『 -- 北海道の呼吸器取り外し 医師の起訴は困難 「死亡との因果関係なし」検察当局 --
北海道立羽幌病院で平成十六年二月、女性医師(34)が男性患者=当時(90)=の人工呼吸器を外し死亡させたとして殺人容疑で書類送検された事件で、複数の医師が「呼吸器を外さなくても数十分後には死亡していた」との鑑定結果を旭川地検に提出していたことが六日、分かった。検察当局は「呼吸器外しと死亡には因果関係が認められない」として、医師を起訴するのは困難と判断したもようだ。
ただ終末期医療をめぐり、富山県の射水(いみず)市民病院で医師が人工呼吸器を取り外し七人が死亡した問題が発覚したため、厚生労働省による延命治療中止に関する指針作りの状況を見ながら最終判断する。
薬物などを投与する「積極的安楽死」ではなく、延命治療を中止する行為について刑事責任が問われた全国で初めての事件で、検察の判断が注目されていた。調べでは、医師は羽幌病院に勤務していた十六年二月十五日午前十時四十分ごろ、自発呼吸のない患者の人工呼吸器を外し患者は約十五分後に死亡した。十四日昼に食事をのどに詰まらせ心肺停止状態で搬送されていた。
北海道警は十七年五月、(1)他の医師の意見を聞かずに一人で判断した(2)患者の同意がなく、家族も患者の意思を十分理解していたとは言えない−として医療行為を逸脱していると判断し、書類送検した。旭川地検は複数の医師にカルテなどの鑑定を依頼。死亡直前の状態について「血圧が極度に低下しており、治療の施しようがなかった」との結論を得た。医師の中には「呼吸器を外さなくても二十分以内に死亡していた」との意見もあった。女性医師は事前に家族に十分な説明をし、同意を得ていたという。
羽幌病院呼吸器取り外し事件
平成16年2月14日、当時90歳の男性が昼食をのどに詰まらせ心肺停止状態で病院に搬送された。女性医師(34)が蘇生(そせい)措置し、心臓は動きだしたが自発呼吸が戻らず、人工呼吸器を装着した。家族に「脳死状態」と説明、翌15日午前、家族の同意の下、人工呼吸器を取り外し男性は死亡した。5月に問題が発覚。17年5月、北海道警は「医療行為を逸脱している」として殺人容疑で女性医師を書類送検した。延命治療を中止した行為だけの立件は全国初めて。』
不起訴の理由が呼吸器とりはずしと死亡の因果関係にあるとしたら,呼吸器をつけ延命治療を施しても1週間以内に死亡するような重症例については延命中止をしても罪には問われないということなのだろうか.それならそれで延命を中止する際のガイドラインの作成を急いでもらえるとありがたいと思うのは私だけだろうか.
もっともガイドラインが出来たとしても家族が納得しない場合は対応を誤ると面倒が増えるだけだからすべてがそれで解決するとは思えない.少なくとも家族の同意が得られればここで延命治療はやめていいよという程度のものしか期待できないだろう.実際,末期で亡くなるのを待っていたはずの家族が心肺蘇生をやめないでなどということもあるのだから.
ところで当の女性医師は不起訴になってどう思ったのだろうか.結果的に最悪の事態は避けられたもののダメージはそうとうなものだろうと思われる.きっと失ったものも多いだろう.誰がそれを補ってくれるのだろうか.
北海道警はこの件に関して(1)複数の経験豊富な医師の意見を十分に聞かずに医療行為について判断した(2)当時の家族や患者の精神状態を十分理解していたか−警察として医療に関して職務権限を逸脱した点はなかったなどの点で批判されてしかるべきであろう.複数の医師が「呼吸器を外さなくても数十分後には死亡していた」との鑑定結果を旭川地検に提出していたということが真実を示しているのだろうから,捜査の過程に問題がなかったかの検証は当然なされるべきであろう.
いま話題になっている外科医の方も家族が外科医に呼吸器をはずすように依頼したというようなニュースが出てきている.本来は医師の治療方針に家族が同意すれば延命治療の中止は問題のない話であるはずが,司法が介入することでなにかおかしくなっているような気がするのは私だけではないだろう.
北海道立羽幌病院で平成十六年二月、女性医師(34)が男性患者=当時(90)=の人工呼吸器を外し死亡させたとして殺人容疑で書類送検された事件で、複数の医師が「呼吸器を外さなくても数十分後には死亡していた」との鑑定結果を旭川地検に提出していたことが六日、分かった。検察当局は「呼吸器外しと死亡には因果関係が認められない」として、医師を起訴するのは困難と判断したもようだ。
ただ終末期医療をめぐり、富山県の射水(いみず)市民病院で医師が人工呼吸器を取り外し七人が死亡した問題が発覚したため、厚生労働省による延命治療中止に関する指針作りの状況を見ながら最終判断する。
薬物などを投与する「積極的安楽死」ではなく、延命治療を中止する行為について刑事責任が問われた全国で初めての事件で、検察の判断が注目されていた。調べでは、医師は羽幌病院に勤務していた十六年二月十五日午前十時四十分ごろ、自発呼吸のない患者の人工呼吸器を外し患者は約十五分後に死亡した。十四日昼に食事をのどに詰まらせ心肺停止状態で搬送されていた。
北海道警は十七年五月、(1)他の医師の意見を聞かずに一人で判断した(2)患者の同意がなく、家族も患者の意思を十分理解していたとは言えない−として医療行為を逸脱していると判断し、書類送検した。旭川地検は複数の医師にカルテなどの鑑定を依頼。死亡直前の状態について「血圧が極度に低下しており、治療の施しようがなかった」との結論を得た。医師の中には「呼吸器を外さなくても二十分以内に死亡していた」との意見もあった。女性医師は事前に家族に十分な説明をし、同意を得ていたという。
羽幌病院呼吸器取り外し事件
平成16年2月14日、当時90歳の男性が昼食をのどに詰まらせ心肺停止状態で病院に搬送された。女性医師(34)が蘇生(そせい)措置し、心臓は動きだしたが自発呼吸が戻らず、人工呼吸器を装着した。家族に「脳死状態」と説明、翌15日午前、家族の同意の下、人工呼吸器を取り外し男性は死亡した。5月に問題が発覚。17年5月、北海道警は「医療行為を逸脱している」として殺人容疑で女性医師を書類送検した。延命治療を中止した行為だけの立件は全国初めて。』
不起訴の理由が呼吸器とりはずしと死亡の因果関係にあるとしたら,呼吸器をつけ延命治療を施しても1週間以内に死亡するような重症例については延命中止をしても罪には問われないということなのだろうか.それならそれで延命を中止する際のガイドラインの作成を急いでもらえるとありがたいと思うのは私だけだろうか.
もっともガイドラインが出来たとしても家族が納得しない場合は対応を誤ると面倒が増えるだけだからすべてがそれで解決するとは思えない.少なくとも家族の同意が得られればここで延命治療はやめていいよという程度のものしか期待できないだろう.実際,末期で亡くなるのを待っていたはずの家族が心肺蘇生をやめないでなどということもあるのだから.
ところで当の女性医師は不起訴になってどう思ったのだろうか.結果的に最悪の事態は避けられたもののダメージはそうとうなものだろうと思われる.きっと失ったものも多いだろう.誰がそれを補ってくれるのだろうか.
北海道警はこの件に関して(1)複数の経験豊富な医師の意見を十分に聞かずに医療行為について判断した(2)当時の家族や患者の精神状態を十分理解していたか−警察として医療に関して職務権限を逸脱した点はなかったなどの点で批判されてしかるべきであろう.複数の医師が「呼吸器を外さなくても数十分後には死亡していた」との鑑定結果を旭川地検に提出していたということが真実を示しているのだろうから,捜査の過程に問題がなかったかの検証は当然なされるべきであろう.
いま話題になっている外科医の方も家族が外科医に呼吸器をはずすように依頼したというようなニュースが出てきている.本来は医師の治療方針に家族が同意すれば延命治療の中止は問題のない話であるはずが,司法が介入することでなにかおかしくなっているような気がするのは私だけではないだろう.
コメント
家族と納得の上で呼吸器を装着するかしないかの最初の選択時にのみ医師の裁量権があると考えます。尊厳死や意味の無い延命治療などという議論は必要だと思いますが、結論が出るまでは時間がかかりすぎるでしょう。日々現場に直面している臨床医としては、今のところ法律の範囲内でやっていくしかないのではないでしょうか。