月7日から、分娩予約を同市と周辺3市1町の住民に限定する異例の措置を始める。』

 もう産科では死亡すればミスを疑われ業務上過失致死で起訴されることが確実になったような気がするのは私だけだろうか.それにしても出産というのは大変なことだ.妊婦さんは命がけ,産科医は人生がかかっている.産科は生命の誕生の瞬間が感動的で学生時代はけっこういいなあと思っていたものだが,今になって産科医にならなくて良かったと思ってしまう.こうも訴えられるんではやっぱり恐くてやってられないだろう.と脳外科医の私が言うのも変な話かもしれないが.

 聞くところによると原因は羊水塞栓症という治療困難な合併症の発生らしい.こういった救命さえも困難である合併症の場合は担当医の過失はどのくらいあるのだろうか.また,過失の程度によらず刑事訴訟に加え民事訴訟にもなるらしいから担当医はもう診療を続けることはできなくなるのではないだろうか.産科をセンター化したところで妊婦死亡率をゼロにすることは不可能だろうから今後も同様の訴訟が相次ぐことになるのだろう.

 招待講演のため来日した米国の脳外科医が日本の脳外科医の報酬が他の科と同じであると聞いてそれでは脳外科医になるやつはいないだろうと真顔で言ったそうである.脳外科の診療報酬を米国並にとは言わないが,医療事故の場合に担当医だけが割を食うような現在の解決法は改善しないと脳外科のように報酬の割にリスクの高い科の医師はいずれまともな診療をしなくなるだろう.特に産科はまだ産科を目指してくれる医師が残っているうちになんとかしないと少子化対策どころではなくなると思うのだがどうだろうか.
 

コメント

la_barmaid
la_barmaid
2006年6月9日4:05

この記事にもめちゃくちゃ憤りを感じます。
送検というのは医学的知識にのってされるものなのでしょうか?
それとも被害者の気持ちを汲み取ってだけなされるものなのでしょうか?
前回の事件とあわせて、産科医を減らす動きにしか見えません。
あんまりな話なんで、ついコメントさせていただきました。

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