『 -- 手術後の処置怠り患者死亡 麻酔医を書類送検 --
宮城県警泉署は17日、手術後に全身麻酔を受けた患者に適切な処置をせずに死亡させたとして、業務上過失致死容疑で仙台市泉区の病院院長(51)を書類送検した。
調べによると、院長は2005年2月15日、鎖骨を骨折した医師遠藤閑夫(えんどう・のりお)さん=当時(46)=の手術チームに麻酔医として参加。手術後、全身麻酔から遠藤さんが覚めるのを確認せずに病室に戻し、死亡させた疑い。
院長は麻酔を覚めさせるために薬を投与したが、麻酔から覚めていない状態で遠藤さんを病室に戻した。遠藤さんは一時呼吸停止状態になり、そのまま意識は戻らず、05年3月22日に低酸素脳症で死亡した。
院長は「なぜ亡くなったのか、自分でも原因が分からない」と話しているという。』
麻酔から十分覚醒していないと呼吸不全に陥ることがあることは麻酔医なら誰でも知っていることで,麻酔医はこの点に非常に注意を払うのが常である.では,なぜこんなことが起きてしまうのだろうか.きっとニュースではわからない原因があるに違いないが推測の域を出ないのでここで書くのはやめておこう.
もう一つ気になったのは,この病院長の標榜科はなんだったかということと,日本麻酔学会の専門医などの資格を持っていたのだろうかということである.もちろん指導医などの資格がなくても立派に麻酔をかける医師を何人も私は知っているが,資格を持たない医師の中にはちょっとルーズな麻酔をかける人もいるのも事実である.
私は緊急で待てない時以外は基本的に専従の麻酔専門医もしくはそれと同等の技術を有する外科系医師に麻酔をお願いすることにしている.ごく稀にではあるが,手術中に麻酔医が未熟なために恐い思いをしたことだってあるから,信頼のおける麻酔医の確保は自分にとって極めて重要なことである.なにせ専従の麻酔科医だって刑事告訴される時代なのである.麻酔医に問題があって外科医が告訴されることだって十分考えられるだろう.
その昔,個人病院で働いていたころは院長先生が麻酔認定医の資格を持っていて麻酔をかけてくれていた.そして,手術にも手洗いをして入り私に手術を教えてくれたのである.その間は麻酔のモニターは手術場の看護婦さんが見ていてくれて血圧や脈拍を読み上げ,院長が吸入麻酔の量を指示しながら麻酔をコントロールしていたものである.もちろん特に問題の起きない手術ならこれでも安全なのであるが,手術中に動脈瘤が破れでもして出血したら途端に修羅場と化したのである.それでもなんとかやってこれたのは当時はそれが当たり前でスタッフも死に物狂いでやっていたからだと思う.
現在,そんなことはやれと言われても私にはできないだろう.手術には人手が必要である.外科医と麻酔科医がそれぞれ1人ずつの2人で手術して結果が悪かったらそれだけで即逮捕されるかもしれないのである.たとえ緊急手術であっても最低外科医2人に専従麻酔科(専門?)医1人そして輸血は考えられる限り十分に用意しないといけないことになりそうなのである.これらすべての準備が整うまで手術はできないと説明し納得してもらうか,もしくは時間がかかってもより高次の救急病院に搬送するかしないことになるかもしれない.
ちょっとニュースの話題からはそれてしまったが,もしこの院長先生が専従の麻酔科専門医でなかったとしたら現在の医療をとりまく状況を見誤ったとしか言いようがなく,なぜこの時期にわざわざリスクを犯してまで麻酔医をやったのかという疑問がぬぐえないのである.
宮城県警泉署は17日、手術後に全身麻酔を受けた患者に適切な処置をせずに死亡させたとして、業務上過失致死容疑で仙台市泉区の病院院長(51)を書類送検した。
調べによると、院長は2005年2月15日、鎖骨を骨折した医師遠藤閑夫(えんどう・のりお)さん=当時(46)=の手術チームに麻酔医として参加。手術後、全身麻酔から遠藤さんが覚めるのを確認せずに病室に戻し、死亡させた疑い。
院長は麻酔を覚めさせるために薬を投与したが、麻酔から覚めていない状態で遠藤さんを病室に戻した。遠藤さんは一時呼吸停止状態になり、そのまま意識は戻らず、05年3月22日に低酸素脳症で死亡した。
院長は「なぜ亡くなったのか、自分でも原因が分からない」と話しているという。』
麻酔から十分覚醒していないと呼吸不全に陥ることがあることは麻酔医なら誰でも知っていることで,麻酔医はこの点に非常に注意を払うのが常である.では,なぜこんなことが起きてしまうのだろうか.きっとニュースではわからない原因があるに違いないが推測の域を出ないのでここで書くのはやめておこう.
もう一つ気になったのは,この病院長の標榜科はなんだったかということと,日本麻酔学会の専門医などの資格を持っていたのだろうかということである.もちろん指導医などの資格がなくても立派に麻酔をかける医師を何人も私は知っているが,資格を持たない医師の中にはちょっとルーズな麻酔をかける人もいるのも事実である.
私は緊急で待てない時以外は基本的に専従の麻酔専門医もしくはそれと同等の技術を有する外科系医師に麻酔をお願いすることにしている.ごく稀にではあるが,手術中に麻酔医が未熟なために恐い思いをしたことだってあるから,信頼のおける麻酔医の確保は自分にとって極めて重要なことである.なにせ専従の麻酔科医だって刑事告訴される時代なのである.麻酔医に問題があって外科医が告訴されることだって十分考えられるだろう.
その昔,個人病院で働いていたころは院長先生が麻酔認定医の資格を持っていて麻酔をかけてくれていた.そして,手術にも手洗いをして入り私に手術を教えてくれたのである.その間は麻酔のモニターは手術場の看護婦さんが見ていてくれて血圧や脈拍を読み上げ,院長が吸入麻酔の量を指示しながら麻酔をコントロールしていたものである.もちろん特に問題の起きない手術ならこれでも安全なのであるが,手術中に動脈瘤が破れでもして出血したら途端に修羅場と化したのである.それでもなんとかやってこれたのは当時はそれが当たり前でスタッフも死に物狂いでやっていたからだと思う.
現在,そんなことはやれと言われても私にはできないだろう.手術には人手が必要である.外科医と麻酔科医がそれぞれ1人ずつの2人で手術して結果が悪かったらそれだけで即逮捕されるかもしれないのである.たとえ緊急手術であっても最低外科医2人に専従麻酔科(専門?)医1人そして輸血は考えられる限り十分に用意しないといけないことになりそうなのである.これらすべての準備が整うまで手術はできないと説明し納得してもらうか,もしくは時間がかかってもより高次の救急病院に搬送するかしないことになるかもしれない.
ちょっとニュースの話題からはそれてしまったが,もしこの院長先生が専従の麻酔科専門医でなかったとしたら現在の医療をとりまく状況を見誤ったとしか言いようがなく,なぜこの時期にわざわざリスクを犯してまで麻酔医をやったのかという疑問がぬぐえないのである.
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