『 -- 手術中に出血、男性死亡 青森署に異状死届け出 --
青森県立中央病院(青森市)で食道がんの胸腔(きょうくう)鏡手術を受けた男性患者(72)が、手術中に大量出血して出血性ショックで死亡し、病院は25日までに、医師法に基づき異状死として青森署に届けた。
青森署で司法解剖して死因の特定を進めるとともに、関係者から事情を聴く。
原田征行(はらた・せいこう)院長らによると、手術は24日午前9時45分に開始。患者の胸に穴を開け胸腔鏡でがん組織を取り除こうとした際、徐々に出血量が増え始めた。開胸手術に切り替えたが出血は止まらずに血圧が低下、同日午後1時50分に死亡した。
出血部位は最後まで特定できず、輸血分を含め約10リットルの出血があった。動脈の損傷は考えにくいという。
患者の死亡が避けられなかったか不明だったため同病院は医療事故対策委員会を招集、届け出を決めた。
難易度が高い手術だったが、30年以上の経験を積んだ医師が執刀に加わり、胸腔鏡手術も多数手掛けているという。』
先日の福島県の産婦人科医逮捕の際に問題となった異状死届け出である.青森県立中央病院の医療事故対策委員会は担当医の逮捕を避けるために届け出が必要と判断したのだろう.手術中の死亡というのはもちろんそんなにあるものではないが,今のままではこのように警察に届け出る以外に方法はないのだろう.
患者さんのためにより低侵襲な手術となるはずの内視鏡手術であるが,このようなケースの場合は,結局は開胸手術にならざるを得ないわけで,それでも死亡するということになれば手術適応が狭まることは間違いないだろう.つまり本来はリスクの高い症例にこそ必要な内視鏡手術が万が一のことを考えればできないということになるのではないだろうか.
脳神経外科領域でも脳動脈瘤の血管内手術で以前に血管内手術の専門医が術中破裂を起して患者が死亡し業務上過失致死で訴えられた事件があった.これからは同様に警察に届けなければならないのだろうから,未破裂動脈瘤の血管内治療はかなりやりにくくなるだろう.というか術中破裂は開頭手術でも起こることだが死亡する確率は血管内手術の方がかなり高そうだから血管内手術専門医が開頭手術をすすめるケースが今後は増加するのだろう.
結局,低侵襲を売りにする内視鏡手術や血管内手術が警察の介入という心理的な負担のためにやりにくくなることは確実で,大昔のように『助かる確率は低いかもしれないがやってみる価値がある手術』などというのはたとえ家族の了承があってももうできないということである.これからは『間違っても死なない手術』というものだけが残っていくことになるのだろう.
リスクの高い手術をして癌患者の延命のために自分の医師生命を賭ける医師がたとえいたとしても,むしろそういう医師ほど警察のお世話になりやすくなるわけだから長続きはしないだろう.外科医としてはなんともつまらない事態になってしまったが,これで手術が減れば医療費は節約されるのだから厚生労働省は医師法改正なんかする気はないのだろう.
青森県立中央病院(青森市)で食道がんの胸腔(きょうくう)鏡手術を受けた男性患者(72)が、手術中に大量出血して出血性ショックで死亡し、病院は25日までに、医師法に基づき異状死として青森署に届けた。
青森署で司法解剖して死因の特定を進めるとともに、関係者から事情を聴く。
原田征行(はらた・せいこう)院長らによると、手術は24日午前9時45分に開始。患者の胸に穴を開け胸腔鏡でがん組織を取り除こうとした際、徐々に出血量が増え始めた。開胸手術に切り替えたが出血は止まらずに血圧が低下、同日午後1時50分に死亡した。
出血部位は最後まで特定できず、輸血分を含め約10リットルの出血があった。動脈の損傷は考えにくいという。
患者の死亡が避けられなかったか不明だったため同病院は医療事故対策委員会を招集、届け出を決めた。
難易度が高い手術だったが、30年以上の経験を積んだ医師が執刀に加わり、胸腔鏡手術も多数手掛けているという。』
先日の福島県の産婦人科医逮捕の際に問題となった異状死届け出である.青森県立中央病院の医療事故対策委員会は担当医の逮捕を避けるために届け出が必要と判断したのだろう.手術中の死亡というのはもちろんそんなにあるものではないが,今のままではこのように警察に届け出る以外に方法はないのだろう.
患者さんのためにより低侵襲な手術となるはずの内視鏡手術であるが,このようなケースの場合は,結局は開胸手術にならざるを得ないわけで,それでも死亡するということになれば手術適応が狭まることは間違いないだろう.つまり本来はリスクの高い症例にこそ必要な内視鏡手術が万が一のことを考えればできないということになるのではないだろうか.
脳神経外科領域でも脳動脈瘤の血管内手術で以前に血管内手術の専門医が術中破裂を起して患者が死亡し業務上過失致死で訴えられた事件があった.これからは同様に警察に届けなければならないのだろうから,未破裂動脈瘤の血管内治療はかなりやりにくくなるだろう.というか術中破裂は開頭手術でも起こることだが死亡する確率は血管内手術の方がかなり高そうだから血管内手術専門医が開頭手術をすすめるケースが今後は増加するのだろう.
結局,低侵襲を売りにする内視鏡手術や血管内手術が警察の介入という心理的な負担のためにやりにくくなることは確実で,大昔のように『助かる確率は低いかもしれないがやってみる価値がある手術』などというのはたとえ家族の了承があってももうできないということである.これからは『間違っても死なない手術』というものだけが残っていくことになるのだろう.
リスクの高い手術をして癌患者の延命のために自分の医師生命を賭ける医師がたとえいたとしても,むしろそういう医師ほど警察のお世話になりやすくなるわけだから長続きはしないだろう.外科医としてはなんともつまらない事態になってしまったが,これで手術が減れば医療費は節約されるのだから厚生労働省は医師法改正なんかする気はないのだろう.
コメント
ネットサーフィンしていたらたどり着いてしまいました。
医者の世界もたんだん厳しくなってきていますよね。
ホント、人ごとではないですよね。
また遊びに来ますので、よろしくお願いします。