『 -- 手術で感染し死亡と提訴 --
愛媛県八幡浜市の市立八幡浜総合病院で手術を受けた男性=当時(55)=が感染症を併発して死亡したのは、医師らが感染予防や術後の適切な処置を怠ったためなどとして、遺族が市に対し約6000万円の損害賠償を求める訴訟を松山地裁に起こした。
訴状によると、男性は2005年4月、同病院でぼうこうがんと診断され摘出手術を受けた。術後翌日から、高熱や切開部の化膿(かのう)などの症状が出始め、約2週間後、感染症の壊死(えし)性筋膜炎を併発し死亡した。
遺族は「手術中の消毒や術後管理などが不十分で開口部から細菌に感染したとみられ、診断と治療も遅れた」と主張している。
病院側は「医療ミスがあったとは考えていない。裁判で主張を明らかにしたい」としている。』
亡くなった患者さんには大変お気の毒な話であるが,手術前に合併症として感染のリスクがあるということを聞いていなかったのであろうか.こういう話は以前にもあったが,術後の感染症に限らず治療の合併症で命を落とすことが理解できないような家族がいる患者さんには今後はリスクの高い医療は提供されなくなるだろう.医療者側にとっても患者側にとっても安全性の高い治療が選択され,結果的にがん患者さんの生存期間が短かくなったとしてもそれは仕方がないことだろう.
患者さんが手術の合併症で死亡して,その金銭的賠償を求めるのは最近では珍しいことではない.お金が目当てなのかもしれないし,担当医や病院に復讐したいのかもしれない.主張をするのはよいが,これを医療ミスだというのならきちんと科学的に因果関係を証明して欲しいと思うのは私だけではないだろう.もちろん,手術の適応があったかどうかを含めて病院や医師の判断が妥当であったかも多くの医師の意見を聞いて検証されるべきである.
などと理想を述べてはみたが,科学的に証明することは実際にはかなり難しく時間もお金もかかることだろう.おまけに裁判で病院や医師が勝っても何も得るものはない,そもそも患者本人が死亡しているのに遺族と争う事になんの意味があるのだろうか.手術ごとに損害賠償保険を任意でかけて,その分を治療費に上乗せするのでなければそもそも感染症や出血のリスクが高いがん患者の手術はお断りしたいというのが病院側の本音ではないだろうか.だから病院側にとってハイリスクでローリターンな外科が産婦人科と同じ運命をたどる可能性もある.
外科系診療科が生き残るためにはどうしたらよいのだろうか.今後,こういった訴訟が流行することにより術後合併症による死亡率はおそらく低下すると思われる.そして少なくとも医療訴訟に対抗する医療者側の意識や技術は確実に進歩することだろう.しかし,これを医学の進歩と素直に言える医師はどこにいるのだろうか.
愛媛県八幡浜市の市立八幡浜総合病院で手術を受けた男性=当時(55)=が感染症を併発して死亡したのは、医師らが感染予防や術後の適切な処置を怠ったためなどとして、遺族が市に対し約6000万円の損害賠償を求める訴訟を松山地裁に起こした。
訴状によると、男性は2005年4月、同病院でぼうこうがんと診断され摘出手術を受けた。術後翌日から、高熱や切開部の化膿(かのう)などの症状が出始め、約2週間後、感染症の壊死(えし)性筋膜炎を併発し死亡した。
遺族は「手術中の消毒や術後管理などが不十分で開口部から細菌に感染したとみられ、診断と治療も遅れた」と主張している。
病院側は「医療ミスがあったとは考えていない。裁判で主張を明らかにしたい」としている。』
亡くなった患者さんには大変お気の毒な話であるが,手術前に合併症として感染のリスクがあるということを聞いていなかったのであろうか.こういう話は以前にもあったが,術後の感染症に限らず治療の合併症で命を落とすことが理解できないような家族がいる患者さんには今後はリスクの高い医療は提供されなくなるだろう.医療者側にとっても患者側にとっても安全性の高い治療が選択され,結果的にがん患者さんの生存期間が短かくなったとしてもそれは仕方がないことだろう.
患者さんが手術の合併症で死亡して,その金銭的賠償を求めるのは最近では珍しいことではない.お金が目当てなのかもしれないし,担当医や病院に復讐したいのかもしれない.主張をするのはよいが,これを医療ミスだというのならきちんと科学的に因果関係を証明して欲しいと思うのは私だけではないだろう.もちろん,手術の適応があったかどうかを含めて病院や医師の判断が妥当であったかも多くの医師の意見を聞いて検証されるべきである.
などと理想を述べてはみたが,科学的に証明することは実際にはかなり難しく時間もお金もかかることだろう.おまけに裁判で病院や医師が勝っても何も得るものはない,そもそも患者本人が死亡しているのに遺族と争う事になんの意味があるのだろうか.手術ごとに損害賠償保険を任意でかけて,その分を治療費に上乗せするのでなければそもそも感染症や出血のリスクが高いがん患者の手術はお断りしたいというのが病院側の本音ではないだろうか.だから病院側にとってハイリスクでローリターンな外科が産婦人科と同じ運命をたどる可能性もある.
外科系診療科が生き残るためにはどうしたらよいのだろうか.今後,こういった訴訟が流行することにより術後合併症による死亡率はおそらく低下すると思われる.そして少なくとも医療訴訟に対抗する医療者側の意識や技術は確実に進歩することだろう.しかし,これを医学の進歩と素直に言える医師はどこにいるのだろうか.
コメント
こうなる可能性もありますが、それでも切りますか?って
書面に書いてあるのを読まなかったんでしょうかね。
いいところだけ見て、何かあった場合医師と病院のせいに
するのはお門違いだと思うのはウチだけでしょうか。