『 -- 医師、延命治療中止に信念か 富山・呼吸器外し7人死亡 --

 富山県の射水市民病院でがんなどの末期患者7人の人工呼吸器が取り外され、死亡した問題で、人工呼吸器を取り外した外科部長(50)は95年4月から同病院に勤務していた。病院によると、昨秋、診療現場をはずれ、自宅待機や金沢大で研修を続けてきた。

 外科ではチーム医療をしているが、麻野井英次院長によると、外科部長は責任感が強く、自分で全責任を負うタイプ。一連の延命治療の中止についても信念をもってやったようだといい、「ほかの外科医はなかなか反論できなかったと理解している」と麻野井院長は述べた。

 昨秋まで同病院に勤務していた市職員は、「退院する患者さんが『いい先生だった』と言っていたのを何度も聞いたことがある。病院内でのトラブルもなかったのではないか」という。

 外科部長の執刀で夫(59)が大腸がんの手術を受けたという射水市内の女性は「02年10月から先生にお世話になってきた。2カ月入院したが、病気の説明がわかりやすくて人柄もよく、主治医として信頼していた。昨年10月にいなくなられ困っていた。今日話を聞いてショックを受けている」と話した。

 かつて外科部長と一緒に働いたことがある病院関係者も、「患者の覚えがよく、気さくに声をかける人だった。手術などについても、患者や家族が分かるまで、ゆっくり説明する人だった」と話した。 』

『 -- 「医師の独断」問題視、家族同意「文書ない」 病院会見 --

 富山県の射水市民病院でがんなどの末期患者7人の人工呼吸器が取り外され、死亡した問題で、残されたカルテには「家族の希望」などと記されていた。だが、同意取り付けの経緯は不明確で、病院内での合意も十分とはいえなかった。延命治療の停止は、やむを得ない選択だったのか。

 25日午後、麻野井英次院長ら幹部4人がそろって記者会見し、院内調査の結果を説明した。「数が多かったこともあり、非常に、社会的にも問題があると思った。犯罪性についての調査は我々だけではできないので警察の調査にゆだねた」。麻野井院長は苦渋の表情を浮かべた。

 きっかけは内科系看護師長の報告だった。「外科部長から人工呼吸器を外すよう指示がありました」

 昨年10月12日、知らせは副院長経由で麻野井院長に入った。対象患者は外科系。たまたま内科系病棟に入院していた。

 院長はすぐに外科部長に「人工呼吸器を外してはならない」と命じた。「部長の言動から人工呼吸器の取り外しに関する認識の違いを知り、ほかにも同様の事例があるのではないかと心配になった」のだという。

 同日、緊急に院内調査委員会が発足した。カルテの記録や医師、看護師らの記憶を元に過去10年間に外科で死亡した患者について調査し、七つの事例がわかった。

 院長は会見で、「問題にしたのは、患者の意思が明確だったか、呼吸器を外すにあたって他の医師による確認などの手続きを踏んでいるかということだ」と説明した。

 外科部長は患者の状態と、治療中止について家族らにどこまで説明していたのか。「同意書という形にはなっていなかった」と院長。4人いたという外科系医師らの間でどんな判断があったのかも、会見では明確にはならなかった。』

 けっこうなニュースになっているようなので,ちょっとだけ現場の医師としてコメントさせてもらいたい.

 病院側が問題にしているのは手続きのことである,医師が独断で安楽死させていたのではないかということで,法的にも問題があるのではないかと言うことである.これはおそらく法的に問題になるであろう.以前に道立羽幌病院で同様の事件があった.延命処置の中止は現状ではできないと考えたほうがいいだろう.

 だが,医療としてそれでいいのかどうかは別問題だと私は思う.私は脳外科医なので死に至る病気や遷延性意識障害の患者さんを診る機会が多いほうだと思う.そして思うことはどうせ死ぬなら自分の普段のイメージのままで死にたいということだ.遷延性意識障害で長期療養になったり,延命治療で1週間も経つとすっかり顔つきも変わってしまうのが普通である.本人は意識がないから気にならないのだが,それを毎日見る家族はどう思うであろうか.愛する人の変わり果てた姿をみるのは非常につらいものなのである.私は家族に自分のそんな姿を晒したくはない.

 私自身がそのような状態になった場合の希望としては遷延性意識障害なら6ヶ月で経管栄養の中止による死.そして延命治療は断固としてお断りということである.だが,今の日本ではこんなことはたとえ本人が希望してもできないだろう.自分に意識がない場合に家族が延命治療を拒否することは場合により可能だろうが,他人に自分の死に様を決めて欲しいとは思わない.

 本人の意思があれば自分でどのような死を迎えるかを選べることが尊厳死だと思うし,本人に意識がない場合は家族が納得できる最期を迎えさせてあげることが終末期医療なのではないかと思うのだがどうだろうか.

コメント

おすみん
おすみん
2006年3月26日17:59

私の母は癌です。とても重い現実です。

nophoto
befu
2006年3月26日21:50

法律的、また、日本の医療を取り巻く環境では、許されない事でしょうね。患者さんや、その家族との間にどういったやり取りがあったのか?それは知る由も有りませんが、自分の担当している患者さんが人工呼吸となって意識もなく、徐々に顔つきも変わっていく、その姿をみることが忍びなかったのではないか?医師としてのひいき目かもしれませんが...そう思えます。

yuyuneko
2006年3月26日22:52

yuyunekoです。ありがとうございます。書き込んでくださたこと、なんか光が見えたようで嬉しいです。しっかりドクターに聞いていきます。話も解りにくい所も多々ありますがあきらめずに気長にする事が大事なようですね。

nophoto
nochu@女医日記
2006年3月27日10:24

うちの父は今は元気ですが、もしもの時は絶対延命処置はして欲しくないと常々申しております。
私も、自分だったらして欲しくないです。
でも、全ての人がそう望むわけではないし、どんな状態でも1分1秒でも「生きて」いて欲しいと望むご家族もいらっしゃいますから、なかなか難しいですね…。
(「生きて」の定義もこうなってくると個人差がありますし)

ケスイダ
ケスイダ
2006年3月28日19:11

僕は今回の外科部長をちょっぴり応援しています
わざわざドクターから
延命治療をするしない
呼吸器を外す外さない
等の選択を求められても家族は答えにくいのです
なので
あうんの呼吸というか曖昧な状況で
してくれるのが日本人らしくて良いと思います
ウチの祖父祖母は2人とも15年前後
老人介護病院に入院していましたが
亡くなる時は延命治療ありませんでした
もういいんじゃないか?って言う雰囲気を
ドクターが察してくれたのだと思います
今回の外科部長も空気を読んで
表に出ない所で判断しただけなように感じます

nophoto
2006年4月6日7:11

射水市に住んでるんでお世話になったことありますが、とってもいい先生でしたよ。麻野井院長との間で何かあるみたいなんですが、今回もそうなんかな?週刊現代の最新号で語られてることが本当だったら、麻野井院長酷い人っすね。。。今でさえ真相が分かってないのに、先生を人殺し呼ばわり・・。外科医の先生については、いい評判しか聞いたことないし、すごく優しい人だったので、真相知りたいなぁ。。。

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索