『 -- あわや医療事故9万1000件 05年上半期250機関調査 看護師不足背景に --

 一歩間違えば医療事故になりかねない「ヒヤリハット」事例が、調査対象となった全国の250医療機関で、2005年1-6月の半年間に9万1000件あったことが8日、日本医療機能評価機構のまとめで分かった。

 また、医療事故の報告が義務付けられている旧国立や大学などの272病院で、05年の1年間に1114件の医療事故が発生、うち143人が死亡、159人に障害が残る可能性が高いことも判明した。

 全国には38万余りの医療機関があり、ヒヤリハット事例は相当数にのぼるとみられる。同機構は「重大な事故の背景には『ヒヤリ』や『ハッ』が隠れている。未然に防げるものもあり、医療機関は他山の石として1つでも医療事故を減らすよう努力してほしい」としている。

 同機構の報告書によると、最も多かったのは「薬の処方」で27%。次いで「チューブ類の使用」が16%、「入浴・食事・移動など」が13%。手術中は2%だった。

 看護師がガーゼの枚数不足を指摘したが、医師が無視し、後に患者の腹部からガーゼが見つかったり、名前の似た痛風と狭心症の薬を取り違えて患者に渡したりしたケースもあった。

 当事者別では看護師が80%、医師が4%。原因別では「確認や観察が不十分」が40%を占めた。「多忙だった」「夜勤・当直だった」を理由に挙げた人も多く、看護師不足が事故と隣り合わせの状況を生んでいる実態が浮かび上がった。

 また、医療事故は「手術や診療中」に起きた事例が30%と最も多く、次いで「入浴や食事など」の際が23%だった。ヒヤリハット事例と同様に確認や観察を怠ったのが原因となったケースが目立った。』

 まず目に付くのは「あわや医療事故」というセンセーショナルなタイトルである.医療従事者であればヒヤリハットレポートくらいだれでも知っている.そしてこれは事故報告書とは目的も違うことも知っているだろう.医療現場の感覚ではヒヤリハットレポートは通常業務であり自分たちの仕事の手順やマニュアルを確認し改善していくためのものと考えたほうがいいだろう.

 確かに中には重大事故につながる可能性のあるものもあるのだが,すべてが医療事故になるというほど重大なミスというわけでもない.医療機器の故障から病院施設の問題まですべてを含んだものである.頻度としてはやはり誤薬が圧倒的に多いのはどこの施設も同じであろう.この場合の薬とは内服薬だけでなく注射薬や点滴を含めての話である.ガーゼの枚数不足の指摘を医師が無視してあとで患者の腹部からガーゼが見つかるなんていうのはヒヤリハット事例ではないだろう.

 原因別で「確認や観察が不十分」はわかるが,「多忙だった」「夜勤・当直だった」というのはどうなんだろうか.これをすぐに「看護師不足が事故と隣り合わせの状況を生んでいる実態」という結論に結びつけるのはちょっと勇み足だろうと思う.実際,誤薬なんていうのは暇な病棟でも忙しい病棟でも起きるものである.忙しいだろうからと2人で手分けをして薬を配ったら同じ患者さんに2人で重複して配り,患者さんが気づかず服用してしまったなんていうこともあった.信じられないけれども2人で確認して2人とも誤認することなんて珍しくないのだから.

 医療事故対策委員会というのがどこの病院にもあって私も委員や委員長をやってきているが,それほど珍しいヒヤリハット事例にはめったにお目にかかることはない.人的原因のほとんどは経験年数が少なければ知識不足や経験不足であり,経験年数が上がると慣れからくる確認不足や注意不足などである.これらは人間がやる以上は一定の確率で起こるものなのであろう.

 私はヒヤリハット事例は予防しようがないとか言うつもりはない.中には重大事故につながる可能性があり,また未然に防げるものもあるだろうからヒヤリハットレポートは業務として重要であると思っている.むしろこれを材料に安易に看護師不足や医療事故と関連づけられてしまうと,医療に対する不信感がさらに増えるばかりで本来の意味が失われるような気がするのだがどうだろうか.

コメント

梔子
2006年3月10日3:43

見なかったことにして、今夜は寝ます。

えすこ
えすこ
2006年3月10日15:51

ヒヤリハット報告書、うちのリスクマネジメント部では報告書の数をチェックして、どこの病棟は報告数が多い、少ない、とやっていました。
ある一定数のレポートを出していないと評価(?)されないみたいだし(隠蔽していないかどうか、ということらしい)、そうかといって重大過ぎるとこれまた大問題になっていました。
本来のレポートの意味と矛盾していると思っていましたが・・・・。

ゆき
ゆき
2006年3月10日22:37

看護師80%。
まるで看護師だけがミスしてるみたいな感じでイヤですねぇ。
医師、薬剤師、検査技師....レポート書かないですから。
処方ミスしたのを患者さんに飲ませる時に気づいたら、
気づいた看護師は書くけど、処方したDrは書かないですし。
報告しても「あ、そう。じゃ、新しいのだしとくから」みたいな。

お前が書けよっ!!って思ってます。

ブログ脳外科医
脳外科医
2006年3月11日14:25

処方ミスのレポートは当然医師が書くべきだと思います.
看護師は書くとしても処方ミスに気づいたというレポートでしょうね.看護師80%というのは医師より看護師が人数の上で多いのだから別に問題にすべきほどのことではないと私は思います.

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