『 -- アリセプト服用後11人死亡 海外の臨床試験で --

 製薬大手エーザイ(本社東京)が海外9カ国で実施した認知症治療薬「アリセプト」(一般名・塩酸ドネペジル)の臨床試験で、服用した648人のうち11人(1・7%)が死亡していたことが、同社の発表で16日分かった。

 比較のため偽薬を飲んだ対照群の326人に死亡例はなかった。同社は「死亡率は過去の同種の試験と変わらない」と説明。対照群に死者が出なかったことはまれで、薬の安全性に対する評価を変えるものではないとしている。

 アリセプトは認知症のうち「アルツハイマー型」の治療薬として日本などで広く使われている。

 今回の臨床試験は、脳血管障害が原因とされる別タイプの認知症に対する効果と安全性を調べるのが目的で、参加者は全員がこのタイプの患者。効果では2指標のうち認知機能のみについて、アリセプト服用者に改善がみられたという。』

 アリセプトの国内での副作用報告については昨年6月24日の日記にも書いているが,これは海外での臨床試験のようだ.

 問題は1.7%という数字が副作用発生率ではなく死亡率であることと,対照群に死亡例が出なかったということだろう.以前の国内での報告では推定使用患者約30万に対し副作用が8人でうち死亡1人だったからずいぶん差があるようにみえる.

 厚生労働省のまとめというのは対照群を設定しておこなう厳密なものではなく,実際に臨床で使用した際の有害事象を主治医の主観に元づいて集める程度のものであるから,主治医が因果関係に気がつかなければ数字には出てこない可能性がある.

 一方,今回のほうは観察期間や投与群間での合併症のばらつきなどについての情報が無いので,対照群に死亡例がない本当の理由がわからない.しかし,だからといって1.7%という数字を無視することはできない.安全性がかなり高いとはいえ,アルツハイマー病の初期というそれ自体では死亡することのない患者さんに投与する薬だからである.

 統計というのはサイコロと同じで振る回数が増えればある目の出る確率は一定値に近づくはずであるが,振る人の投げ方によっても出る目を変えることは可能であるということも忘れない方がいいだろう.人の命にかかわる以上,統計のマジックに隠された手品のタネを明かすことも時には必要であろう.

 血管性痴呆やすでにHDS-Rが10点以下の患者さんにまでアリセプトを投与するような医師がもし大勢いたとしたらそのうち問題になるかもしれないと密かに思っているのだがどうだろうか.

コメント

nophoto
C介
2006年3月18日22:24

マーケティングやってました。主に数字を元にストーリーを作り説得する仕事なんですが、やればやるほど数字が信じられなくなります。まさに振るヒトによって出す目を自由に決められるという感じですね。ま、賽の目と同じで、いくら数字を増やそうと思っても6以上には絶対出来ない、というくらいの制約も在るにはありますが。
数字、特に一般発表されるもの、についてはフィルター掛けて見てます。それもまた悲しいですが。

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